<大項目> 開発中の原子炉および研究炉等
<中項目> 高速増殖炉
<小項目> わが国の高速増殖炉の開発
<タイトル>
高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の開発(その1) (03-01-06-04)

<概要>
 高速増殖原型炉もんじゅ」は、わが国の高速増殖炉実用化の技術基盤を確立するため、(独)日本原子力研究開発機構(旧:動力炉・核燃料開発事業団)を中心に自主開発しているプルトニウム燃料・ナトリウム冷却の電気出力280MWの発電プラントである。昭和58年5月に設置許可を受け、昭和60年10月に本格着工、平成3年5月からの総合機能試験を経て、平成6年4月に初臨界を達成し、さらに性能試験を重ね、平成7年8月29日初発電を達成した(電気出力5%、熱出力40%)。しかし、平成7年12月8日、40%出力試験のため原子炉出力を上昇中、2次主冷却系配管の温度計部からナトリウムが漏えいする事故が発生し、プラントは停止した。その後は「もんじゅ」運転の早期再開と、10年程度以内を目処に所期の目的を達成することが優先的に取り組まれていった。
 事故原因の究明を平成9年3月に終えると共に、平成8年12月からは施設の安全総点検を実施してナトリウム漏えい対策等に係る改善策を確立し、平成13年6月6日、核燃料サイクル開発機構(当時(現日本原子力研究開発機構))は、経済産業省原子力安全・保安院へ原子炉施設の安全性向上を目指した改造工事等を目的とする「もんじゅ」の原子炉設置変更許可を申請し、安全審査が行われ、平成14年12月に原子炉設置変更の許可を得た後に、平成16年1月にそれに基づいた設計及び工事の方法の変更が認可された。平成17年2月、福井県及び敦賀市より改造工事着手についての事前了解を受け、3月より準備工事を開始し、9月からは改造工事に移行した。ここでは、平成18年度までの「もんじゅ」の開発等についてまとめる。
<更新年月>
2013年12月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.高速増殖原型炉「もんじゅ」の開発の目的と進め方
 高速増殖原型炉「もんじゅ」は、原子力委員会が策定した動力炉開発の基本方針に基づき、動力炉・核燃料開発事業団(現(独)日本原子力研究開発機構)を中心に昭和43年以来開発を進めてきた発電プラント(プルトニウム燃料、ナトリウム冷却、電気出力280MW)である。原型炉「もんじゅ」の開発の目的は、高速増殖炉を実用化するため、実用炉に至る中間規模の原型炉をわが国で自主開発することである。つまり「もんじゅ」の設計、製作、建設、運転の経験を通じて、高速増殖炉の性能、信頼性、安全性を実証するとともに、実用炉についての技術的課題の解決の見通しを得、併せて実用炉段階でわが国の産業界が国際競争力を確保できるよう技術基盤を確立することであった。
 「もんじゅ」の開発は、個々の要素技術とそれらを総合したプラントシステム技術を自主開発により積み重ねて進められた。すなわち、「もんじゅ」のために実施された種々な分野での数多くの研究開発の成果を「もんじゅ」計画のスケジュールにタイミングよく逐次反映するとともに、高速実験炉「常陽」の設計、建設、運転で得られた技術的知見や経験も取り入れ、さらに海外の情報も有効に活用しながら「もんじゅ」の設計、建設が進められた。
 なお、平成17年10月閣議決定された「原子力政策大綱」において、原型炉「もんじゅ」を研究開発の場の中核と位置付け、運転を早期に再開し、10年程度以内を目途に「発電プラントとしての信頼性の実証」と「運転経験を通じたナトリウム技術の確立」という所期の目的を達成することに優先的に取り組むべきとしている。また、「今後の原子力発電に関する基本的な考え方として、高速増殖炉については、軽水炉燃料サイクル事業の進捗や「FBRサイクルの実用化戦略調査研究」、「もんじゅ」等の成果に基づいた実用化への取組を踏まえつつ、ウラン需給の動向等を勘案し、経済性等の諸条件が整うことを前提に、2050年頃から商業ベースでの導入を目指す。」とされている。
2.高速増殖原型炉「もんじゅ」の概要
 「もんじゅ」発電プラントは電気出力280MWで、1次及び2次ナトリウム冷却系、水・蒸気系の各々が独立した3系統をもつループ型炉である。表1に「もんじゅ」の設計主要目を、図1にプラント構成の概要を示す。炉心で発生した714MWの熱は、1次ナトリウム冷却材(1ループ当たりの流量は5,100t/h、全流量15,300t/h)で炉容器外に運び出され、中間熱交換器を介して非放射性の2次ナトリウム冷却材(1ループ当たりの流量3,700t/h)に伝逹される。この熱はさらに蒸気発生器(ヘリカルコイル貫流式分離型)で2次ナトリウム冷却材から水・蒸気への熱交換を行い、ここで発生した蒸気(温度483℃、圧力127kg/cm2g、3ループ合計の全蒸気量約1,100t/h)で発電機の蒸気タービンを駆動し発電する。このようにして、原子炉で発生した熱エネルギーは、約40%の効率で280MWの電気エネルギーに変換され、275kVの送電系へ送り出される。
 原子炉の炉心は、炉心燃料集合体(198体)とそれを取り囲むブランケット燃料集合体(172体)、中性子遮蔽体(316体)及び制御棒集合体(19体)等によって構成される。炉心燃料領域はプルトニウム富化度の異なる2種類(核分裂性プルトニウムを約16wt%及び21wt%含むプルトニウム・ウラン混合酸化物燃料)であり、高富化度の炉心燃料を外側に配置して、出力の平坦化を図った2領域炉心である。炉心燃料の周囲に円環状に配置したブランケット燃料は劣化ウランの二酸化物であり、その外周の中性子遮蔽体はステンレス鋼製である。
 原子炉の起動、停止、出力の制御は、中性子をよく吸収する炭化ホウ素を中性子吸収材とした制御棒によって行われる。
 原子炉容器はステンレス鋼製の底部鏡板付の円筒たて型容器(胴部内径約7m、高さ約18m、胴部肉厚約50mm)であり、その外側には万一のナトリウム冷却材漏洩に備え、ガードベッセル(安全容器;保護容器とも呼ばれる)が設けられている。
 原子炉容器の上方部には、炉心からの放射線を遮蔽する遮蔽プラグが設置されている。この遮蔽プラグは、固定プラグとこれから偏心した位置に中心をもつ回転プラグから成り、回転プラグには制御棒駆動機構燃料交換機等が搭載されている。
 燃料交換時等原子炉の停止後の炉心の崩壊熱を除去するために、2次ナトリウム冷却系の途中から分岐して蒸気発生器と並列した位置にある、空気冷却器を用いた補助冷却設備がある(図1参照)。
 蒸気発生器は、蒸発器と過熱器から成る。これらには、万一水や蒸気がナトリウム中に漏れた場合、ナトリウムと水の化学反応で発生する水素を素早く検出して給水や原子炉を停止するための水漏えい検出設備が設けられている。さらに、大きな漏れの発生を想定して、発生した水素の圧力を開放する圧力開放板やナトリウム・水反応生成物収納容器等の安全設備が設けられている。
 万一の原子炉施設の故障や損傷等の原因で、原子炉内の燃料の破損等が起り、多量の放射性物質が外部に放散される可能性のあるような事故が起きた場合、これらを抑制または外部への放散を防止するため、原子炉格納施設、アニュラス循環排気装置、ガードベッセル、補助冷却設備及び1次アルゴンガス系収納施設等の工学的安全施設が設置されている。
3.高速増殖原型炉「もんじゅ」の建設
 「もんじゅ」のサイトは敦賀半島の北端部の福井県敦賀市白木地区にあり、敷地面積は約108万平方メートルである。図2に「もんじゅ」の主要施設の配置を示す。
(1)建設に至るまでの経緯
 「もんじゅ」の建設候補地として昭和45年4月に白木地区を選定して以来、地元の同意を得るべく説明会を数多く開催し、その了承を得て昭和51年7月に事前調査が開始された。
 環境審査は、昭和53年から行われた環境影響調査(環境アセスメント)、及び立地点白木が国定公園の特別地区にあたるため昭和54年から行われた自然公園法による自然環境調査、の2本立てで行われ、それぞれ昭和55年に終了した。
 一方、「もんじゅ」の具体的計画は、原子力委員会によるチェック・アンド・レビューを受け、昭和51年9月に計画の実施が認められた。
 原子炉設置許可申請は昭和55年12月に行われ、行政庁による第一次安全審査が開始され、その審査結果を踏まえて昭和57年5月には白木地区に「もんじゅ」を建設することについての地元の了承が得られた。続いて「もんじゅ」が開発中の炉であることから、商用炉における電源開発調整審議会(現総合資源エネルギー調査会電源開発分科会)に相当する閣議の了解がなされた。その後内閣総理大臣が原子力安全委員会に諮問を行い、原子力安全委員会による第二次安全審査が開催され、昭和57年7月に地元敦賀市で公開ヒアリングが実施された。
 原子力安全委員会による安全審査は約1年かけて行われ、昭和58年4月に原子力委員会と原子力安全委員会は内閣総理大臣に答申し、同審査結果の地元説明会を経て同年5月に原子炉設置許可が交付された。
 「もんじゅ」の建設についての地元の了承と閣議了解を得た昭和57年5月から、準備工事に必要な、自然公園法、森林法、農地法、公有水面埋立法等の許認可申請を行い、昭和58年1月から準備工事に着手した。準備工事は、樹木の伐採を極力少なくする等環境保全に配慮しつつ、敷地造成、進入道路、防波護岸等に分けて進められた。
(2)建設の状況
 図3に建設工事工程(実績)を示す。「もんじゅ」の建設工事は、原子炉等規制法に基づく設計及び工事の方法の認可(設工認)と電気事業法に基づく工事計画の認可(工認)を得て、昭和60年10月の本格着工以来工程通りに順調に進み、平成3年4月に機器据付を完了した。引き続き、図4(a)に示す核的性能以外のプラント性能を調べる総合機能試験を実施したのち、図4(b)に示すプラント特性予備試験、及び核的性能を含めた臨界試験、炉物理試験、出力試験から構成される性能試験が進められ、平成6年4月5日には初臨界を達成した。その後も各種の試験が順次段階的に着実かつ慎重に実施され、平成7年8月29日、初発電(電気出力5%、熱出力40%)するに至った。また、本格的な発電運転に備え、平成元年10月に運転準備室が設置され、発電運転開始に向けて準備が進められた。運転員の教育・訓練も計画的に行われており、平成3年4月からはサイト内に設置した高速炉運転訓練シミュレータによる運転員訓練が行われた。
4.ナトリウム漏えい事故と改良工事
 平成7年12月8日、40%出力試験のため原子炉の出力を上昇中、2次主冷却系Cループ配管の温度計からナトリウムが漏えいする事故が発生した。事故の状況を確認しつつ原子炉の出力を降下し、その後原子炉を手動でトリップした。漏えいしたナトリウムの総量は約640kgと推定され、下部床ライナに山状に堆積すると共にエアロゾルとなって建物内外に飛散したが、ナトリウムは非放射性であるため放射線による環境への影響はなかった(図5)。漏えいの原因は、温度計の配管内のウェル部分(さや管)が流力振動によって高サイクル疲労を生じ折損し、ナトリウムが流出したものであった。
 原因究明は平成9年3月に終了したが、平成8年12月から、原因究明の過程で明らかになった問題点等について、「もんじゅ」の安全性、信頼性の向上や技術的信頼の回復を目的とした安全総点検を実施し、ナトリウム漏えい対策等に係る改善策を確立し、平成13年6月6日、核燃料サイクル開発機構(当時(現日本原子力研究開発機構))は経済産業省原子力安全・保安院へ「もんじゅ」の改善工事等を目的とする原子炉設置変更許可を申請し、平成14年12月許可を得た(図6図7図8図9図10及び図11)。また、事故の直接の原因となった温度計については、改良型温度計の「設計及び工事の方法の変更に係る認可申請」が平成14年6月に認可され、「もんじゅ」の安全性総点検に係る対応状況についても、平成14年11月に原子力安全・保安院により妥当性が確認され、平成16年1月にナトリウム漏えい対策等に係る設計及び工事の方法の変更も認可された。さらに、地元福井県が独自に設置した「もんじゅ安全性調査検討専門委員会」での審議を経て、平成17年2月7日地元自治体との安全協定に基づく改造工事着手についての事前了解を受け、3月より準備工事を開始し、9月からは改造工事に移行した。平成18年9月末時点の改造工事の進捗率は約80%であった(図12及び図13参照)。「もんじゅ」に対しては、FBR実用化技術の実証施設として、また、マイナーアクチニドの燃料実証試験施設として海外からも期待が寄せられていた。
 
 なお、「もんじゅ」については、昭和60年に周辺住民から福井地裁に原子炉設置許可処分の無効確認を求める行政訴訟及び建設・運転の差止めを求める民事訴訟が提起された。民事訴訟については、平成15年3月に訴えが取り下げられたが、行政訴訟については、第二審(名古屋高裁金沢支部)で国側が敗訴したため、国側は平成15年1月に最高裁に上告受理申立て(上訴)を行った。最高裁は、平成16年12月に同申立てを上告審として受理した後、平成17年5月に「原判決(国の設置許可を無効とした名古屋高等裁判所金沢支部判決)を破棄し、被上告人の控訴を棄却する」との判決を言い渡し、これにより国側の勝訴が確定した。
(前回更新:2006年11月)
<図/表>
表1 「もんじゅ」の設計主要目
図1 「もんじゅ」の原子炉プラント構成図
図2 「もんじゅ」の主要施設配置図
図3 「もんじゅ」の建設工事工程
図4 「もんじゅ」の総合機能試験工程と性能試験工程
図5 「もんじゅ」ナトリウム漏えい事故の状況(平成7年12月8日)
図6 ナトリウム漏えい対策の概要
図7 煙感知型/熱感知型のナトリウム漏えい検出器設置
図8 ナトリウムドレン機能の強化
図9 窒素ガス供給系への窒素ガス貯蔵タンク、供給配管等の設置
図10 圧力開放ダンパの設置
図11 蒸発器ブローダウン性能の改善
図12 「もんじゅ」改造工事の概要
図13 「もんじゅ」改造工事工程

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
高速増殖炉のプラント構成 (03-01-02-02)
日本における高速増殖炉開発の経緯 (03-01-06-01)
動燃/サイクル機構における高速増殖炉研究開発 (03-01-06-06)
高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の開発(その2) (03-01-06-09)
高速増殖炉原型炉「もんじゅ」訴訟の経緯 (10-05-02-10)

<参考文献>
(1)動力炉・核燃料開発事業団:動燃二十年史(1988年10月)
(2)動力炉・核燃料開発事業団:高速増殖炉の開発(1979)
(3)動力炉・核燃料開発事業団:第27回 報告と講演の会予稿集(平成6年10月)
(4)高橋忠男、ほか:「もんじゅ」の試運転と臨界へのアプローチ、日本原子力学会誌、Vol.37、No.1(1995)
(5)動力炉・核燃料開発事業団 動力炉開発部門(編):動き出した高速増殖原型炉もんじゅ—その歩み、現状と今後の展開、原子力工業、Vol.40、No.6(1994)
(6)三浦正憲、ほか:高速増殖炉開発の現状と実用化見通し、日本原子力学会誌、Vo1.37、No.2(1995)
(7)田辺道夫、ほか:「もんじゅ」の総合機能試験、動燃技報、No.93(1995年3月)
(8)広井博、ほか:「もんじゅ」事故と原因究明の現状、動燃技報、No.99(1996年9月)
(9)第18回もんじゅ安全性調査検討専門委員会:参考資料(平成15年9月16日)
(10)原子力委員会:平成17年版原子力白書(平成18年3月)、

(11)(独)日本原子力研究開発機構ホームページ:もんじゅの改造工事、

(12)経済産業省:改造工事の内容と安全性確保対策、総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会原子炉安全小委員会もんじゅ安全性検討会(第1回)配布資料1-7、(独)日本原子力研究開発機構(平成17年11月)、

(13)経済産業省:海外の高速炉におけるトラブル事例等の反映について、総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会原子炉安全小委員会もんじゅ安全性検討会(第4回)配布資料4-3、(独)日本原子力研究開発機構(平成18年3月)、

(14)高橋忠男、ほか:「もんじゅ」臨界を達成して、原子力誌、Vol.36、No.5(1994)
(15)村山衛、ほか:「もんじゅ」の機器据付完了−試運転へ、原子力誌、Vol.33、No.11(1991)
(16)動力炉・核燃料開発事業団高速増殖炉もんじゅ建設事務所:高速増殖炉もんじゅ−設計・建設・試運転の軌跡−(1994年7月)
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