<大項目> 原子力発電
<中項目> 軽水炉(PWR型)原子力発電所
<小項目> 軽水炉(PWR型)原子力発電所の概要
<タイトル>
原子力発電技術の開発経緯(PWR) (02-04-01-01)

<概要>
 発電用加圧水型原子炉(PWR)は1957年の米国シッピングポート発電所の建設で発電炉として実証され、以後米国でPWR発電所が相次いで建設され、技術の開発と標準化が進んだ。フランスとドイツは最初は米国技術から出発して技術開発を進め、ロシア(ソ連)は終始自力により技術開発を進めた。日本は当初米国の技術を導入して建設を行い、改良標準化計画も加わって日本独自の技術を持つに至った。1980年代には経済性向上のAPWRが開発され、世界に先立ち敦賀発電所3号/4号で建設の予定である。2000年前後から21世紀を意識して、経済性向上と受動安全性を採用したAP1000(WH社)、System80+(CE社)およびEPR(アレバ社・シーメンス社連合)が開発された。AP1000は米国では4サイトで採用が検討されており、中国から4基受注した。EPRはフィンランドで建設が進められており、フランスでも建設が決定し、また中国から2基受注した。炉型は大別すると米国/欧州型(PWR)とロシア型(VVER)があるが、米国/欧州型では正方格子燃料集合体と立置蒸気発生器を採用し、ロシア型では六角格子燃料集合体と横置蒸気発生器を採用している。
<更新年月>
2007年11月   

<本文>
1.世界におけるPWR技術の開発
 世界におけるPWR技術の変遷を図1に、WH型PWRの原子炉容器の変遷を図2に、世界におけるPWR燃料集合体の変遷を表1に示す。PWRを最初に採用したのは1954年に進水した米国原子力潜水艦Nautilusである。ウェスチングハウス社(WH社)はこの開発に協力しこれを基に発電用原子炉の開発を進めた。1957年には世界最初の商用発電所Shippingport(60MW、1957年12月−1982年10月)を建設した。この炉は研究開発用でもあったので、原子炉容器一次冷却水出入ノズル位置、炉心設計(シード・ブランケット炉心、ウラン235濃縮度93%、ハフニウム十字形制御棒等)、横置型蒸気発生器など、その後の標準的なPWRとかなり異なっている。その後しばらく保守的な設計として、ステンレス被覆燃料、十字型制御棒などを採用したPWRの建設が続いた。ジルカロイ−4被覆燃料、ケミカルシム制御、制御棒クラスタ、立置型蒸気発生器などを採用した現在の標準的なPWR発電所は1970年代のBeznau、Ginna辺りからである。その後1961年にYankee Roweが運転開始し、1965年以降発電所が相次いで運転開始した。この間技術開発が進み現在のPWR発電所の基本形態が確立した。大容量化が進むにつれて、600MW級の2ループ、900MW級の3ループ、1100〜1300MW級の4ループと標準化されていった。WH社の他にバブコックアンドウィルコックス社(B&W社)およびコンバッションエンジニアリング社(CE社)も独自の技術を発展させた。CE型PWRの原子炉冷却系構成(図3)はWH型PWR(図4)とは異なり、蒸気発生器2基と一次冷却材ポンプ4基からなる2ループである。蒸気発生器ではWH型とCE型とは逆U字管式で、B&W型は直管式である。
 AP600(600MW)はDOE/EPRI計画に基づいてWH社グループが開発した受動的安全採用の2ループPWRである。受動的冷却(例:受動的格納容器冷却系、図5参照)、簡素化(従来炉より弁約50%減、配管約80%減、電源ケーブル約70%減など)、モジュール化、高い公衆安全性(事故時3日間運転員操作不要)、許認可確実性、短い建設工程(3年)を可能にした。蒸気発生器2基と一次冷却材ポンプ4基の2ループはB&W型およびCE型の原子炉冷却系統と同じ構成である。NRCによる設計承認を受けたが、受注がなかった。その後WH社グループはこのAP600の設計概念を1000MWに発展させたAP1000を開発した。米国では4か所のサイトで採用検討が進められており、中国から4基受注した。
 欧州ではフランスとドイツが、WH社からの技術導入でPWR建設を始め、経験を積んでそれぞれ自力で開発を進めた。フランスは標準化された多数基の発電所を建設したが、経済性を高めた標準大型炉N4(1516MW)を開発し営業運転に入った。ドイツも同様に標準大型炉Konvoi(1363MW)を開発した。その後両国はAP1000に対応するためアレバ社・シーメンス社連合を結成し、N4とKonvoiを基に受動安全(シビアアクシデント対応)、簡単な運転、競争力ある経済性(60年寿命、高燃焼度70GWd/t)、MOX燃料利用(50%まで)などを達成したEPR(欧州加圧水型炉、1600MW、4ループ)を開発した。すでにフィンランドで建設中(オルキルト3号、2010年運転開始)で、フランス(フラマンビル3号)でも建設開始(2007年末)が決定した。また中国からは2基受注した。
 炉型を大別すると、米国/欧州型(PWR)とロシア型(VVER)がある。基本構成はほぼ同じであるが、米国/欧州型では正方格子燃料集合体と立置蒸気発生器を採用しており、ロシア型では六角格子燃料集合体と横置蒸気発生器を採用している。
2.日本におけるPWR技術の開発
 日本におけるPWR技術の変遷を表2に示す。初号機は、美浜発電所1号で1970年に運転開始した。その後相次いで建設され、2006年12月31日現在23基が運転中である。PWR発電所の所有社は、関西電力、九州電力、四国電力、北海道電力、および日本原子力発電であり、その建設・運転を通じて技術が進展した。メーカーはすべて三菱重工業(株)を中心とする三菱グループである。
 これまでの日本のPWRは、技術開発に応じて第1から第4の世代(後述の燃料で言う世代とは異なる)に分けられる。第1世代は輸入およびその技術導入に基づく国産である。美浜1号、高浜1号、大飯(おおい)1、2号と順に2ループ、3ループ、4ループの初号機を米国より輸入し、それにならって国産を建設した。この間、設計、建設技術の習得と機器の国産化を進めた。第二世代は、1981年営業運転開始の玄海2号、1982年運転開始の伊方(いかた)2号以降であり、自主技術によって建設された。それまでの建設経験、運転経験を基に、信頼性・安全性の向上、稼働率の向上、被ばく低減、定期検査短縮、また建設期間短縮のために炉内構造物、蒸気発生器、一次冷却材ポンプ、タービン等の主要機器およびプラント設計の改良が行われた。一次冷却材ポンプを含む主要機器はすべて国産となった。1975年度より通商産業省(現 経済産業省)の主導による改良標準化活動が開始され、設計改良が行われた。1984年運転開始の川内(せんだい)1号が改良標準化1号機であり、これ以降のプラントは改良標準化プラントと呼ばれる。
 第3世代は1989年営業運転開始の泊(とまり)1号、1991年運転開始の大飯3号以降であり、確立した自主技術により信頼性・安全性等の向上に加えて、経済性の向上、運転性・保守性の向上も図っている。蒸気発生器等の改良に加えて、新型中央制御盤とディジタル式制御装置が採用され(大飯3号以降)、また経済性と運転保守性の向上を図ったプラント配置の改良が進んだ。1982年より1986年にかけて第4世代としてAPWRが開発された。これは従来の設計改良を集大成すると共に、さらに安全性・信頼性の向上、稼働率の向上、被ばく低減、運転性の向上を目標としており、大型化と発電効率の向上も図られた。APWRは敦賀3、4号で建設予定であるが、世界で初めてである。
3.燃料
 日本におけるPWR燃料の改良と経緯を表3に、PWR燃料の集合体形状の変遷を図6に示す。Yankee Rowe用に開発されたものを第1世代(プラントの第1世代とは異なる)の燃料と呼んでおり、低濃縮の二酸化ウランペレットをステンレス鋼管で被覆したセグメント型燃料である。燃料集合体は6×6配列のアセンブリ9個が1組となって構成される。制御棒は十字型で燃料の濃縮度は1種類であった。第2世代からは反応度制御に制御棒とともにケミカルシム(一次冷却材中のホウ素濃度を調整)を採用した。燃料のウラン235濃縮度も3種類となり水平方向の出力分布の平坦化を向上させた。この燃料はSan Onofreに採用された。第3世代から特定の燃料棒位置にピン型の制御棒が入るRCC型(クラスター形制御棒)となった。第4世代から燃料被覆管にこれまでのステンレス鋼に代わってジルカイロイ−4が採用された。日本の発電所で採用されているPWR燃料は第4世代の延長上にあるもので、燃料集合体型式としては、14×14型(数字は燃料集合体中の燃料棒の列数)、15×15型、17×17型を使用している。
4.蒸気発生器
 PWRでは原子炉冷却系配管をループと呼ぶが、このループ容量を大きくして、かつループ数を増して発電プラントを大型化した。Yankee Roweではループ当たりの容量が40MWであったものが、最近では300MW〜350MWにまで増大している。蒸気発生器の信頼性向上のため、日本では第2世代から第3世代のプラントにかけて二次側水処理方式の改良、優れた耐食性伝熱管材料への変更(インコネル600合金から特殊熱処理したTTインコネル690合金へ)、管支持板孔形状と材料の改良(四つ葉型孔、SUS405材の採用)、伝熱管振れ止め金具の増強等多面にわたる改良が行われた。
5.安全設備
 PWRでは一次冷却系配管の破断に伴う冷却材喪失事故に備えて非常用炉心冷却設備(ECCS)を設けている。代表例を図7−1に示す。ECCSは大破断から小破断までの配管破断に対応できるよう高圧注入系、低圧注入系および蓄圧タンクから構成されている。日本で運転中のPWRのECCSは基本構成は同様であるが、信頼性向上のために系統構成や制御方式に改良を加えている。APWRのECCS(図7−2)では現行の2系列構成から4系列構成とし、水源の燃料交換用水ピットを格納容器内に設置する等抜本的な安全性向上を図った。日本における原子炉格納容器の変遷(図8)では、2ループと3ループの発電所には円筒形鋼製格納容器を採用し、4ループ発電所では大飯原子力発電所1、2号でアイスコンデンサー型格納容器を初めて採用したが、敦賀2号以降はプレストレストコンクリート製原子炉格納容器(PCCV)を採用した。APWRもPCCVを採用している。なお、改良標準化において作業性向上のために川内1号以降では格納容器径が大径化している。
(前回更新:2000年3月)
<図/表>
表1 世界におけるPWR燃料集合体の変遷
表2 日本におけるPWR技術の変遷
表3 日本におけるPWR燃料の改良と経緯
図1 世界におけるPWR技術の変遷(着工年ベース)
図2 WH型PWRの原子炉容器の変遷
図3 CE型PWRの原子炉冷却系構成
図4 WH型PWRの原子炉冷却系構成
図5 AP600の受動的格納容器冷却系
図6 PWR燃料集合体形状の変遷
図7−1 PWRのECCSの変遷(1/2)−4ループ・敦賀2号
図7−2 PWRのECCSの変遷(2/2)−APWR
図8 日本におけるPWR原子炉格納容器の変遷

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
加圧水型原子炉(PWR) (02-01-01-02)
PWRの蒸気発生器 (02-08-01-03)
第三次改良標準化 (02-08-02-02)
改良型加圧水型原子炉(APWR) (02-08-02-04)
APWRの改良発展 (02-08-02-06)
System 80+ (02-08-03-02)
AP600及びAP1000 (02-08-03-04)
2005年エネルギー政策法と原子力再生の動き (14-04-01-43)

<参考文献>
(1)(社)日本電気協会新聞部(編):原子力ポケットブック 2006年版(2006年7月)
(2)(社)日本原子力産業協会(編):世界の原子力発電開発の動向 2006年次報告(2007年4月)
(3)(社)火力原子力発電技術協会(編):原子力発電所−全体計画と設備−(改訂版)(2002年6月)
(4)THE EPR:THE ADVANCED REACTOR,(2007年11月)
(5)Westinghouse:AP1000,(2007年9月)
(6)インターネットイニシアティブ(IIJ):中国の原子力発電−稼動・建設・計画状況(2007年9月)
(7)日本原子力発電(株):敦賀3,4号機増設計画(2007年9月)
(8)(財)原子力安全研究協会(編):軽水炉発電所のあらまし(改訂版)(1992年10月)
(9)(財)原子力安全研究協会(編):軽水炉燃料のふるまい(第4版)(1998年7月)
(10)小倉成美ほか:加圧水型発電プラントの変遷及び開発状況、三菱重工技報、19(6)(1982年11月)
(11)W.マーシャル(編)・住田健二(監訳):原子炉技術の発展(上)、筑摩書房(1986年9月)、p.281
(12)NRC:(2001.2.1)
(13)T.van de Venne:Application of Passive Safety Systems to Large PWRs,Proceedings Vol2,Inter.Conf.on Design and Safety of Advanced Nuclear Power Plants,Oct.25−29,1992,Tokyo,Japan
(14)通商産業省資源エネルギー庁公益事業部原子力発電課(編):原子力発電便覧 1999年版、電力新報社(1999年10月)、p.85、p.405
(15)通商産業省資源エネルギー庁公益事業部原子力発電課(編):原子力発電便覧 1997年版、電力新報社(1997年8月)、p.415
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