<大項目> 海外情勢
<中項目> アジア各国
<小項目> 韓国
<タイトル>
韓国のPA動向 (14-02-01-06)

<概要>
 韓国では放射性廃棄物管理の研究施設開発計画が住民の猛烈な反対運動に遭遇した。この安眠島(アンミョンド)事件を教訓として、1991年から3つのステップで民主的な新しい原子力PA活動が実施されている。一般大衆に対する原子力情報の提供など原子力透明性の確保、地元説明会や公開討論等の広聴・広報活動、オピニオンリーダー層による原子力施設の視察など学習機会の提供である。南北朝鮮の分断、北朝鮮の核兵器開発、政治的、社会的要因が状況を複雑にしているが、PA活動は着々と進展してきている。現在のPA活動は1992年に設立された韓国原子力文化財団が原子力の一般的PRを、韓国水力・原子力発電会社(KHNP)が原子力分野を、韓国原子力研究所(KAERI)が放射性廃棄物分野を担当している。そのほか、原子力情報として原子力百科事典ATOMICAがハングル語訳されて利用されている。
 なお、韓国では中低レベル放射性廃棄物処理施設の建設・操業が2005年11月、住民投票を経て慶州市に決定した。また、2008年7月に原子力文化財団が実施した調査によると、90%以上の人が原子力支持を表明しており、約68%の人が、今後原子力発電の比率を高めなければならないとしている。
<更新年月>
2009年01月   

<本文>
 2009年1月現在、運転中の原子炉は20基で、5基が建設中である。発電量に占める原子力の割合は35%を超え、現在3基が計画中である(図1参照)。韓国知識経済部(MKE、旧産業資源部(MOCIE)は、2008年12月、今後15年間の電力需給基本計画を発表した。これによると、国内の総電力消費量は2022年に5,001億kWh(2008年3,686億kWh)に達する見通しで、原子力12基(1,520万kW)、石炭7基(624万kW)、LNG11基(663万kW)、その他527万kWの生産設備を新設する計画である。2022年の発電電源別設備の割合は、原子力が全体の33%へと大幅に増加し、石炭とLNGはそれぞれ29%、23%の小幅減となり、発電量の割合は原子力が48%に伸びることが予想されている。韓国ではこのように原子力発電は大きな役割を担っている。
1.原子力PAへの取り組み
 韓国では原子力開発を推進するに当り、国民や地域社会との共生を実現していくことを前提条件の一つとして掲げ、透明性の確保、広聴・広報の充実、学習機会の提供などの取組みを行っている。
(1)透明性の確保・・・原子力に関する国民の信頼を得るため、原子力政策の検討過程、立地選考過程、原子力関係者の安全管理や研究開発等の諸活動について、関係する情報の公開等の促進により、原子力活動の一層の透明性確保に取り組む。
(2)広聴・広報の充実・・・国民や地域社会との相互理解を促進するため、国や事業者等が自らの活動について広聴を基礎とした説明会・広報活動の推進を行う。
(3)学習機会の提供・・・原子力に対する理解を深めることができるよう、国による原子力・エネルギー教育に係る取組の支援やそれに資する情報の提供、事業者によるパンフレットの配布や科学館等を通じた原子力・エネルギーに関する知識を提供する。また、オピニオンリーダー層による原子力施設の視察など、学習機会の提供を図る。
 このように韓国では原子力PAに関する取組みが行われているものの、南北に分断された朝鮮半島の歴史的背景から、原子力が核兵器と結び付けて把握され易いこと、政治的・社会的要因からくる反原子力活動など複雑な一面もある。
 韓国のPA活動は、1990年の放射性廃棄物管理研究施設の建設に対する反対運動、安眠島事件を機にその重要性が認識され、PA活動が活発化した。1993年には 政府とは異なる第三者機関として(財)韓国原子力文化振興財団(後の韓国原子力文化財団)が設立された。PA活動の役割分担は、教育科学技術部(MEST)(旧科学技術部(MOST))と知識経済部(MKE)が基本的方向を指示し、韓国水力・原子力発電(株)(KHNP、旧韓国電力公社(KEPCO))が原子力発電について、韓国原子力研究所(KAERI)が放射性廃棄物について、原子力文化財団が原子力の全分野にわたってPA活動の支援を行っている。なお、KAERIは国民に原子力についての学習機会提供する活動の一貫として原子力百科事典ATOMICAの韓国ハングル語版ATOMICAをインターネットで公開している(図2−1および図2−2参照。)
2.住民投票
 韓国では、再処理を行わないため、原子燃料サイクルのバックエンドは放射性廃棄物の処分に限定される。現在、放射性廃棄物は各発電所のサイト内に貯蔵されているが、貯蔵施設は飽和状態に近づいている。政府は1986年以来9回にわたって放射性廃棄物処理施設の建設を計画したが、いずれも地域住民の反対などで頓挫している。その後2004年全国の地方自治体に誘致を公募した結果、2005年11月に慶州市(キョンジュ市)に中低レベル放射性廃棄物処理施設を建設することが決定した。2008年7月に韓国水力原子力会社(KHNP)は慶州市陽北面奉吉里の処分場の建設操業許可をMESTから取得した。2009年に操業開始を予定している。
 なお、サイト決定に際し、中低レベル廃棄物処分施設の誘致申請を行っていた4自治体で2005年11月2日に住民投票が行われた。住民投票は有権者数の1/3以上の投票率、有効投票数の過半数の得票で賛成率の高い地域が選ばれ、その結果89.5%の賛成を得た慶州市に決定した(図3参照)。
3.世論調査動向(原子力意識調査)
 韓国の成人男女1000人を対象に行われた原子力に対する意識調査結果が、2008年8月21日に原子力文化財団から発表され、92.5%の人が原子力を支持すると回答したことを明らかにした。この調査は、7月12日に委託調査機関R&R社の電話調査によって行われた。
 調査回答者のうち67.5%が、原子力発電の比率を現在より高めなければならないという意見に賛成している。原子力は電力需要の増加に備えて、最もふさわしいエネルギーと支持しており、他の電源に比べ経済的、環境にもやさしいクリーンエネルギーと評価している。また、67.4%の回答者が居住地域内に原子力発電所を建設することに対しても賛成、または地域投資の規模を見て決定するとしており、地域支援を期待する傾向が表れている。
 安全性については、原子力が安全だと答えたのは63.4%で、前年に比べて12%上昇した。一方、原子力は安全ではないと感じている人は、7.1%下がって21.8%にとどまった。安全ではない理由としては、廃棄物処理と放射能漏れ、事故発生の可能性という回答であったが、これまで韓国では原子力発電所で大きな事故やトラブルがないことから、原子力安全性への信頼度が向上しているものと思われる。表1に原子力に関する国民の意識調査を示す。
(前回更新:2004年10月)
<図/表>
表1 韓国の原子力に関する国民の意識調査
図1 韓国の原子力発電所の概要
図2−1 韓国版ATOMICA(原子力百科事典)のホームページ(1/2)
図2−2 韓国版ATOMICA(原子力百科事典)のITERの概念図(タイトル:核融合実験炉開発の展望)(2/2)
図3 中低レベル放射性廃棄物処分地誘致の住民投票

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
中国、韓国の放射性廃棄物処分に関する状況 (05-01-01-15)
韓国のエネルギー事情とエネルギー政策 (14-02-01-01)
韓国の電力事情 (14-02-01-02)
韓国の原子力開発体制と安全規制体制 (14-02-01-03)
韓国の原子力発電 (14-02-01-04)
韓国の核燃料サイクル (14-02-01-05)
韓国におけるRI・放射線利用の現状 (14-02-01-07)
韓国における原子力戦略 (14-02-01-09)

<参考文献>
(1)韓国原子力研究所(KAERI):原子力百科事典(ATOMIC)(ハングル版)
(2)(社)海外電力調査会:大韓民国、「海外諸国の電気事業 2008年版 第1編」(2008年10月)、p.697−p.700
(3)原子力環境整備促進・資金管理センター:韓国の中低レベル放射性廃棄物処分施設のサイトが決定−住民投票の結果、慶州市に−
(4)原子力環境整備促進・資金管理センター:韓国教育科学技術部(MEST)が中低レベル放射性廃棄物処分場の建設・操業許可を発給
(5)原子力環境整備促進・資金管理センター:韓国の中低レベル放射性廃棄物処分施設の誘致に4自治体が申請
(6)韓国知識経済部(MKE):第4回電力需給基本計画、2008年12月
(7)世界原子力協会(WNA):Nuclear Share of Electricity Generation Figures 1996−2007、http://www.world-nuclear.org/info/nshare.htmlおよびTable of the World’s Nuclear Power Reactors 2007−09、http://www.world-nuclear.org/info/reactors.html
(8)日本原子力産業協会国際部:韓国の原子力世論調査結果について、2008年11月、http://www.jaif.or.jp/ja/kokusai/korea_opinion_poll.html
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