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<概要>
 経済産業省は2001年(平成13年)1月の中央省庁再編成に際して旧通商産業省を母体として誕生し、外局の資源エネルギー庁が原子力の利用推進と安全規制の二役を担ってきた。その後、東京電力福島第一原子力発電所の事故を契機に原子力安全規制の体制が大きく改革され、2012年(平成24年)9月に環境省の外局として原子力規制委員会とその事務局として原子力規制庁が設置された。これにより、原子力安全規制に係る行政事務は経済産業省から原子力規制委員会に移管された。原子力規制委員会発足後、原子力に関する経済産業省の所掌は原子力政策と原子力関連の技術開発となり、これを資源エネルギー庁の二つの課が分担している。原子力政策課は、原子力政策と原子力技術開発、日本原子力研究開発機構の原子力技術開発等を担当し、原子力国際協力推進室が置かれている。原子力立地・核燃料サイクル産業課は、核燃料の確保、放射性廃棄物の処理・処分、原子力発電所の建設等を担当し、放射性廃棄物等対策室、核燃料サイクル産業立地企画官、原子力発電立地企画官及び原子力広報官が置かれている。
<更新年月>
2013年01月   

<本文>
1.経緯と任務
1.1 経緯
 我が国では、1973年の第一次石油危機直後に通商産業省の外局として設置された資源エネルギー庁が、エネルギー安定供給の推進とともに原子力安全と産業保安の確保に関する事務を所掌することとなり、原子力の利用と安全規制の二役を担ってきた。通商産業省は2001年(平成13年)1月の中央省庁再編成に際して経済産業省と改称し、また、原子力安全規制を強化するために「特別の機関」として原子力安全・保安院を設置し、原子力安全と産業保安の確保を担当することとなった。
 その後、2011年(平成23年)3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故を契機に、それまでの原子力安全規制の体制が大きく改革された。2012年(平成24年)9月に原子力規制委員会設置法、並びに関係省庁の改正設置法が施行され、原子力安全・保安院と内閣府の原子力安全委員会は廃止され、環境省の外局として原子力規制委員会とその事務局として原子力規制庁が設置された。これにより、原子力安全規制に係る行政事務は原子力規制委員会が一元的に所掌することとなり、原子力利用の推進と規制の行政を担う省が完全に分離した組織体制が整備されるに至った。また、原子力安全委員会の廃止とともにいわゆる「ダブルチェック体制」も廃止され、原子力安全規制に必要な指針・基準等は原子力規制委員会が自ら策定することとなった。
 なお、資源エネルギー庁が担っていた任務のうち産業保安の確保については、地方支分部局として経済産業省本省に新設された産業保安監督部に移管された。
1.2 任務と所掌事務
 経済産業省の任務はその設置法第三条において、民間の経済活力の向上及び対外経済関係の円滑な発展を中心とする経済及び産業の発展並びに鉱物資源及びエネルギーの安定的かつ効率的な供給の確保を図ることと規定されている。
 経済産業省の所掌事務は、設置法第四条1に1〜60項挙げられており、そのうち原子力に関するものは原子力政策と原子力関連の技術開発に関する54項「エネルギーに関する原子力政策」と55項「エネルギーとしての利用に関する原子力の技術開発」である。経済産業省設置法の第17条により、上記54項と55項は、資源エネルギー庁が担当する。経済産業省の組織は図1に示すとおりである。

2.経済産業省と資源エネルギー庁の所掌事務
 資源エネルギー庁は、経済産業省設置法の第四条1に定める事務のうち47項〜55項を中心に所掌する。原子力利用に関連する事務を所掌するのは、資源エネルギー庁にある3部(省エネルギー・新エネルギー部、資源・燃料部、電力・ガス事業部)のうち、電力・ガス事業部である。電力・ガス事業部の所掌事務を表1に示す。原子力利用に関しては、原子力政策、原子力技術や核燃料サイクル技術開発及び核燃料物質の確保が含まれている。電力・ガス事業部の原子力利用に関連する原子力政策課と原子力立地・核燃料サイクル産業課の所掌を表2に示す。
2.1 原子力政策課
 原子力政策課は、表2の(1)に示すように、エネルギーに関する原子力政策、原子力技術開発に加え、(独)日本原子力研究開発機構の業務のうち核燃料サイクルの技術的確立に必要な業務を所掌している。また、原子力政策課には原子力国際協力推進室が置かれ、表3の(1)に示すように、原子力エネルギー利用に関するIEA等との国際協力に関する事務を担当している。
2.2 原子力立地・核燃料サイクル産業課
 原子力立地・核燃料サイクル課は、表2の(2)に示すように、核燃料物質等の安定的な確保、核燃料物質や放射性廃棄物に係る技術開発、原子力に係る廃棄の事業の発達、改善及び調整、原子力発電所の建設等を担当している。この課には、放射性廃棄物等対策室の他、核燃料サイクル産業立地企画官、原子力発電立地企画官及び原子力広報官が置かれ、それぞれ表3の(2)に示す事項を担当している。以下にその概要をまとめる。
(1)放射性廃棄物等対策室
 所掌事項は、原子力発電における使用済燃料再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律の施行に関すること、核燃料サイクルから生じる放射性廃棄物の処理・処分技術の開発に関すること、及び原子力に係る廃棄の事業の発達、改善及び調整に関することである。
 積立金の積立について、原子力発電の事業者は、その運転から生ずる使用済燃料の再処理等のため、毎年度、経済産業省令で定められた額の資金を使用済燃料再処理等積立金として資金管理法人に積立てている。
 核燃料サイクルから発生した放射性廃棄物は、その性状や種類等に応じて処理・処分され管理される。これを廃棄の事業といい、廃棄物管理事業と廃棄物埋設事業に分けられる。それぞれ原子炉等規制法に基づいて許可された事業者が行う。
(2)核燃料サイクル産業立地企画官
 核原料物質及び核燃料物質に係る施設の設置の円滑化に関する企画及び立案、その他、核原料物質及び核燃料物質に係る施設の設置又は改良の促進に関する重要な施策に参画する。
(3)原子力発電立地企画官
 原子力発電施設の設置の円滑化に関する企画及び立案を行う。その他、原子力に係る電源の開発の推進に関する重要な施策に参画する。
(4)原子力広報官と広報
 原子力広報官は、エネルギーに関する原子力政策に係る広報に関する事務を処理する。

3.東京電力福島第一原子力発電所事故への対応
 経済産業省は、関連省庁と協力して被災地の復興並びに被災住民の生活の安全・安定等を支援するとともに、事故収束に向けた道筋の提示、事故施設の廃止措置に向けた検討を進めている。以下に概況を簡単にまとめる。
3.1 被災住民の生活の安全・安定等に関する支援
 住民の生活の安全・安定に向けて、諸機関、事業者、自治体等が公表している被ばく線量、環境、食品等のモニタリングデータ、放射線の健康影響の情報等について周知を図っている。また、中小企業対策として、被災した中小企業向けに資金繰りの支援策等の情報を提供するとともに、輸出事業対策として、諸外国から放射線検査や放射線量に関する証明書の要求等の規制情報を提供している。
3.2 事故施設の廃止措置に関する検討
 関係府省が東京電力と連携して「政府・東京電力中長期対策会議研究開発推進本部」及び「政府・東京電力中長期対策会議運営会議」において協議を行い、福島第一原子力発電所1〜4号機の廃止措置に向けての中長期ロードマップの策定とその進捗状況のチェックを行うとともに、施設の全体状況、燃料プール、燃料デブリ、放射性廃棄物の処理・処分、滞留水の処理、水の循環処理、環境放射線量の低減対策等について検討している。
(前回更新:2007年6月)
<図/表>
表1 資源エネルギー庁の電力・ガス事業部の所掌事務
表1  資源エネルギー庁の電力・ガス事業部の所掌事務
表2 原子力政策課と原子力立地・核燃料サイクル産業課の所掌事務
表2  原子力政策課と原子力立地・核燃料サイクル産業課の所掌事務
表3 原子力国際協力推進室と放射性廃棄物等対策室など
表3  原子力国際協力推進室と放射性廃棄物等対策室など
図1 経済産業省組織図
図1  経済産業省組織図

<関連タイトル>
日本における原子力行政の新体制(2001年) (10-04-01-01)
原子力規制委員会 (10-04-03-02)
文部科学省と原子力行政 (10-04-05-01)
国土交通省と原子力行政 (10-04-07-01)

<参考文献>
(1)経済産業省設置法、電子政府の総合窓口、

(2)経済産業省組織令、電子政府の総合窓口、

(3)経済産業省組織規則、電子政府の総合窓口、

(4)経産省ホームページ、東京電力福島原子力発電所の収束及び今後の廃止措置に向けて、http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/kinkyu.html
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