<解説記事ダウンロード>PDFダウンロード

<概要>
 韓国では1961年に37万kWであった電気事業者の総発電設備容量が、1970年に251万kW、1980年に939万kWと増強され、急速に成長する経済を支えた。1981年以降も供給力を増強し続けているが、電力の安定供給や経済性への配慮から、電源構成は変ってきている。2012年の発電設備容量の構成(電気事業者)は、基幹電源である原子力25.3%、石炭(瀝青炭)28.6%、LNG24.7%のほか、石油9.2%、水力7.9%、再生可能エネルギー2.9%になっている。なお、今後の電源開発計画として、2013年2月に発表された「第6次電力需給基本計画」によると、電力消費量は年平均2.2%で増加し、2027年には6,553億kWhに、最大電力設備容量は年平均2.4%で増加し、1億1,089万kWに達すると見込まれ、原子力と再生可能エネルギーを中心とした増強計画が立てられている。
 また、韓国の電気事業は韓国電力公社(KEPCO)による一括管理を行ってきたが、アジア通貨危機以降、1999年1月に韓国政府は電気事業界の再編計画を発表した。KEPCOの発電、送配電及び小売業務の機能分離がなされ、電力市場への競争原理の導入が段階的に推進される見通しであったが、進捗ペースは当初計画よりやや遅れている。
<更新年月>
2014年02月   

<本文>
1.はじめに
 韓国の電気事業は、太平洋戦争、南北分断、朝鮮戦争など激動の時代を経て、多大な損害を受けた電力設備を早急に復興させる必要から、電力統合政策を進めた。1961年7月には韓国電力株式会社が発足し、積極的に電力設備の整備を進めた結果、1961年時点で37万kWであった発電設備も1980年には939万kWとなり、韓国の高度経済成長を支えた。同社は1982年に韓国電力公社(KEPCO:Korea Electric Power Corporation)として国有化され、政府の指導監督の下、長期的な電源開発や原子力促進等を一元的に実施してきた。
 1997年にアジア通貨危機が発生すると、韓国でもウォン急落や株式暴落に見舞われ、金融、企業(財閥)、公共部門、労働の4部門を対象に構造改革が進められた。電力部門については、電源開発から配電に至るまで、電気事業を総括的に行うKEPCOの分割・民営化、及び政府保有株の売却、電力小売市場への競争原理の導入が検討され、「KEPCO再編法」「改正電気事業法」が審議された。
 その結果、2001年4月にはKEPCOの発電部門は水力原子力発電会社(KHNP)1社と火力発電会社 5社(南東発電会社(KOSEP)、中部発電会社(KOMIPO)、西部発電会社(WP)、南部発電会社(KOSPO)、東西発電会社(EWP))に分割、併せて卸電力市場が創設されることになった。基本計画では火力発電子会社5 社は徐々に民営化される予定だったが、民営化の動きは事実上停滞した状態にある。KEPCOの配電部門についても、当初計画では2004年4月に6社に分割される予定であったが、6月には分割の中止が決定された。また、2001年4月、韓国電力取引所(KPX:Korea Power Exchange)及び独立規制機関・韓国電力委員会(KEC)も創設されたが、自由化は進展していない。
 現在、韓国の送電・配電部門はKEPCOが独占している。発電部門に関しては、KEPCOが持株会社である発電会社6社と、IPP、韓国水資源公社(KAWACOまたはK-Water)や熱供給事業者をはじめとする卸電気事業者、風力や太陽光発電所を所有する再生可能エネルギー事業者が、KPXを通じて電力取引やKEPCOとの売買契約に基づいた売電を行っている。政府は2010年8月、KEPCOグループの再統合を含む電力セクター改革の見直しを検討した結果、再統合は行わず、KEPCO発電子会社のまま市場型公社に移行させ、政府の管理下に置くことを決定している。
2.電力設備構成
 2012年12月末時点、韓国電力公社(KEPCO)は、原子力、石油、石炭、液化天然ガス、水力、風力、太陽光を含む175発電ユニット、総発電設備容量81.2GWを所有し、2012年会計年度には6発電子会社で韓国の国内発電量の88.8%、約4,485億kWhを発電したほか、フィリピン、中国、ヨルダン、サウジアラビア、メキシコ、アラブ首長国連邦など、世界中の13カ国の発電プロジェクトに関与している。KEPCOに対する韓国政府の持株比率は51%である。図1にKEPCOグループの構成を示す。KEPCOグループの発電設備構成は、水力原子力発電が37.9%、韓国南東発電が11.9%、韓国中部発電が11.6%、韓国西部発電が0.012%、韓国南部発電が13.5%、韓国東西発電が12.8%であり、全体の約4割を水力原子力発電が占める。燃料別では、全体の約3分の2を基幹電源である原子力と石炭火力が占めている(表1参照)。ただし、国内発電設備の12.2%(804万kW)はKEPCOグループ以外のIPPや卸電気事業者、及び再生可能エネルギー事業者が所有している。これら事業者の発電設備容量構成はコンバインドサイクル発電が約55%、汽力・ディーゼルと再生可能エネルギーが約20%ずつで、残りの7%は小水力発電である。
 表2に発電設備容量の推移を示すが、韓国の発電設備容量は1980年の939万kWから1990年2,100万kW、2000年4,845万kW、2010年7,608万kWと、この約30年間に8.1倍に増えた。2012年の発電設備容量の構成(電気事業者)は、基幹電源である原子力25.3%、石炭(瀝青炭)28.6%、LNG24.7%のほか、石油9.2%、水力7.9%、再生可能エネルギー2.9%になっている。2000年から2012年までの設備全体の年成長率は4.5%、成長率の内訳は水力6.2%、LNG4%、石油3.7%、石炭(瀝青炭)4.8%、原子力3.5%である。2012年の風力や太陽光など再生可能エネルギーの全設備容量に占める割合は3%と少ないものの、2004年に導入されて以降、急速に成長している。1980年には石油専焼火力の割合が73%を占めていたが、1980年以降の原子力発電所の建設、1990年代のLNGの開発、2000年代の石炭資源の活用など、火力の中でも、発電コストや熱効率の観点から、燃料転換が進められている。なお、LNGはコンバインドサイクル、またはガス火力、ガスタービンで使用されている。水力発電に関しても揚水発電や小水力発電の導入により、設備が増強されている。
3.電力需給状況
 表3に電源別発電電力量の推移を示すが、他社を含めた電気事業者の国内供給電力量は1980年の372億kWhから2012年には5,096億kWhに達した。1980〜1990年の年平均成長率は11.2%、1990〜2000年は9.5%、2000〜2010年は6.0%である。また、販売電力量は1981年の354億kWhから2012年には4,666億kWhへと、この約30年間で約13.2倍に達し、2000〜2010年の年平均成長率は6.1%である。発電電力量の増加は、図2に示すように、経済成長率を上回る増加率で上昇し、2010年の場合、GDP成長率6.2%に対し、電力需要増加率は10.1%であった。ただし、2006年に関しては、省エネ対策の進展により、GDP成長率5%に対し、電力需要増加率は4.9%で下回った。なお、送配電損失率は送配電設備の近代化に伴い、1995年の5.46%から、2010年3.99%、2012年3.57%へ低下する傾向にある。
 販売電力量を用途別に見ると、1981年に住宅用16.8%、サービス業11.0%、製造業65.8%であったが、2012年には住宅用13.6%、サービス業28.4%、製造業50.5%となり、サービス業の比率が高くなり、製造業の比率が低下している(表4参照)。
4.送配電設備
 韓国の基幹系統は765kVと345kVで構成されている(図3参照)。765kVは1998年から、電力需要地である京畿やソウルへ電力を供給するために建設された。345kVは全国の主要都市と変電所をループ状に結ぶとともに、主要な発電所を系統内に取り込んでいる。済州島(Jeju)と本土の海南(Haenam)間は直流送電(±180kV)で連系されている。基幹系統は154kVと66kVで補完しているが、昇圧を進めているため、66kVは減少する方向にある。なお、各地の送電系統や変電所はSCADAシステムで遠隔制御され、電力供給の安定を目指し、送配電設備の改良や、自動化を進めている。
5.電力需要予測及び長期電源開発計画
 今後の電源開発計画としては、知識経済部(MKE、現、産業通商資源部(MOTIE))が発表した「第6次電力需給基本計画」が2013年2月、電力政策審議会の審議を経て確定している。確定された需給計画によると、電力消費量は年平均2.2%で増加し、2027年には6,553億kWh、最大電力設備容量は年平均2.4%で増加し、1億1,089万kWに達すると見込まれている。
 これにより、需給不安を解消し、経済規模に見合った信頼性の高い予備率を確保するため、2027年基準で22%の設備予備率の目標を設定している。また、電力設備の28.8%が運転開始から30年近くを迎えるため、供給支障を考慮し、390万kWの不確実性に対応した設備を別途反映して合計2,957万kWの新規設備が必要であるとしている。新規原子力発電所(600万kW)の建設に関しては、2014年1月現在、「第2次エネルギー基本計画」確定後に再度検討し直すとしている。再生可能エネルギーについては、2027年の発電設備容量12%を目標に設定する一方、火力については石炭とLNGを中心に社会的・経済的コストが最小化されるような電源構成とした。第5次電力需給基本計画(2010〜2024年)をベースに作成された、KEPCOの現行発電設備増強計画を図4に示す。
 また、知識経済部は、電源確保のため、公共4社に6基・404万kW、民間2社に2基・190万kW、民間と公共の共同出資6社に10基・986万kWの新規発電所の建設が計画されていると発表している。2008年以来、設備予備率が10%を下回っているが、2014年以降は16%を上回り、需給不安が解消される見通しとしている。2027年の発電設備容量は構成比の大きい順に、石炭(28.7%)、原子力(22.7%)、再生(20.2%)、LNG(20.1%)となり、無煙炭と石油による発電設備は、段階的に廃止する方針である(表5参照)。
(前回更新:2005年2月)
<図/表>
表1 韓国電力公社(KEPCO)のグループの企業別・発電設備容量(2012年)
表1  韓国電力公社(KEPCO)のグループの企業別・発電設備容量(2012年)
表2 韓国の電源別発電設備容量の推移
表2  韓国の電源別発電設備容量の推移
表3 韓国の電源別発電電力量の推移
表3  韓国の電源別発電電力量の推移
表4 韓国の用途別販売電力量の推移
表4  韓国の用途別販売電力量の推移
表5 韓国の電源別発電設備容量の見通し
表5  韓国の電源別発電設備容量の見通し
図1 韓国電力公社(KEPCO)のグループ構成
図1  韓国電力公社(KEPCO)のグループ構成
図2 GDP成長率と電力需要増加率の推移
図2  GDP成長率と電力需要増加率の推移
図3 韓国の発電及び送電マップ
図3  韓国の発電及び送電マップ
図4 KEPCOグループの現在進行中の設備増強計画
図4  KEPCOグループの現在進行中の設備増強計画

<関連タイトル>
韓国のエネルギー事情とエネルギー政策 (14-02-01-01)
韓国の原子力開発体制と安全規制体制 (14-02-01-03)
韓国の原子力発電 (14-02-01-04)
韓国の核燃料サイクル (14-02-01-05)
韓国のPA動向 (14-02-01-06)
韓国におけるRI・放射線利用の現状 (14-02-01-07)
韓国における原子力戦略 (14-02-01-09)
韓国のエネルギー事情とエネルギー政策 (14-02-01-01)

<参考文献>
(1)海外電力調査会(編):海外諸国の電気事業 第1編 1998・2003・2008年、韓国
(2)韓国電力工事:第6次電力需給基本計画に関する長期送配電設備計画(2013‐2027)、2013年8月、
、p.58-91
(3)韓国電力公社(KEPCO):Annual Report 2013、
http://cyber.kepco.co.kr/kepco/EN/C/htmlView/ENCBHP003.do?menuCd=EN030204
(4)韓国電力公社(KEPCO):Kepco in breif (2002.12.31、2008.12.31、2013.6.30)、

(5)韓国電力公社(KEPCO):STATISTICS OF ELECTRIC POWER IN KOREA(2004)、p91-92、STATISTICS OF ELECTRIC POWER IN KOREA(2011)、p.115-116、

(6)韓国電力公社(KEPCO):Investor Presentation(2013年5月)、

JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ