<本文>
韓国標準型軽水炉(KSNP)は、1990年代から21世紀初めに使用する改良標準型の原子力発電所であり、米国ABB−CE社のSYSTEM80をベースとしており、出力1000MWe、2ループ構成のPWR(加圧水型発電炉)である。既に営業運転中のUlchin−3、−4およびYonggwang−3、−4、−5ならびに建設中のUlchin−5、−6およびYonggwang−6がKSNPである。将来の電力需要の増加に備えて、2001年12月の第5次長期電源開発計画により、2015年までに新たに12基の原子力発電所を増設する計画である。これにより、原子力発電比率を44.5%に増やす予定である。韓国標準型軽水炉の仕様を
表1 に示す。
1.基本設計方針
(1)機器の削減、標準化機器の使用、モジュラー化、安全系と非安全系の分離によりシステム単純化を図る。
(2)安全性確保の考え方としては、事故の発生防止、炉心損傷防止、事故収束の各段階で許認可設計ベースに加え、安全余裕ベースの考え方をを導入した。
(3)プラントの停止、安全系の作動、事故時の運転員の判断等への設計余裕を確保する。
(4)機器およびシステムの建設、運転そして保守の全般にわたって、現存プラントでの実証技術を採り入れる。
(5)十分なスペース確保による被曝低減およびモジュラー方式での建設等により保守性および建設性の向上を図る。
2.原子炉建屋
KSNPの建屋の構成を
図1 に示す。
(1)原子炉
格納容器
格納容器は円筒形のコンクリート製である。円筒部の厚さは1.22m、ドーム部の厚さは1.07m、基礎部の厚さは3.66mである。内径は43.9m、高さは約67mである。
(2)原子炉補助建屋
補助建屋はコンクリート製であり、安全系用の一次補助建屋と化学体積制御設備等の非安全系用の二次補助建屋がある。安全系は一次補助建屋内でトレン分離がなされている。(3)その他の建屋
その他、タービン建屋、出入管理建屋、燃料建屋、廃棄物建屋、補機冷却熱交換器建屋がある。
3.一次系
(1)主冷却系および主要機器
一次系は2ループ構成であり、各ループに1台の
蒸気発生器 と2台の
一次冷却材ポンプ がある。また、
加圧器 が原子炉容器出口配管の1つに付いている。
一次冷却系 統図を
図2 に原子炉容器および
炉内構造物 を
図3 に示す。蒸気発生器は再循環方式の縦型Uチューブ熱交換器であり、エコノマイザーを設置している。エコノマイザーは
一次冷却材 温度の低いUチューブ出口側に給水を供給し、蒸気発生器の熱交換効率を高める。一次冷却材ポンプは単段の縦型遠心式ポンプであり、その構造図を
図4 に示す。
(2)炉心および
燃料棒
炉心は
燃料集合体 、
制御棒 、炉内核計装設備および炉内構造物等で構成される。燃料集合体は、16×16配列でありジルカロイ製グリッドを採用しており、その構造を
図5 に示す。燃料棒はUO2ペレット、ジルカロイ4被覆管で構成され、その構造を
図6 に示す。制御棒は太径(20.7mm)であり、制御棒4本のクラスターと制御棒12本のクラスターで構成されており、その構造を
図7 に示す。燃料集合体と制御棒とからなる炉心の水平断面を
図8 に示す。
(3)安全注入系
安全注入系は高圧注入ポンプ2台、低圧注入ポンプ2台、蓄圧タンク4台から構成され、一次冷却材喪失事故(
LOCA )時に炉心に冷却水を注入する。LOCA時に一次系の圧力が下がると自動的に蓄圧タンクの水は一次冷却材配管低温側に注入される。又、各ポンプは「加圧器圧力低」或いは「格納容器圧力高」の信号で自動的に起動し、一次冷却材配管低温側に燃料取替用水タンクの水を注入する。燃料取替用水タンクが空になった後は、再循環サンプの水を注入する。ポンプ等の機器は多重性を有する。系統図を
図9 に示す。
(4)余熱除去系
余熱除去系統は通常停止時、緊急停止時および燃料交換中の炉心崩壊熱を除去する。ポンプおよび冷却器は2系列あり、1系列で緊急時の余熱除去が可能な容量を持つ。ポンプは低圧注入ポンプを使用する。冷却開始時は蒸気発生器により冷却し、一次系が減圧した後に本系統を使用する。
(5)安全減圧系統
安全減圧系は、
補助給水系 統による一次系の冷却・減圧ができない時に、安全減圧弁を開け、加圧器の蒸気を格納容器に逃すことで一次冷却系を減圧する。一次冷却系が減圧したら、高圧注入ポンプで一次冷却材を補給する。安全減圧弁は電動弁である。
(6)
化学体積制御系
化学体積制御系は一次冷却材の浄化、ホウ酸濃度の調整、一次冷却材量の制御・補給、一次冷却材の回収等の機能を有する。
4.二次系
(1)主蒸気給水系
蒸気発生器で発生した蒸気は、高圧タービン、湿分分離機、低圧タービンを経由し、
復水器 で冷却された後、復水ポンプ、低圧給水加熱器、脱気器、
給水ポンプ 、高圧給水加熱器を通して、蒸気発生器に戻る。系統構成を
図10 に示す。
(2)補助給水系
補助給水系は、通常の給水系が使用できない時、即ち給水喪失、二次系配管破断事故、蒸気発生器伝熱管破断事故、外部電源喪失或いは小破断LOCA等が発生した時に蒸気発生器へ給水する系統である。補助給水系統は2系統よりなり、各系統が電動ポンプ1台、タービン駆動ポンプ1台および関連の配管、計装機器、流量調整ベンチュリーを有する。水源は復水タンクである。
<図/表>
表1 韓国標準型軽水炉の仕様
図1 韓国標準型軽水炉の建屋
図2 韓国標準型軽水炉の一次冷却系統図
図3 韓国標準型軽水炉の原子炉
図4 韓国標準型軽水炉の一次冷却材ポンプ
図5 韓国標準型軽水炉の燃料集合体
図6 韓国標準型軽水炉の燃料棒
図7 韓国標準型軽水炉の制御棒
図8 韓国標準型軽水炉の炉心構成
図9 韓国標準型軽水炉の安全注入系
図10 韓国標準型軽水炉の主蒸気給水系
<関連タイトル>
System 80+ (02-08-03-02)
朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO) (13-01-01-22)
<参考文献>
(1)Korea Electric Power Corporation:KOREAN STANDARD NUCLEAR POWER PLANT(KSNP)
(2)日本原子力産業会議(編):世界の原子力発電開発の動向(2000年5月)
(3)Ministry of Science & Technologyホームページ:Atomic Energy Activites Korea、Nuclear Power Programs