<大項目> 放射線影響と放射線防護
<中項目> 原子力施設に係わる放射線防護
<小項目> 放射線防護の基礎
<タイトル>
被ばく制限値の推移 (09-04-01-02)

<概要>
 被ばく制限値は、個人の受ける被ばく線量を制限するために設定される。わが国においては、1957年に施行された「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(以下放射線障害防止法)」を中心とした法体系において設定されている。これらの法律の目的は、1)放射性同位元素の使用・販売・廃棄等取扱い、2)放射線発生装置の使用、3)放射性同位元素によって汚染された物の廃棄その他取扱い、を規制することにより、放射線障害の発生を防止し、公共の安全を確保することにある。放射線障害防止法における被ばく制限値は、原則として国際放射線防護委員会ICRP)勧告を根拠として制定されており、現行の放射線障害防止法は、1990年のICRP勧告に沿って2000年に改正され、現在に至っている。放射線作業者の実効線量限度は、2001年4月1日以後、5年ごとに区分した各期間につき100mSv、年あたり50mSvと定められている。また、一般公衆については、年あたり1mSvを目安にして制限されるように定められている。
<更新年月>
2005年01月   

<本文>
1.法令における被ばく制限値の推移
 被ばく制限値は、個人の受ける被ばく線量を制限するために設定される。わが国においては、1957年に施行された「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(以下放射線障害防止法)」を中心とした法体系において、被ばく制限値が設定されている。これらの法律の目的は、1)放射性同位元素の使用・販売・廃棄等取扱い、2)放射線発生装置の使用、3)放射性同位元素によって汚染された物の廃棄その他取扱い、を規制することにより、放射線障害の発生を防止し、公共の安全を確保することにある。
 放射線障害防止法における被ばく制限値は、原則として国際放射線防護委員会(ICRP)勧告を根拠として制定されている。現行の放射線障害防止法は、1990年のICRP勧告に沿って2000年に改正され、現在に至っている。現行法令の放射線業務従事者の線量限度を表1に示す。
 わが国における放射線防護規制は、まず医学用のX線機器の普及と放射性同位元素の利用の拡大に伴って、1948年に医療法施行規則に、X線取扱い施設設計基準が制定された。作業者の防護基準は、1954年の労働基準局長通達において全身線量で週あたり0.3R(レントゲン)、手または前腕の部分照射に対して週あたり1.5R(レントゲン)が暫定的に用いられた。
 1955年の原子力三法成立により、放射線障害防止法(上述)が施行された。放射線障害防止法に基づいて、国際放射線防護委員会(ICRP)勧告を受けて国内関連法令の改正に関する諮問を行う機関として放射線審議会(科学技術庁)が1958年に設置されている。
 1960年の被ばく規制値は、最大許容被ばく線量が3レム/3ヶ月、最大許容集積線量は5(N−18)であった(Nは作業者の年齢)。放射線作業従事者及び管理区域随時立入者の区別も定義されたが現行法令ではすでに廃止されている。1987年には、1977年のICRP勧告に沿って年あたり50mSvと定められた。
2.被ばく制限値の考え方の推移
 被ばく制限値の基になるICRPの考え方は、時代と共に大きく推移している。1954年勧告では、「可能な限り低い水準まで(to the lowest possible level)」被ばく線量を制限するとしていたものが、1958年には「実行可能な限り低く(ALAP:as low as practicable)」、1965年には「容易に達成できる限り低く(as low as readily achievable)」、1977年には社会・経済的要因を考慮に入れながら「合理的に達成できる限り低く(ALARA:as low as reasonably achievable)」という表現に替わってきている。
 被ばく制限値に対する考え方も、いわゆる「がまん」線量の意味合いのある「耐容線量」から、「最大許容線量」、「線量限度」へと変更されている。その結果、被ばく制限値は、「ここまでなら容認できる線量の上限値」から「これ以上は容認できない線量の下限値」へとその意味が変わってきている。現行の法令における被ばく制限値は、「これ以上は容認できない線量の下限値」として設定されており、放射線防護体系(行為の正当化防護の最適化、線量限度)の一つとして機能することになっている。
 即ち、被ばくを制限する考え方は、1954年の理想論から1977年の現実論へと次第に変容している。制限値そのものの数値は、この間次第に切り下げられているが、これには経済的観点から歯止めのあることを、このような理念の変化で表明していると考えられる。
 あくまでも線量限度は、この線量まで被ばくしてよいという量ではないことは明らかである。
<図/表>
表1 現行法令における線量限度

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
放射線防護の歴史 (09-04-01-01)
放射線防護の目標 (09-04-01-04)
ICRPによって提案されている放射線防護の基本的考え方 (09-04-01-05)
ICRPによる放射線防護の最適化の考え (09-04-01-07)
ICRP勧告(1990年)による個人の線量限度の考え (09-04-01-08)
放射線防護の3原則 (09-04-01-09)
作業環境管理と個人管理 (09-04-01-10)
作業者と一般公衆の防護 (09-04-01-11)

<参考文献>
(1)吉澤康雄:「放射線健康管理学」、東京大学出版会、1978
(2)ICRP Publication 26,”Recommendation of International Commission on Radiological Protection”,Pergamon Press(邦訳日本アイソトープ協会)1977
(3)ICRP Publication 9,”Recommendation of International Commission on Radiological Protection”,Pergamon Press(邦訳日本アイソトープ協会)1965
(4)(社)日本アイソトープ協会:アイソトープ法令集(放射線障害防止法関連法令)I、丸善、(2003)
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ