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<概要>
 製錬(転換を含む)、加工(濃縮を含む)、使用済燃料の貯蔵および再処理(転換を含む)施設で代表される核燃料施設を対象として、許認可手続きを主とする規制体系、その一環としての安全審査に関わる指針類が決められている。精錬については、事業の指定施設の設計および工事に対する審査、保安規定の認定、運転状況の報告(届出)等が指示されている。加工、貯蔵および再処理については、核燃料施設安全審査基本指針によって、これらの施設に共通する安全審査上の基本的考え方が述べられており、その基本指針を踏まえて、各論的に加工施設(ウラン加工施設、特定のウラン加工施設、ウラン・プルトニウム混合酸化物加工施設)、使用済燃料中間貯蔵施設および再処理施設に対する安全審査指針が策定されている。
<更新年月>
2008年12月   

<本文>
1.安全規制の対象となる核燃料施設
 安全規制の対象となる核燃料施設には、「製錬施設」、「加工施設」、「貯蔵施設」、「再処理施設」およびその他「核燃料使用施設」、「核原料使用施設」などがある。原子炉等規制法は、これらの施設に対して「建設前」、「建設中」および「運転中」の各段階に応じた安全確認のためのチェックを義務付けている(表1参照)。つまり、対象施設の設計、工事方法、運転管理の妥当性が審査される。なお、製錬施設にはそれ自体の他に「転換施設」(天然濃度の三酸化ウラン
UO3を六フッ化ウランUF6に転換)が含まれ、加工施設は、取り扱う核燃料の種類から、ウラン加工施設(濃縮度5%以下)、特定のウラン加工施設(濃縮度5%を超え20%以下)、ウラン・プルトニウム混合酸化物加工施設(ウランとプルトニウムの混合燃料)に分類され、各施設に対応した指針が策定されている。また、加工の内容については「濃縮施設」(天然濃度の六フッ化ウランUF6から濃縮ウランUF6を製造)、「再転換施設」(濃縮ウランUF6から濃縮二酸化ウランUO2粉末を製造)と「成型加工施設」(燃料集合体の製作まで)などに分けられる。再処理施設にはその本来施設の他に「転換施設」(回収Pu溶液の固体化並びに回収減損ウラン溶液のUF6化)が含まれる。その他、「核燃料使用施設」や「核原料使用施設」も規制の対象になる。
2.核燃料施設の安全審査に用いる指針等
 核燃料施設の安全審査に用いる指針等については、以下に示す7つが策定されている。
(1)核燃料施設安全審査基本指針
(2)ウラン加工施設安全審査指針
(3)特定のウラン加工施設のための安全審査指針
(4)ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料加工施設安全審査指針
(5)金属燃料キャスクを用いる使用済燃料中間貯蔵施設のための安全審査指針
(6)核燃料施設の立地評価上必要なプルトニウムに関するめやす線量について
(7)再処理施設安全審査指針
 表2−1および表2−2に、これら7指針等の内容の概略を示す。核燃料施設の指針等は、原子力安全委員会の「核燃料安全基準専門部会(1978年11月設置)」等(現在は「原子力安全基準・指針専門部会」に統合されている。)において検討されてきた。(1)の「基本指針」は核燃料施設のすべてに共通する安全審査の基本的考え方として策定されたものであり、(2)〜(4)の燃料加工施設に関する指針は基本指針を踏まえたウラン燃料やウラン・プルトニウム燃料加工施設固有の安全審査指針として策定されたものである。(5)の指針は金属燃料キャスクを使用して使用済燃料の乾式貯蔵を行う施設の安全審査の指針として策定されたものである。また「プルニウムに関するめやす線量」は、核燃料施設の万が一の事故に関連して、その立地条件の適否を判断するために用いるプルトニウムのめやす線量を示したものである。最後の「再処理施設指針」は、商用再処理工場(日本原燃)を念頭に入れ、発電用軽水炉使用済燃料の湿式再処理工場の安全審査に資するために策定したものである。
3.核燃料施設のうち、製錬(転換)および加工(濃縮を含む)施設の安全規制の概略
(a)製錬(転換)施設
 わが国で製錬および転換事業が認可(法律的には指定)されている機関は日本原子力研究開発機構(人形峠環境技術センター)のみであり、現在は精錬転換施設の解体・撤去が進められている。他の事業者が新たにこの事業を行おうとする時には、経済産業大臣の指定を受けなければならない。この指定に当たっては、計画的遂行、技術的能力、経理的基盤および災害防止の観点からの審査が行われる。許可の基準の適用については、経済産業大臣は予め原子力委員会および原子力安全委員会の意見を聴取すべきものとされている。
(注)わが国の現状は、商業ベースでは海外(アメリカ、フランス等)からUF6を直接輸入している。
(b)加工(濃縮を含む)施設
 加工の事業を行おうとする時には、経済産業大臣の許可を受けなければならない。この許可に当たっては、製錬施設の場合と同様に、加工能力、技術的能力、経理的基盤および災害防止の観点からの審査が行われる。加工事業者は事業の許可を得た後、経済産業大臣に対し、着工前に当該施設の設計および工事の方法に関わる認可申請を、また施設使用前に施設検査そして事業開始前に保安規定に関わる認可申請をそれぞれ行わなければならない。事業開始後は、記録の作成、保安のために講ずべき措置、事故・故障等の報告が義務付けられている。
(c)運転管理についての規制
 対象施設の運転管理については、「核燃料物質の加工の事業に関する規則」等の関連施設に対応した経済産業省令によって、保安のために必要な措置に関わる基本事項が定められている。また経済産業大臣が認可する「保安規定」(一定量以下の核燃料物質の使用施設及び核原料物質の使用施設を除く)によって、運転管理に関する組織、機器操作等の詳細が規定されている。更に「放射線管理記録」等の主要な情報は、定期的に事業者から規制当局に報告されなければならない。
<図/表>
表1 原子炉等規制法の核燃料施設における安全規制
表1  原子炉等規制法の核燃料施設における安全規制
表2−1 核燃料施設の安全審査に用いる指針等
表2−1  核燃料施設の安全審査に用いる指針等
表2−2 核燃料施設の安全審査に用いる指針等
表2−2  核燃料施設の安全審査に用いる指針等

<関連タイトル>
核燃料サイクルと関連施設の安全対策の概要 (11-02-03-01)
廃棄物管理施設の安全性の評価の考え方について (11-02-05-03)
核燃料施設安全審査基本指針 (11-03-03-01)
ウラン加工施設安全審査指針 (11-03-03-02)
再処理施設安全審査指針 (11-03-03-03)
放射性廃棄物埋設施設の安全審査の基本的考え方 (11-03-04-06)

<参考文献>
(1)原子力安全委員会(編):原子力安全白書 平成18年版、佐伯印刷(2007年7月)
(2)原子力安全委員会事務局(監修):改訂12版 原子力安全委員会 安全審査指針集、大成出版(2008)
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