<大項目> 原子力発電
<中項目> 技術の改良・高度化
<小項目> 軽水炉高度化
<タイトル>
System 80+ (02-08-03-02)

<概要>
 System 80+は米国のABB-Combustion Engineering社が開発中の電気出力1300MWの次世代 PWRで、当社が開発した従来型炉(System 80)を改良発展させたものである。本炉の特徴は以下の通りである。(1)原子炉システムは2ループ式PWRで、過渡時の応答特性を緩和するため、蒸気発生器加圧器を大型化し、二次系保有水量も増加。(2)運転余裕を15%以上増加。(3)運転保守性を向上させるための設計変更を行ない、運転寿命60年、設備利用率87%以上、年間休止期間30日以内、従業員の被曝線量の低減を達成。(4)安全系統の多重化を進め、安全注入水源の切り替えを不要とする。(5)球形鋼製大型格納容器と円筒形コンクリート遮蔽建屋の採用。(6)計装制御系に最新技術を採用。(7)炉心損傷事故対策を強化し、炉心損傷確率の2桁低減を達成。
<更新年月>
1996年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 System 80+は米国のABB-Combustion Engineering社が1985年以来開発してきた次世代の大型PWRで、当社が開発した従来型炉(System 80)を改良発展させたものである。

1.安全目標
 System 80+は改良型炉の安全性に関する以下の安全目標をすべて満足している。
(1)熱的運転余裕が15%以上増加すること
(2)異常状態でのプラント過渡応答を緩和すること
(3)炉心損傷確率は10万年に1回以下
(4)破断口径が15cm以下の原子炉冷却材喪失事故時には炉心損傷は発生しないこと
(5)発電所ブラックアウト時にも8時間の対処余裕があること
(6)敷地境界で25rem以上の被曝線量となる事故の発生確率は百万年に1回以下
(7)大型で頑丈な格納容器を設置すること

2.原子炉システムの構造
 System 80+の格納容器構造を 図1 に示し、主要機器の水平配置を 図2 に示す。、一次冷却系の構造と改良点を 図3 に示す。
(1)原子炉システムの特徴
 本炉は電気出力1300MWの2ループ式PWRで、各ループに1基の蒸気発生器と2基の循環ポンプを有している。従来型炉と比較して、本炉の蒸気発生器の伝熱面積は17%増大し、伝熱管には腐食防止のためインコネル690を採用するとともに、保守時のアクセス性を向上して従業員の被曝線量を低減している。また、過渡応答特性を緩和し原子炉トリップに余裕を持たせるため、加圧器容量を33%増大させるとともに、蒸気発生器の二次側の保有水量も25%増大させている。
(2)運転保守性に関する特徴
本炉の運転寿命は60年で、設備利用率は87%以上である。定期検査による休止期間は年間30日以内で、想定外の原子炉停止は年間1回以下となっている。従業員の年間被曝線量は100 man-rem 以下である。また、保守性を改善するため、自己試験機能の付加、供用期間中検査の低減、作業スペースの増加、安全系統と非安全系統の分離などの設計改良を行っている。
(3)安全系統
 事故の発生防止と影響緩和のため、安全系統は冗長性と多様性を有する深層防御(Defense-in-Depth)の考え方で設計されている。事故時の安全注入系(SIS)および非常用給水系(EFWS)はそれぞれ4系統から構成されている。格納容器スプレイ(CSS)および安全注入用の水は格納容器内燃料交換用水タンク(IRWST)を用いており、供給水源の切り替え操作は不要となる。緊急冷却水はコールドレグではなく原子炉容器に直接注入される。格納容器スプレイ系統と停止時冷却系統(SCS)のポンプは共用されており、相互にバックアップが可能で信頼性が向上している。停止時冷却系統は一次系圧力に耐えられる設計となっており、放射性物質の環境への放出となる原子炉冷却材喪失事故(LOCA)を防止する設計となっている。
(4)格納容器
 本炉では球形鋼製格納容器を採用しており、従来の円筒形格納容器に比べて作業スペースが75%増大し、球状境界面を利用することにより換気系統が簡素化され、配管および電気ケーブルの長さが短縮できる。球形格納容器の外側には円筒形コンクリート遮蔽建屋があり、二重格納容器の機能を有している。
(5)計装制御系
 分散式マイクロプロセッサー技術、データー通信技術、およびマンーマシンインターフェイス等の最新のソフトウエア技術を計装制御系に全面的に適用し、デザインの大幅な簡素化を実現している。 図4 に示すように、計装制御系統の物量は従来型炉より60〜80%減少している。 図5 に新型制御室(Nuplex 80+)の概要を示す。運転員の判断を容易にするため、警報や表示はダイナミックな情報階層システムに統合されており、バックアップ専用および非常時専用のパネルは廃止している。また、デジタルプラント防護系を採用し、自動オンライン機能試験を行なうことにより、大部分の定期的機能試験を削除できる。大型の状態監視スクリーンを設置して、一目でプラント状態の把握が可能となり、不必要な警報等は削除している。

3.炉心損傷事故への設計上の対応
 System 80+は炉心損傷事故に関して以下のような設計対応を行っている。
(1)溶融炉心の受動的冷却
 原子炉容器を貫通した溶融炉心を冷却するため、重力を利用した受動的手段により、原子炉容器下部の空間(キャビティ)を冠水する。
(2)水素の燃焼対策
 大型球形格納容器内部の自然循環により、水素の蓄積を防止するとともに、水素の通り道に水素燃焼器を設置する。
(3)安全減圧系
 原子炉一次系を急速に減圧し、炉心を常に冠水状態に保持するとともに、高圧状態での破損による格納容器直接加熱を防止する。また、本システムの作動により、一次系への冷却水供給(フィード&ブリード運転)を促進して、崩壊熱の除去も行なう。
  図6確率論的リスク評価(PRA)により求めた炉心損傷確率を従来炉(System 80)と比較した結果を示す。ここでは運転中の原子炉に起因する事象(内的事象)のみを対象としている。System 80+は従来炉よりも炉心損傷確率が約2桁減少している。この理由は、安全減圧系の追加により崩壊熱除去機能を多様化したことと、電源分配系統(EDS)の改良により発電所ブラックアウトの可能性を大幅に減少させたためである。
<図/表>
図1 System
図2 System
図3 System
図4 従来型炉とSystem
図5 System
図6 System

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<関連タイトル>
受動的安全炉の安全概念 (02-08-03-01)
AP600及びAP1000 (02-08-03-04)

<参考文献>
(1) C.W.Bagnal,et al.: System 80+TM PWR Safety Design,Nuclear Safety,33,(1),47-57,January-March,1992.
(2) R.Newman: System 80+TM Licensing Gears Up,Nuclear Engineering International,April,37(453),49-50(1992).
(3) R.A.Matzie, et al.: Evolutionary Development of ALWR Design Features for the System 80 Family of Plants,10th Annual KAIF/KNS Conference,Seoul,Korea,April 6-7,1995.
(4) S.Rosen,et al.: Loss-of-Coolant Accident Aspects of the Combustion Engineering Advanced Light Water Reactor-System 80+TM,Nuclear Technology,91,89-94,July,1990.
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