<大項目> 海外情勢
<中項目> アジア各国
<小項目> 韓国
<タイトル>
韓国における原子力戦略 (14-02-01-09)

<概要>
 韓国はわが国同様、エネルギー資源輸入国で、大規模な原子力平和利用を目指す、非核兵器国である。現在は使用済燃料のワンススルー路線を取っているが、将来を考え、核拡散抵抗性を持つ、新しい核燃料サイクルシステムを開発している。
 韓国の原子力発電は、1978年4月の古里1号機の営業運転開始で始まった。これは日本の東海発電所発電開始の1964年から14年後のことであるが、国策として原子力開発を積極的にすすめ、2005年6月、運転中の原子力発電所は20基、1771.6万kWで世界第6位の設備容量を持つ。2003年には国内総発電設備容量の29.2%、総発電量の42%にまで成長させており、特に、設備利用率(稼働率)は94.2%と世界トップクラスの運転実績を挙げている。軽水炉についてはフランスやスウェーデン同様に国産化を進め、韓国標準型炉KSNPを確立し、次世代炉KNGR(AP1400)を開発し、中国やベトナムやインドネシアに輸出しようとしている。
<更新年月>
2005年12月   

<本文>
1.エネルギーの現状
 韓国はエネルギー資源輸入国で、2003年約87%(日本は84.5%)を海外に依存。エネルギー消費量は石油換算で2004年2.17億tで日本の5.15億tの約2.5分の1である。エネルギー消費構成(2004年)はわが国と類似し、石油が48%を占め、次に石炭が24%、天然ガスが13%で、化石燃料依存が、86%である。原子力と水力の合計は14%でわが国の17%に似ている。原子力は14%でわが国の13%より高い(図1)(参考文献1、2)。
 韓国の第二次国家エネルギー計画では一次エネルギー消費量は2001年からの2020年までの20年間に年平均2.4%の割合で増加するとしており、2020年は3億1,180万tと予測している。天然ガスの利用や原子力の積極推進し、石油依存の低下を目指し、2020年には石油依存度44.8%を目指している(参考文献3)。
2.原子力発電所の現状
 2005年6月の状況は以下のとおりである。
・運転中は4サイト合計20基1771.6万kWで国内総発電設備5996.1万kWの29%を占め、ドイツに次ぐ世界第6位の規模である。
・2004年の原子力発電量は1239.7億kWhで総発電量3267億kWhの37.95%を占める。
・平均設備利用率は92.2%を記録している。運転は18か月サイクルを行い、定期検査の期間は平均34日である(参考文献4)。
・建設中又は、発注済8基960万kWであり、内訳は表1の通りである(図2)。
 韓国は原子力発電所が1社に保有されている。韓国の国有発電会社KEPCOは2001年、株式の21%が放出され、6企業に分割された。原子力は少量の水力発電と共に韓国水力原子力発電(株)KHNPになった。KEPCOは送配電会社の独占会社として残っている。
3.韓国の核燃料サイクル施設
 韓国原子力研究所KAERIがPWR燃料とCANDU燃料の製造技術を開発し、韓国核燃料会社KNFCと共に1990年よりPWR燃料を、1987年より天然ウランCANDU燃料を供給している。
 KNFCの製造能力は現在PWR燃料550t/年、CANDU燃料700t/年で原料のウランはカナダ、オーストラリア他から調達している。
4.韓国の国家総合原子力推進計画
 国際競争力の強化を目標に下記主要促進分野に1997年〜2006年の10年間で政府は合計17,474億ウォン(約1700億円)の予算をつけている。これは原子力法に基づくR&D基金11,818億ウォン(1.2ウォン/kWh)と国家一般会計5,656億ウォンで、更に産業界研究開発の私的投資等もある。
(イ)安定電源供給
(ロ)原子炉と核燃料サイクル自己信頼性技術の達成
(ハ)原子力の主輸出産業化
(二)放射性同位元素の農業、工業、医学利用の拡大
(ホ)原子力基礎研究の活性化
5.韓国の原子力発電国産化・輸出戦略
 韓国はわが国同様、原子力発電を国産化してきた。
・72〜86年 ターンキー方式で設備を導入学習
  1978年初のアメリカ、カナダ、フランスからの導入
・78〜90年 部品ベースの国産化14基導入
・97〜05年 韓国標準型炉KSNP国産化6基建設
      :CE社システム80を基盤
・05〜15年 韓国標準型炉KSNP+開発4基建設
      :世界最安全かつ最安価を目指す
      次世代炉KNGR(APR1400)開発4基建設
      :CE社システム80+を基盤
1)140万kW次世代原子炉(APR1400)の開発
 1992年より約10年間、国家先導技術開発事業を通して開発され、韓国水力原子力発電(株)(KHNP)、韓国原子力研究所(KAERI)、韓国電力技術(株)(KOPEC)、斗山重工業(株)(DOOSAN)など、産学および研究機関から約2,300名が研究開発に参加し、計2,340億ウォン(約234億円)が投入された。
 APR1400は、100万kWの韓国標準型原子炉(KSNP)をもとに出力を増大したもので、原子炉格納容器の安全度向上、中央制御室のデジタル化、建設面でも建設工期の短縮、建設単価の約15%節約、反復建設による建設費約50%節約(建設単価は最終的には1200$/kW)、および設計寿命を60年とするなどの特徴をもつ。
 新古里3、4号機および蔚珍発電所の近隣新立地に2基のAPR1400が採用されることが決定されている。新古里の次世代炉KNGR(APR1400)は2011年運転開始予定。
2)小型多用途炉SMART開発
 海水淡水化と熱供給を目的とした熱出力33万kW,電気出力10万kW、海水淡水化1万t/日、燃料取替えサイクル3年、炉寿命60年の加圧水型小型炉(System−integrated Modular Advanced Reactor)を開発している。概念設計、基本設計は終了し、2006年までに許認可申請を行うことを検討中である。これは海外輸出を目的とした韓国独自モデルの一体型原子炉開発事業である。輸入国側の要求は実用化されたものであるため、韓国は、5分の1規模6.5万kW熱出力プラントを国内に建設中で2007年に運転が開始される予定である。韓国原子力研究所が主として開発している。研究開発資金は政府科学技術部(MOST)より2008年までに750億ウォン(75億円)、斗山重工業などの民間企業より1,750億ウォン(175億円)の計2,500億ウォン(250億円)が投資されている。
3)産官研一体の海外輸出戦略
 韓国は政府、産業界、および研究機関等が一体となり、SMARTおよび韓国標準型炉KSNPの輸出戦略を展開している。輸出先候補地は中国、インドネシア、ベトナム等である。2005年にKSNPとKSNP+はアジア(インドネシア、ベトナム)市場向けにOPR−1000(Optimized Power Reactor)と再銘名された。KHNPはAPR1400として、中国が関心を持つことを望んでいる。
・対中国原子力協力
 韓国は中国と原子力平和利用協力協定(1994年10月)、同年12月中国国家核安全局−韓国科学技術部原子力安全協力協定(1994年12月)締結。以来、以下のような原子力交流協力を展開している。
(イ)秦山3期CANDUの蒸気発生器等の設備と技術コンサルタントと人員訓練の協力
(ロ)韓国原子力研究所・韓国原子力安全技術院−中国関係研究院等との協力
(ハ)韓国原子力産業会議年次大会等への中国要人招聘
(二)定期原子力合同委員会(昨年12月第5回開催)
   原子力政策と研究開発、核燃料と廃棄物管理、原子力安全、放射性同位元素等の協力
(ホ)韓国の月城や蔚珍原子力発電所と秦山2期、3期姉妹縁組
(ヘ)韓国原子力研究所KAERIと中国清華大学の高温ガス炉共同研究機構設立(水素製造など)
・対インドネシア原子力協力
 インドネシアに対して、韓国はまずSMARTを橋頭堡に売込みを展開している。SMARTは2008年までにジャワ島北東部のマドゥラMadura島で実証プラントを設置するプロジェクトを提示し、IAEA/韓国原子力研究所KAERI/インドネシア原子力研究所BATANで3者間協定を結び、経済性評価共同研究を実施中。また韓国標準型炉KSNPの導入を対象に、BATANと韓国水力・原子力発電((株))KHNPは2004年2月に覚書を締結し、「インドネシアの原子力発電の経済性、財政、地場産業育成、技術移転、人材養成に関する共同研究」を実施中である。
・対ベトナム原子力協力
 韓国は1995年韓国電力−ベトナム原子力委員会協力協定を締結、1996年政府間原子力協力協定を締結。
 韓国の直接投資は3.4億ドルと大きく、政府と韓国水力原子力発電(株)KHNP、韓国電力技術(株)KOPEC、斗山重工業(株)DOOSANが一体体制を組み、韓国標準型炉でのFS協力を申し入れている。政府要人への働きかけでは2001年ベトナム科学技術省副大臣を、2002年ベトナム第一副首相・工業相を韓国に招聘、2002年政府間原子力発電協力覚書締結後、頻繁な交流・協力(1回/2月)を行っている。また、ダラト研究炉の改修・運転に協力している。
6.核拡散抵抗性のある原子力システムの開発展望
 韓国は大規模原子力利用国であり、わが国同様に核拡散抵抗性のある核燃料サイクル確立を目指している。そのプロジェクトは以下の通り(図3)。
・DUPIC
 軽水炉使用済燃料中の1%のプルトニウムと96%ウランを天然ウランが燃やせる重水炉で再利用するものである。これはIAEAのINPROプロジェクトの韓国テーマで、軽水炉からの使用済み燃料を破砕し、酸素中で過熱し、40%の核分裂生成物を追い出し、それをCANDU炉燃料に再加工し、使用する。
・VHTR超高温炉
 KAERIは米国の第4世代炉開発GIV国際フォラムに参加し、熱出力30万kWモデュルで年間5万tの水素ガス製造を目指した超高温炉の設計を担当している。2008年に概念設計を終わり、2016年に建設を開始し、2020年に運転開始を目指している。また、KAERIは中国の精華大学と中国高温ガス炉HTR−10での水素製造に注目した研究協力を結んでいる。
・KALMER韓国先進液体金属炉
 Korea Advanced Liquid Metal Reactorは国産PWR使用済燃料のウラン利用率向上と放射性廃棄物量低減を目指した液体金属炉で、固有安全性を備え、核拡散抵抗性が高められている。不純物FPやTRUを燃料に随伴させ、それらを炉で燃やし、環境負荷を低減させる炉で、経済競争力を持つ。2006年までに基礎技術と基本設計について有効性を明らかにする計画で、2004年予算は42億ウォン(約4億円)である。
・HYPER加速器補助併用超ウラン元素変換発電炉
 Hybrid Power Extraction Reactor Systemは加速器を併用し、発電と超ウラン元素、FPの核種変換を行い、放射性廃棄物の毒性寿命を大幅に短縮し、環境負荷を低減するシステムである。2006年に概念設計を完成させる計画である。このシステムが韓国の核拡散抵抗性核燃料サイクルの目標である。
<図/表>
表1 韓国の原子力発電所
図1 韓国の一次エネルギー構成(2003年)
図2 韓国の原子力発電所の立地図
図3 韓国の核拡散抵抗性燃料サイクルと炉の開発−長期展望−

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
韓国における環境保全 (01-08-01-19)
韓国標準型軽水炉(KSNP) (02-01-01-11)
中国・韓国・ブラジルの高速増殖炉研究開発 (03-01-05-12)
日韓原子力平和利用協力取極 (13-04-02-08)
韓国のエネルギー事情とエネルギー政策 (14-02-01-01)
韓国の電力事情 (14-02-01-02)
韓国の原子力開発体制と安全規制体制 (14-02-01-03)
韓国の原子力発電 (14-02-01-04)
韓国の核燃料サイクル (14-02-01-05)
韓国のPA動向 (14-02-01-06)
韓国におけるRI・放射線利用の現状 (14-02-01-07)
韓国における原子力戦略 (14-02-01-09)

<参考文献>
(1)International Energy Agency:Key World Energy Statistics 2005,
(2)BP:Statistical Review of World Energy(June 2005)
(3)(社)日本原子力産業会議:原子力年鑑、2005年版、各論(2004年10月)
(4)(社)日本原子力産業会議:日韓原子力協力の現状、第27回日韓原子力産業セミナー(2005年10月24日、25日)
(5)World Nuclear Association:Nuclear Power in South Korea(November 2005),
(6)Kwang−Hark Choi(韓国大使館):韓国原子力の状況と展望(日本原子力学会・2004年春の年会)
(7)(社)海外電力調査会:海外諸国の電気事業、第1編(2003年3月)
(8)韓国産業資源部:
(9)韓国水力原子力(株):
(10)韓国統計庁:
(11)韓国エネルギー経済研究所:
(12)永崎 隆雄:原子力eye、51巻、5号、40(2005)
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