<本文>
原子炉本体は、
図1 に示すように、生体遮蔽壁を有する鉄筋コンクリート製構造物上に設置され、原子炉一次冷却系の再循環系機器の入口ヘッダーおよび
蒸気ドラムにそれぞれ一次冷却水入口管、一次冷却水出口管で接続されている。
図2 に炉心構成図を示す。
原子炉本体は、減速材である重水を収納する
カランドリアタンク、熱と放射線遮蔽を目的としてカランドリアタンクの周囲に設置される鉄水遮蔽体、
カランドリア管に挿入され、内部に
燃料集合体を収納し一次冷却水を流す
圧力管集合体、
制御棒案内管、制御棒駆動装置からなる。各圧力管集合体には一次冷却水の入口及び出口ノズルが付いており、下端部には遠隔自動で着脱できる
シールプラグが取り付けられている。
図3 に炉心タンク内に配置された圧力管集合体、制御棒案内管などの相互位置を示す。
以下それぞれについて説明するが、制御棒反応度制御系の概要については、別タイトル「新型転換炉の制御特性」で簡単に説明しているので参照されたい。
1.圧力管集合体
軽水炉の原子炉容器に相当する新型転換炉の圧力管集合体は、炉心に挿入される部分の圧力管と、圧力管の上下部の上部延長管および下部延長管からなる。上部延長管内には上部遮蔽プラグが組み入れられ、圧力管には燃料集合体が収納されている。また、下部延長管内には下部遮蔽プラグとシールプラグが燃料交換装置により着脱できる。
(1)圧力管
内径117.8mm,肉圧4.3mmの圧力管材料には、高温・高圧に耐え
中性子吸収の少ない高張力ジルコニウム合金である、継目無し HT Zr-2.5wt%Nb 合金を選定した。脆性特性、クリープ特性等について十分な試験を行って特性の把握につとめ、また圧力管の
照射試験や耐久試験も進め、「ふげん」における仕様条件下での健全性を確認した。
圧力管の供用期間中の健全性を確認するために、圧力管検査装置を開発し、定期検査時に
超音波探傷検査、内径測定、内表面観察検査を行い、圧力管の健全性を確認する。
(2)
異種金属溶接
圧力管の上部および下部延長管材料には、ロールド・ジョイント部とシールプラグ部に、高硬度、高強度で低温靱性を改善した13Cr系ステンレス鋼SUS50Mod.と、一次系配管と溶接されるSUS304の2種類のステンレスがあり、この2種類の間の溶接は、異種金属の溶接になるので、試作により溶接施工法を確立し、溶接部およびその熱影響部とも照射・非照射試験を含めた各種特性試験を行い、その健全性を確認し実施した。
(3)ロールド・ジョイント法
圧力管に用いるジルコニウム合金と上下部延長管のステンレス鋼とは溶接が不可能なので、両者の結合には機械的接合法(ロールド・ジョイント)を採用した。
このロールドジョイント法は、ジルコニウム合金(Zry-2)製のカランドリア管または炉内制御棒案内管とステンレス製のカランドリアタンク管板との接合にも用いられている(
図4 参照)。
2.シールプラグ
シールプラグは圧力管の下端部に取り付けられる。原子炉
一次冷却材の
圧力バウンダリを構成するので、原子炉運転中に
冷却材の漏洩がなく、また燃料交換装置によって確実に着脱出来なければならない重要な部品である。
図5 にその構造を示す。圧力管下部延長管下端部のシールを行うシール部と、シールプラグを圧力管内に固定するボールラッチ部からなる。シール部の一次シールはシールエレメント、ドームおよびドームスプリングから構成され、シールエレメントはシール性、耐熱性、耐放射線性からチタン合金(Ti-6Al-4V)製で、シールエレメント上方のドームによりスプリング力により圧力管内に押し広げられ、さらに運転中の一次冷却材の圧力により圧力管に密着する。二次シールとしてEPDMゴム製のUパッキンを用いている。
開発にはチタン合金、EPDMゴム等の材料特性試験、ボールラッチとドーム耐荷重試験、着脱試験、シール試験、高温着脱試験、長期耐久試験等を実施し、現在「ふげん」で良好な成績で使用されている。
3.カランドリア
カランドリアは重水を収納するカランドリアタンクと、炉心部圧力管の外側に設置されるカランドリア管との総称である。
(1)カランドリアタンク
カランドリアタンクは
図3に示すように、原子炉運転中に重水を内蔵している炉心タンク、原子炉の停止時等に炉心タンク内の重水をダンプさせるためのダンプスペース、運転時炉心タンク内に供給される重水をオーバーフローさせるためのオーバーフロースペースよりなる一体溶接構造のステンレス鋼製タンクである。炉心タンク内部には、カランドリア管、炉内制御棒案内管等が取り付けられている。
重水は、その大部分が制御棒の冷却を兼ねて制御棒案内管より炉心タンクに供給され、炉心タンク内を循環上昇してオーバーフロースペースへ流出し、重水冷却系に循環する。カランドリアタンクは全体を鉄水遮蔽体で囲まれて、その外壁は鉄水遮蔽体内を流れる軽水で常に冷却されている。
運転中に於ける炉心タンク内の重水液面は、
図3および
図6 に示すようにダンプスペース内とオーバーフロースペース内のヘリウムカバーガスの差圧を差圧調整弁により調整することにより、制御される。重水ダンプには、この差圧を(連通弁を急速に開くことにより)無くして、炉心タンク内の重水をダンプスペース内に移動させ、炉心タンク内の重水液面を急速に低下させ、原子炉を停止する重要な機能を有する。
(2)カランドリア管
全長約4,900mm,内径156.4mm,肉圧1.9mmのカランドリア管の材料には、中性子吸収の少ないジルコニウム合金のジルカロイ2(Zry-2)を用いている。カランドリア管は、重水による外圧を受けまたカランドリアタンクおよび鉄水遮蔽体と連成構造であることから、外圧座屈試験等を行ってその健全性を確認して設計されている。
4.鉄水遮蔽体
鉄水遮蔽体は、カランドリアタンクの全体を包む様に設置され、炉心からの放射線を遮蔽する。カランドリアタンクと一体構造を構成し、圧力管集合体等と共に原子炉本体の一部となると共に、その支持構造体としての機能を有する。
鉄水遮蔽体は上部、側部および下部鉄水遮蔽体よりなり、それぞれは
γ線と中性子を効果的に遮蔽するために、鉄と水の多重層構造体で出来ており、その発熱は遮蔽冷却系により冷却される。
<図/表>
<関連タイトル>
新型転換炉と軽水炉の相違 (03-02-02-03)
新型転換炉のプラント構成 (03-02-02-04)
重水減速材 (03-02-02-06)
新型転換炉の冷却システム (03-02-02-07)
新型転換炉の燃料交換システム (03-02-02-09)
新型転換炉の制御特性 (03-02-03-01)
<参考文献>
(1)動力炉技報:No.6 1972.12. 圧力管ロールドジョイントの開発
(2)動燃技報:No.69 1989. 3. 「ふげん」特集
(3)「ふげん」の開発実績と「実証炉」の設計:動力炉・核燃料開発事業団 1979.11.
(4)日立評論 VOL.59 No.4(1977-4)
(5)動燃十年史 昭和53年12月25日 動力炉・核燃料開発事業団
(6)動燃二十年史 1988.10. 2. 動力炉・核燃料開発事業団
(7)動力炉・核燃料開発事業団:新型転換炉原型炉「ふげん」技術成果の概要、1991年8月