<本文>
1.1990年(平成2年)
原子力委員会決定(
原子炉等規制法に係る諮問・答申を除く)の一覧を
表1 に示す。特に概要を示す事項はない。
2.1991年(平成3年)
原子力委員会決定(原子炉等規制法に係る諮問・答申を除く)の一覧を
表2 に示し、主な概要を以下に示す。
(1)
放射性廃棄物対策専門部会報告書「
TRU 核種を含む放射性廃棄物の処理処分について」(1991年7月30日、原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会)
TRU核種を含む放射性廃棄物は発生量が多くその発生源も多様であるので、処分の負担軽減を図るため、
除染、減容など放射性廃棄物の発生量を低減させることを処理の基本とする。アルファ核種放射能濃度が低いものとベータ・ガンマ核種放射能濃度が比較的低いものの処分については原子炉施設からの低レベル放射性廃棄物の処分と同様に浅地中埋設処分が考えられる。これ以外のTRU核種を含む放射性廃棄物の処分については「浅地中以外の地下埋設処分」が適切と考えられる。
(2) 核燃料リサイクル専門部会報告書「我が国における核燃料リサイクルについて」(1991年8月2日、原子力委員会核燃料リサイクル専門部会)
原子力エネルギーを長期的に経済的にかつ安定なエネルギー源として捉えて、核燃料リサイクル政策を進めていく。またウラン資源の利用効率が高い
高速増殖炉による原子力発電を将来の主流にすべきとして開発を進めているが、核燃料利用の面で融通性の富む新型転換炉でのリサイクル利用も進めていく。当面は原子力発電の主流である
軽水炉でプルトニム利用を進めていく。核燃料リサイクル計画の遂行に必要な
プルトニウムの供給源としては、六ヶ所再処理工場が中心的役割を担うことになる。
3.1992年度(平成4年度)
原子力委員会決定等一覧(原子炉等規制法に係る諮問・答申を除く)を
表3 に示し、概要を以下に示す。
(1) 高レベル放射性廃棄物対策の進め方について(1992年8月28日)
高レベル放射性廃棄物対策の処分は核燃料サイクル確立上重要課題である。高レベル放射性廃棄物対策を強力に推進していくための中核組織を早急に設置すべきである。
(2) 核融合研究開発の推進について(1992年6月9日、原子力委員会)
日本ではJT-60が建設され「第二段階基本計画」に定められたプラズマ性能の目標が達せられ、「第三段階基本計画」の研究開発を実施するに十分な科学的・技術的基盤が確立した。1992年度からは、「第三段階核融合研究開発基本計画」を長期的展望・方針に基づき推進する。
(3) ウラン濃縮懇談会報告書(1992年8月11日、原子力委員会ウラン濃縮懇談会)
遠心法技術については、六ヶ所濃縮工場の建設を進め安定した操業を図るとともに、現在進めている新素材高性能遠心機の開発を考慮しつつ、次世代機である高度化機は2003年度の同工場への導入計画を検討する。この際、日本原燃(株)が試験研究設備等を整備し主体的に取り組むのが適当である。高度化機の単機開発終了までは動燃が支援する。
原子レーザー法では日本原子力研究所(原研)とレーザー濃縮技術研究組合が試験を実施し、基礎プロセス試験で5%以上の濃縮ウランを得ており、システム試験での要素技術の開発も概ね順調に推移している。経済性を考慮しつつ、今後の研究開発は段階的に進めていき、評価検討のうえ開発継続の是非を判断する。分子レーザー法では理化学研究所(理研)と動燃が試験を実施し、工学基礎試験では約3.7%の濃縮ウランを得ており、工学実証試験では機器開発は概ね順調に進展している。工学的実証試験を開始したばかりで、経済性について論じる段階にない。化学法は国の補助を受け旭化成工業(株)が実施し、数年かかるといわれたが数ヶ月で3%以上の濃縮ウランを回収し、研究開発事項をほぼ終了している。
(4) 放射性廃棄物対策専門部会報告書「高レベル放射性廃棄物対策について」(1992年8月28日、原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会)
高レベル放射性廃棄物処分事業の実施主体を明確化し、2000年を目安に実施主体の設立を図っていく。高レベル放射性廃棄物対策推進協議会が実施主体の組織形態等の検討を速やかに行い、できる限り早い時期に準備のための組織を発足させる。今後の再処理計画等の状況から総合的に判断して遅くとも2040年代半ばまでに処分工場の操業を開始することを目途とする。
4.1993年度(平成5年度)
原子力委員会決定(原子炉等規制法に係る諮問・答申を除く)の一覧を
表4 に示し、主な概要を以下に示す。
(1) 基盤技術推進専門部会報告書「原子力基盤技術開発の新たな展開について」(1993年4月2日、原子力委員会基盤技術推進専門部会)
原子力基盤技術開発が独創的・創造的な活動を通じて先導的な役割を担っていくためには、新しい技術開発の局面に対応した新しい技術領域の研究開発に積極的に取り組んでいく必要がある。原子力基盤技術開発において取り組むべき新しい技術領域としては、放射線ビーム利用先端計画・分析技術、原子力用計算科学技術、原子力分野における人間の知的活動支援技術、の3領域を取り上げ、研究開発の積極的な推進を図ることとする。また、研究環境の整備を目指して、産・学・官および外国との研究交流の一層の推進、異分野間交流の活性化、人材集結型システムの導入、創造的な人材の育成・確保、などの能動的・積極的な推進方策を講じつつ、原子力基盤技術開発を効率的に進めていくことが重要である。
(2) 放射線利用専門部会報告書「放射線利用の新たな展開について」(1993年6月18日、原子力委員会放射線利用専門部会)
放射線利用は他の技術には見られない特徴を活かして医療、農林水産、工業、研究の各分野において大きな役割を果たしつつあるが、今後は、医療、環境保全といった生活者の立場を重視した利用技術を一層普及していくことが重要である。一方、近年整備が進められている
加速器は、大型化、性能の向上が著しく、その利用の幅も広がってきており、放射線利用分野での大きな飛躍をもたらすものと期待されている。このため、これらの施設を活用した先端的な研究開発を推進するための研究開発体制の整備が重要である。また、開発途上国への技術移転による国際貢献の観点から、放射線利用に係る途上国協力をい一層推進することが求められているほか、基礎研究分野での国際貢献観点からは、積極的に先進国強力にも取り組むことが必要である。
(3) 放射性廃棄物対策専門部会「高レベル放射性廃棄物
地層処分研究開発の進捗状況について(1993年7月20日、原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会)
当専門部会は平成元年12月に「重点項目とその進め方」(<10-02-02-09>のデータ参照)を取りまとめた。動燃事業団は、この趣旨に沿って、「技術報告書」として取りまとめ、1992年9月に公表、1992年12月に原子力委員会に報告した。「技術報告書」に示された地層処分の研究開発は、「重点項目とその進め方」に沿って適切かつ着実に進められており、また、地層処分の安全確保に関し、多重バリア]システムの有効性を示唆する知見が得られており、あわせて具体的な技術的な方法が明確になってきていることを考慮すれば、現段階にあっては、概ね妥当なものと結論できる。
(4) 低レベルレベル放射性廃棄物処分の今後の考え方について(第16回ロンドン条約締約国協議会議に向けて(1993年11月2日)
日本は低レベルレベル放射性廃棄物の処分方法として
海洋投棄を選択肢としない。
(第16回ロンドン条約締約国協議会議に向けて)
5.1994年(平成6年)
原子力委員会決定(原子炉等規制法に係る諮問・答申を除く)の一覧を
表5 に示し、主な概要を以下に示す。
(1) ガラス固化体の
核物質防護措置について(1994年3月11日)
改訂された
IAEA ガイドランの規定に従い、慎重な管理によってガラス固化体の核物質を防護するものとし、必要な法令整備等を図る。
(2) 原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画について(1994年6月24日)
21世紀を展望して長期的地球的視野に立って新しい時代環境に適応するように1987年に決定した原子力開発長期計画を改定することにし、1992年7月長期計画専門部会を設け、審議を進めてきた。同専門部会の審議結果を踏まえ、新たに「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」を決定した。
(3) 高速増殖炉開発計画専門部会報告書(1964年6月28日、原子力委員会高速増殖炉開発計画専門部会)
実験炉「常陽」、
原型炉「もんじゅ」の建設・運転等着実なステップを踏みながら自主技術を蓄積し、現在は、その成果を踏まえ、
実証炉の建設計画を具体化する段階を迎えている。軽水炉と競合しうる経済性を有するとともに、核不拡散性の向上に配慮したエネルギー選択肢としての高速増殖炉技術体系の確立にための研究開発を進める。実証炉1号炉の計画の具体化を図ることとする。燃料加工、再処理等の燃料サイクルの実用化に向けた研究開発および先進的リサイクル技術の技術開発を行っていくこととする。
<図/表>
<関連タイトル>
高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の開発(その1) (03-01-06-04)
わが国の高速増殖炉実証炉計画 (03-01-06-05)
わが国の海洋投棄中止にいたる経緯 (05-01-03-11)
高レベル廃棄物の群分離と資源化 (07-02-01-01)
核融合研究開発の経過 (07-05-01-03)
原子力委員会と長期計画(平成6年原子力委員会) (10-01-01-01)
原子力基盤技術開発の新たな展開について (10-02-02-03)
放射線利用の新たな展開について (10-02-02-04)
プルトニウム返還輸送について (10-02-02-05)
<参考文献>
(1) 原子力委員会(編):原子力白書(平成2年版)、大蔵省印刷局(1990年12月15日)p.309-361
(2) 原子力委員会(編):原子力白書(平成3年版)、大蔵省印刷局(1991年12月16日)p.311-364
(3) 原子力委員会(編):原子力白書(平成4年版)、大蔵省印刷局(1992年12月7日)p.306-412
(4) 原子力委員会(編):原子力白書(平成5年版)、大蔵省印刷局(1993年12月27日)p.355-456
(5) 原子力委員会(編):原子力白書(平成6年版)、大蔵省印刷局(1995年2月1日)p.231-336
(6)原子力委員会(編):原子力白書(平成7年版)、大蔵省印刷局(1996年1月30日)p.233-258