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<概要>
 わが国の新型転換炉と同型の重水減速沸騰軽水冷却圧力管原子炉は、海外においても早期に開発に着手され、英国では出力10万kW炉(1968年〜1990年)が、カナダでは25万kW炉(1972年〜1978年)が全出力運転をしていた。燃料は前者が微濃縮ウラン、後者が天然ウランを利用のほか、燃料構造、原子炉制御、燃料交換、工学的安全防護システムなども、それぞれ独自の方式が採用されている。そのほかイタリーでは4万kW炉の計画があったがその後中止となった。
<更新年月>
1998年03月   

<本文>
 わが国の新型転換炉と同型の重水減速沸騰軽水冷却圧力管型炉は、海外において早期に開発に着手され、英国のWinfrith SGHWRは1968年から1990年まで、カナダのGentilly−1は1972年から1978年まで全出力運転していた。現在運転中のSGHWR型の発電所は、原型炉ふげん」のみである。
 重水減速発電炉型の原子炉プラントの主要諸元を 表1 に示す。現状を 表2 に示す。SGHWRは微濃縮ウラン、Gentillyは天然ウラン利用が特徴である。このほか燃料集合体、原子炉制御方式、燃料交換方式、原子炉安全防護システムなどもそれぞれ独自の方法を採用している。
1.英国
 1963年、原型炉SGHWRの設計、建設が許可され、Winfrithで現地工事が開始された。新しいこの型の原子炉の開発に際し、原子炉の基本性能に関係する炉心核特性、熱水力特性および燃料集合体、圧力管の耐久性などについては実規模の試験研究施設を設け、設計の実証確認を行い、原子炉の設計、製作、建設が進められた。
 SGHWRは1967年建設完了、翌年電気出力10万kWの全出力運転を開始した。
 原子炉は「ふげん」同様竪型圧力管構造で、炉心冷却系は独立2ループ方式を採用している。圧力管は122本、その内8本は蒸気過熱用チャンネルである。原子炉冷却系の材料は圧力管、蒸気ドラムを除きステンレス鋼、蒸気ドラムは軟鋼製で、その内面はステンレス鋼溶接内張りである。
 SGHWRの開発および運転経験の主要なものを次に示す。
(1)運転開始当初、燃料表面に酸化物層が生成、破損が発生した。原子炉冷却材浄化系の設計不良によるもので、改造後問題は解決した。
(2)出力運転中燃料交換を実施したが、天然ウラン利用の場合と異なり利点はなく、軽水炉プラント同様停止時交換が行われる。
(3)炉心冷却系は5年毎耐圧試験を行い、大口径配管溶接部は全て供用期間中検査(ISI)が行われる。
(4)圧力管の寸法、内面検査が継続して行われ、寿命期間中問題なしと推定されている。
(5)建設中の検査で認められるクラック、又は燃料交換中の事故により発生するクラックが、炉寿命期間中の圧力サイクルにより、不安定破壊を招くような大きさに成長しないことの証明に、多大の努力が払われ、クラック成長速度およびクラックの制限値(CCL−Critical Crack Length)が求められ、圧力管の信頼性、健全性への確信が得られている。
 1974年SGHWRの運転実績が評価され、同国の次期炉はSGHWRと決定され、電気出力66万kWの実証炉(C)の設計、検討が開始されたが、1977年再度次期炉評価が行われ、軽水型発電炉と比較して特に大きな長所がないと判断され、炉型は改良型黒鉛ガス炉(AGR)に変更された。またWinfrithのSGHWRも1990年に閉鎖となった。
2.カナダ
 カナダで開発されてきた重水冷却の横置圧力管型重水炉がCANDU−PHW(Pressurized Heavy Water)と呼ばれるのに対し、カナダ唯一の沸騰軽水冷却の重水炉はCANDU−BLW(Boiling Light Water)と呼ばれる。
 CANDU−BLWは1960年代初頭より設計研究が始められ、1966年実規模の原型炉を開発するGentilly−1プロジェクトが発足した。プラントは1970年初臨界、1972年電気出力25万kWの全出力運転を開始した。
 炉心冷却系は独立2ループ構成である。冷却系配管材料は火力発電所同様炭素鋼が採用され、運転前管内面に防錆処理が施された。
 燃料は天然ウラン、燃料集合体は信頼性が確立されているCANDU−PHWと同様の短尺燃料集合体が採用され、縦型の圧力管チャンネル内に10本装荷される。
 燃料交換は原子炉下部より運転中に行う。1回の操作で燃料集合体8本を交換し、上下両端の2本は炉内装荷時間が2倍となる交換方式を採用している。
 反応度制御は制御棒、原子炉冷却材流量、重水中のボロン濃度により行い、低出力時の反応度補償を行うためのブースター・ロッドが設けられている。
 Gentilly−1プラントは着工後50ヶ月で完成、1972年発電を開始したが、認可試験、出力上昇準備段階で、原子炉冷却材循環ポンプの破損が発生した。また炉心の冷却材ボイド反応度係数は正で解析予想値よりも大きく、炉心は低出力で中性子束の空間的不安定現象が現れた。炉物理実験を行い、炉特性解析精度を向上させ、制御系に各領域の中性子束および冷却材流量を計測比較する2つのシステムを新設し、1972年全出力運転を開始したもののGentilly−1プラントは完成後の運転は余り順調でなく、1978年5月運転閉鎖となった。
3.イタリア
 早期に開発に着手し、1970年代初頭には電気出力4万kWの原型炉を建設するCirene計画を決定したが、その後国民投票により他の原子力発電所の閉鎖とともに、この計画も中止となった。
 燃料はGentilly−1と同様天然ウラン採用、短尺燃料集合体を圧力管内に装荷するものである。天然ウラン燃料は正の冷却材ボイド反応度係数、出力係数の問題を招き、カナダの勧めもあり、同計画では燃料設計、安全保護系設計の見直しをした。炉物理実験を行い、微濃縮ウランの採用も考慮して、冷却材ボイド反応度係数を負としながら、炉心出力を最大にする燃料体および炉心設計が行われた。
また原子炉部品検査技術の改良、燃料集合体の耐久性評価の開発試験計画も進められていた。
<図/表>
表1 世界における重水減速型原子力発電炉の設計主要目
表1  世界における重水減速型原子力発電炉の設計主要目
表2 世界各国における重水減速型発電炉の現状
表2  世界各国における重水減速型発電炉の現状

<関連タイトル>
重水減速沸騰軽水冷却型原子炉 (03-02-02-01)
重水冷却圧力容器型炉 (03-02-05-02)
重水冷却圧力管型炉(CANDU)の開発 (03-02-05-03)

<参考文献>
(1)THE WINFRITH SGHWR,UKAEA
(2)SGHWRの設計、運転、経験、動力炉・核燃料開発事業団(1951年2月)
(3)Nuclear Engineering,Nov. 1972
(4)Proc. of the 9th Juice Meeting on HWR,Mar.1982
(5)Status of Advanced Technology and Design for Water Cooled Reactors: Heavy Water Reactor,IAEA(1989)
(6)日本原子力産業会議(編):原子力ポケットブック1997年版、日本原子力産業会議(1997年5月)、p192?194
(7)W.マーシャル(編)住田健二(監訳):原子炉技術の発展(下)、筑摩書房(1986年10月)、p443?512
(8)日本原子力産業会議(編):世界の原子力発電の動向−1996年次報告、1997年4月
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