<本文>
1.概要
韓国の人口は約5,024万人(2013年推定)、面積は約10万km
2である。2011年のエネルギー消費は
石油換算トンで1億6,104万トン、1人当たりの消費量は3.205トン、電力消費量は5,058.6億kWh、1人当たり国民総生産は22,720ドル(2012年)で、
国内総生産は11,295.4億ドル(2012年)である。
表1に韓国の経済指標を示す。
2.エネルギー事情
2.1 エネルギー資源
韓国のエネルギー資源は、石炭(無煙炭)、石油、天然ガス、水力などがあるが、いずれも埋蔵量や包蔵水力が極めて少なく、エネルギー供給量のほとんどを輸入に頼っている。
(1)石炭
石炭の開発が本格化したのは朝鮮戦争後の1961年以降である。しかし、発見された炭田は少なく、最盛期の1988年には年産2,430万トンであったが、2012年には210万トンになった。なお、2009年末時点の確認埋蔵量は1億3,300万トンで、可採年数は53年と推定されている。良質炭は少なく、火力発電用か粉砕・固化した家庭用燃料として使用されており、鉄鋼業に必要な大量の強粘結炭は海外から輸入している。
(2)石油・天然ガス
1969年から海外の石油開発会社が探査活動を開始したが、商業規模に達する油田やガス田は発見されなかった。1999年に韓国石油公社(KNOC:Korean National Oil Corporation)が蔚珍沖合58kmに位置する大陸棚で商業規模に達するガス田を発見し、2004年11月から商業生産を開始した。同鉱区の天然ガス埋蔵量は 70.79億m
3(2,500億ft
3)と推定されている。
(3)水力
水力はすでに開発が進み、未開発の包蔵水力としては150万kW程度しか存在しない。このため、今後は
揚水発電所を中心に開発を進める予定である。
(4)再生可能エネルギー
韓国では、2008年に第三次新・再生エネルギー技術開発、及び普及の基本計画(The 3rd National Basic Plan for NRE Technology Development and Deployment)が策定された。この計画では、2030年に一次エネルギーの11%を「新・再生エネルギー」で賄うことを目標とし、さまざまな施策が展開されている。新エネルギーには燃料電池、石炭液化・ガス化、水素の3分野で、再生可能エネルギーとしては、太陽光、太陽熱、バイオ、風力、水力、海洋、廃棄物、地熱の8分野が該当する。このうち、廃棄物燃焼の熱利用とバイオエネルギーの導入目標比率が大きい。年間伸び率では、海洋(49.6%)、地熱(25.5%)、太陽熱(20.2%)が大きく設定されており、重視されている。なお、2003年から行われていた固定価格買取り制度は、2012年から
RPS制度へ移行し、13の電力会社が発電量2%相当の再生可能エネルギーを購入する義務を持つことになっている。
表2にエネルギー別導入目標を示す。
2.2 エネルギー需給
政府はエネルギーの安定供給を目指し、国内の資源開発を進める他、輸入国の多様化や海外での資源開発を積極的に推進し、また、エネルギーの効率的利用を促進するとともに、地球温暖化対策のため、再生可能エネルギーの開発を進めている。
図1に2012年の韓国のエネルギー需給バランスを示す。
国際エネルギー機関(
IEA)の統計によると、最終エネルギー消費量は、第一次
石油危機が発生した1973年の1,740万トン(石油換算、以下同じ)から1990年の64,901万トン、2000年の1億2,711万トン、2010年には1億5,766万トンに増加しており、この35年間に8.4倍に拡大した(
表3参照)。
一方、2011年のエネルギー供給は2億2,736万トンで、国内エネルギー資源による生産量は原子力を含めても4,698.8万トンしかなく、石炭、石油、LNG等のエネルギー資源はほとんど輸入に依存している(
表4及び
図2参照)。韓国のエネルギー自給率は1973年の33.2%から、1990年には24.3%、2000年には18.3%まで減少し、2011年の自給率は18.0%であった。輸入量の割合は石炭とLNGが徐々に増加し、石油が低下する傾向にある。
なお、2011年の石油の海外輸入依存度はほぼ100%、内訳はサウジアラビア33%、クェート14%、イラン10%など中東への依存度は84%である。また、LNGの海外輸入依存度もほぼ100%で、内訳はカタール22%、インドネシア22%、オマーン11%、マレーシア11%、ロシア8%となっている。石炭に関しては、韓国は日本、中国に次ぐ石炭輸入国で、オーストラリアやインドネシアから輸入している。韓国の石炭輸入量は2000年から2010年にかけてほぼ倍増しており、特に一般炭の輸入量の増加が顕著で、この10年間における増加率は年平均7.5%である。一方、原料炭輸入量は2000〜2009年以降、1,600万〜2,000万トンで推移しており、全石炭輸入量に占める原料炭輸入量のシェアは約20%である。
3.エネルギー政策
3.1 韓国のエネルギー基本政策
このようなエネルギー需給の状況を反映して、様々なエネルギー政策が実施された。1970年代に2度の石油危機が発生したことから、脱石油化が推進され、併せて省エネルギーが促進された。1990年代には、社会・経済の機構改革が進められ、工業部門が多様化するとともに、公益事業改革が進められ、エネルギー部門の改革も開始された。アジア通貨危機の影響を受けた1998年には、エネルギー産業の構造改革が重視され、電力部門の分割・民営化が推進された。また、1993年に「気候変動枠組条約」を批准したことで、環境問題に対する関心も急速に高まった。現在のエネルギー政策は、国内外の情勢の変化、とりわけ市場自由化の進展、エネルギー市場のグローバル化による国際競争の激化、環境問題の高まりを反映して「エネルギー・経済・環境」(3E)の調和を重視したものになっている。
3.2 韓国のエネルギー需給計画
韓国のエネルギー政策はエネルギー基本法に従って、産業通商資源部(MOTIE:Ministry of Trade, Industry and Energy)が担当している。MOTIEは2008年に組織された知識経済部(MKE:Ministry of Knowledge Economy)の商業・貿易・工業、外国人投資、及び資源・エネルギーに関する業務に、通商交渉・FTAに関する業務を追加したもので、2013年3月に再編された(
図3参照)。
エネルギー政策は、従来、5年毎に10年間を計画期間とした「国家エネルギー基本計画」として纏められていたが、2008年から長期エネルギー戦略として、新たに20年間を計画期間とした「国家エネルギー基本計画」が策定されている。2010年には「エネルギー基本法」は組織構成等を変更し、「エネルギー法」として纏められ、これとともに気候変動対応とエネルギーの目標管理に対応するため、グリーン成長国家戦略、国務総理と民間委員を共同委員長にする大統領所属のグリーン成長委員会を設置し、「低炭素グリーン成長基本法」を2010年1月に制定した。
3.2.1 第一次国家エネルギー基本計画(2008〜2030年)
この基本計画は、前の李明博政権が打ち出した社会・経済政策である「低炭素グリーン成長国家戦略」に基づき策定されたもので、知識経済部(MKE)が2008年に策定し、環境負荷の低い低炭素社会の実現と安定した経済成長を遂げていくことが基本方針になっている。
2030年の主要な目標(エネルギー需要の増加率:年率2〜3%)は、
(1)エネルギー原単位(エネルギー消費量/GDP)を0.185に引き下げる(2007年は0.341)、
(2)エネルギー供給量に占める化石エネルギーの比率を61%に引き下げるとともに、供給量に占める再エネの比率を11%に引き上げる(2007年はそれぞれ83%、2.4%)、
(3)グリーン技術などエネルギー技術の水準を世界最高レベルに引き上げる、
(4)石油・ガスの自主開発率を40%に引き上げる(2007年は4.2%)等となっている。
また、「国家エネルギー基本計画」を補完するものとして作成された2008年の「エネルギー・ビジョン:エネルギー政策の方向性と開発戦略」では、1)環境に優しいエネルギー需給システムの構築、2)原子力を中心とする安定的なエネルギー供給基盤の確立、3)エネルギー関連技術による輸出産業(特に原子力と再生可能エネルギー)の育成を推進することが計画された。
なお、韓国政府は、エネルギー源や輸入国を多様化することで、2030年に最終エネルギー消費量が342.8Mtoeに達するとしている(
表5参照)。また、今後、石油依存度が低下する一方、原子力や再生可能エネルギーの開発が進むことから、2030年には最終エネルギー消費量の構成が石油34.2%、石炭24.7%、原子力19.5%、LNG15.8%、再生可能エネルギー5.4%になると予測した。
3.2.2 第二次国家エネルギー基本計画(2013〜2035年)
この基本計画は、現在の朴槿恵政権が打ち出した2035年迄のエネルギー戦略で、第一次国家エネルギー基本計画の基本路線を踏襲しているものの、高効率システム化を通じ、エネルギー低消費社会の実現を目指している。なお、原子力開発に関しては、福島第一原子力発電所事故等を考慮したことで、原子力による発電設備の比率は、2012年の26.4%から上昇するものの、2030年までに41%に引き上げる方針だったが、第二次計画では2035年までに29%とするにとどめている(
表6参照)。2035年の一次エネルギー供給量は第一次計画より15%少ない石油換算7,020万トン(toe)としている。
4.エネルギー資源の確保
韓国ではエネルギー資源の自主開発率引き上げを目指して、「安定的なエネルギー供給」から「積極的なエネルギー自主開発」にエネルギー政策方針を切替え、国内資源開発や海外資源確保を推進している。
石油資源の確保に関しては、2009年2月、政府は「第一次海底鉱物資源開発計画」を策定し、2018年までに合計20坑の掘削を行い、既存埋蔵量4,500万bbl(
バレル)から1億bbl以上の新規埋蔵量の確保を目標に、韓国の南西域に広がる大陸棚の長期開発を行っている。
また、2005年には「ガスハイドレート研究開発計画」が策定され、ガスハイドレート開発事業団が対馬海盆でメタンハイドレートの探査を開始した。2007年6月には鬱陵島から南に100km離れた海域でメタンハイドレートの採取に成功している。埋蔵量は約8〜10億トン(韓国ガス消費量の約30年分に相当)と推定され、2015年からの本格的な生産を目指している。
そのほか、韓国は、韓国石油公社(KNOC)及び韓国ガス公社(KOGAS)を通じて、既存の探査鉱区確保の戦略から生産鉱区買入及び石油開発企業買収戦略に変更し、北米、中東、南米、アフリカなどの海外権益を取得している。韓国石油公社の海外活動を
図4に示す。
(前回更新:2009年2月)
<図/表>
<関連タイトル>
韓国の電力事情 (14-02-01-02)
韓国の原子力開発体制と安全規制体制 (14-02-01-03)
韓国の原子力発電 (14-02-01-04)
韓国の核燃料サイクル (14-02-01-05)
韓国のPA動向 (14-02-01-06)
韓国におけるRI・放射線利用の現状 (14-02-01-07)
韓国における原子力戦略 (14-02-01-09)
<参考文献>
(1)(社)海外電力調査会:海外諸国の電気事業 第2編 2008、韓国、p.667-669
(2)国際通貨基金(IMF):World Economic Outlook Databases (2013年10月版)、
http://www.imf.org/external/pubs/ft/weo/2013/02/weodata/weorept.aspx?sy=1997&ey=2012&scsm=1&ssd=1&sort=country&ds=.&br=1&c=926&s=LUR%2CLP&grp=0&a=&pr1.x=57&pr1.y=8
(3)エネルギー管理公社(Korea energy management corporation):Status of NRE Deployment、
http://www.kemco.or.kr/new_eng/pg02/pg02040500.asp
(4)国際エネルギー機関(IEA):Korea, Republic of Balances for 1990〜2011、
、〜=2011
(5)国際エネルギー機関(IEA):KOREA Total primary energy supply、
http://www.iea.org/stats/WebGraphs/KOREA5.pdf
(6)国務総理室:第1次国家エネルギー基本計画 2008-2030、2008年8月、
http://www.motie.go.kr/common/download.do?fid=bbs&bbs_cd_n=30&bbs_seq_n=573&file_seq_n=1
(7)HI Research Center:第2次国家エネルギー基本計画、2013年12月、
http://consensus.hankyung.com/filedown/file_down.php?up_file=../Files/%C7%CF%C0%CC20131211%BF%A1%B3%CA%C1%F6.pdf&down_file=%C7%CF%C0%CC20131211%BF%A1%B3%CA%C1%F6.pdf
(8)産業通商資源部(MOTIE):組織構成、
(9)韓国石油公社(KNOC):Operations、
https://www.knoc.co.kr/ENG/sub03/sub03_1_1_4.jspなど
(10)韓国石炭公社:Energy Info. Korea (2013)、2014年1月、
http://www.keei.re.kr/keei/download/EnergyInfo2013.pdf