<大項目> 開発中の原子炉および研究炉等
<中項目> 新型転換炉
<小項目> 新型転換炉の構造と特徴
<タイトル>
新型転換炉の冷却システム (03-02-02-07)

<概要>
 原子炉運転中の燃料を直接冷却し熱を取り出すための原子炉冷却システムは、新型転換炉が重水減速軽水沸騰冷却圧力管型重水炉であることから、軽水炉とは大いに異なる。軽水炉の原子炉圧力容器に相当する各々1体の燃料集合体を内蔵する多数の圧力管集合体があり、それらによつて構成される炉心を2ループに分けて原子炉を冷却する。この系統を原子炉冷却材再循環系と言い、軽水炉に無い独特の冷却システムである。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 新型転換炉(ATR原型炉ふげん」には、原子炉運転中の燃料を直接冷却し熱を取り出すための原子炉冷却材再循環系のほか、原子炉本体を形成する鉄水遮蔽体を冷却する遮蔽冷却系、減速材の重水を冷却する重水冷却系、原子炉格納容器内等を冷却する格納容器空気再循環系、隔離冷却系、余熱除去系、各種のプール冷却系、また工学的安全防護システムの非常用炉心冷却系等多くの冷却システムがある。ここでは原子炉冷却材再循環系について述べる。
1.原子炉冷却材再循環系
 原子炉冷却材再循環系は、原子炉一次冷却系とも言われ、炉心を2分割した互いに独立な2ループに分かれている。圧力管集合体内で燃料により加熱され二相流となった沸騰軽水冷却材は、上昇管を経て各ループの蒸気ドラムに入り、ここで汽水分離器で蒸気と水とに分離される。
 分離された蒸気は、蒸気ドラム内の湿分乾燥器を通過し、主蒸気管ノズルから主蒸気系の主蒸気ヘッダ・主蒸気隔離弁・主蒸気管を経てタービンに供給され、発電機タービンを回転させ発電する。タービンを出た蒸気は、タービン復水器を経て復水・給水系の復水ポンプ・復水脱塩装置・給水加熱器・給水ポンプ等を通って蒸気ドラムに戻る。
 蒸気ドラムで分離された水は、給水系を経て戻った水と混合して下降管・再循環ポンプ・下部ヘッダ・入口管を通って圧力管集合体に戻る。
 この系統で事故が起こるとそのおよぼす影響が極めて重大なため、この系統の機器は厳重な品質管理のもとで製作されている。また、万一の事故に備えて 図1 の原子炉冷却材再循環系系統図に示すように、工学的安全防護システムの急速注水系・高圧注水系・低圧注水系・余熱除去系・隔離冷却系が蒸気ドラムに接続されている。また、蒸気ドラムは、逃し安全弁を経て蒸気放出プールに接続されている。
 次に「ふげん」特有の原子炉冷却材再循環系機器・配管について述べる。
(1)蒸気ドラム
 「ふげん」の蒸気ドラムは、全長16m、内径 1.8m、肉圧95mm、重量約90トンの横型鋼製ドラムである。その内面にステンレスのオーバーレイを施しており、 図2 に示すように、バッフル板、湿分乾燥器、多数の汽水分離器等を有し、圧力管集合体からの 112本の上昇管(3B)、4本の下降管(14B) のほか給水管、蒸気管、工学的安全防護システムの非常用炉心冷却系に属する高圧注水系、急速および低圧注水系の配管、安全弁等につながる多くのノズルを有する。
(2)再循環ポンプ
 「ふげん」の再循環ポンプは、我が国で原子炉冷却系に初めて使われる国産大型ポンプである。ポンプの最も重要な軸封装置と熱遮蔽装置について試作し、実機を模擬した使用条件下で各種試験を実施し、性能と健全性を確認して製作した。 図3 に再循環ポンプの断面を示す。このポンプは定期検査時等に分解点検が容易に出来るような構造になっている。
  蒸気ドラム内の水は 4本の下降管を経て各ループ 2台の再循環ポンプで加圧され、2個直列に接続された逆止弁を経て下部ヘッダーに入る。(図1の系統図参照)
(3)下部ヘッダ
  下部ヘッダはステンレス鋼製で、下部ヘッダに入った水は、ここで圧力管集合体につながる 112本の入口管に配分される。下部ヘッダには工学的安全防護システムの急速注水系配管および低圧注水系配管と余熱除去系配管等が溶接されている。
(4)逆止弁
  下部ヘッダー入口部にある逆止弁は、万一の逆止弁入口側の破断事故時の逆止弁の作動時に、水流が急速に止められ発生する水圧の急上昇現象(水撃:ウォーター・ハンマー)が少ないこと、かつ、通常運転時に振動・圧力損失が少ないことが要求されるため、スイング型逆止弁を試作し、各種条件下で試験を行い製作した。
(5)主蒸気隔離弁
 「ふげん」の主蒸気隔離弁はこの種の機器の国産第1号であるためにまず試作弁を製作し、各種条件下で試験を行い、さらに実規模安全性試験装置で試験して信頼性を確認した後、製作した。
(6)配管
再循環系配管は、全てステンレス鋼配管であり、計装用の1/2 Bの小口径配管から28B の大口径配管まであるが、1ループでそれぞれ 112本ある入口管(2B)と上昇管(3B)が最も多く、それらは管群構成となっている。
 「ふげん」建設後、米国をはじめ多くの軽水炉のステンレス鋼配管や圧力容器ノズル部の溶接部に応力腐食割れSCC)が発見され、軽水炉用にSCC対策の多くの研究が行われてその解明がなされたため、「ふげん」でもそれらの知見を採り入れ、定期検査時に随時SCC対策を施してきている。
2.供用期間中検査(ISI)機器の開発
 原子力発電所は法律に基づいて毎年定期検査を義務づけられており、「ふげん」も全系統について毎年定期検査を実施している。特に、発電所の安全性および健全性の確保の観点から、原子炉冷却材圧力バウンダリを構成する機器・配管等については、非破壊検査技術を適用し、運転開始後も定期的に供用期間中検査(ISI)を行い、機器等の健全性を確認していくことが義務づけられており、「ふげん」においても、定期検査時にISIを計画的に実施している。
 「ふげん」では圧力管集合体、管群構成の入口管・上昇管、蒸気ドラム等、重水炉特有の機器があるためISI時の被曝低減、合理化等のため圧力管検査装置、入口管・上昇管管群内ISI装置、蒸気ドラムノズル部ISI装置等各種のISI装置を開発した。
<図/表>
図1 「ふげん」の原子炉冷却材再循環系系統図
図2 「ふげん」の蒸気ドラム内部構造図
図3 「ふげん」の再循環ポンプ断面図

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
新型転換炉と軽水炉の相違 (03-02-02-03)
新型転換炉のプラント構成 (03-02-02-04)
新型転換炉の原子炉本体 (03-02-02-05)
新型転換炉の工学的安全防護システム (03-02-03-02)
原型炉「ふげん」 (03-04-02-09)

<参考文献>
(1)動力炉・核燃料開発事業団:「ふげん」の開発実績と「実証炉」の設計、1979年11月
(2)動力炉・核燃料開発事業団:動燃十年史、昭和53年12月25日
(3)動力炉・核燃料開発事業団:動燃二十年史、1988年10月 2日
(4)動力炉・核燃料開発事業団:動燃技報、No.58、1986. 6.
(5)動力炉・核燃料開発事業団:動燃技報、No.60、1986.12.
(6)動力炉・核燃料開発事業団:動燃技報、「ふげん」特集、No.69、1989. 3
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