<大項目> 開発中の原子炉および研究炉等
<中項目> 高速増殖炉
<小項目> わが国の高速増殖炉の開発
<タイトル>
動燃/サイクル機構における高速増殖炉研究開発 (03-01-06-06)

<概要>
 高速増殖炉の実用化に向けて、動燃(現日本原子力研究開発機構)では、高速実験炉「常陽」、高速増殖原型炉「もんじゅ」の開発をはじめ広範な分野で研究開発が実施され成果を挙げた。すなわち実験で実証された炉心核熱解析手法、高性能・長寿命化を目標にした燃料・材料の照射挙動などに関するデータの蓄積、機器の設計・製作の妥当性などを検証するモックアップ試験、プラントのシステム設計手法、高温構造設計方針や材料強度データの集積、ナトリウム技術の確立など膨大な知識や経験が蓄積された。また安全性の向上のため、熱流動、炉心損傷、ナトリウム漏洩などに関する安全研究や確率論的安全評価手法の確立が図られた。動燃改組後の核燃料サイクル開発機構(現日本原子力研究開発機構)はこれらの研究を継続しつつ、平成11年度から実用化戦略調査研究を開始した。
<更新年月>
2003年10月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 自主技術による高速増殖炉の実用化を目指しての研究開発活動は、きわめて広範な分野にわたる。昭和42年(1967年)10月に設立された動力炉・核燃料開発事業団(動燃(現日本原子力研究開発機構))は、高速実験炉「常陽」および高速増殖原型炉「もんじゅ」の開発のため大洗工学センターに各種の大型試験施設を整備し、研究開発を展開し、多くの成果を挙げており、その主要な活動について述べる。
 平成10年(1998年)10月に動燃を改組して発足した核燃料サイクル開発機構(現日本原子力研究開発機構)(以下、サイクル機構(現日本原子力研究開発機構)と略す)は、従来の研究開発を継続しつつ、平成11年度から高速増殖炉、燃料製造、再処理を各要素として構成する高速増殖炉サイクルのシステムを全体として適切化を計る実用化戦略調査研究を開始したので、その概略を示す。
1.炉心技術
 動燃では、日本原子力研究所(原研(現日本原子力研究開発機構))のFCA、英国のZEBRA(MOZART計画)および米国のZPPR(JUPITER計画)など国内外にある高速臨界実験装置で得られた実験データ(図1参照)や「常陽」の性能試験データを用いて、炉心核特性の設計・解析手法の信頼性を実証し、設計・解析システムの確立を図っている。また遮蔽特性については、東京大学の高速中性子源炉「弥生」、米国のTSF(JASPER計画)を用いた遮蔽実験のデータや「常陽」、米国の高速材料試験炉FFTFで得られた測定データを解析し、解析手法が整備された。
 これらの解析コードシステムは「常陽」および「もんじゅ」の設計や核特性、遮蔽特性の把握に役立てられている。さらに解析法の高度化を進めるとともに、高燃焼度・大型炉心の核特性の解明、遮蔽構造のコンパクト化などの研究を行っている。
 一方、炉心内の熱流力の研究では、燃料被覆管や構造材温度が許容値以下になるよう冷却材の流量配分を決めるため、モックアップ装置を用いた水流動試験で検証された炉心流量配分解析コードが開発された。
2.燃料・材料
 高い安全性と信頼性をもち、高燃焼度が達成できる高性能・長寿命化燃料の開発を目標に、プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料の製造、物性、照射挙動などに関し膨大な技術的知見や経験が蓄積され、それらを支える照射技術や照射後試験技術が開発されている。また高温流動ナトリウムと高速中性子照射が重畳する環境下で使用される被覆管、ラッパ管などの炉心材料として秀れた性質をもつ材料の開発も進められている。
 これらの技術にもとづき、「常陽」の燃料は75,000MWd/tを達成し、「もんじゅ」燃料は80,000MWd/t、実証炉燃料は130,000MWd/t度、実用炉燃料は200,000MWd/t程度と燃焼度の目標を高くしている。図2に燃料開発の経過と今後の展開を示した。また、制御棒の長寿命化、高性能化のための吸収材、遮蔽性能の高い中性子遮蔽体材料の研究も行われている。
 一方、燃料や制御棒の使用期間中の現象を正確に予測し、その健全性評価、寿命評価を行うための種々の挙動解析コードが開発された。また燃料の熱設計手法および構造設計手法の改良、高度化が実施され、その妥当性は照射試験データにより実証された。燃料・材料に関するデータの量は莫大なものであるが、これらの有効利用を図るため図3に示すデータベースシステムが整備され、その充実が図られている。
3.機器・システム
 高速増殖炉特有の原子炉容器、炉内構造物などの原子炉構造機器、ナトリウム循環ポンプ、中間熱交換器などの冷却系機器および制御棒駆動機構燃料交換機などは「常陽」、「もんじゅ」の実機の設計、製作に先行して、大洗工学センターに設置された大規模な試験施設で各種の試験が実施された。
 「常陽」用機器は、大部分実寸大モデルを用いてその特性の把握と設計・製作の妥当性を検証し、実機に反映させた。「もんじゅ」用機器は、循環ポンプや制御棒駆動機構などの動的機器は実寸大モデル、静的機器は、縮尺モデルや部分モデルで試験が実施された。蒸気発生器に関しては、1MWおよび50MWの蒸気発生器を用い、性能評価や信頼性の実証、保守技術の確立などの研究開発が実施され、成果は「もんじゅ」に反映された。
 冷却系機器の単体モックアップ試験とともに、冷却系システムの設計、解析用コードの開発と検証を通じて、システム設計法を確立するなど高速増殖炉プラントのシステムに関する研究開発も行われ、成果を挙げている。
 さらに安全性、経済性を目指した大型炉用機器として、ベローズ継手による配管長の短縮、機器のコンパクト化、二重管蒸気発生器などの開発も進められている。
4.構造材料
 高速増殖炉の機器・配管の材料は、使用温度も高く(「もんじゅ」では約530℃)、ナトリウム中や中性子照射のような環境で使用される。このため大気中およびナトリウム中で種々の条件下で多くの試験や照射試験を実施し、材料強度に関する膨大なデータを蓄積するとともに、設計許容限界を与える材料強度基準を整備した。
 一方、構造物要素強度試験、構造物強度確性試験および構造物熱過渡試験などにより、機器・配管など構造物の健全性、設計の妥当性、構造材の温度応答などのデータが蓄積され、機器の設計、解析手法や評価手法を確証した。
 これらの研究開発の成果を集大成し、「もんじゅ」用機器の高温構造設計方針と材料強度基準が作成され、合理的な機器の設計に貢献したが、さらに実証炉や実用炉の開発に向け、評価法や適用範囲の拡大、新しい材料用の基準など高温構造設計方針や材料強度基準の高度化の研究開発が進められている。
 また、構造物亀裂進展試験や耐震構造試験などにより、安全性の評価、確認が行われている。
5.ナトリウム技術
 高速増殖炉の冷却材に用いられるナトリウムは、化学的に活性な物質で大気中で燃焼し、酸素、水素、および炭酸ガスと反応して純度が低下する。また常温では固体であり、液体状態を保つには通常約150℃以上に予熱・保温する必要がある。このようなナトリウムを大量に取扱う技術や経験は、高速増殖炉の開発を開始した昭和40年頃は少なかったことから、伝熱流動、機器、材料の開発と並行して、ナトリウム技術の研究開発が実施された。 ナトリウム技術の主要なものは、不純物除去(コールドトラップ)や不純物濃度計などの純度管理技術、予熱システム、ナトリウム中の放射性腐食生成物(CP)や核分裂生成物(FP)の挙動と除去技術、ナトリウム火災の消火技術、ナトリウム洗浄技術などである。
 これらナトリウム技術に関する研究開発が開始されてから約20年を経過し、「常陽」の運転経験を含め、ナトリウム取扱技術についての知識と経験は充分に蓄積された。しかしながら、「もんじゅ」では、性能試験中の1995年12月に40%出力運転のところ、二次主冷却系配管から約0.7トンのナトリウムが漏洩した。これは配管に挿入していた温度計のさや管が、その中間で径が急激に変化する段付き部において、ナトリウムの流れによる流力振動と同さや管の固有振動との共振現象に起因した高サイクル疲労によって折損したことによる。そこでサイクル機構(現日本原子力研究開発機構)では、温度計さや管を段付き部のない設計とする、ナトリウムの漏洩検出法を改善する、漏洩量を低減するためナトリウムのドレン時間を短縮する、漏洩した部屋を小区画化する、窒素ガスを噴出する設備を設ける等の対策を講じることとしている。また、大洗工学センターでは、計算機による流力振動の再現解析、事故を模擬した「ナトリウム漏洩燃焼実験」を行い、計算コードの改良、検証を進めている。
6.安全研究
 安全研究は、異常や事故が進展する状況を実験と解析により解明し、それらを防止する対策やその影響を緩和する方策などの機能や性能を確認・実証することである。
 熱流動の分野では、プラントが通常運転状態から異常や事故状態に変化した時の熱流動現象を実験と解析とから明らかにし、各種の熱流動安全解析コードが整備された。さらに事故状態を大巾に超えた条件下で起るナトリウム沸騰の挙動などの研究も実施された。
 炉心損傷では、一部の燃料が損傷した局所事故や全炉心事故を取り上げ、前者はフランスのSCARABEE炉内試験への参加、後者は日・仏・独・英の共同実験であるCABRI炉内実験に参画するなど国際協力を活用して、炉心損傷の進展防止および固有の安全機能の追求とモデル化が行われ、成果を挙げている。また炉心崩壊過程を解析するSIMMERコードの改良、整備も進められている。
 プラント安全に関しては、蒸気発生器や二次冷却系などのナトリウムの漏洩、燃焼とその影響、事故時の格納容器の安全性などの解析コードの開発や実験的検証が行われた。
 複雑に事象が移り変る現象の安全評価に有効な確率論的安全評価(PSA)手法を高速増殖炉に適用するため、事故に至る物理過程の解析、放射性物質の移行・放出の解析やリスク解析、システムの信頼度解析などの計算コード群のネットワーク化、日・米共同の高速増殖炉機器の信頼性データベースの築、拡大が図られている。
 これらの安全研究により、高速増殖炉の実用化に向けて合理的な安全設計や評価方法に役立てられている。
 一方、実証炉1号機の建設主体となる原子力発電(株)の設計研究に対して、動燃は技術協力を進めるとともに、将来の実用炉のための安全性、炉心・燃料および高温構造システムの3分野を柱とするFBR固有の技術の一層の確立を目指した。また、プルトニウムおよびマイナーアクチニド消滅についても、核燃料サイクル確立の立場から、アクチニドリサイクル試験炉の成立性についての概念設計にも広く革新技術を取り入れて着手した。
7. 実用化戦略調査研究
 近年、ウランの可採埋蔵量が約43年から約74年へと大幅な見直しがなされたこと、電力事業の規制緩和、市場原理の導入等により、海外先進各国ではFBRの導入時期を2030年頃から2050年頃へと遅らしても、より経済性を模索する方向を取りはじめた。この流れに沿ってわが国でも、動燃を改組して生まれた核燃料サイクル開発機構(現日本原子力研究開発機構)(サイクル機構(現日本原子力研究開発機構))が、平成11年度から「実用化戦略調査研究」を開始した。
 この研究では、高速増殖炉、燃料製造、再処理を各要素として構成する高速増殖炉サイクルのシステムを全体として適切化を計るもので、安全性の確保を前提に、経済性の向上、資源の有効利用、環境負荷の低減、核不拡散性の確保を開発目標としている(図4図5参照)。適切化のため、上記の各要素の選択肢の詳細な検討を進めている。ちなみに、高速増殖炉については、炉心燃料の形態(酸化物、金属、窒化物)、冷却材(ナトリウム、重金属、ガス、水等)、出力規模(大型炉、中小型モジュール炉等)について、燃料サイクルとの整合性に留意しつつ、革新的な要素技術も取り込んで、開発目標に合致するシステム概念を検討している。(図6参照)
 この研究の全体工程は、フェーズ1(2年間)で実用化候補概念を抽出し、フェーズ2(5年間)で実用化候補を絞り込み、2015年頃には競争力あるFBRサイクル技術を提示する、としている(図7参照)。また、実施体制はサイクル機構(現日本原子力研究開発機構)、電気事業者(9電力、原子力発電、電源開発、電力中央研究所)およびメーカー各社との共同チームを大洗工学センターに組織するとともに、原研(現日本原子力研究開発機構)との間で協力協定を締結し、国際協力を活用しつつオールジャパン体制としている。
<図/表>
図1 高速増殖炉臨界実験の実施状況
図2 高速増殖炉燃料開発の展開
図3 高速増殖炉燃料・材料データベースシステム
図4 FBRサイクルの基本的な考え方
図5 実用化戦略調査研究フェーズIIの開発目標
図6 実用化戦略調査研究のフェーズIIの展開
図7 実用化戦略調査研究の進め方

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
日本における高速増殖炉開発の経緯 (03-01-06-01)
高速実験炉「常陽」における研究開発 (03-01-06-03)
高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の開発(その1) (03-01-06-04)
わが国の高速増殖炉実証炉計画 (03-01-06-05)
サイクル機構以外の研究機関における高速増殖炉研究開発 (03-01-06-07)

<参考文献>
(1)動力炉・核燃料開発事業団:動燃二十年史(1988年10月)
(2)動力炉・核燃料開発事業団:動燃技報、No.73(1990年3月)
(3)岡林 邦夫:実用化を目指した高速炉技術−FBR固有の技術開発 第27回報告と講演の会予稿集、動力炉・核燃料開発事業団(1994年10月)
(4)動力炉・核燃料開発事業団:動燃技報、No.100(1996年12月)
(5)基礎高速炉工学編集委員会(編):基礎高速炉工学、日刊工業新聞社(1993年10月)
(6)日本原子力産業会議(編):原子力ポケットブック1998/99年版、日本原子力産業会議(1999年2月)
(7)J,Nedderman:Japan's No.1 Demonstration FBR Nucl. Eng. Int’l.23,May1995
(8)核燃料サイクル開発機構:サイクル技報 No.12 別冊 (2002)
(9)核燃料サイクル開発機構:サイクル技報 No16 別冊 (2002)
(10)核燃料サイクル開発機構、日本原子力発電株式会社 「高速増殖炉サイクルの実用化戦略調査研究 (フェーズII) 2002年度成果報告書」、JNC TN1400 2003-002(2003)
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