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<概要>
 エネルギーに関する国民の意識を把握し、今後の施策の参考とするため、経済産業省、内閣府(政策統括官(科学技術政策担当))が、(社)中央調査社に委託して平成17年(2005年)12月「エネルギーに関する世論調査」を実施した。調査結果によれば、国民の約半数が、暮らしに欠かせないもののうち特に重要なものとして「エネルギーの安定供給」を選択しており、エネルギー政策の基本方針を国民は支持し、エネルギー政策における政府の役割に期待している。新エネルギーの導入に積極的な意見が多いが、利用には更なるコストダウンが必要であり、省エネルギーに対して高い関心はあるものの、行動化が課題である。国民の約7割が原子力に対して肯定的であり、原子力エネルギーに関する認知度が増加しているが、原子力発電に対しては適切な安全規制とともに情報開示の徹底が必要である。マスメディアが引き続き情報提供において重要な役割を担うとともに、学校教育が重要と考えられる。
<更新年月>
2007年08月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.はじめに
 エネルギーに関する国民の意識を把握し、今後の施策の参考とするため、経済産業省、内閣府(政策統括官(科学技術政策担当))が、(社)中央調査社に委託して平成17年(2005年)12月エネルギーに関する世論調査を実施した。

2.調査の概要
調査対象:(1)母集団;全国20歳以上の者
       (2)標本数;3,000人
       (3)抽出方法;層化2段無作為抽出法
回収数/標本数:1,712/3000   回収率:57.1%
調査方法:調査員による個別面接聴取
調査時期:平成17年(2005年)12月15日〜12月25日
質問項目:(1)エネルギー全般に対する意識・関心について
       (2)省エネルギー・新エネルギーに対する意識・関心について
       (3)原子力エネルギーに対する意識・関心について
       (4)エネルギー広報等について

3.調査の結果
3.1 エネルギー全般に対する意識・関心について
(1)暮らしの上で欠かせないもの(3つまでの複数回答、上位4項目)
 生活上欠かせないもののうち、特に重要なものは、「食料の安定供給」80.0%、「医療サービスの安定供給」62.9%、「エネルギーの安定供給」48.2%、「公的年金・保険制度の安定供給」45.0%などの順となり、食料、医療サービスに次いで第3位となっている。
(2)エネルギー政策の視点
 エネルギー問題を考えるに当たって最も重要なものは、「安定供給が保障されていること」39.2%、「値段が安いこと」18.6%、「地球温暖化など環境に優しいエネルギー源であること」40.9%となっており、「エネルギーの安定供給」と「環境への適合」、これらを十分考慮した上での「市場原理の活用」というエネルギー政策の基本方針について、国民の支持が得られていると考えられる(図1参照)。
(3)エネルギー価格高騰の影響、エネルギー政策の在り方などについて
 現在、原油価格がこの1年間で倍以上に高騰したことによるガソリンや灯油など国内の石油製品の値上がりによって生活にどのような影響が出ているか、最も実感にあうものについては、「生活に大きな影響が出ており、自家用車の利用をやめるなど大幅な節約を強いられている」7.7%、「生活に影響が出ており、自家用車の利用を減らすなどの工夫を行っている」20.6%、「生活に影響が出ているが、自家用車の利用を減らすなどの節約は特段行っていない」29.0%、「今のところ生活に影響はない」40.7%となっている。
 エネルギー価格の高騰が更に進んだ場合の対応については、「市場に任せ、政府が介入すべきでない」3.0%、「エネルギー関連予算を拡充し、先進的な取組の支援や広報活動を強化すべき」45.9%、「様々な取り組みに加え法規制の強化を検討すべき」34.3%となっている(複数回答、上位3項目、図2参照)。
 エネルギー政策として最優先すべき課題は、「高くとも二酸化炭素を全く排出しない太陽光発電、風力発電など新エネルギーの導入を推進する」59.1%、「安くて便利な石油の利用を拡大する」35.9%、「生活スタイルを大きく変えることになっても、省エネルギーを大胆に推進する」34.7%、「多少高くとも、石油と較べれば二酸化炭素の排出が少ない天然ガスの利用を拡大する」34.1%などの順となっている(3つまでの複数回答、上位4項目)。
 また、石油ショック以来、わが国は国家備蓄と民間備蓄約半々で合計約170日分を維持・強化しているが、石油備蓄の今後の在り方について最も適切と思うものは、約8割の国民が「石油備蓄を強化すべき」と回答している。「民間備蓄の強化・支援」20.3%に対し、「国家備蓄の強化」が41.8%であり、国家備蓄の強化を選択した者が民間備蓄の強化を選択した者の約2倍となっている(図3参照)。
 さらに、わが国が輸入している石油の約1割は、わが国の企業が開発・生産している自主開発原油で、緊急時にもわが国に確実に輸入できる原油である。自主開発には巨額な費用がかかることなどから、政府による支援が欠かせないが、石油の自主開発の今後の在り方について適切だと思うのについては、約55%が「政府が支援し、自主開発原油の割合を引き上げるべき」と回答している(図4参照)。
3.2 省エネルギー・新エネルギーに対する意識・関心について
(1)省エネと生活スタイル、省エネ支援策、省エネ行動などについて
 省エネルギーの今後の進め方について、「電気の消費量を半分近く落とすなど、自分の生活スタイルを大きく変えてでも、本格的な省エネ活動に消費者自ら取り組むべき」24.8%、「本格的な省エネ活動には賛成だが、自分の生活スタイルは変えるのは難しいので、相当高価であっても省エネ機器・住宅等を消費者として自ら選択すべき」13.9%、「本格的な省エネ活動には賛成だが、自分の生活スタイルは変えるのは難しいので、高価な省エネ機器・住宅等の購入に対する助成措置を政府は講じるべき」18.1%、「省エネについては、仮に不十分であっても、基本的な自分の生活スタイルは変えない範囲で、不要な電気の消灯や普通に買える範囲の省エネ機器の購入などの取り組みを進めるべきだし、政府も、そうした活動への支援策を講じるべき」34.5%となっている。
 日頃可能な範囲での省エネに対する取組を促進するために、どのような取組を強化することが必要かは、「小・中学校からエネルギー全般や省エネに関する教育を積極的に行う」55.4%、「省エネに関するPR活動にメーカーや販売事業者自身がもっと積極的に取り組むよう政府としても支援する」35.9%、「省エネに関するPR活動を政府自らもっと積極的に行う」32.5%、「省エネ性能に優れた住宅、自動車、家電等に税制、補助金等の購入優遇措置を導入する」32.4%、「省エネ性能に優れた住宅、自動車、機器等に関する技術開発を支援する」31.7%などの順となっている(複数回答、上位5項目)。
 日常生活で省エネのために心がけていることは、「電灯や冷暖房を控えめにする、こまめに消す」71.1%、「テレビやラジオを見る時間を減らす、こまめに消す」44.7%、「家電等の買い換えの時に、省エネの視点から商品を選ぶ」35.7%、「電気カーペットの電気を必要な部分だけつける」34.8%、「湯沸かし器や風呂などの口火をつけたままにしないようにする」34.6%、「家族全員が間をあけないように入浴をすませる」30.8%などの順となっている(複数回答、上位6項目)。
 政府は、各家庭などでの省エネへの協力を呼びかけるため、目安となる室温設定を冷房28度と公表している。その設定温度については、「暑い」39.8%、「適切」51.3%、「寒い」2.2%となっている。また、目安となる室温設定を暖房20度と公表している。その設定温度については、「暑い」4.2%、「適切」52.1%、「寒い」38.8%となっている。暖房温度については、現在、一般については20度、政府へは19度と呼びかけている。一般にも19度にすべきかについては、「思う」32.9%、「思わない」49.3%となっている。
 テレビや冷蔵庫、冷暖房器具などを購入する際、どういう場合に省エネ製品を購入するかは、「製品価格によらず、省エネ性能の高い機器を購入する」19.7%、「省エネ性能による運転費用の節約分がもっとはっきり分かるようになれば、購入する」30.9%、「省エネ性能による運転費用の節約分で製品の価格差が回収できるなら購入する」24.8%、「省エネ性能よりも、価格をはじめその他の性能を重視して購入する」12.5%、「省エネ性能のことは特段考慮しない」8.6%となっている。
(2)新エネの認知度と利用条件
 新エネルギーの認知度は、「風力発電(風の力で発電機をまわして電気を作る)」85.9%、「太陽光発電(太陽電池を利用して発電)」84.6%、「太陽熱利用(太陽熱温水器などの利用)」79.1%、「クリーンエネルギー自動車(電気自動車、天然ガス自動車など)」61.9%、「廃棄物発電、熱利用(ごみの焼却熱を利用)」57.2%などの順となっている(複数回答、上位5項目)。
 費用面でどの程度条件が合えば、太陽光発電を使うかについては、「既に使っている」1.7%、「耐用年数までに最初にかけたお金の回収はできなくても、環境に優しいエネルギーであれば、使いたい」9.6%、「耐用年数までに、毎年の電気代の削減ですべて回収できる程度のお金(150万円程度)で購入できるようになれば、使いたい」37.8%、「自ら太陽光発電設備を購入することには興味はないが、太陽光や風力などの新エネルギーから発電した電気であれば、多少高くても使いたい」10.5%、「自ら購入することに興味はないし、新エネルギーから発電した電気を使うことにも興味はない」24.1%となっている。
3.3 原子力エネルギーに対する意識・関心について
(1)原子力エネルギーに関する認知度、原子力の推進に関する姿勢について
 原子力発電の特性や現状については、「日本の電力の3分の1は原子力発電によって賄われている」46.8%、「原子力発電は、発電の過程で二酸化炭素が排出されず地球温暖化防止に貢献する」35.6%、「使用済みの核燃料から再び燃料として使用できるウラン等を回収(再処理)することによって、ウラン資源の有効利用を図ることができる」34.8%、「燃料のウランは石油などに比べて供給が安定している」30.7%などの順となっている(複数回答、上位4項目)。今後、わが国の原子力発電について、どのように考えるか聞いたところ、「推進していく」55.1%(「積極的に推進していく」8.0%+「慎重に推進していく」47.1%)、「廃止する」17.0%(「将来的には廃止する」14.7%+「早急に廃止する」2.3%)、「現状を維持する」20.2%となっている(表1および図5参照)。
(2)原子力の安全性に関する認知度
 わが国の原子力発電について、どのように感じているかについては、「安心である」24.8%(「安心である」4.4%+「何となく安心である」20.4%)、「不安である」65.9%(「何となく不安である」48.1%+「不安である」17.8%)となっている。前者が原子力発電を安心だと思う理由については、「国を信頼しているから」37.2%、「わが国の原子力発電所は十分な運転実績を有するから」30.4%、「わが国の原子力発電所は安全だから」29.6%、「電気事業者を信頼しているから」24.5%などが高くなっている(複数回答、上位4項目)。後者が、原子力発電が不安だと思う理由については、「事故が起きる可能性があるから」80.2%、「海外で大きな事故が起こっているから」44.2%、「事業者による虚偽報告やデータ改ざんなどの不祥事が続いたから」38.7%、「国がどのような安全規制を実施しているのか分からないから」36.5%、「原子力発電所の故障や事故のマスコミ報道がなされているから」34.6%、「事業者の原子力に関する情報公開や広報活動が不十分だから」(31.7%)などの順となっている(複数回答、上位6項目)。
(3)原子力に関する地域との協力関係
 原子力については、安全確保に加えて、地域との密接な協力関係が欠かせないが、仮にあなたのお住まいの地域に新たに原子力発電所が建設されるとすれば、国はどのような配慮や施策を行うべきと考えるかについては、「事業者に対し、適切な安全規制を徹底する」53.9%、「事業者に対し、原子力発電所に関する情報開示の徹底を義務づける」47.5%、「事業者に対し、安全対策に更に一層力を入れるような措置をとる」44.5%、「原子力発電所の立地地域の住民に対し、きめ細かな広聴・広報活動を行う」41.4%などの順となっている(複数回答、上位4項目)。
(4)核燃料サイクル政策の推進
 今後、原子力発電所から出る使用済み燃料を再処理し、利用可能な資源を回収・加工して有効に再利用する核燃料サイクルを進めていくに当たって、国が取り組むべきものについては、「核燃料サイクルの円滑な運営にあたって、国が必要な技術支援を行うべき」26.3%、「非核兵器国で唯一、商業用の再処理施設の保有が認められていることへの国際的な理解を着実に得るべき」9.6%、「関連施設の立地地域の理解と協力を着実に得るべき」12.2%、「国民が正しい知識を得る機会を増やすべき」35.0%となっている。
3.4 エネルギー広報等について
 エネルギーに関する広報活動については、「テレビ・ラジオ等を通じたCMや番組」76.6%、「新聞・雑誌等を通じた広告や特集記事」54.5%、「行政の広報紙(例:自治体だより)等を通じた情報提供」27.4%、「パンフレットやリーフレット」26.2%などの順となっている(複数回答、上位4項目)。信頼できる情報ルートについては、「テレビ・ラジオ等を通じたCMや番組」42.5%、「行政の広報紙(例:自治体だより)等を通じた情報提供」39.3%、「新聞・雑誌等を通じた広告や特集記事」37.3%、「エネルギーの専門家の発言」26.8%などの順となっている(複数回答、上位4項目)。今後のエネルギー教育については、「小・中学校の義務教育課程において、エネルギー教育を必修化し授業時間を増やす」57.6%、「テレビ、新聞などのマスコミを通じてエネルギーに対する理解を深める」49.4%、「地域社会、児童・生徒の家庭と連携しつつ、学校が主体となってエネルギーに関するイベントや特別講座などに取り組む」31.5%、「学校の先生に対してエネルギー情報の提供や研修会を実施する」28.6%、「公民館など社会教育施設を利用して、子供たちにとどまらず大人も対象とした活動を行う」25.6%、「児童・生徒が自ら参加できるようなコンクールや体験学習会等を開催する」24.2%などの順となっている(複数回答、上位6項目)。

4.まとめ
 国民の約半数が、暮らしに欠かせないもののうち特に重要なものとして「エネルギーの安定供給」を選択しており、エネルギー政策の基本方針を国民は支持し、エネルギー政策における政府の役割に期待している。新エネルギーの導入に積極的な意見が多いが、利用には更なるコストダウンが必要であり、省エネルギーに対して高い関心はあるものの、行動化が課題である。国民の約7割が原子力に対して肯定的であり、原子力エネルギーに関する認知度が増加しているが、原子力発電に対しては適切な安全規制とともに情報開示の徹底が必要である。マスメディアが引き続き情報提供において重要な役割を担うとともに、学校教育が重要と考えられる。
<図/表>
表1 エネルギーに関する世論調査の比較
表1  エネルギーに関する世論調査の比較
図1 エネルギー政策の視点
図1  エネルギー政策の視点
図2 エネルギー価格の高騰が更に進んだ場合の対応
図2  エネルギー価格の高騰が更に進んだ場合の対応
図3 石油の備蓄について
図3  石油の備蓄について
図4 石油の自主開発について
図4  石油の自主開発について
図5 原子力の推進に関する姿勢
図5  原子力の推進に関する姿勢

<関連タイトル>
エネルギー・原子力に関する世論調査(1994年)「エネルギー・環境問題(1)」 (10-05-01-04)
エネルギー・原子力に関する世論調査(1994年)「エネルギー・環境問題(2)」 (10-05-01-05)
「エネルギーと環境」に関する中学生の意識調査報告書 (10-05-01-13)
原子力と環境リスクに関する意識調査(東海村) (10-05-01-14)
原子力発電の事故・事件と社会の受け止め方 (10-05-01-16)
リスク認知における専門家と一般市民の差 (10-05-01-17)
原子力発電と地球温暖化に関する意識調査 (10-05-01-18)

<参考文献>
(1)内閣府大臣官房政府広報室:エネルギーに関する世論調査(平成17年12月調査)
(2)経済産業省:「エネルギーに関する世論調査」について(平成18年3月13日)
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