<大項目> 原子力安全規制
<中項目> 原子力施設の安全規制
<小項目> 発電用原子炉の安全規制
<タイトル>
発電用原子炉の安全規制の概要(原子力規制委員会発足まで) (11-02-01-01)

<概要>
 平成13年(2001年)1月の省庁再編に伴い、実用発電用原子炉及び核燃料施設のうち製錬、加工、再処理、廃棄施設ならびに研究開発段階炉のうち発電の用に供するものは、経済産業省の外局として設置された「原子力安全・保安院」が担当することとなった。実用発電用原子炉(原子力発電所)の設置、運転、廃止措置については、経済産業大臣が原子炉等規制法に基づき一貫して安全規制を行っている。また、電気事業法に基づき、工事計画認可、使用前検査、燃料体検査、溶接検査、定期検査等の安全規制を行っている。さらに、発電の用に供する原子炉であって研究開発段階にあるもの(研究開発段階発電用原子炉)についても、原子炉等規制法及び電気事業法による規制を行っている。

(注)2011年3月の福島第一原子力発電所事故を契機に原子力安全規制の体制が抜本的に改革され、新たな規制行政組織として原子力規制委員会が2012年9月に発足した。原子力規制委員会は原子炉等規制法の改正等を踏まえて新規制基準を制定し、2013年7月以降、既存の発電炉の適合性審査を進めている。(ATOMICAデータ「商業用原子力発電炉に係る新規制基準(平成25年7月決定) (11-02-01-03)」を参照。)本データは原子力規制委員会発足以前の時点における発電用原子炉の安全規制の概要を過去情報として解説するものであり、原子力規制委員会発足以降の体制や法令・規則・手続き等とは異なっている点に留意が必要である。
<更新年月>
2011年08月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 平成13年(2001年)1月6日の中央省庁再編成(省庁再編)に伴い、原子力安全規制行政は、通商産業省(現経済産業省)資源エネルギー庁が安全規制を担当していた実用発電用原子炉と科学技術庁(現文部科学省)が担当していた核燃料施設のうち製錬、加工、再処理、廃棄施設及び発電の用に供する原子炉であって研究開発段階にあるもの(研究開発段階発電用原子炉)については、経済産業省の外局として設置された原子力安全・保安院が担当することとなった。また、試験研究炉、研究開発段階炉のうち発電の用に供するもの以外のもの、使用施設に係るものは文部科学省、実用舶用原子炉については国土交通省が担当することとなった。省庁再編後の原子力規制体制を図1に示す。(注:原子力安全・保安院は原子力安全委員会とともに2012年9月18日に廃止され、原子力規制委員会の事務局として2012年9月19日に発足した原子力規制庁がその役割を継承している。)実用発電用原子炉(商業用の原子力発電所、以下「原子力発電所」という。)の設置、運転・保守に当たっては、原子炉を設置する者の自主保安管理体制によって安全を確保することが前提であるが、公共の安全を確保するなどの観点から、経済産業大臣は、「核原料物質核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」(以下「原子炉等規制法」という。)に基づき原子炉の設置許可、設計及び工事の方法の認可、使用前検査、溶接の方法及び検査、保安規定の認可、施設定期検査、運転計画、保安規定の遵守状況の検査(保安検査)ならびに運転管理監督まで一貫した安全規制を実施している。
 また、電気事業用電気工作物(以下「事業用電気工作物」という。)に対して、電気事業法の規定に基づき、工事計画認可、使用前検査、溶接検査、保安規定の届出、定期検査等の安全規制を実施している。
 以下に、原子力発電所の建設地点選定段階から、建設、運転、廃止までの規制、ならびに研究開発段階発電用原子炉の規制について述べる。原子力発電所の立地から廃止までの法律上の手続きを図2に示す。
1.地点選定の段階
 原子力発電所の建設地点の選定に当たっては、環境影響評価法及び電気事業法に基づき、環境影響評価を行う必要がある。
 環境影響評価の手続きは、(1)環境影響評価の項目ならびに調査、予測及び評価の手法などを記載した環境影響評価方法書(方法書)の作成及び審査、(2)環境影響評価の結果を記載した環境影響評価準備書(準備書)の作成及び審査、(3)準備書に対する住民や関係都道府県知事の意見、経済産業大臣の勧告を踏まえ、検討を加えた環境影響評価書(評価書)の作成及び審査、の3段階で行われる。
 経済産業省は、各段階で住民や関係都道府県知事の意見などを踏まえて環境審査を実施するとともに、必要に応じて勧告(評価書の場合は確定通知または変更命令)を行い、環境の保全に万全を図ることとしている。
 なお、規制とは別に、経済産業省は、地元住民の理解と協力を得るため、公開ヒアリング(第1次公開ヒアリング)を主催し、ここで、原子力発電所の設置に係る諸問題について広く地元住民から意見を聴くとともに、設置者による説明が行われている。
 第1次公開ヒアリングの終了後、経済産業大臣は国の関係行政機関の長と協議するとともに、総合資源エネルギー調査会の意見を聴いて、電源開発基本計画を策定する。
2.建設準備の段階
(1)原子炉の設置許可
 電源開発基本計画に組み入れられた原子力発電所については、その後、設置者から原子炉の設置許可申請が経済産業大臣に行われる。これは、原子炉等規制法第23条で、原子力発電所及び研究開発段階発電用原子炉を設置しようとする者は、その設置について経済産業大臣の許可を得る必要がある、との規定によるものである。
 設置者から原子炉の設置許可申請が提出された後、経済産業省は当該原子炉の基本設計が災害の防止上支障がないか否かについて審査を行う。なお、その際に、技術上の諸問題について、必要に応じ総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会に所属する専門家の意見を聴く。その後、経済産業大臣は、その審査の結果について原子力委員会及び原子力安全委員会の意見を聴き、文部科学大臣の同意を得た上で、設置を許可する。
 原子炉の設置許可の基準は次のとおりである。
 1)原子炉が平和の目的以外に利用されるおそれがないこと。
 2)その許可をすることによって原子力の開発及び利用の計画的な遂行に支障を及ぼすおそれがないこと。
 3)原子炉を設置するために必要な技術的能力及び経理的基礎があり、かつ、原子炉の運転を的確に遂行するに足りる技術的能力があること。
 4)原子炉の位置、構造及び設備が核燃料物質(使用済燃料を含む)、核燃料物質によって汚染された物または原子炉による災害の防止上支障がないものであること。
(2)技術基準
 事業用電気工作物を設置する者(以下「事業者」という。)は、電気工作物を経済産業省令で定める技術基準に適合するように維持しなければならないと規定されている(電気事業法第39条第1項)。この規定に基づく原子力関係の技術基準には、次のものがある。
 ・発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令
 ・発電用核燃料物質に関する技術基準を定める省令
 ・電気工作物の溶接に関する技術基準を定める省令
 ・電気設備に関する技術基準を定める省令
 また、この技術基準は、電気事業法第40条の規定による命令発令の基準となるほか、第47条の工事計画の認可、第48条の工事計画の届出及び第49条の使用前検査の合格基準、第54条の定期検査の合格基準であり、きわめて重要なものである。
 研究開発段階発電用原子炉については、上記の電気事業法による規制のほか、原子炉等規制法により、工事、維持、運用に関し、保安の確保上必要な技術的事項を技術基準として定め、規制を行っている。具体的な基準には、次のものがある。
・研究開発段階にある発電の用に供する原子炉の設置運転等に関する規則(第9条:性能の技術上の基準)
・研究開発段階にある発電の用に供する原子炉の設計及び工事の方法の技術基準に関する規則
 ・研究開発段階にある発電の用に供する原子炉の溶接の技術基準に関する規則
3.建設の段階
(1)工事計画の認可または届出(設計及び工事の方法の認可)
 事業用電気工作物の設置または変更の工事のうち、公共の安全の確保上特に重要なものとして経済産業省令で定めるものは、その工事の計画を認可の対象としている(電気事業法第47条)。
 認可の基準は電気事業法第47条第3項に規定され、その工事の計画が次の各号に適合することとなっている。主なものは次のとおり。
 1)その事業用電気工作物が、電気事業法第39条第1項の経済産業省令で定める技術基準に適合しないものでないこと。
 2)事業用電気工作物が一般電気事業の用に供される場合にあっては、その事業用電気工作物が電気の円滑な供給を確保するため技術上適切なものであること。
 また、認可の対象ではない事業用電気工作物の設置または変更の工事であって、経済産業省令で定めるものは、その工事の計画を届け出ることとなっている(電気事業法第48条)。
 研究開発段階発電用原子炉については、さらに原子炉等規制法第27条の規定による設計及び工事の認可を受けなければならないことになっている。認可の基準は、原子炉等規制法第27条第3項の規定に適合することとなっている。
(2)原子力発電所の検査
 検査は、工事計画等の許認可届出制度及び自主保安管理体制と相まって原子力発電所の保安を確保するための重要事項の一つであり、電気事業法においては使用前検査、使用前安全管理検査、燃料体検査、溶接安全管理検査、定期検査、定期安全管理検査、原子炉等規制法においては保安規定の遵守状況の検査(保安検査)及び立入検査がある。
 一方、研究開発段階発電用原子炉(施設)は原子炉等規制法において電気事業法と同様に使用前検査、溶接検査及び施設定期検査がある。
 なお、両法律の適用を受ける当該施設では、検査の内容について両法律間に実質的な差異がほとんど認められないことから、最終的な機能検査を除いた大半の検査項目について、電気事業法では原子炉等規制法上の検査結果を部分的に活用している。
 検査の概要は次のとおり。
 1)使用前検査(電気事業法第49条)、使用前安全管理検査(電気事業法第50条の二)
 使用前検査は、工事計画の認可または届出という計画段階での規制に対応して実際の工事が計画どおりに行われているか否か等を確認するもので、公共の安全の確保上特に重要なものとして経済産業省令で定めるもの(以下「特定事業用電気工作物」という。)について経済産業大臣の検査を受けることとしている。電気事業法第49条に規定する使用前検査の概要を表1に示す。
 また、届出をして設置または変更の工事をする事業用電気工作物(特定事業用電気工作物を除く)であって経済産業省令で定めるものについては、事業者は使用の開始前に自主検査(使用前自主検査)を行い、その結果を記録し、これを保存しなければならないとしている。事業者は、使用前自主検査の実施に係る体制(検査の実施に係る組織、検査の方法、工程管理その他経済産業省令で定める事項)について、審査(使用前安全管理審査)を受けることとしている。
 2)燃料体検査(電気事業法第51条)
 原子炉に燃料として使用する核燃料について、加工の工程ごとに経済産業大臣の検査を受けることが義務づけられており、検査の範囲は、核燃料、被覆管のみならずその他の燃料体構成部品も含んでいる。
 3)溶接安全管理検査(電気事業法第52条)
 経済産業省令で定める機械若しくは器具である電気工作物(内部に高濃度の放射性物質を内蔵している格納容器等あるいは高温高圧の蒸気等を内蔵している耐圧容器類)の溶接部は、その使用の開始前に事業者検査(以下「溶接事業者検査」という。)を行い、その結果を記録し、これを保存しなければならない。
 また、事業者は、溶接事業者検査の実施に係る体制(検査の実施に係る組織、検査の方法、工程管理その他経済産業省令で定める事項)について、審査(溶接安全管理審査)を受けることとしている。
4.運転の段階
(1)定期検査(電気事業法第54条)、定期安全管理検査(電気事業法第55条)
 特定重要電気工作物(発電用の電気工作物のうち、公共の安全の確保上特に重要なものとして経済産業省令で定めるもの、発電用原子炉及びその附属設備であって経済産業省令で定めるもの。)について、事業者は経済産業省令で定める時期ごとに経済産業大臣が行う定期検査を受けることとしている。電気事業法第54条に規定する定期検査の概要を表2に示す。
 また、経済産業省令が定める特定電気工作物については、事業者は定期に事業者検査を行い、その結果を記録し保存しなければならない。事業者は定期事業者検査の実施に係る体制(検査の実施に係る組織、検査の方法、工程管理その他経済産業省令で定める事項)について、経済産業省令で定める時期に審査(定期安全管理審査)を受けることとしている。
(2)保安規定の遵守状況の検査(原子炉等規制法第37条第5項、実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則第16条の二)
 原子炉等規制法第37条第5項の規定に基づき、事業者に対し、保安規定の遵守状況について経済産業大臣が定期的に行う検査(以下「保安検査」という。)を受けることとしている。
 保安検査の目的等は次のとおり。
 1)保安検査の目的
 事業者が、運転管理等における遵守状況を規定した保安規定について、遵守状況の検査を定期的に行うことにより、原子力発電所の運用を適正に維持する。
 2)保安検査の時期
 保安検査は、原子力安全・保安院及び各原子力保安検査官事務所に配置している原子力保安検査官が、経済産業省令の規定により原子力発電所ごとに定期的に年4回行うことになっている。
また、保安検査は内容により次に掲げる定期検査の操作時においても行なわれる。
  イ.原子炉の起動又は停止に係る操作
  ロ.燃料の取替えにかかる操作
  ハ.沸騰水型軽水炉における残留熱除去冷却海水系統の切替えに係る操作
  ニ.加圧水型軽水炉における原子炉容器内の水位の低下に係る操作及び原子炉容器の水位を低下させた状態で行う残留熱の除去に係る操作
 3)保安検査の方法
 保安検査は、経済産業省令の規定により以下の方法を適宜組み合わせて実施する。
 ・事務所または工場もしくは事業所への立入り
 ・帳簿、書類、設備、機器その他必要な物件の検査
 ・従事者その他関係者に対する質問
 ・核原料物質、核燃料物質、核燃料物質によって汚染された物その他必要な資料の提出(試験のために必要な最小限度の量に限る。)させること
5.廃止措置の段階
 事業者は、原子炉を廃止しようとするときは、原子炉等規制法第43条三の二の規定に基づき、あらかじめ廃止措置に関する計画(廃止措置計画)を定め、経済産業大臣の認可を受けることとしている。経済産業大臣は、廃止措置計画が省令で定める基準に適合しているかどうかを審査し、認可する。
 廃止措置計画には、施設解体の方法、核燃料物質の譲渡しの方法、核燃料物質による汚染の除去の方法、核燃料物質によって汚染された物の廃棄の方法、工事工程表等を記載することとしている。経済産業大臣は、必要であると認めるときには、事業者に対し、原子炉の解体の方法の指定、核燃料物質による汚染の除去その他核燃料物質、核燃料物質によって汚染された物または原子炉による災害を防止するために必要な措置を命ずることができる。
 なお、事業者は、廃止措置中においても運転中と同様、原子炉等規制法による保安規定の変更認可、施設定期検査、保安規定の遵守状況検査等の規制を受けることとしている。また、設備を増設する場合には、同様に、設計及び工事方法の認可、使用前検査等の規制を受けることとなっている。
(前回更新:2003年3月)
<図/表>
表1 原子力発電所における使用前検査の概要
表2 原子力発電所における定期検査の概要
図1 中央省庁再編成後の原子力規制体制
図2 原子力発電所の地点選定から廃止措置までの手続き

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
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<参考文献>
(1)原子力安全委員会(編):原子力安全白書平成12年版、財務省印刷局(2001.4.27)p.117-123
(2)原子力規制関係法令研究会(編):「原子力規制関係法令集<2010年>」核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律、電気事業法、電気事業法施行規則、発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令、発電用核燃料物質に関する技術基準を定める省令、研究開発段階にある発電の用に供する原子炉の設置、運転等に関する規則、研究開発段階にある発電の用に供する原子炉の溶接の技術基準に関する規則、研究開発段階にある発電の用に供する原子炉の設計及び工事の方法の技術基準に関する規則、実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則、経済産業省設置法、(株)大成出版社(2010年9月)
(3)原子力安全委員会ホームページ:
(4)経済産業省原子力安全保安院ホームページ:
(5)文部科学省ホームページ:http://www.mext.go.jp/
(6)電気事業連合会:「原子力・エネルギー図面集」2011年版、第5章「原子力発電の安全性」
(7)原子力安全基盤機構:日本における原子力安全規制の概要

(8)原子力安全基盤機構:平成22年版(平成21年度実績)原子力施設運転管理年報(平成22年11月)
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