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<概要>
 核燃料サイクルウラン採鉱から使用済燃料再処理まで、更に回収プルトニウムの再利用(原子炉へのリサイクル)に係わるすべての工程から構成される。その中で「核燃料施設」は、製錬(転換を含む)、加工(濃縮を含む)および再処理(転換を含む)で代表される主要工程の関連施設を総称したものである。その安全対策は、放射能閉込めと臨界管理を主とする技術的対応、対象施設の許認可手続きを主とする法規制体系の各面から厳重に実施されている。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
(1) 核燃料サイクルの仕組みと主要な工程
 核燃料サイクル(原子燃料サイクル)は、(a) ウラン採鉱、(b) ウラン製錬、 (c)ウラン転換、(d) ウラン濃縮、(e) 核燃料の成型加工(以上、フロントエンド)、 (f)原子炉炉心での核燃料の燃焼(核分裂)、[以下の(g)、(h)はバックエンド]、(g) 使用済燃料の再処理、(h) 放射性廃棄物の処理と処分 (i)ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX) 燃料の製造加工、(j)MOX燃料の高速増殖炉(FBR) ,新型転換炉(ATR) 又は軽水炉(LWR) への供給(リサイクル)から構成される( 図1 参照)。核燃料サイクル構築の主目的は、ウラン資源の有効利用の立場から、燃焼核燃料中に生じたプルトニウムの回収とその積極的活用にある。
 なお、「転換」工程はその前段階である「製錬」工程と結び付けられ、「製錬・転換」プロセスとして取り扱われることが多い。また、濃縮UF6 は成型加工工程に供されるUO2 粉末に転換(特に再転換と呼ぶことがある)されるが、この工程は我が国の規制体系では「加工施設」の範疇に含まれており、単独の事業として、あるいは成型加工工場での前段階工程として実施されている。
(2) 核燃料サイクル施設の安全対策
 核燃料サイクル施設の安全対策は次の3つの観点から施行されている。
 (a) 法令等による規制
   上述した核燃料サイクル各工程施設のすべては原子力施設および放射線障害防止関係の安全規制の対象となる(ただし、ウラン採鉱に対する規制は昭和25年制定の「鉱山法」、鉱業権等については同法特例による)。核燃料サイクル施設に適用される規制関係法令の代表的なものを 表1 に示す。

  核燃料サイクル施設を建設しようとする場合には、原子炉等規制法に基づき、「建設前段階」、「建設段階」及び「運転段階」に応じた設計の妥当性、工事法の妥当性、運転管理方法の確認が行われる。 表2 に、代表的工程である製錬、加工(ウラン濃縮を含む)、再処理施設に対する原子炉等規制法に基づく規制体系を示す。
(b) 施設の設計
 核燃料サイクル施設の安全対策は、結局、当該施設の中に核燃料物質と放射性物質を厳重に閉じ込めること、及び常に臨界未満の状態を実現させておくことに尽きる。勿論、核燃料サイクルの基本は“化学プロセス”の連結であるため、化学装置としての安全対策(例えば、インベントリ、物質流、温度、化学的条件等の制御の他、プラント構造物の健全性確保)に手おちがあってはならない。核燃料サイルにおける特徴は、核燃料の物理化学的な形態が各工程で異なっており、また工程内で変化することである。
 例えば製錬工程では固体(ウラン鉱石)−>液体(ウラン浸出液)−>固体(イエロケーキ)、ウラン濃縮工程では気体(UF6) 、燃料成型加工工程では固体(例えばUO2 )、再処理工程では固体(使用済燃料)−>液体(硝酸ウランまたは硝酸プルトニウム)−>固体(ウランまたはプルトニウム酸化物)というように物質相が変転する。したがって、種々の物質相に応じた施設内閉込めと臨界管理の手法が必要になる。
(c) 廃棄物の管理
 核燃料サイクルでは、各工程に応じていろいろな形態の放射性廃棄物が産み出される。製錬工程では液体廃棄物(低レベル放射性廃棄物)、ウラン濃縮工程では気体廃棄物(UF6) 、燃料成型加工工程では固体廃棄物(UO2 粉塵等)、そして再処理工程では気体廃棄物(核分裂生成物)、液体廃棄物(低・中・高レベル放射性廃棄物)および固体廃棄物(燃料被覆管廃材など)に対して厳格な取扱いが求められている。どの廃棄物についても適切な処理が施され、施設から環境に放出された放射性物質によって公衆が受ける放射線被曝が合理的に可能な限り低減されるよう(ALARA:as low as reasonably achievable)技術的な対応がなされている。
(注意:我が国では現在、中レベル放射性廃棄物の分類は法律的に制定されていない)
(3) 安全規制上の核燃料施設
核燃料サイクル各施設は、原子力安全規制の立場から 表3 のように区分されている。
<図/表>
表1 原子力施設に適用される代表的な規制関係法令
表1  原子力施設に適用される代表的な規制関係法令
表2 原子炉等規制法の規制体系
表2  原子炉等規制法の規制体系
表3 核燃料サイクル各施設の原子力安全規制の立場からの分類
表3  核燃料サイクル各施設の原子力安全規制の立場からの分類
図1 核燃料サイクルの仕組みと「核燃料施設」の構成
図1  核燃料サイクルの仕組みと「核燃料施設」の構成

<関連タイトル>
核燃料施設の安全規制の概要 (11-02-03-02)
核燃料施設安全審査基本指針 (11-03-03-01)
ウラン加工施設安全審査指針 (11-03-03-02)
再処理施設安全審査指針 (11-03-03-03)
廃棄物管理施設の安全性の評価の考え方について (11-02-05-03)

<参考文献>
(1) 原子力安全委員会(編):平成元年版 原子力安全白書、大蔵省印刷局(1989)
(2) 原子力委員会(編)  :平成元年版 原子力白書  、大蔵省印刷局(1989)
(3) 原子力安全委員会(編):平成5年版 原子力安全白書、大蔵省印刷局(1994)
(4) 原子力安全委員会(編):平成6年版 原子力安全白書、大蔵省印刷局(1995)
(5) 科学技術庁原子力安全局原子力安全調査室(監修):改訂8版 原子力安全委員会安 全審査指針集、大成出版(1994)
(6) 科学技術庁原子力安全局(監修):1995年版 原子力規制関係法令集、大成出版(1994)
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