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<概要>
 2000年(平成12年)から2004年(平成16年)までの5年間について原子力委員会決定の一覧を示すとともに、主な原子力委員会決定の概要を述べる。なお、各年度の「原子力研究、開発及び利用に関する計画」については当該の原子力百科事典タイトルを参照されたい。
<更新年月>
2005年06月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.2000年(平成12年)
 表1に2000年における原子力委員会決定の一覧を示す。主な決定事項の概要は次のとおりである。
(1) 特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」の制定について(2000年3月10日)
 高レベル放射性廃棄物の処分については、「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」(1994年6月24日決定)において、2000年を目安に、処分事業の実施主体の設立を図るのが適当とされた。高レベル放射性廃棄物処分懇談会報告書と「高レベル放射性廃棄物処分の推進について」(1998年6月決定)に基づき、事業化に向けた諸制度の整備、研究開発、安全規制に関する制度整備が進められてきた。実施主体のあり方、資金確保策などの処分事業の制度化については、総合エネルギー調査会原子力部会において審議され、今般「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律案(仮称)」の報告を受けた。これについて審議を行い、結論を得た。
 本法案は、高レベル放射性廃棄物処分懇談会報告書を踏まえ、国の役割、処分費用の確保方策、処分実施主体の設立、地元の意見の聴取を含めた処分地選定プロセスなどを定める。また発電用原子炉のみならず、試験研究炉からの高レベル放射性廃棄物を含めわが国の原子力利用に伴い発生する高レベル放射性廃棄物を処分しうる枠組みとなっている。従って、高レベル放射性廃棄物の最終処分の推進を図る枠組みを定める「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」を制定することは適当と判断する。今後は、本法案に基づき、わが国の高レベル放射性廃棄物が確実に地層処分されるよう、早急に処分実施主体を設立するとともに、処分に必要となる資金を着実に確保していくことが重要である。
(2) ウラン廃棄物処理処分への取組について(2000年12月22日)
 原子力バックエンド対策専門部会(「専門部会」)から、ウラン廃棄物処理処分の基本的考え方について、調査審議結果の報告を受けた。専門部会は、各界各層の有識者で構成され、当該廃棄物の処理処分方策に関して幅広い調査審議を約9ヶ月にわたり行い、報告書の取りまとめに当たっては、報告書案に対し国民の方々から広く意見を募集した。
 専門部会報告書は、廃棄物処理処分の具体化に必要な、安全な処分方策、技術開発課題、処分事業の実施体制、安全確保に係る関係法令の整備の進め方などの事項について、基本的な考え方が適切に取りまとめられている。今後、濃縮事業者、再転換・成型加工事業者、核燃料サイクル開発機構、日本原子力研究所などの核燃料物質の使用者、電気事業者などの関係機関においては、専門部会報告書を尊重し、十分な連携の下に、放射性廃棄物の処分事業全体の進展状況などを踏まえ、実施体制の検討など処分の実施に向けて積極的に取り組むことが必要である。また、当該廃棄物は、他の放射性廃棄物と異なる特徴を有しているので、安全規制の基本的考え方、安全基準の策定、関係法令の整備等所要の措置が講じられることが期待される。さらに、放射性廃棄物処分について国民の理解を得るため、的確で分かりやすい情報を積極的に提供し、説明していくことが必要である。

2.2001年(平成13年)
 表1に2001年における原子力委員会決定の一覧を示す。主な決定事項の概要は次のとおりである。
(1) 専門部会等の廃止について(2001年1月9日)
 2001年1月6日の中央省庁等改革及び2000年11月24日に「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」が決定されたことに鑑み、下記の専門部会等については、本日付をもって廃止する。なお、核融合会議及びITER計画懇談会については、現在審議が継続していることに鑑み、2001年3月まで存続させる。 原子力国際問題等懇談会 、ウラン濃縮懇談会、基盤技術推進専門部会 、核燃料リサイクル計画専門部会、放射線利用推進専門部会、高レベル放射性廃棄物処分懇談会、原子力バックエンド対策専門部会、原子力国際協力専門部会、高速増殖炉懇談会、長期計画策定会議、大強度陽子加速器施設計画評価専門部会
(2) 原子力試験研究検討会の設置について(2001年4月10日)
 研究開発活動の効率化と活性化を図り、21世紀の社会のニーズに対応した一段と優れた成果をあげていくため、国は、研究開発課題及び研究機関について適時適切な評価を実施し、評価結果を資源の配分や計画の見直し等に反映することが重要である。このため、原子力試験研究検討会を設置し、「国の研究開発全般に共通する評価の実施方法の在り方についての大綱的指針」(1997年8月7日内閣総理大臣決定)に基づき、原子力試験研究費に係る研究課題の適切な評価等を実施し、今後の研究活動の効率化・活性化を図ることにより、国民生活に貢献する原子力の研究、開発及び利用を推進することとする。検討項目は、原子力試験研究費の配分の基本方針、)原子力試験研究費により実施される研究課題の評価のあり方、原子力試験研究費により実施される研究課題の評価の実施。
(3) 原子力発電・サイクル専門部会の設置について(2001年7月3日):エネルギーの安定供給を支える軽水炉発電体系、及び核燃料サイクル体系について、その推進に当たって必要な調査審議を行うため。
(4) 国際関係専門部会の設置について(2001年7月3日):原子力を取り巻く様々な国際的課題に対して、今後、主体的・戦略的な取組みを行っていくに当たって必要な調査審議を行うため。
(5) 市民参加懇談会の設置について(2001年7月3日):原子力政策の決定過程における市民参加の拡大を通じて、国民の理解をより一層促進するため。
(6) 総合企画・評価部会の設置について(2001年7月3日):「長期計画」を着実に具体化し推進していくため、各分野毎の調査審議の内容の調整を図るとともに、長期計画の内容及びその実施状況を踏まえ、原子力政策全般に対する事前・事後の評価を行うため。
(7) 研究開発専門部会の設置について(2001年7月3日):「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」に沿って、原子力分野における研究開発を推進するための方策について調査審議を行うため。また、原子力試験研究費の配分の基本方針の決定や、研究課題の評価等に必要な調査審議を行い、研究開発活動の効率化及び活性化を促進。
(8) 放射線専門部会の設置について(2001年7月3日):「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」に沿って、放射線利用の推進について必要な調査審議を行うため。
(9) 核融合専門部会の設置について(2001年7月10日):未来のエネルギー選択肢の幅を広げ、その実現可能性を高める観点から進められている核融合の研究開発について、その総合的かつ効果的な推進に必要な調査審議を行うため。
(10)国際熱核融合実験炉(ITER)計画の推進について (2001年6月5日)
 ITER計画懇談会が、「我が国がITER計画に主体的に参加するだけでなく、設置国になることの意義が大きいと結論した。」としていることを踏まえつつ、ITERの我が国への誘致を念頭において、今後とも、基本計画に基づき、ITER計画に積極的に取り組みつつ、バランスのとれた総合的な核融合研究開発を推進する。その際、ITER計画をはじめとする核融合研究開発の意義、進捗状況について、節目ごとに評価し、その結果を公表するとともに、安全面も含めた情報の提供を行うなど、十分な国民理解が得られるよう、透明性の高い継続的な努力を行うことが重要であると認識する。

3.2002年(平成14年)
 表1に2002年における原子力委員会決定の一覧を示す。主な決定事項の概要は次のとおりである。
(1) 日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構の廃止・統合と独立行政法人化に向けての基本的な考え方(2002年4月2日)
 2001年12月19日に、中央省庁等改革に続く行政改革の一環として、「特殊法人等整理合理化計画」が閣議決定され、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構について、その廃止・統合及び独立行政法人化が決められた。その後、原子力委員の間において議論を重ねるとともに、5回にわたり、原子力委員会参与から意見を聴取した上で、今般、両法人の統合に向けての基本的な考え方をとりまとめた。
 原子力研究開発における両法人の重要性に鑑み、原子力委員会としての基本的な考え方をまとめたものであり、今後の関係者による検討が、これに沿って行われることを強く希望する。
 1) 基本的な認識:今後、原子力の研究開発利用のより一層効果的な推進が求められている。両法人が統合後も引き続き、原子力長期計画に沿って着実に推進し、我が国の原子力研究開発において中心的な役割を担っていくことが必要。「基礎・基盤的な研究開発」から「プロジェクト型研究開発」までを全て包含する、まさしく我が国唯一の中核的な原子力研究開発機関と位置付けられるものである。基礎・基盤的な研究開発」や「プロジェクト型研究開発」など、各々の研究開発の性質に応じて、適切な組織構成や運営が行われることが不可欠。「先進性、一体性及び総合性」を備えた研究開発機関として、その役割を果たすこと。業務の重点化・効率化を併せて図っていくこと。
 2) 新法人に求められるもの:横断的課題として、組織運営では組織全体の活性化に努めつつ、シナジー効果の発揮される組織とすることが強く求められる。研究評価では厳正な研究評価が行われるよう、評価制度の充実を図っていく。透明性の向上では、情報公開や外部評価の一層の充実、立地地域への理解促進活動に努める。その他、新法人が貢献すべき分野として、安全確保、産官学の連携強化、大学との人材育成面での連携強化、国際協力・核不拡散、廃棄物処理処分方策の確立等がある。
 個別的分野における課題として、 核分裂分野(核燃料サイクルを含む)では、今回の統合による積極的効果が最も期待される分野であり、両法人のこれまでの研究成果を生かし、将来に向けた革新的原子力技術の研究開発などを積極的に実施していくべきである。核燃料サイクルについては、核燃料サイクルの完結及びその高度化のため、高速増殖炉及び関連する燃料サイクル技術、軽水炉使用済燃料の再処理技術の高度化、高レベル放射性廃棄物の処理・処分技術の研究開発について、現行原子力長期計画の方向性を踏まえ、引き続き積極的に実施していく。核融合分野では、国際熱核融合実験炉(ITER)計画の進捗を踏まえ、我が国が果たすべき役割の中での新法人の役割を検討し、相応しい体制を構築していく。加速器分野では、新法人は、放射線研究の蓄積など、原子力の中核的研究開発機関としての役割を十分に認識し、加速器開発を実施している諸機関との間の役割分担を踏まえながら、我が国全体における加速器開発の総合化・効率化を図る中での重要な役割を担う。 放射線利用分野では、産業界との連携が期待されるとともに、多岐にわたる分野での利用の普及を図る上での新法人の役割を検討していく。

4.2003年(平成15年)
 表1に2003年における原子力委員会決定の一覧を示す。主な決定事項の概要は次のとおりである。
(1) 我が国におけるプルトニウム利用の基本的考え方について(2003年8月5日)
 プルトニウム利用を進めるにあたり、平和利用に係る透明性向上の観点から、基本的考えを示す。
 我が国は核兵器の不拡散に関する条約を批准し、プルトニウムの平和利用に対する国際的な担保がなされているが、六ヶ所再処理工場の操業に伴い、相当量のプルトニウムが分離、回収される予定であり、利用の透明性向上をさらに図ることが重要である。そのためには次の基本的考えを満たす措置を実施する必要がある。1)プルトニウム利用計画の公表。2)状況に対応した利用計画の変更。
 海外で保管されているプルトニウムでプルサーマルに使用されるものは、海外でMOX燃料に加工されるため、平和利用の観点からの懸念はないと考えられるが、透明性向上の観点から、燃料加工の段階で国内プルトニウムに準じた措置を行う。国の研究機関において保管、利用されているプルトニウムについても、商業用プルトニウムに準じた措置を行う。

5.2004年(平成16年)
(1) 原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画の策定について(2004年6月15日)
 原子力委員会は原子力基本法に基づく原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画を1956年以来、概ね5年ごとに策定してきた。現行の計画は2000年11月に策定され、2005年11月に5年を迎える。原子力委員会は2004年1月より「長計についてご意見を聴く会」を15回開催、広く国民を対象に「意見募集」を実施、「第7回市民参加型懇談会〜長計へのご意見を述べていただく場として〜」を開催して、計画策定に向けて各界各層の提案・意見を聴取してきた。これを踏まえて、新たな長期計画を2005年中にまとめることとした。策定に必要な調査審議を行うため、新計画策定会議を原子力委員会に設置する。必要に応じて新計画策定会議に小委員会等を設置して論点整理等を求める。策定会議及び小委員会等は原則として公開、策定会議の議長は原子力委員長が務める。新計画の策定作業においては、現行計画の評価等を行い、原子力研究、開発、利用の基本原則、目標、実施責任主体等を明確にする。
 新計画策定会議構成員を表2に示す。
(2) 独立行政法人日本原子力研究開発機構法案について(2004年10月12日)
 独立行政法人日本原子力研究開発機構法案が閣議決定されたとの報告を受けて、当委員会の考えを示す。本法案は、新機構を原子力基本法における我が国の中核的な原子力の開発機関と位置付けているが、その趣旨は新機構が他の研究機関、大学との連携、協力して効果的効率的に使命を果すことを奨励こそすれ、排除するものではないと理解する。機構における研究開発体制が整備される際には統合によるシナジー効果が発揮されるべきである。機構の業務については原子力長期計画を十分に尊重して実施されることが必要である。
<図/表>
表1 2000年〜2004年の原子力委員会決定一覧
表1  2000年〜2004年の原子力委員会決定一覧
表2 新原子力長期計画策定会議構成員(平成16年6月)
表2  新原子力長期計画策定会議構成員(平成16年6月)

<関連タイトル>
平成12年度原子力開発利用基本計画 (10-02-01-10)
平成13年度原子力開発利用基本計画 (10-02-01-11)
平成14年度原子力研究開発利用基本計画 (10-02-01-12)
平成15年度原子力研究開発利用基本計画 (10-02-01-13)
平成16年度原子力研究開発利用基本計画 (10-02-01-14)
原子力委員会決定(1985年〜1989年) (10-02-02-09)
原子力委員会決定(1990年〜1994年) (10-02-02-10)
原子力委員会決定(1995年〜1999年) (10-02-02-11)
核燃料サイクルの進め方について(2003年8月) (10-02-02-13)

<参考文献>
(1)原子力委員会編、平成15年版原子力白書、国立印刷局、2003年12月。
(2)原子力委員会ホームページなど
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