<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> エネルギー政策
<小項目> 総合エネルギー政策
<タイトル>
長期エネルギー需給見通し(1998年6月・総合エネルギー調査会需給部会) (01-09-09-05)

<概要>
1997年12月に開催された地球温暖化防止京都会議COP3 COP 3)の合意を契機として、通商産業大臣(現経済産業大臣)の諮問機関である総合エネルギー調査会(現総合資源エネルギー調査会)需給部会において、21世紀に向けたエネルギー需給の在り方について審議が行われ、1998年6月に2010年度のエネルギー需給の姿とそのための政策を内容とする「長期エネルギー需給見通し」がまとめられた。
 見通しでは、わが国に求められる新たな3Eの調和は、エネルギーの安定供給を確保しつつ、2010年度のエネルギー起源CO2の1990年度比安定化と2%程度の経済成長とを両立させることを目標としている。具体的な施策として、競争環境整備型の省エネルギー対策、原子力、新エネルギー等の化石エネルギーの最大限導入、エネルギー産業への規制緩和と効率化を推進することとしている。
<更新年月>
1999年09月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.はじめに
1997年12月に京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3:The 3rd Conference of Parties to the United Nations Framework Convention on Climate Change、「地球温暖化防止京都会議」ともいう。)の合意を契機として、1998年1月以来、総合エネルギー調査会(現総合資源エネルギー調査会)の需給部会において、わが国の2010年度のエネルギー需給の在り方について審議が行われ、同年6月11日に、21世紀に向けたエネルギー需給の在り方ともいうべき「長期エネルギー需給見通し」が取りまとめられた。1994年6月の前回見通しから4年目の改訂である。
 総合エネルギー調査会(現総合資源エネルギー調査会)は、わが国の経済の急速な成長に伴うネルギー供給構造の変化から総合エネルギー政策を確立することが必要であるとの指摘が高まりをうけて、総合エネルギー調査会(現総合資源エネルギー調査会)設置法に基づき、通商産業大臣(現経済産業大臣)の諮問機関として1965年に設置された。
調査会は、1967年に第1回目の長期エネルギー需給見通しを含む第一次答申を提出、当時は低廉な石油輸入によるエネルギー供給体制を基本とし、石油供給の安定等が重要な課題であった。二度の石油危機を経て1975年の第三回見通し以降は、省エネルギーの必要性が重視されたが、基本的にはエネルギー需給の将来像を示すとともに、エネルギー安定供給へ向けた取り組みを促すもので、エネルギー需給の想定は、実勢を踏まえた自然体の見通しに近いものであった。
 しかしながら、1990年の見通し以降は地球環境問題への対応の必要性という考え方が導入され、わが国の長期的なエネルギー政策の努力目標としての性格をも併せ持つようになった。
2.長期エネルギー需給見通しの要点
2.1 エネルギーをめぐる情勢の変化
 わが国のエネルギー政策の基本原則である「3E」( Energy security:エネルギーの安定供給、Economic Growth:経済成長、Environmental protection:環境保全)について、近年、それぞれに以下のような変化が起きている。
(1) COP3における合意(日本については2008年〜2012年における温室効果ガスは排出量を1990年比で6%削減)が成立し(図1)、エネルギー起源の二酸化炭素(CO2)排出量を1990年比で安定化することが必要になった。
(2) 民生・運輸部門を中心としたわが国のエネルギー需要が増大し(図2)、アジア地域でもエネルギー自給率が低下してきた(図3図4)。
(3) わが国の経済構造改革を進めコスト競争力の向上を図る観点から、エネルギー・コストの低減要請が高まってきた。
2.2 対応の方向性(環境調和型エネルギー需給構造の構築)
(1) 需給両面の対策を適切に組み合わせ、エネルギー安定供給を確保しながら、2%程度の経済成長とエネルギー起源二酸化炭素の安定化の両立可能な「環境調和型エネルギー需給構造」を構築することが必要である。
(2) 具体的な施策は以下のとおりである。
a.需要構造の変革:「エネルギー使用の合理化に関する法律(省エネルギー法)の改正によるトプランナー方式(現在商品化されている製品から、最もエネルギー効率が優れているものの性能水準に配慮して省エネ基準を設定すること。)の導入等、競争環境整備型の省エネルギー対策等を実施する。
b.供給構造の変革:地球温暖化防止とエネルギー安定供給の向上に資する原子力、新エネルギー等の非化石エネルギーを最大限に導入する。化石エネルギーについては、環境負荷が比較的小さい天然ガスの導入促進等により、ベストミックスを実現させる。
c.エネルギー産業の効率化:エネルギー産業に係る制度改革を推進し効率化を進めることにより、エネルギー・コストを軽減して経済構造改革を進展させる。
3.エネルギー需要の展望
 これまでに講じられた対策を維持し、追加的な政策努力を講じない場合(基準ケース)においては、2010年度のエネルギー需要は1996年度比16%増の456百万キロリットルに達する見込みである。他方、国民各層の努力を経済合理性の範囲内で最大限引き出す競争的枠組みを産業、民生、運輸の全部門にわたって構築し、抜本的な省エネルギー対策を講じた場合(対策ケース)には、56百万キロリットル相当の省エネルギーが達成され、2010年度のエネルギー需要は1996年度比1.8%増の400百万キロリットルになることが見込まれる(図5および図6)。
 省エネルギー対策の概要は以下のとおりである(図7)。
(1) 自主行動計画等に基づく対策<産業部門>
 ・「経団連環境自主行動計画」等の公的な場におけるフォローアップ
 ・改正省エネルギー法に基づくエネルギー管理の徹底
(2) エネルギー消費機器等の効率改善、住宅、建築物の省エネルギー性能の向上等<民生・運輸部門>
 ・トップランナー方式の導入(改正省エネルギー法)による機器等の大幅な効率改善
 ・住宅、建築物の省エネルギー性能の向上
(3) ライフスタイルの変革<民生・運輸部門>
 ・ライフスタイルの変革を促す取組の強化
(4) 技術開発の推進<全部門>
 ・省エネルギー関連技術の開発・普及に向けた一層の努力
(5) 関連インフラの整備等<全部門>
 ・物流効率化および公共交通機関の利用推進等の交通対策、テレワークの普及等
4.エネルギー供給の展望
国産あるいは準国産エネルギーとしての位置づけを有する非化石エネルギーの導入に引き続き最大限の努力を行うことは、エネルギー安定供給の観点から極めて重要であるとともに、環境負荷低減の観点からも不可欠である。
また、化石エネルギーについては、今後ともエネルギー源の中で主要な位置付けを占めていくことから、その安定供給の確保に引き続き努めるとともに、環境特性、コストにも考慮しつつ、化石エネルギーの供給構成を見直していくことが重要な課題となっている。一次エネルギー供給の見通しを図8に示す。
4.1 各エネルギー源の位置付け
(1) 非化石エネルギー
a.原子力:わが国が経済成長、エネルギー安定供給を確保しつつ、環境負荷の低減を図るために必要不可欠なエネルギー供給源であり、安全確保に万全を期しつつ、中核的な電源として着実に開発を推進する。
b.新エネルギー:技術的、経済的制約等により既存エネルギーに即座に代替できるものではないが、環境負荷の小さい国産エネルギーとして、その導入拡大に最大限の努力をする。
c.水力・地熱:自然条件、経済性等の制約要因はあるが、環境負荷の小さい国産エネルギーとして、エネルギー安定供給、地球温暖化防止の両面からその導入促進が必要である。
(2) 化石エネルギー
a.石油:依存度低減に引き続き努めつつ、国際石油市場の発達を前提とした安定供給確保のための施策を具体的に実施する。
b.石炭:供給安定性の高さおよび経済的な優位性から中核的な石油代替エネルギーであるが、環境負荷の観点で制約要因が多いため、更なる利用拡大については、その抑制が必要である。
c.天然ガス:供給安定性が相対的に高いことに加え、化石エネルギーの中ではCO2排出量が少ないことから、積極的に導入を推進する。
4.2 エネルギー供給対策の概要
(1) 原子力:安全確保を大前提としつつ、以下の対策を講ずる。
 ・国民の理解促進活動およびエネルギー教育を強化する。
 ・電源三法に基づく各種交付金・補助金の使途の弾力化と統合を図るとともに、地域の活性化に向けた産業振興策を支援する。
 ・使用済核燃料中間貯蔵対策、高レベル放射性廃棄物等のバックエンド対策等の核燃料サイクルの着実な推進のための取組を強化する。
(2) 新エネルギー
 ・最大の制約要因である導入コスト低減のための支援措置により需要を創出し、技術開発等により市場の自立化を促進する。
(3) 化石エネルギー
 化石エネルギーについても、環境負荷の小さいベストミックスを実現するため、化石エネルギー間の選択肢を拡大できるパイプラインの検討等インフラを整備し、電力卸売入札制度における環境配慮、石油火力の新設禁止の範囲の見直しを行うとともに、技術開発を通じた化石エネルギー源のCO2排出量が低減するよう努力する。
4.3 エネルギー起源のCO2排出量の見直し
 2010年度のエネルギー起源CO2排出量は、基準ケースの場合347百万トンに達する見込みであるが、エネルギー需給両面にわたる対策を実施する対策ケースの場合には、2010年度には排出量は60百万トンに削減され、およそ287百万トンとなり、概ね1990年度レベルで安定化することが見込まれる(図5)。
5.おわりに
 最後に報告では、この見通しは国民各位の努力の在り方を示したものであり、状況の変化に対応して調査会でも弾力的に見直しをすること、国民の理解と協力への強い期待を寄せていることを、以下のとおり表明している。
(1) 2010年度におけるわが国のエネルギー需給の姿
 今回の「長期エネルギー需給見通し」は、COP3での国際的コミットメントを前提として、わが国のエネルギー・セキュリティ確保と適正規模の経済成長を実現するための国民各位の努力の在り方を示したものである。特にCO2削減との関係においては、現時点で最大限の対策が講じられた結果として、2010年度のCO2排出量の1990年度比安定化が実現され得るエネルギーの需要・供給両面の姿を描いたものである。
 その実現のために、a)需要サイドの短期的な負担の受容、b)エネルギー供給構成の転換、c)効率的エネルギーシステム構築に向けた経済社会全体としての取組という3つの前提条件を実現する必要性を指摘した。これらが全て満たされれば、3Eのトリレンマ問題を超克し得るブレークスルーへの道が開かれることとなる。
(2) 中長期的視点に立った取組
 もとより地球温暖化問題は 100年単位で取り組まれるべき課題であり、現在求められているCOP3の目標達成という眼前の課題に対処するだけではなく、今後資源・環境制約が一層先鋭化していくことが予想される中で、絶えず中長期的な視点に立って3Eの同時達成実現に向け着実にエネルギー政策に取り組んでいく姿勢が強く求められている。
(3) 需給推移等のフォローアップと弾力的な見直し
 今後の国内エネルギー需給の推移は、需給両面にわたる対策の進捗状況、関連技術の開発動向、マクロ経済の動き等、多様な要因により規定されるものであり、逐次フォローアップが行われていく必要がある。当部会では、新たな動向や変化があればこれを踏まえ、必要に応じ、求められる政策対応を呈示するとともに、本需給見通しについても弾力的に見直しを行い、情勢に適合した望ましいエネルギー需給の長期的な姿を検討していく。
 現在の想定を超えた革新的技術の開発や国民各層における更なる努力によって達成することが期待されている2%削減目標についても、今後の技術開発等の進展状況を見つつ、
対応の在り方につき将来更なる審議が必要となるものと考える。
(4) 国民の理解と協力
 最後に、今次「長期エネルギー需給見通し」の目標達成に向け、政府として、各般の施策展開に努めるよう強く要請するとともに、エネルギー・環境問題の重要性にかんがみ、国民各位の理解と協力に強く期待する。
<図/表>
図1 京都会議で決められた主要国の温室効果ガス排出削減目標
図2 最終エネルギー消費の見通し
図3 地域別石油供給依存先(1996/1989の変化量)
図4 アジアの石油消費量、生産量、域外依存度の見通し
図5 最終エネルギー消費とエネルギー起源CO2排出量の実績と見通し
図6 最終エネルギー消費の見通し
図7 今後の省エネルギー対策の概要(合計約5,600万kl)
図8 一次エネルギー供給の見通し

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
電気事業審議会の長期電力需給見通し(1998年6月) (01-09-05-13)

<参考文献>
(1)通商産業省(編者):エネルギー '98、(株)電力新報社(1998年10月28日)p.150-155
(2)通商産業省資源エネルギー庁(編集):21世紀、地球環境時代のエネルギー戦略〜
成長と環境の対峙を超える「価値ある選択」〜(総合エネルギー調査会需給部会中間報告)、通商産業調査会出版部(1998年7月15日)
(3)資源エネルギー庁(監修):1999/2000資源エネルギー年鑑、通産資料調査会(1999年1月12日)p.22-25
(4)資源エネルギー庁(編者):エネルギー 20000、(株)電力新報社(1999年10月5日)p.17-21
(5)戒能一成:長期エネルギー需給見通しの改訂と今後の課題、原子力eye、VOL.44,No.10、日刊工業出版プロダクション(1998年10月1日)p.7-9
(6)環境庁地球環境部(企画編集):パンフレット「京都議定書と私たちの挑戦」、環境庁(1998年5月)
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ