<大項目> 原子力発電
<中項目> 実用原子力発電所
<小項目> 実用原子力発電所の概要
<タイトル>
加圧水型原子炉(PWR) (02-01-01-02)

<概要>
 加圧水型発電用原子炉(PWR)では、軽水を原子炉冷却材および中性子減速材として使用し、炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし(一次冷却系)、この高温高圧水を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ(二次冷却系)、この蒸気をタービン発電機へ送って発電している。2006年12月31日現在、世界で商業運転中のPWRは263基で軽水型発電炉の74%を占め、建設中では19基で86%を占めている。
 最近では、経済性とともに安全性を高めたPWRが開発されており、APWRとAP1000(WH社)、System80+(CE社)、およびEPR(アレバ社・シーメンス社連合)などが開発されている。APWRの建設は日本が世界で最初で、敦賀(3号・4号)で採用されている。AP1000は米国の4サイトで建設検討中で中国から4基受注した。EPRはフィンランドで建設中で、フランスで建設が決定し、中国から2基受注した。
<更新年月>
2007年11月   

<本文>
 WH型PWR原子炉容器の変遷を図1に示す。加圧水型原子炉(PWR)は、もともとは、米国のアルゴンヌ国立研究所(ANL)とウェスチングハウス社(WH社、海外ではW社という)とが共同で開発した推進動力用原子炉であった。この成功によりWH社は発電用原子炉としてシッピングポート原子力発電所(6万kWe、1958年5月−1982年10月)を建設した。これが実用規模の発電用PWRとして世界最初である。この炉は開発研究用のため、原子炉容器一次冷却水出入ノズル位置(図1参照)、炉心設計(シード・ブランケット炉心、ウラン235濃縮度93%、ハフニウム十字形制御棒等)、横置型蒸気発生器などの採用が、その後の標準的なPWRとかなり異なる。その後しばらく保守的な設計として、ステンレス被覆燃料、十字型制御棒など採用(原子力船「むつ」の炉心でも採用)のPWRの建設が続いた。ジルカロイ−4被覆燃料、ケミカルシム制御、制御棒クラスタ、立置型蒸気発生器などを採用した現在の標準的なPWRは1970年代のBeznau発電所、Ginna発電所あたりからである。
 現在(2006年12月31日)世界で運転中の軽水型発電炉(356基)のうち74%(263基)がPWRであり、建設中では86%(19基)、計画中では78%(31基)と、PWRの割合が増えつつある。
1.PWRの特徴
 以下のPWRの基本的な説明ではWH型PWR(110万kWe級)を用いる。
1.1 PWRの基本構成
 PWR原子力発電所主要系統図を図2に示す。PWRでは、放射性物質を原子炉系内に留めるため一次系(原子炉系)と二次系(蒸気系)とから構成されている。一次系では、原子炉容器内の一次冷却材は沸騰しないよう加圧され、一次冷却材ポンプによって循環され、炉心からの高温高圧の一次冷却材(約325℃、15.4MPa[gage](157kg/cm2G))を蒸気発生器(一次側)に輸送する。蒸気発生器内では伝熱管によって熱交換され、一次側から二次側に熱輸送され蒸気(約277℃、6.0MPa[gage](61.5kg/cm2G))を発生する。この蒸気はタービン発電機に送られた後、復水器で蒸気から水に戻され主給水ポンプで蒸気発生器(二次側)に輸送(給水)される。
1.2 原子炉容器内の構造
 110万kWe級PWRの原子炉容器内の主な構造を図3に示す。原子炉容器内には、燃料集合体と制御棒クラスタからなる炉心を中心にして炉心上部には制御棒クラスタ案内管、制御棒駆動装置等、炉心周囲には炉心バッフル、熱遮へい体等がある。
 燃料集合体構造図を図4に示す。燃料集合体は、例えば、17×17の正方配列を形成する燃料棒264本、炉内計装用案内シンブル1本、制御棒案内シンブル24本、支持格子9個、上部ノズルおよび下部ノズルより構成されている。燃料棒は低濃縮二酸化ウランの焼結ペレットをジルカロイ−4被覆管に挿入し、上部にステンレス鋼バネを入れ、ヘリウムを加圧封入し両端にジルカロイ−4端栓を溶接した密封構造のものである。燃料棒は、燃料棒内上部にプレナムを設け、かつ、ペレットと被覆管に適当な間隙を設けて、ペレットから放出される核分裂生成ガス、被覆管とペレットの熱膨張差、また燃焼に伴う燃料密度変化により被覆管や端栓溶接部に過大な応力が加わるのを防止する構造となっている。
 制御棒には24本の中性子吸収棒を上部で束ねて一度に動かす制御棒クラスタ方式が採用されている。中性子吸収材としてはAg−In−Cd合金が使用されている。制御棒駆動装置の例を図5に示す。図5に示したものはラッチ式磁気ジャック駆動方式で、3種類の作動コイルをシーケンシャルに励磁と消磁を繰り返すことにより制御棒を移動させる。反応度制御としては、短期的反応度制御のための制御棒クラスタ、および長期的反応度制御のためのケミカルシム制御とバーナブルポイズン(中性子吸収材)棒とがある。原子炉に異常の発生又は発生のおそれのある場合、制御棒駆動装置の全コイルが消磁し、制御棒は重力落下で炉心内に一斉に挿入され原子炉は自動停止する。
1.3 原子炉の出力制御
 PWRでは、一次冷却材が加圧器により約15.4MPa[gage](157kg/cm2G)の高圧力を流路全長にわたって制御・維持されている。中性子は全炉心にわたってよく減速されているので、反応度(出力)制御には制御棒クラスタとケミカルシム制御とを併用している。「ケミカルシム制御」ではホウ酸(中性子吸収材)を一次冷却材中に溶かして反応度制御に使用する。
 PWRでは負荷変動が小さい範囲では減速材温度係数の働きで原子炉出力は自動的に調整される。負荷変動幅が大きくなると制御棒の操作が追従し原子炉出力を増減する。すなわち、「タービン主/原子炉従(負荷優先)」の制御方式となっている。
1.4 工学的安全系
 非常用炉心冷却系統図概略を図6に示す。原子炉系冷却配管等に破断事故が発生して炉心内の一次冷却材が流出した場合に備え、燃料の破損を防止するため非常用炉心冷却系(ECCS)が設けられている。ECCSは、蓄圧注入系、高圧注入系および低圧注入系で構成されている。配管破断事故後には、原子炉停止後燃料の崩壊熱により原子炉格納容器内の温度・圧力が上昇するので、冷却し温度・圧力を低下させるとともに浮遊しているヨウ素等の放射性物質を除去するため格納容器スプレイ系が設置されている(図2参照)。また放射性物質が原子炉格納容器外部へ放散するのを防ぐため、原子炉格納容器アニュラス部に漏洩した空気はアニュラス空気浄化系に導かれ処理される。
2.原子炉の炉型
(1)WH型PWR
 WH(ウェスチングハウス)型では電気出力の増加(大型化)に従って蒸気発生器数と原子炉冷却材ポンプ数を増やしていく。110万kWe級のWH型PWRでは、図7に示すように、原子炉冷却系統が4ループで構成されている。図8にWH型PWRの蒸気発生器を示す。蒸気発生器は立置逆U字管再循環式で飽和蒸気を発生する。三菱PWR、およびアレバ社・シーメンス社連合のPWRはWH型PWRに分類される。
 WH型の改良型PWR(APWR、153万kWe、表1参照)は信頼性(多重性の強化、低出力密度など)と経済性(燃料集合体にジルカロイグリッド採用など)を高めたPWRである。炉心の3分の1にMOX燃料を使用し、燃焼度も55GWd/tと高くなっている。また事故時炉心損傷確率も従来型より1桁以上低くなっている。敦賀発電所3号、4号で採用され(2016年、2017年に運転開始を予定)、世界で最初である。
 AP600(60万kWe)は、DOE/EPRIの計画に基づいてWH社が開発した受動的安全採用の2ループPWRである。すなわち、受動的冷却(例:原子炉格納容器、図9参照)、簡素化(従来炉と比較して弁約50%減、配管約80%減、電源ケーブル約70%減など)、モジュール化を行い、高い公衆安全性(事故時3日間運転員操作不要等)、許認可確実性、短い建設工程(3年)を可能にした。NRCによる設計承認はされたが、受注が無かった。その後WH社はこのAP600の設計概念を100万kWeに発展させたAP1000を開発した。米国では4つの発電所サイトで採用検討が進められ、中国から4基受注を受けた。
 フランスのN4炉(151.6万kWe)は、TMI発電所事故(米、1979年)からの教訓を生かして中央制御室等を改善し信頼性と経済性を高めた、フラマトム社(現 アレバ社)が開発した双子型の標準化改良型PWRである。EPR(欧州加圧水型炉、160万kWe、熱効率37%、4ループ)はアレバ社・シーメンス社連合が開発を進めている経済性向上を図った受動安全炉である(図10参照)。受動安全(シビアアクシデント対応の二重格納容器採用などで炉心溶融確率10−6/年以下)、簡単な運転、競争力ある経済性(60年寿命、高燃焼度70GWd/t)、MOX燃料利用可能(50%まで)などを達成した。すでにフィンランドで建設中で、フランスでも建設が決定され、中国から2基受注を受けた。
(2)CE型PWR
 原子炉冷却系統構成は、図11に示すような2ループ構成(蒸気発生器2基、一次冷却材ポンプ2基)である。蒸気発生器(図12)はWH型PWRとほぼ同じであるが、気水分離部、蒸気乾燥部、伝熱管曲部などで異なる。このCE(コンバスチョンエンジニアリング)型蒸気発生器を美浜1号で採用している。CE型PWRはSystem80と呼ばれ、System80を改良発展させたSystem80+(130万kWe)は大幅に安全性と経済性を向上させた次世代型大型炉である。図13に示すように、System80と比較して1桁以上炉心損傷確率が減少している。既に米国NRCにより設計承認されている。この2ループ構成はAP1000でも採用されている。
(3)B&W型PWR
 CE型PWRと同じ原子炉冷却系統構成の2ループ構成である。蒸気発生器は、図14に示すように、立置型直管貫流式で過熱蒸気を発生する。1979年に事故を起こしたTMI発電所はB&W(バブコックアンドウィルコックス)型PWRである。
(4)VVER(WWER)
 ロシア型加圧水型炉である。西欧型との大きな相違は、燃料集合体が六角格子配置(西欧型は正方格子状配置)であることと、蒸気発生器が横置型であることである。VVER−1000(100万kWe級)では西欧型並の安全性が確保されているが、フィンランドや東欧では西欧型の採用が続いている。
(前回更新:2001年2月)
<図/表>
表1 APWRとPWRの主要仕様の比較
図1 WH型PWR原子炉容器の変遷
図2 PWR原子力発電所主要系統概略
図3 PWR原子炉容器内構造図
図4 PWR燃料集合体構造図
図5 PWR制御棒駆動装置
図6 PWR非常用炉心冷却系統図概略
図7 WH型PWR(4ループ)の原子炉冷却系構成
図8 WH型PWRの蒸気発生器
図9 AP600原子炉格納容器の受動的冷却系
図10 EPR原子炉系建屋配置
図11 CE型PWR原子炉冷却系構成
図12 CE型PWRの蒸気発生器
図13 System80とSystem80+の炉心損傷確率の比較
図14 B&W型PWRの蒸気発生器

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
発電用原子炉の炉型 (02-01-01-10)
韓国標準型軽水炉(KSNP) (02-01-01-11)
原子力発電技術の開発経緯(PWR) (02-04-01-01)
改良型加圧水型原子炉(APWR) (02-08-02-04)
System 80+ (02-08-03-02)
AP600及びAP1000 (02-08-03-04)
原子力発電拡大を目指す米国の動き (14-04-01-36)
加圧水型炉(PWR)開発の発端 (16-03-01-05)

<参考文献>
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(2)火力原子力発電技術協会(編・刊):原子力発電所−全体計画と設備−(改訂版)、火力原子力発電技術協会(2002年6月)
(3)AREVA:EPR,the first generation III+ reactor currently under construction,(2007年9月)
(4)Westinghouse:AP1000,(2007年9月)
(5)東京電力(株):米国における原子炉新設計画(2007年9月)
(6)H.Yamaguchi et al.:Design Features of APWR in Japan,IEAE-SM-353-24(1998)
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(10)International Nuclear Safety Center(ANL):VVER Design,
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(11)K.Takakuwa et al.:Advanced PWR in Japan,3rd Conf.JSME/ASME Joint Inter.Conf.on Nucl.Eng.Apr.23−27,1995,Kyoto,Japan
(12)H.Yamaguchi et al.:Design Features of APWR in Japan,IAEA−SM−353−24(1998)
(13)W.マーシャル(編)・住田健二(監訳):原子炉技術の発展(上)、筑摩書房(1986年9月)、p.281
(14)科学技術庁:FBR広報素材資料集(第2版)(平成2年3月)
(15)日本原子力発電:敦賀発電所原子炉設置変更許可申請書(昭和55年8月)
(16)通商産業省資源エネルギー庁公益事業部原子力発電課(編):原子力発電便覧1999年版、電力新報社(1999年10月)、p.85
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