<大項目> 原子力発電
<中項目> 軽水炉(PWR型)原子力発電所
<小項目> 炉心設計・遮へい設計
<タイトル>
PWRの炉心設計 (02-04-02-01)

<概要>
 PWR原子力発電所の原子炉および炉心は、原子炉容器、燃料集合体、炉内構造物、制御棒クラスタ制御棒駆動装置などからなる。炉心は、燃料集合体、制御棒等によって構成され、出力分布の測定監視のための炉内計装検出器を設け、炉心支持構造物により支持されている。燃料集合体は炉心に円柱状に配列され、初装荷炉心では炉心を3領域に分け、それぞれの領域に異なったウラン235濃縮度のものを装荷している。また、炉心は一次冷却材(軽水)によって除熱され、同時にこの一次冷却材は中性子減速材としての役目を果たし、一次冷却材中には反応度制御材としてホウ酸が入れられている。燃料には通常UO2燃料が装荷されるが、MOX燃料も炉心の1/3程度までならUO2燃料と同様に使用することができる。
<更新年月>
2010年01月   

<本文>
1.炉心の構成
 炉心は、燃料集合体、制御棒、核計装およびこれらを支持する炉心支持構造物により構成される。なお、PWRの炉心構成の変遷については別タイトル(<02-01-01-02>原子力発電技術の開発経緯(PWR)を参照されたい。
1.1 燃料集合体
 燃料集合体の数は発電所電気出力(原子炉熱出力)に対応するループ数(W社製型のPWRでは蒸気発生器の基数と同じ)が増える。燃料集合体の基本構造は同じで燃料棒が正方配列されており、2ループでは14×14、3ループでは熱出力に応じて15×15と17×17、4ループ(118万kW)では17×17の配列である。いずれのタイプも高燃焼度化に向けて段階的に改良が加えられてきた。ここでは17×17燃料集合体を例に説明する。
 なお、APWRでは電気出力の増大(118万kW→153万kW)にともない、燃料集合体が193体から257体と増えて炉心等価有効直径は増大したが、等価有効高は変わらない。
 表1に17×17燃料集合体の基本仕様例を示す。17×17燃料集合体は図1に示すように、17×17の正方配列を形成するUO2燃料棒264本、制御棒案内シンブル24本、計装用案内シンブル1本、支持格子9個、上部ノズルおよび下部ノズル各1個から構成される。燃料棒264本のうち一部(例えば16本)はガドリニア入りの燃料もあり、図1右はこの例を示している。燃料集合体は囲い板のない、いわゆるキャンレスタイプで、炉心内の1次冷却材の混合を良くして熱除去効率を高める構造となっている。
 燃料棒は、図2に示すように、低濃縮UO2ペレットあるいはガドリニア混合UO2ペレットをジルカロイ−4製の被覆管に挿入し、上部にステンレス鋼製コイルバネを入れ、両端にジルカロイ−4製端栓を溶接したものである。
1.2 制御棒
 図3に制御棒クラスタを示す。制御棒クラスタは、24本の制御棒を組み合わせた上端を制御棒スパイダで結合した構造物である。制御棒スパイダの上部には、駆動軸と結合するための構造が付いている。制御棒の中には中性子の吸収材として銀−インジウム−カドミウム合金(Ag-In-Cd)が入っている。
1.3 炉心
 図4に制御棒クラスタ配置説明図を示す。炉心は193体の燃料集合体から構成されており、そのうち53体に制御棒クラスタが挿入されている。制御棒クラスタは、制御グループと停止グループに分割され、さらに各々が4つのバンク(小グループ)に分割されている。停止グループは炉心を停止する際に使用され、制御グループは炉心の出力制御や、出力分布制御に使用される。
1.4 炉内計装
 PWRでは炉内計装のための検出器として、炉内熱電対と炉内中性子束検出器を配置している。図5に炉内計装検出器の配置を示す。これらの検出器は、各々燃料集合体の約1/4に取り付けられている。炉内熱電対は、炉心出口における冷却材温度を測定する。炉内中性子束検出器は可動型で、原子炉容器の下部から案内管を通して炉内に挿入され、燃料集合体軸方向の出力分布の測定(原則1ヶ月に1回)に使用される。通常時の出力分布の連続監視は炉内熱電対と炉外中性子束検出器により行う。
 なお、炉外中性子束検出器は、原子炉容器の外側に設置されており、中性子源領域、中間領域および出力領域の各計測領域によって、原子炉停止状態から定格出力までの炉心中性子束レベルを監視できる。出力領域の検出器は上下2分割されており、炉心の軸方向出力分布の歪みを測定し、出力分布の制御に使用されている。また、各象限に1つずつ全部で4カ所設置されているので、横方向の出力分布の歪みも測定することができる。
2.炉心核設計と核特性
2.1 核設計の基本方針
 PWRでは、以下に示すような基本方針に基づいて核設計を行っている。
a.必要な炉心運転期間を達成するように、燃料取替体数を決定する。
b.反応度係数は常に次の条件を満たすこと。
 ・ 減速材温度係数は高温出力運転状態において負であること。
 ・ ドップラー係数は常に負であること。
 ・ 上記を合わせた出力係数は常に負であること。
c.キセノンの生成消滅による出力分布の振動に対して十分な減衰特性を持たせた設計とするか、また、たとえ振動が生じても、それを検出し抑制できる設計とすること。
d.制御棒クラスタ飛出し事故時に、添加反応度が過度とならないように設計すること。
e.最大反応度添加率は、制御棒クラスタが引き抜き手順上可能な最大速度で引き抜かれても過度とならないこと。
f.出力分布は以下の運転上の制限を満足するように制御・保護すること。
 ・ 通常運転時の線出力密度が制限値以下であること。
 ・ 運転時の異常な過渡変化時において、燃料中心温度は溶融点未満であること。
・ 通常運転時および運転時の異常な過渡変化時において、最小DNBRが許容限界値を下まわらない設計とすること。
g.反応度停止余裕が以下の条件を満たした設計とする。
・ 制御棒クラスタは、最大反応度効果を持つ制御棒クラスタ1本が全引き抜き位置のまま挿入できない場合でも、高温停止状態において必要反応度停止余裕(例 0.018Δk/k)を与える設計とすること。
・さらに、化学体積制御系によるホウ酸水注入により、低温状態でも0.01Δk/k以上の反応度停止余裕を維持できる設計とすること。
2.2 反応度係数
2.2.1 減速材温度係数
 減速材温度係数は、減速材である軽水の温度変化による実効増倍率の変化の割合を示す反応度係数である。減速材の温度が変化すると減速材の密度が変化し、中性子のエネルギーが変化することによって、実効増倍率が変化する。減速材の温度が上昇し密度が低下すると、中性子の減速効果が小さくなり実効増倍率を小さくする方向に働くが、一方、減速材中のホウ素の密度も減少することにより中性子の吸収が減少し、これは実効増倍率を大きくする方向に作用する。すなわち、減速材温度係数は、ホウ素濃度が高くなるほど正側に移行する。したがって、通常運転時には、ホウ素濃度の高いサイクル初期の高温ゼロ出力状態で、減速材温度係数の絶対値は最小となる。この状態で減速材温度係数が負になるように、必要に応じて可燃性毒物を使用し、ホウ素濃度を低く抑える設計としている。逆に、サイクル末期の高温全出力時に絶対値が最大となる。
2.2.2 ドップラー係数
 燃料温度が上昇すると、U−238の共鳴吸収が増加し(ドップラー効果)、炉心の実効増倍率は下がる。したがって、燃料温度係数(ドップラー係数)は常に負となる。
2.3 反応度制御
 PWRの反応度制御は、制御棒とケミカルシム(1次冷却材中のホウ素濃度調整)の2種類で行う。制御棒は速い反応度の調整に、ケミカルシムは比較的遅い反応度の調整に用いられる。速い反応度変化としては、速い出力変化に伴う反応度変化や原子炉トリップ(原子炉スクラム)に必要な反応度変化がある。比較的遅い反応度変化としては、低温停止から高温全出力までの減速材温度変化に伴う反応度変化、キセノンの生成消滅による反応度変化、および燃料燃焼による反応度変化がある。
 PWRの制御棒は、図3に示すようにクラスタ型であり、制御棒挿入、引き抜きによる局所出力分布の変化を小さくする構造となっている。制御棒クラスタは炉心上側から挿入される構造になっており、駆動は磁気ジャック方式を採用、1ステップ=約1.6cm単位で挿入、引き抜きが行われる。原子炉トリップ時には電源断により一斉に自重による自然落下で炉心に挿入される。定格出力運転時には制御用バンクD(図4参照)のみが0〜約20%挿入位置の間にあり、それ以外のバンクは全引き抜き位置にある。
 ケミカルシムは1次冷却材中のホウ素濃度の調整により反応度を調整する。炉心燃焼度と反応度変化例を図6に示す。ここで、縦軸は炉心を臨界に保つホウ素濃度(臨界ホウ素濃度という)を表示している。燃料燃焼による反応度低下はホウ素濃度を小さくすることにより補償して臨界を維持し、ホウ素濃度が零になれば炉心サイクル寿命の終わりである。なお、臨界ホウ素濃度は燃焼初期に急激に低下する形になっているが、これは中性子吸収効果の大きい核分裂生成物であるキセノンが初期に無い状態から生成されて平衡濃度に達するのに対応して、臨界ホウ素濃度が低下する状況を表している。キセノンが平衡に達した後の臨界ホウ素濃度の燃焼にともなう1日の変化量は2〜3ppm程度であり、この変化を管理することにより炉心サイクル寿命を容易に予測することができる。
 PWRでは、余剰反応度を減じて上記ケミカルシムの負担を減らし、減速材温度係数を負に保つために可燃性毒物を用いている。これは、前述のように減速材中のホウ素濃度が大きくなると、減速材温度係数が正になる傾向があるためである。国内のPWRでは、2種類の可燃性毒物が使用されている。ホウ素を含んだクラスタ型を制御棒が挿入されていない制御棒案内シンブルの中に挿入するタイプと、ガドリニア(Gd2O3)を二酸化ウラン燃料(UO2)に混合して使用するタイプである。なお、前者は出力の高い燃料集合体に挿入し出力を抑制することができるので、炉心の横方向出力分布の平坦化に使用することもある。
2.4 出力分布の平坦化
 PWR炉心では、炉心内で沸騰がないことと、燃焼中の反応度をホウ素濃度で調整するため、制御棒が運転中殆ど引き抜きの状態にあることにより、出力分布は次のような特徴を持っている。
 ・ 炉心内出力分布の水平方向と垂直方向(軸方向)の成分の分離性がよい。
・ 水平方向の出力分布は、殆ど燃料装荷パターンによって定まり、運転中の変化が小さいので、運転開始後は特別な調整は不要である。
 ・ 出力分布の調整は軸方向のみで十分である。
 軸方向出力分布は、出力および制御棒挿入度に依存して変化し、核分裂生成物であるキセノンの生成・消滅によっても変化するため、制御が必要である。この制御は、軸方向出力分布の歪みの指標であるアキシャルオフセットAO=(炉心上半分出力−炉心下半分出力)/(炉心上半分出力+炉心下半分出力)を用いて実施される。これは、3次元出力ピーキング係数(FQ)がAOと図7のような相関があるため、このAOを一定範囲内にあるように制御すれば、FQを制限値内に納めることができるからである。AOの制御は制御棒の操作により行う。
 水平方向出力分布は殆ど燃料装荷パターンによって定まってしまうが、初装荷炉心の燃料装荷パターンの例を図8に示す。初装荷炉心は3種類のウラン235濃縮度の燃料からなり、通常、炉心外周部には濃縮度の高い燃料を、炉心内部には低濃縮度燃料と中濃縮度燃料を交互に並べることにより、出力分布の平坦化を図っている。次サイクルでは、このうち低濃縮度燃料が取り出され、新燃料と取替えられる。
 図9には取替炉心の燃料装荷パターン例を示す。この例では、出力分布平坦化の観点より初装荷炉心と同様、反応度の高い燃料を外周部に配置している。
2.5 MOX燃料装荷炉心の核特性
 PWRにはプルトニウムを核分裂性物質とするMOX燃料を使用することができる。MOX燃料集合体の構造は通常のウラン燃料と全く同一である。プルトニウムとウランの性質の違いにより、MOX燃料装荷炉心の核特性はウラン炉心から若干変化する。しかし、MOX燃料の装荷割合が1/3程度以下の部分MOX炉心では核パラメータの変化は小さく、通常のウラン燃料を装荷した炉心の設備を変更することなく対応することができる。例えば、MOX燃料の制御棒価値はウラン燃料よりも小さくなるが、MOX燃料に制御棒が挿入されるのを避けるように燃料装荷位置を調整することができるので、制御棒価値の低下を防ぐことができる。ただし、このようなMOX燃料集合体とウラン燃料集合体が混在する炉心では、出力分布平坦化のために、MOX燃料集合体は3種類の核分裂性プルトニウム富化度の燃料棒によって構成する必要がある。
<図/表>
表1 PWR17×17燃料集合体基本仕様の例
図1 PWR燃料集合体構造図およびガドリニア入りUO2燃料棒配置
図2 PWR燃料棒断面図
図3 PWR制御棒クラスタ構造説明図
図4 PWR炉心制御棒クラスタ配置説明図
図5 PWR炉内計装配置説明図
図6 PWR炉心の定格出力時の臨界ホウ素濃度対燃焼度の例
図7 PWR炉心のFQ×相対出力対AO
図8 PWRの燃料装荷パターン(初装荷炉心)
図9 PWRの燃料装荷パターン(取替炉心)

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<関連タイトル>
加圧水型原子炉(PWR) (02-01-01-02)
PWRの起動・停止方法 (02-02-03-04)
原子力発電技術の開発経緯(PWR) (02-04-01-01)
PWRの動特性 (02-04-06-02)
改良型加圧水型原子炉(APWR) (02-08-02-04)

<参考文献>
(1)原子力安全研究協会(編):軽水炉発電所のあらまし(改訂第3版)、平成20年9月
(2)火力原子力発電技術協会(編):原子力発電所−全体計画と設備−(改定版)、平成14年6月
(3)原子力安全研究協会(編):軽水炉燃料のふるまい(平成15年7月)
(4)関西電力:高浜発電所原子炉設置変更許可申請書(1998年5月)
(5)九州電力:玄海原子力発電所原子炉設置変更許可申請書(1982年10月)
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