<大項目> 核燃料リサイクル施設
<中項目> 再処理
<小項目> 再処理施設
<タイトル>
六ヶ所再処理工場 (04-07-03-07)

<概要>
 1984年、電気事業連合会は、青森県六ヶ所村のむつ小川原工業開発地区に、日本原燃サービス(株)の再処理施設及び日本原燃産業(株)のウラン濃縮施設、低レベル放射性廃棄物埋設施設の集合立地を申し入れ、1985年に県及び村の受諾を得た。日本原燃サービス(株)は、フランスのUP3再処理工場の設計を基に、国内外の最新の技術を採用して六ヶ所再処理工場の設計を行い、1989年、事業指定を国に申請し安全審査を経て、1992年に事業指定を受け、1993年に工事を開始した。この再処理工場は、軽水炉使用済燃料を最大800トン・U/年を処理する規模を持つ。機械的前処理とピューレックス法溶媒抽出を主工程とする湿式再処理工場で、現在2012年の本格操業開始を目指している。再処理工場の一部である使用済燃料受入れ・貯蔵施設は、1998年に試験用使用済燃料を搬入し、1999年12月に使用前検査合格証を取得して使用済燃料の本格的な受入れを開始した。2005年12月末に主工程の建設は96%に進捗、主要な建屋では試験運転の第一ステップである化学試験が終了した。その後、2006年1月末にウラン試験を終了、3月末から使用済燃料を使ったアクティブ試験に移行し、現在高レベル廃液のガラス固化試験を残すのみとなり2012年10月に竣工の予定である。なお、日本原燃サービス(株)と日本原燃産業(株)は1992年7月1日に合併し、日本原燃(株)となっている。
<更新年月>
2011年07月   

<本文>
1.日本原燃サービス(株)の設立
 軽水炉を用いた原子力発電が国内に定着して、わが国の基幹電源の一つと位置づけられるとともに、使用済燃料の再処理の国内実施が原子力委員会の審議を経て決定された。そのための新会社を設立することになり、電力会社を主な出資者として日本原燃サービス株式会社(JNFS)が1980年3月1日に発足した。
2.立地の経緯
 JNFSは、国内に立地サイトの選定を行ってきたが、1984年7月、電気事業連合会(電事連)が、青森県上北郡六ヶ所村の「むつ小川原工業開発地区」の一部を利用することで、再処理工場、ウラン濃縮工場及び低レベル廃棄物埋設施設の集合立地を図り、青森県及び六ヶ所村に申し入れを行った。これを受けて、青森県は専門家会議を、六ヶ所村は施設対策協議会を設けて検討し、世論集約のための説明会等を開催した上で、村は1985年1月、協議会の答申を受けて村長が受諾を表明し、県は同年4月、青森県議会全員協議会における立地受入れ決議により立地受諾の回答を行った。JNFSは、これを受けて建設準備事務所を設け、陸域及び海域の立地調査に着手するとともに、むつ小川原開発(株)より用地を購入した。
3.工場の基本仕様と採用技術
 図1核燃料サイクル施設配置図を示す。再処理工場と高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターは六ヶ所サイトの約1/2を利用して設置されている。核燃料サイクル施設の概要を表1に、六ヶ所再処理工場の主な仕様を表2に示す。
 この再処理工場は、現在の同規模の海外再処理工場とほぼ共通の処理工程を採用している。すなわち、集合体せん断・溶解方式の前処理工程とピューレックス法溶媒抽出によるウラン、プルトニウム核分裂生成物の分離精製工程を主工程とする。
 国内外の実用可能な最良の技術を採用する方針で検討した結果、SGN社(フランス)から工程の大部分(せん断・溶解及び分離・精製)についてUP3、UP2−800の設計技術、BNFL社(イギリス)から減圧蒸発技術を、KEWA社(ドイツ)からヨウ素除去技術を導入した。また、国内技術により使用済燃料受入れ・貯蔵施設、返還廃棄物管理施設、ウラン、プルトニウム脱硝施設、高レベル廃液ガラス固化施設、低レベル廃棄物処理施設等を設計している。
4.スケジュール
 JNFSは、六ヶ所再処理工場の規模を最近の外国大型軽水炉燃料再処理工場を参考に最大処理量約800トンU/年と定め、1989年3月、再処理事業指定申請及び廃棄物管理事業許可申請を提出し、安全審査を受けた。再処理工場の建設は当初予定より延び、1993年4月に着工された。六ヶ所再処理工場の建設工程(2001年時点)及び試験工程について表3表4に示す。竣工は2012年10月を予定している。
 1992年7月1日、JNFSと日本原燃産業(株)(JNFI、ウラン濃縮、低レベル放射性廃棄物埋設を担当)が合併し、日本原燃(株)(JNFL)が発足した。同社の事業目的は、ウランの濃縮、原子力発電所等から生じる使用済燃料の再処理、海外再処理に伴う回収燃料物質及び廃棄物の一時保管、低レベル放射性廃棄物の埋設、混合酸化物燃料(MOX燃料)の製造、ウラン、低レベル放射性廃棄物及び使用済燃料等の輸送となっている。
 再処理工場の一部である使用済燃料受入れ・貯蔵施設は、1997年2月に完成し、1998年10月から3回に分けて使用済燃料100体(約32トン)が試験用燃料として搬入され、1999年12月に使用前検査合格証を取得し、事業を開始した。2011年6月現在でBWR使用済燃料を9,512体(約1,648トン)、PWR使用済燃料を3,760体(約1,610トン)受入れている。なお、2001年7月に使用済燃料受入れ・貯蔵施設燃料貯蔵プールの漏えい検知装置において出水が確認され、調査の結果、2002年2月にプール水の漏えいであることを確認した。この漏えいは、燃料貯蔵プールの内側に張られたステンレス製の板(ライニングプレート)を溶接する際に、問題のある施工が行われ、その箇所に小さな穴が発生したためであった。それに伴い、類似箇所の点検、施行上問題のある溶接箇所の補修、及び品質保証体制の点検を実施した。2004年1月に使用済燃料受入れ・貯蔵施設の補修作業を完了し、国の使用前検査に合格して、プール水漏えい問題への対応は完了した。品質保証体制の点検については、2004年2月に原子力安全・保安院に対して「再処理施設品質保証体制点検結果報告書」を提出し、2004年3月に同院から「再処理施設品質保証体制点検結果報告書に対する評価書」を受領した。
 2005年12月末に建設工事が96%進捗し、主要な建屋では試験運転の第一ステップである化学試験を終了している(設備関係についてはほぼ完成した)。2006年1月末にウラン試験を終了し、経済産業省に総合確認試験を中心とするウラン試験報告書を提出した。同年3月末から使用済燃料によるアクティブ試験に移行した。この試験のうちガラス溶融炉のアクティブ試験を2007年11月より開始したが、溶融炉内に白金族が堆積して安定運転が困難、流下ノズルが閉塞するなどの不具合が発生し、この原因究明、対策等に日数を要している。
 工場の竣工時期について当初2000年を予定していたが、その後一部の設計変更、建設工程においての不具合対応などからたびたび見直され、現在2012年10月が竣工予定となっている。また、建設費は当初の予定8,400億円が膨らみ、2011年2月時点で、2兆1,930億円と見込まれている。
5.再処理工程の設計
  図2に六ヶ所再処理工場の工程図を、図3-1図3-2に主工程の概要図を示す。工程及び機器について主な特徴を以下に述べる。
 使用済燃料受入れ・貯蔵施設は、燃料集合体をプール水中で取り扱う湿式の設計で国内外で最も実績の多いものである(図4)。
 前処理工程では、せん断機(*1)は、核燃料サイクル開発機構東海再処理工場(現日本原子力研究開発機構核燃料サイクル工学研究所)のものと同様の設計の燃料集合体水平供給式となっている(図5)。溶解槽はフランスで新しく開発された回転バケット式連続溶解槽(*2)を採用した(図6)。溶解液は、せん断時に生じる被覆管のジルコニウム細片や不溶解残渣を含むので遠心式清澄機(*3)で固体分を取り除いて次の分離工程へ送る(図7)。せん断・溶解工程は、2系列とし高稼働率の確保を図っている。
 分離工程及び精製工程の溶媒抽出装置は、パルスカラム及びミキサセトラを適宜使用する。このうち、臨界安全管理が必要な機器については、臨界安全管理が容易な環状型パルスカラム(*4)等を採用した(図8)。
 高レベル廃液ガラス固化施設は、核燃料サイクル開発機構東海工場のセラミックメルター方式を採用し(図9)、ウラン脱硝は流動層式の脱硝、プルトニウム脱硝はマイクロ波加熱によるウランとの混合脱硝を採用しており、いずれも東海再処理工場で順調に稼働中のものである。溶媒回収工程には減圧蒸発蒸留方式を採用している。
 なお、以下「6. 試験」に記載のように、ガラス溶融炉のアクティブ試験において流下ノズル閉塞、不溶解残渣(ファイン)投入後流下性が低下し白金属堆積指標も悪化する不具合が発生した。この原因を究明するため、東海村にある実規模モックアップ試験施設(KMOC)で模擬廃液を使い段階を踏んだ試験を行った。この結果から(1)溶融ガラス全体の温度管理の改善、(2)洗浄運転(回復運転)方法の改善などガラス溶融炉の運転方法の改善が行われることとなった。
6.試験
 再処理工場には、約10,000基もの主要な機器があり、その配管の長さは約1,300km(うちウラン・プルトニウムを内包する配管約60km・継ぎ目の数は約26,000箇所)にも及ぶ。これらの機器類が所定の機能を発揮し、安全かつ安定に運転できるかを事前に確認するため、建設の一環として試験がある。試験は、通水作動試験、化学試験、ウラン試験、使用済燃料による総合試験(アクティブ試験)があり、この順序で設備の操作性、保守性、安全性等を確認しながら段階的に実施される。
 試験工程及び各試験の内容を表4表5に示す。ウラン試験以降は、放射性物質を含む核物質を取り扱うため作業員の放射性被ばく線量の管理を行い、放射性物質を取り扱う区域に「管理区域」を設定して管理する。管理区域設定以前の通水作動試験、化学試験では、設備の設計仕様に対する充足度、基本機能、性能の確認が行いやすく、調整、修正等の対応も容易なので工場の完成に向けて重要な期間となる。前処理工程のように遠隔保守が適用される箇所では、そのための設備のチェックと操作の習熟が特に配慮される。アクティブ試験では、操業に向けて、実際の使用済燃料を用いて、安全機能や機器設備の性能を確認するため、環境への放出放射能量、核分裂生成物の分離性能、ウランとプルトニウムの分配性能等を約425トンの使用済燃料を使用して確認する。アクティブ試験の概要を表6に示す。
 アクティブ試験の第1ステップを2006年3月末から開始し6月末終了、第2ステップを8月から開始した。2007年11月に第4ステップに入りガラス溶融炉のアクティブ試験が進められる中で以下のような不具合が発生した。
・白金族の堆積で安定運転が困難(2007年12月)
 また、2008年7月から第5ステップに入り、ガラス溶融炉のアクティブ試験をさらに進める中で新たに以下のような不具合が発生した。
・流下ノズル閉塞(2008年7月)
・不溶解残渣(ファイン)投入後、流下性が低下し、白金属堆積指標も悪化(2008年10月)
・かくはん棒の曲がり、天井レンガの一部損傷を確認(2008年12月)
・高レベル廃液漏えい、パワーマニピュレータの故障等(2009年1月)
 これらの不具合に対する原因究明、対策等に日数を要し、アクティブ試験の期間が当初の予定を大きく超えることとなった。
[用語解説]
(*1)せん断機:燃料集合体を端から切断する機械。3〜4cm長さのせん断片は両端に切り口ができるので、中身の燃料部分が硝酸と接触し溶解される。実用のせん断機は、燃料集合体の供給、せん断刃の形状・運動方向等の設計にそれぞれ特徴がある。
(*2)回転バケット式連続溶解槽:せん断燃料片を硝酸で溶解する装置。バッチ式(東海再処理工場、英国のTHORP工場等)と連続式がある。回転バケット式は連続式の一形式で、フランスが開発した。
(*3)遠心式清澄機:溶解液の清澄装置。遠心式のほか、フィルタ式(例えば東海再処理工場のパルスフィルタ方式)等がある。
(*4)環状型パルスカラム:パルスカラムは溶媒相と水相の共存物にパルス(脈動)を与え、多孔板または隙間板を通過させ分散、集合を繰り返させる溶媒抽出装置。比重の軽い溶媒相は上方に、重い水相は下方に向流させることができる(ATOMICA「溶媒抽出工程<04-07-02-03>)を参照)。
 環状型は、核分裂性物質を含む液の形状を薄くして中性子を逃げやすくし、核分裂反応の連鎖的進行を抑制するための工夫である。更に中性子吸収材も組み込んである。
(前回更新:2006年11月)
<図/表>
表1 核燃料サイクル施設の概要
表2 六ヶ所再処理工場の主な仕様
表3 六ヶ所再処理工場の建設工程(2001年)
表4 六ヶ所再処理工場の試験工程
表5 六ヶ所再処理工場の試験の内容
表6 アクティブ試験の概要
図1 六ヶ所核燃料サイクル施設配置図
図2 六ヶ所再処理工場工程図
図3-1 六ヶ所再処理工場の主工程の概要図(1/2)
図3-2 六ヶ所再処理工場の主工程の概要図(2/2)
図4 六ヶ所再処理工場の燃料貯蔵プール概要図
図5 六ヶ所再処理工場のせん断機概要図
図6 六ヶ所再処理工場の溶解槽概要図
図7 六ヶ所再処理工場の清澄機概要図
図8 六ヶ所再処理工場の環状型パルスカラム概要図
図9 六ヶ所再処理工場のガラス溶融炉概要図

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<関連タイトル>
溶媒抽出工程 (04-07-02-03)
東海再処理工場 (04-07-03-06)
フランスの再処理施設 (04-07-03-08)
六ヶ所核燃料サイクル施設の立地の経緯 (04-07-03-14)
原子力発電所からの使用済燃料貯蔵の現状と見通し (04-07-03-16)

<参考文献>
(1)日本原燃(株):再処理事業指定申請書
(2)日本原燃(株):廃棄物管理事業許可申請書
(3)住谷 寛ほか:再処理工場開発の現況−六ヶ所再処理工場施設の概要と安全性を探る−、原子力工業、38(10)、10-32(1992)
(4)日本原子力産業会議(編):原子力年鑑 平成6年版、(平成6年11月)p.137-139
(5)日本原子力産業会議(編):原子力年鑑 1999/2000年版、(1999年10月)p.102-104
(6)日本原子力産業会議(編):原子力年鑑 2001/2002年版、(2001年11月)p.188-191
(7)舘内俊治:使用済燃料の再処理−軽水炉再処理−、原子力工業、40(1),31-36(1994)
(8)日本原燃(株):パンフレット「六ヶ所再処理工場の概要」、(2003年8月)p.3,8,10,12,14
(9)日本原燃(株):パンフレット「六ヶ所再処理工場における試験の概要」
(10)日本原燃(株):パンフレット「会社案内」、(2004年7月)p.14,37,38
(11)日本原燃(株):パンフレット「六ヶ所再処理工場 ウラン試験のあらまし」、(2004年6月)p.2
(12)原子力産業新聞(第2317号)2006年2月2日、p.1
(13)日本原燃(株):再処理工場(使用済燃料の受入れ・貯蔵施設)の 操業状況、http://www.jnfl.co.jp/cycle-recycle/index.html
(14) 日本原燃(株):再処理工場の試験運転状況、アクティブ試験の概要、
http://www.jnfl.co.jp/cycle-recycle/testing/active-test.html
(15)電気事業連合会:原子力・エネルギー図面集2011、第7章「原子燃料サイクル」
(16) 日本原燃(株):「六ヶ所再処理工場の現状と今後の見通しについて」、新大綱策定会議(第4回)資料第2-2号、2011年2月21日、
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/sakutei/siryo/sakutei4/siryo2-2.pdf
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