<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> エネルギー政策
<小項目> 原子力政策
<タイトル>
日本の原子力エネルギー政策 (01-09-06-02)

<概要>
 原子力エネルギーは、供給安定性、経済性、環境負荷において、優れたエネルギー源であることから、わが国の発電電力量の35%以上(1997年)を賄うまでに成長し、欠かすことの出来ない重要なエネルギー源となっている。資源に恵まれないわが国はエネルギーの安定確保と資源の有効利用のために、安全確保を大前提に核燃料サイクルの確立を基軸にした原子力エネルギー政策を進めてきたが、今後一層の原子力開発利用を進めるためには、国内および外国の事故等からの教訓も踏まえて、国民・地域住民のさらなる理解を得るとともに、原子力政策大綱で設定した基本目標を実現するための具体策を確実に推進する。広報も総合的視野に立ったエネルギー広報を推進することが必要である。
<更新年月>
2007年07月   

<本文>
1.はじめに
 わが国における代表的な原子力エネルギーの利用として原子力発電がある。2006年末現在、商業用原子力発電所は総数55基、合計出力4958万kW、総発電電力量の29%以上を供給し、エネルギー全体の13%を賄っている。
 世界的に見ても原子力発電所(運転中)の数は2006年末現在で441基、3億7371.1万kWの出力を有し、先進諸国を中心に、主要エネルギー源として定着している。わが国も世界第3位の原子力発電国として、世界全体の1割以上に相当する設備を有している。図1に主要国の一次エネルギー構成(2005年)、図2にわが国の一次エネルギー国内供給の推移と展望を示した。
 総合エネルギー調査会(現総合資源エネルギー調査会)需給部会報告(1998年6月)によれば、エネルギーは経済・社会活動の根底を支える「基礎資源」であり、現在その大半を占めている化石エネルギー(1998年度における一次エネルギー総供給に占める割合は81.1%)の有限性を考えれば、その有効利用に向けての施策を講じておく必要がある。しかし、環境もまた人類の生存にとって欠くことのできない「環境資源」であり、この資源もまた枯渇の可能性を有している。また、エネルギーコスト低減の要請にも応えつつ2%程度の経済成長も望まれるとしている。
 エネルギー安定供給(Energy Security)、エネルギーコストの低減等を通じた経済成長(Economic Growth)、地球環境保全(Environmental Protection)という3Eの同時達成は、資源に乏しいわが国では容易には実現できない課題であるが、今一歩の政策努力でその実現を図ることは挑戦に値する「価値ある選択」であるとしている。
 総合資源エネルギー調査会では、「2030年のエネルギー需給見通し(2005年3月)」報告で、「エネルギー需要の伸びは、2030年に向けて、人口・経済・社会構造の変化を踏まえて、構造的に鈍化し、2021年度には頭打ちとなり減少に転じる。部門別に見ると、産業部門は横這い、貨物部門は漸減で推移する。家庭部門、業務部門、旅客部門は、活動水準(世帯数、床面積、交通需要)の増加に伴い、引き続き増加するが、長期的には、省エネ機器・技術の浸透と活動水準の伸び率の鈍化の相乗効果により減少に転じる。省エネ技術の実用化・普及による省エネポテンシャルは極めて大きい」としている。
2.エネルギー源としての原子力
 この40年余りの歴史の中で、エネルギー環境を取り巻く諸情勢は変遷を遂げている。世界を取りまく化石エネルギー消費には大きな制約要因を与えることとなった。そのような状況の中、以下の理由によって、わが国のエネルギー政策にとって、原子力エネルギーの役割は益々重要なものとなっている。
 その第1は、1980年代以降の地球環境問題に対する国際的関心の高まりである。特に、地球温暖化問題の顕在化は、温室効果ガス、酸性雨等の排出をしないエネルギー源として、従来の資源論的観点からだけでなく、環境論的観点からも原子力の重要性を再認識させる契機となった。京都議定書では、わが国は人為的な温室効果ガス(CO2)の排出量を2008年から2012年までの間に、1990年の水準から6%削減した水準とするとしている。
 第2に、近年のわが国のエネルギー需給動向について見れば、需要面では、2度の石油危機以降、産業部門を中心に省エネルギーが進展し、1980年代半ばまではおおむね減少ないし漸増傾向で推移していたが、1980年代半ばに好景気などを背景に増勢に転じて以降は、ほぼ一貫した増加基調で推移している。部門別の動向を見ると、産業部門では、2度の石油危機以降すでに相当程度の省エネルギーが進展し、1990年度から1996年度にかけて年平均1%の伸びに止まっているのに対し、民生・運輸部門では、快適さや利便性を追求するライフスタイルの浸透等により、エネルギー消費の伸びが顕著となっており、同期間内に年平均3%程度の増勢傾向を示している。供給面では、1980年代半ば以降、石油依存度が50%台半ばで下げ止まり傾向にあり、引き続き国際的に高い水準となっている。一方、原子力については、安全性・信頼性に対する国民の不安が依然高いこと、立地に要する期間の長期化等を背景として、その導入に一層の努力を必要とする状況にある。新エネルギーについても、技術的、経済的な制約からエネルギー総供給に占める割合は1%程度に止まっている。世界第二の経済大国として、その責務を誠実に履行するためにも、省エネルギーの徹底や新エネルギーの導入と並んで、原子力の担う役割は益々大きくなると考えられる。図3図4に2015年度末の電力供給目標(発電電力量および発電設備容量)を示した。
3.原子力発電の今後の導入
 経済成長、エネルギー安定供給を確保しつつ、環境負荷低減を図るために必要不可欠なエネルギー供給源であり、CO2削減目標達成に不可欠であることから、安全確保に万全を期しつつ、中核的な電源としての原子力の開発を着実に推進する。このため、
(1)原子力の必要性・安全性について、国民の視点に立った理解促進活動およびエネルギー教育への働きかけの強化、
(2)電源三法に基づく各種交付金・補助金の使途の弾力化・統合および地域の活性化に向けた産業振興支援に一層重点を置いた施策の展開等、立地地域と原子力発電施設の真の「共生」の実現に向けた取組みの強化、
(3)使用済燃料貯蔵対策、高レベル放射性廃棄物処分、原子力施設解体廃棄物処分対策等のバックエンド対策等々、核燃料サイクルの着実な推進への取組みの強化、等を図る必要がある。
 平成18年度の電力供給計画によれば、原子力発電所の新増設は、13基(1,723万kW)となっている(表1参照)。
4.今後の取り組み
 原子力政策大綱(2005年10月閣議決定)で設定した基本目標を実現するための具体策について、総合資源エネルギー調査会電気事業分科会原子力部会は、2006年8月、「原子力立国計画」をとりまとめ、原子力を推進する確固たる政策枠組みと具体的プランを明示している。「原子力立国計画」は、エネルギーセキュリティの観点から策定された「新・国家エネルギー戦略」の一部を構成しており、2006年度末改定のエネルギー基本計画(閣議決定)の一部となる。以下に、原子力発電と核燃料サイクル推進の基本的考え方、取組みの方向および最近の動向を示す。
4.1 原子力発電
<基本的考え方>
 各種エネルギー源の特性を踏まえた最も適切なエネルギー源の組み合わせの実現を追求していくなかで、原子力発電を引き続き基幹電源として位置づけ、2030年以降も総発電電力量の30%〜40%という現在の水準程度か、それ以上の供給割合を担うことを目指し、以下の指針に沿って進める。
(1)既存プラントを安全の確保を大前提に最大限活用するとともに、原子力発電所の新規の立地に取り組む。
(2)2030年前後から始まると見込まれる既存プラントの代替は大型炉を中心とし、現行の軽水炉を改良したものとする。
(3)高速増殖炉については、経済性等の諸条件が整うことを前提に、2050年ごろから商業ベースでの導入を目指す。
<取組みの方向>
(1)国は、電力自由化の下で原子力発電が総発電電力量の約30〜40%以上という供給割合の実現がもたらす公益等を総合的に勘案して、上記(1)〜(3)の指針に則って民間の投資が行われるよう必要な環境整備を行う。
(2)安全性と安定性に優れた原子力発電を実現するとともに、原子力発電所の出力増強や設備利用率の向上等の高度利用を実現する。
(3)戦略的プロジェクトへの重点化等により、次世代型の改良型軽水炉の開発、高速増殖炉およびそのサイクル技術の研究開発を行う。
<最近の動向>
 2006年3月に、新たに志賀原子力発電所2号機が営業運転を開始し、2006年末現在、わが国では55基の原子力発電所が稼動している。原子力施設の高経年化対策など原子力安全対策の強化および広聴・広報活動による国民に対する説明責任を果たすとともに、2030年前後から始まる国内既設原子力発電所の代替需要と世界市場を踏まえて、高い安全性・経済性を備えた次世代軽水炉開発のためのフィージビリティ調査に着手している。
 高速増殖原型炉「もんじゅ」については、安全確保を大前提に改造工事を進め、運転再開に向けて計画を推進しており、実用化戦略調査研究(第2期)の取りまとめ結果を踏まえ、今後の研究開発の進め方等として「高速増殖炉サイクルの研究開発方針について」(2006年10月)をとりまとめた。実証炉の基本設計開始までの研究開発体制は、明確な責任体制のもとで効率的に研究開発を推進するため、中核メーカー1社に責任と権限およびエンジニアリング機能を集中する方針とした(2006年12月)。
4.2 核燃料サイクル
<基本的考え方>
(1)将来にわたり天然ウランの安定的確保を図る。
(2)濃縮ウランの供給安定性の向上を図る。
(3)使用済燃料は、安全性、核不拡散性、環境適合性を確保するとともに、経済性にも留意しつつ、再処理し、回収されるプルトニウム、ウラン等を有効利用することを基本方針とする。当面は、国内において利用可能になる再処理能力の範囲で再処理することとし、これを超えて発生するものは中間貯蔵することとする。
<取組みの方向>
(1)天然ウランの確保については、供給源の多様化や長期購入契約、開発輸入等により安定的確保を図る。
(2)ウラン濃縮については、より経済性の高い遠心分離機の開発、導入を進め、六ヶ所ウラン濃縮工場の安定した操業および経済性の向上を図る。
(3)六ヶ所再処理工場は、安全性、信頼性の確保と経済性の向上に配慮し、事業リスクの管理に万全を期して、着実に建設・運転を実施する。
(4)海外および国内の再処理工場において回収されたプルトニウムについては、MOX燃料に加工して、軽水炉で利用するプルサーマルで着実に利用する。
(5)中間貯蔵された使用済燃料およびプルサーマルに伴って発生する軽水炉使用済MOX燃料の処理の方策は、六ヶ所再処理工場の運転実績、高速増殖炉および再処理に関する研究開発の進捗状況、核不拡散を巡る国際的な動向等を踏まえて2010年頃から検討を開始する。
<最近の動向>
 核燃料サイクルの確立に向けた最近の動きを表2に示す。六ヶ所再処理工場については、2006年3月から実際の使用済燃料を用いた最終的な試験(アクティブ試験)を開始し、2007年に操業開始を目指している。また、再処理により抽出されたプルトニウムを軽水炉用燃料に加工するためのMOX燃料加工施設の建設については、加工事業許可申請が、地元自治体の了解を得て、国に提出され審査中である。2010年度までに合計16〜18基での導入を目指しているプルサーマルに関しては、玄海原子力発電所に対し2006年3月、伊方発電所に対し2006年10月それぞれ地元了解が得られた。島根原子力発電所においても、地元了解を得て原子炉設置変更許可申請を行った。また、中間貯蔵に関しては、2005年10月に、地元の了解を得て、青森県むつ市に建設されることとなった。高レベル放射性廃棄物最終処分施設候補地の公募に関して、複数の地域から照会があり、これを受けて原子力発電環境整備機構(NUMO)が各地域での理解促進活動を続けている。2007年3月には、高知県東洋町の文献調査に係る事業計画の変更が経済産業大臣の認可を受けた(文献5参照)。
5.情報の公開と国民の理解の促進
 原子力の開発利用を進めていくためには、原子力施設の立地地域住民を始め、国民の理解と協力を得ることが不可欠であり、そのためには、まず国や原子力事業者が積極的に情報を公開し、原子力政策の透明性を高めていくことが重要である。原子力政策円卓会議においては、各回の論議を通じて情報公開や政策決定過程への国民参加の促進を求める意見が多く出された。こうした議論を踏まえて、原子力委員会は「原子力に関する情報公開および政策決定過程への国民参加の促進について」を決定し、情報公開を着実に進めている。
(1)政策決定過程への国民参加の促進
 政策の決定過程で広く国民の意見を取入れる観点から、政策決定に重要な役割を果たしている専門部会等の報告書の作成過程において、国民の意見を求めることとした。
(2)情報公開の推進
 国、原子力事業者は国民が原子力について判断する際の基礎となる情報の公開、提供により一層努める必要がある。情報のなかにも、核物質防護、核不拡散、財産権の保護に関する情報など非公開とすべきものもあるが、国、原子力事業者にとって都合の良い情報のみを選択的に提供しているとの非難を受けることのないように情報公開を積極的に進めることが重要である。
(3)国民の理解の促進
 原子力に関する国民の理解増進を図るため、様々な活動が行われている。これらの活動の展開に当たっては、例えば「草の根」的な広報、体験型の広報、マスメディアを有効に活用した広報を始め、インターネット等の新しい媒体を活用した情報提供を展開するなど、実効性のある事業を体系的に実施していくことが重要である。
(前回更新:2004年3月)
<図/表>
表1 2007年度電力開発計画(原子力)
表2 核燃料サイクルを巡る最近の動き
図1 主要国の一次エネルギー構成
図2 わが国の一次エネルギー国内供給の推移と展望
図3 電源別発電電力量の実績および見通し
図4 電力供給計画(発電設備容量)

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
平成18年度電力供給計画 (01-09-05-23)
長期エネルギー需給見通し(1998年6月・総合エネルギー調査会需給部会) (01-09-09-05)
長期エネルギー需給見通し(2005年3月・総合資源エネルギー調査会需給部会) (01-09-09-08)
新・国家エネルギー戦略 (01-09-09-09)
日本におけるプルトニウムの軽水炉での利用状況 (02-08-04-03)
高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の開発(その1) (03-01-06-04)
六ヶ所再処理工場 (04-07-03-07)
平成18年度原子力研究開発利用基本計画(1) (10-02-01-16)
平成18年度原子力研究開発利用基本計画(2) (10-02-01-17)
原子力立国計画(2006年8月、総合資源エネルギー調査会原子力部会報告) (10-02-02-15)

<参考文献>
(1)通商産業省:総合エネルギー調査会原子力部会中間報告(1998年6月11日)
(2)電気事業連合会ホームページ:原子力・エネルギー図面集2007
(3)原子力委員会ホームページ:平成17年度原子力白書、http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/hakusho/hakusho2005/12.pdf
(4)資源エネルギー庁ホームページ:原子力政策の課題と対応?原子力立国計画?(平成19年3月)
(5)原子力発電環境整備機構ホームページ:高知県東洋町の文献調査に係る事業計画変更認可について
(6)資源エネルギー庁ホームページ:平成19年度電力供給計画の概要(平成19年3月)、2/40
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