<解説記事ダウンロード>PDFダウンロード

<概要>
 新型転換炉「ふげん」の燃料取扱設備は、原子炉運転中に原子炉下方から燃料交換可能なように設計されているが、現在は約半年に1回の計画停止時と年1回の定期検査時に原子炉停止状態で燃料交換を行っている。平成6年7月末までに装荷したMOX燃料は 579体に達した。燃料交換装置は運転開始以来平成7年3月末までで 2,260回以上の燃料装荷および使用済燃料の取出し操作を行っている。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 新型転換炉「ふげん」は昭和54年3月に本格運転を開始以来、平成6年3月まで順調に運転され、総発電量約 141億kWhに達した。運転開始以来平成7年3月末まで燃料取扱設備で取り扱った新燃料、使用済燃料を合わせて約 2,260体以上になる。
 「ふげん」の燃料取扱装置は、原子炉運転中に原子炉下方から燃料交換可能なように設計されているが、現時点では、ペレット−被覆管相互作用(PCI)による燃料健全性の観点から燃料交換は原子炉停止時に行っている。現在運転されている原子炉で運転中に燃料交換をしている原子炉には、炭酸ガス冷却型炉(GCR,AGR)と重水減速炉(CANDU炉)がある。燃料交換装置の構造は、燃料交換を原子炉の上方から行うか、下方から行うかで大きく異なってくる。「ふげん」では次の理由により下方から燃料交換する方式を採用した。
 (1) 上方交換の場合、燃料交換機圧力容器内機器が炉心からの高温、高圧の二相流に晒されるのに対し、下方交換では高温の冷却水の流入を防止でき装置の使用条件が緩和される。また、シールプラグは蒸気の代わりに高温水をシールできる構造でよく、燃料交換装置による着脱が容易な構造にできる。
 (2) 上方交換の場合、炉心上部に配置される制御棒駆動装置、炉内中性子束検出器等と燃料交換装置が干渉する。一方下方交換では炉心据付位置が高くなるが、制御棒駆動装置等との干渉がなく燃料交換に必要なスペースが取れ、配置上のまとまりが良い。
 燃料取扱装置には、燃料交換装置のほか燃料出入機、トランスファーシュート、燃料移送機、上部・下部トランスファー容器スイング装置等多くの装置が必要とされ、これらの機器の設計開発、試作、試験等を行った。 図1 に燃料取扱装置の機器配置図を示した。
1.燃料交換の手順
  原子炉の圧力管集合体中には、約4.4mの長尺燃料集合体とこれを支え、かつ炉心からの放射線を遮蔽する遮蔽プラグがコレット継手で結合され一体となって装荷されている。また圧力管集合体下端部には、原子炉冷却水をシールするためのシールプラグが装着されている。燃料交換時には、燃料集合体の他に遮蔽プラグおよびシールプラグも交換される。
燃料交換の手順は、 図2 の燃料交換フローシートにも示したが、以下に説明する。
(1) 燃料交換をする場合、新燃料は新燃料貯蔵ラックから取出され、新燃料運搬車、新燃料受取装置を経て、燃料受渡しプール内に移送される。この新燃料は、燃料移送機で下部スイング装置に移され、トランスファーシュートを通して格納容器内の燃料交換プール内貯蔵ラックに移送される。
(2) 新燃料は、燃料出入機によりトランスファーポートを通して燃料交換装置に収容される。この際、新燃料と遮蔽プラグをトランスファーポートの下部に設置されているコレット切離し装置で結合してから燃料交換機マガジン内に収容する。
(3) 新燃料−遮蔽プラグと新シールプラグを収容した燃料交換装置は、原子炉下部に移動し、あらかじめ指定された圧力管集合体に結合する。燃料交換装置のグラブで旧シールプラグと使用済燃料−遮蔽プラグを引抜いた後、新燃料−遮蔽プラグおよび新シールプラグを装着する。
(4) 燃料交換が終了した燃料交換装置は、トランスファーポート位置まで戻り、使用済燃料、旧遮蔽プラグおよび旧シールプラグを燃料交換プールに排出する。使用済燃料等は、新燃料の場合と逆の手順でトランスファーシュートを通して受渡しプールに移送され、燃料移送機で使用済燃料貯蔵プール内の貯蔵ラックに移され貯蔵・冷却される。

2.燃料交換装置
 「ふげん」の燃料交換装置は、燃料交換機、加圧・冷却系、走行・横行台車等からなる。その内の燃料交換機の説明を 図3 に示した。
 「ふげん」の燃料交換装置の開発に当たっては、その設計条件を満足し、かつ日本の法規・基準類に適合する信頼性の高い燃料交換装置を独自に設計、製作する必要があった。このため新規に開発する機器、部品(スナウト、スナウト弁、水中軸受、グラブ、グラブホース、貫通軸シール等)は試作試験を行い、燃料交換装置の設計に反映させ、燃料交換装置の機能確認は、実機と同仕様の試作機および試験装置により燃料交換試験、系統機能試験、振動試験、インターロック試験、各部機能試験等を実施し、工場試験の段階で可能な限り問題点を抽出し改善した。燃料交換は原子炉運転中(冷却材圧力:72kg/cm2, 温度:277℃,流量:40ton/h) に燃料交換が確実かつ安全に行え、燃料交換機圧力容器内の温度が 100℃以下に保たれる設計になっている。また耐震Aクラスの設計を行い、地震時の圧力管との相対変位が生じても燃料交換が出来る。さらに燃料交換機の運転は、中央制御室から遠隔手動および計算機による自動運転が行える。
燃料交換装置は、運転開始以来約2,260体以上の燃料交換を行っている。運転初期には、クラッド等の影響により駆動部、摺動部の動作不良を経験したが、設備改善によるクラッド対策を行い、良好な運転を維持している。また燃料交換装置の点検に係わる被曝低減化のため、第5回定期検査から化学除染等を実施している。
 「ふげん」では運転中燃料交換(On Power Refueling)が可能であるが、燃料健全性の観点から原子炉停止状態で燃料交換を行っている。
<図/表>
図1 燃料取扱装置機器配置図
図1  燃料取扱装置機器配置図
図2 燃料交換フローシート
図2  燃料交換フローシート
図3 燃料交換装置説明図
図3  燃料交換装置説明図

<関連タイトル>
新型転換炉の特徴 (03-02-02-02)
新型転換炉のプラント構成 (03-02-02-04)
新型転換炉の原子炉本体 (03-02-02-05)
新型転換炉の燃料集合体 (03-02-02-08)
新型転換炉実証炉計画 (03-02-06-02)
新型転換炉の研究開発 (03-02-06-04)

<参考文献>
(1)動力炉技報 No.11   1974. 7 動力炉・核燃料開発事業団
(2)動力炉技報 No.16   1975.11 動力炉・核燃料開発事業団
(3)動力炉技報 No.26   1978. 5  動力炉・核燃料開発事業団
(4)「ふげん」の開発実績と「実証炉」の設計 1979.11 動力炉・核燃料開発事業団
(5)動燃技報 No.54  1985. 6  動力炉・核燃料開発事業団
(6)動燃技報 No.69 「ふげん」特集 1989. 3  動力炉・核燃料開発事業団
(7)動燃十年史  昭和53年12月 動力炉・核燃料開発事業団
(8)動燃二十年史 1988.10  動力炉・核燃料開発事業団
(9)動力炉・核燃料開発事業団:新型転換炉原型炉「ふげん」技術成果の概要、 1991年8月
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ