<大項目> 開発中の原子炉および研究炉等
<中項目> 新型転換炉
<小項目> 新型転換炉の構造と特徴
<タイトル>
重水減速沸騰軽水冷却型原子炉 (03-02-02-01)

<概要>
 わが国が開発を進めている新型転換炉(ATR)は、重水減速沸騰軽水冷却型原子炉である。1979年に運転を開始した「ふげん」は新型転換炉の原型炉で高いウランプルトニウム転換比が得られる原子炉である。重水を減速材とするため、天然ウランやプルトニウムと混合した回収ウランを燃料とすることができ、ウラン資源やウラン濃縮量の節約が図れる。また、プルトニウムバーナー炉としても注目されている。原子炉は沸騰軽水冷却圧力管型である。ここでは重水減速沸騰軽水冷却型原子炉の例として「ふげん」を取り上げ説明する。
 発電プラントは沸騰水型発電プラントとほぼ同様な構成であり、運転操作や非常時対策もほぼ同様である。ただし、減速材に重水を使用しているため重水系が加わり系統全体としては複雑となっている。
 2003年3月29日運転終了し、9月30日新型転換炉の開発業務を終了した。今後、廃止措置計画に移行する。
<更新年月>
2004年02月   

<本文>
1.原理
 わが国が新型動力炉開発の一環として自主技術により開発を進めている新型転換炉は、重水減速沸騰軽水冷却型原子炉である。蒸気発生重水炉あるいは軽水冷却重水炉と呼ばれることもある。この型と同型の重水減速型発電炉としては英国のWinfrith(SGHWR)、カナダのGentilly−1(CANDU−BHW)およびイタリアのCirene(HWLWR)があったが、いずれも閉鎖している。1979年3月に運転を開始した「ふげん」(動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構))(電気出力16万5000kW)は新型転換炉(ATR:Advanced Thermal Reactor)の原型炉であり、実績では0.7の転換比を達成している。ATRは重水の減速効率が大きいこと及び中性子吸収が小さいことを活かし、天然ウラン、微濃縮ウランまたはプルトプニウムを混合した減損ウランを燃料とすることができ、タービンを駆動する蒸気は直接燃料を冷却した冷却水から蒸気ドラムで発生させる(図1)。
 このためATRは減速材である重水と冷却材である軽水を分離しており、重水はカランドリアタンク内に、燃料集合体と冷却水は圧力管内に挿入してあり、これらを原子炉としてまとめるために、カランドリアタンク内にカランドリア管を正方ピッチで配置しカランドリア管の内側に圧力管を貫通させた構造となっている。さらに、燃料集合体を運転中に取替えられるように圧力管には下部にシールプラグを取り付けている(図2)。
 減速材である重水は重水系の重水冷却器で冷却され温度は60℃に保たれている。燃料集合体の構成を図3に示す。燃料は現在主に混合酸化物燃料(MOX)を使用している。これは中性子が温度の低い重水で効率良く減速されるので、中性子がプルトニウムに無駄に共鳴吸収される確率が小さくなると共に、有効吸収中性子1個当りにつき、核分裂性プルトニウムが核分裂して放出する中性子数がU−235と同程度になり、核分裂性プルトニウムをU−235とほぼ同様に利用できることによる。
 制御棒はカランドリア管の間の重水中に挿入される。中性子は重水中を比較的長い距離を移動するので制御棒の反応度効果は平均化され、また使用する燃料の種類にあまり影響されない。このためATRは制御棒の仕様と配置を変更せず、混合酸化物燃料(MOX)やウラン燃料などを装荷できる。
 燃料を冷却している軽水のボイド反応度係数は天然ウラン燃料炉心では正であるが、ウラン濃縮度の増加あるいはプルトニウムの利用によって負に転じる。
2.冷却系
 ATRの原子炉に係る冷却系は重水系と軽水系に分けられる。重水は中性子照射、γ線吸収等により発熱する。カランドリアタンク内の重水は重水ダンプタンクにオーバーフローした後、重水循環ポンプにより重水冷却器、制御棒案内管を経て、カランドリアタンクに戻される。重水の劣化を防止するため重水の上部表面にはヘリウムガスを充填し、またカランドリアタンク内で生成される重水分解ガスはヘリウム循環系において再結合される(図1)。
 軽水冷却系は2ループで構成されている。ループは再循環ポンプ、下部ヘッダ(ウォータードラム)、入口管、圧力管及び蒸気ドラム等で構成されている。炉心で熱せられた冷却水は蒸気と水の二相流となり蒸気ドラムに入る。この中の気水分離器により分離された蒸気は蒸気タービンへ、水は再循環ポンプに導かれる(図1)。下部ヘッダの両側には直列の2個の逆止弁を設けており、下部ヘッダに注入された非常用冷却水(急速注水系、低圧注水系、高圧注水系)は直接炉心にのみ供給される。
3.圧力管
 次に、ATRを構成している機器のうち特徴とされている圧力管について説明する。圧力管は炉心に設置されるので、中性子吸収が少なく強度が大きく耐食性の優れたZr−2.5%ニオブ合金を用いている。この合金圧力管はステンレス鋼の配管と溶接結合が困難であるため、機械的接合法であるロールドジョイント法により、圧力管上部および下部の圧力管延長管と接合している。下部延長管の下端には燃料交換用のシールプラグを装着している(図4)。
 圧力管とカランドリア管の間には断熱用の炭酸ガスを封入し、炭酸ガスの湿分を検出することにより圧力管とカランドリア管の健全性確認を行なっている。
 原子炉の出力制御は、炉心を4領域に区分し、その区分のほぼ中央にある出力調整用制御棒によって行なわれる。燃焼に伴う緩やかな反応度変化は重水中のポイゾン濃度を調整して行う。
4.制御棒
 制御棒は炉心上方のコンクリートスラブに設置している制御棒駆動装置により引き抜き挿入が行なわれる。反応度制御として制御棒の制御の他に、重水中のホウ素濃度の制御も用いている。
 原子炉に異常が発生または発生のおそれがある場合には、制御棒駆動装置内の電磁クラッチが開放され制御棒は重力で一斉に挿入される(原子炉スクラム)。制御棒による緊急停止のバックアップとして重水ダンプも用いている。
5.非常用炉心冷却系
 原子炉冷却系の配管に万一破断事故が発生し圧力管より冷却水が喪失する場合を想定し、燃料の破損を防止するため非常用炉心冷却系(ECCS)を設けている。この系は急速注水系、高圧注水系および低圧注水系で構成している。これらの系はそれぞれ独立2系統より成っている。急速注水系は、原子炉冷却系配管の破断時に、高圧、低圧注水系が作動するまでの間注水する。
 高圧注水系は、原子炉冷却系配管の中小破断事故時に、蒸気ドラム内にスプレー注水し、ドラム内の減圧を早めて低圧注水系の作動を促進する。低圧注水系は、原子炉冷却系配管の大破断事故時に、蒸気ドラム水位極低信号によって低圧注水ポンプを作動し、下部ヘッダまたは蒸気ドラムに注水する(図1)。
6.格納容器
 一方、破断口から流出した高温高圧の原子炉冷却水には放射性物質が含まれている可能性があるため、これを外部に流出させないように原子炉格納容器を設置している。この格納容器内は原子炉、原子炉冷却系機器および重水系の主要機器等を格納している。さらに格納容器より漏洩した放射性物質が外部へ放散するのを防止するため、格納容器の円筒部にはアニュラス部を設けここを負圧に保っている。アニュラス部に漏洩した放射性物質は非常用フィルタにより除去される。
7.燃料取扱設備
 「ふげん」では、新燃料の搬入、炉心への装荷、使用済燃料の取出し、搬出等の燃料取扱いは運転中に行なえるよう設計されている。炉心への装荷は交換装置を炉心下方に移動して所定の圧力管に結合し、原子炉圧力とバランスをとった後、圧力管下部に装着してあるシールプラグ、遮蔽プラグならびに燃料集合体を取出し交換装置内の新燃料を挿入して行なわれる(図5)。
 このように設計上は運転中に燃料を交換できるようになっているが、実際は実施されていない。理由は、燃料に与える温度の急激な変化を嫌って大事をとっているからである。また燃料の寿命を延ばしているので、頻繁に取り替える必要もなくなった。
 2003年3月29日運転終了し、9月30日新型転換炉の開発業務を終了した。今後、廃止措置計画に移行する。
<図/表>
図1 新型転換炉「ふげん」発電所主要系統図
図2 新型転換炉「ふげん」原子炉本体
図3 新型転換炉「ふげん」燃料集合体
図4 新型転換炉「ふげん」圧力管の構造とロールドジョイント
図5 新型転換炉「ふげん」燃料取扱設備全体構成図

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
海外の重水減速沸騰軽水冷却圧力管型原子炉 (03-02-05-01)
カナダ型重水炉(CANDU炉) (02-01-01-05)
重水冷却圧力容器型炉 (03-02-05-02)
新型転換炉の特徴 (03-02-02-02)
新型転換炉と軽水炉の相違 (03-02-02-03)
新型転換炉の制御特性 (03-02-03-01)
原型炉「ふげん」 (03-04-02-09)

<参考文献>
(1)動力炉・核燃料開発事業団:新型転換炉原型炉「ふげん」技術成果の概要、PNCTN1410 91−052(1991)
(2)動力炉・核燃料開発事業団:新型転換炉の開発−大洗工学センターの実規模試験
(3)火力原子力発電技術協会(編):やさしい原子力発電、火力原子力発電技術協会(1990年6月)
(4)核燃料サイクル開発機構:
(5)核燃料サイクル開発機構・ふげん発電所:年表ふげんのあゆみ
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ