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<概要>
 1985年(昭和60年)から1989年(平成元年)までの5年間について、原子力委員会決定の一覧を示すとともに、主な原子力委員会決定の概要を述べる。
<更新年月>
2003年01月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.1985年(昭和60年)
 原子力委員会決定(原子炉等規制法に係る諮問・答申を除く)の一覧を 表1 に示し、主な決定の概要を以下に示す。
(1) 日本原子力研究所の原子力船の開発のために必要な研究に関する基本計画について(1985年3月29日)
 原子力船「むつ」の新定係港を関根浜(青森県むつ市)に建設して、機能試験を実施し、出力上昇試験および海上試運転を実施する。実験航海は概ね1年を目途とし、実験航海終了後は直ちにこの関根浜定係港において解役する。舶用炉の改良研究については当面設計評価研究を行う。
(2) 放射性廃棄物対策専門部会報告書について(1985年10月22日)
放射性廃棄物の処理処分は、原則的には発生者たる原子力事業者の責任である。国は放射性廃棄物の処理処分の研究開発、安全規制等を行う。とくに高レベル放射性廃棄物の適切な処分については国が責任を負う必要がある。高レベル放射性廃棄物処分についての処分予定地の選定および処分予定地における処分技術の研究開発は国のプロジェクトとし、動燃がプロジェクトを推進し、原研が必要な研究等を実施する(原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会の報告)。
2.1986年(昭和61年)
 原子力委員会決定(原子炉等規制法に係る諮問・答申を除く)の一覧を 表2 に示し、主な決定の概要を以下に示す。
(1) 「核原料物質、核燃料物質および原子炉の規制に関する法律」(原子炉等規制法)の一部改正について(1986年3月4日)
 放射性廃棄物の廃棄に関する規制を創設する。放射性廃棄物の処理処分の安全確保に関する法律上の責任の明確化および安全規制の充実強化ならびに原子力損害賠償責任の明確化、原子力施設の検査体制の充実等のため、「原子炉等規制法」等の一部改正を行う。
(2) 動力炉・核燃料開発事業団の動力炉開発業務に関する基本方針の修正について(1968年3月18日)
 核燃料の安定供給と有効利用を図り、かつ原子力発電の有利性を最高度に発揮するため、高速増殖炉および新型転換炉の開発を推進する。すなわちMOX燃料を用いるナトリウム冷却型高速増殖炉の開発を目標とした研究開発を進め、電気出力28万キロワットの原型炉を1992年度頃臨界目標に建設する。高速増殖炉の技術的経験の蓄積を図るとともに燃料・材料等の照射施設として熱出力10万キロワットの実験炉を運転する。MOX燃料を用いる新型転換炉(重水減速沸騰軽水冷却型炉)を開発し、電気出力16万5千キロワットの原型炉を運転する。
 開発にあたっては、原研、大学、国公立試験研究機関、民間企業等と密接に連携し、効率的かつ計画的に実施し、また海外技術の活用をはかる。資金は国家資金および一部を民間企業等が拠出する。業務のうち適切なものについては業務を委託する。専門的人材については、原研、大学、国公立試験研究機関、民間企業等からも参加を得る。また蓄積した技術成果等は民間に移転を図る。
(3) 動力炉・燃料開発事業団の動力炉開発業務に関する基本計画について(1986年3月18日)
 高速増殖炉用燃料材料等の照射施設として熱出力10万キロワットで高速増殖炉実験炉の運転を行う。1992年度頃臨界を目標に原型炉の建設を進める。電気出力16万5千キロワットで新型転換炉原型炉の運転を行い、MOX燃料等の利用技術を実証する。使用済燃料の再処理需要の一部を補うため東海再処理工場を操業し、また軽水炉燃料等および高速増殖炉燃料の再処理技術の研究開発を行う。ウラン濃縮パイロットプラントの運転および原型プラントの建設・運転を行い、また高性能遠心分離機の研究開発を行う。プルトニウムの軽水炉利用のための照射試験、解析評価等を行う。海外ウラン資源の調査・探鉱を行い、国内東濃地区の精密試すい等を行い、また低品位ウラン鉱床からのウラン回収技術および探鉱技術の研究開発を行う。共通事項として、上記施設に係る核物質防護、保障措置技術、安全管理技術等の研究開発を行う。なお、本基本計画は必要に応じて所要の修正を行う。
(4) 原子力開発利用長期計画の見直しについて(1986年4月22日)
 原子力開発利用の本格的着手以来30年の節目を契機に、安全性、経済性に優れた原子力発電体系の整備・向上のための方策、高速増殖炉を中心としたプルトニウム利用体系発展のための基本指針と推進方策および新たな技術革新のための創造的研究開発の推進方策、ならびに平和利用のための日本の国際的地位にふさわしい役割を果たす方策、を検討事項として、原子力開発利用長期計画専門部会を設置して策定以来4年を経過した原子力開発利用長期計画を見直すこととする。
(5) 「ウラン濃縮懇談会」報告書(1986年10月28日:原子力委員会ウラン濃縮懇談会の報告)
 動燃と日本原燃(株)が中心となって、1990年頃を目途に新素材高性能ウラン濃縮遠心分離機のブロック試験規模(約50台のカスケード)の実証および量産製造技術を開発する必要がある。レーザー濃縮法については、1990年頃を目途に原子法による5%濃縮のシステム試験を実施する。1987年頃を目途に分子法による5%濃縮の原理可能性を追求する。
(6) 「高温ガス炉研究開発計画専門部会」報告書(1986年12月23日、原子力委員会高温ガス炉研究開発計画専門部会の報告)
 これまでに蓄積されている研究開発の成果を基に試験研究炉を建設し、高温ガス炉技術の基盤の確立および高度化を図るための研究開発を進めるものとする。試験研究炉は、燃料体および炉心構成材料に関する高温照射試験、計装付き照射試験が行えること、原子炉出口冷却材温度は、現在の技術レベルで達成可能な850度Cから段階的に上昇させ、中間熱交換機を介しての熱核プロセス利用技術の開発が行えること(将来的には、原子炉出口冷却材温度950度C以上を目標とすることが望まれる)、などの機能を満足するものとするので、炉出力は30MWT程度が必要である。原研は、高温ガス炉研究開発の中核機関として、試験研究炉を建設、運転し、高温ガス炉技術の確立および高度化を総合的に推進する。
3.1987年(昭和62年)
 原子力委員会決定(原子炉等規制法に係る諮問・答申を除く)の一覧を 表3 に示し、主な決定の概要を以下に示す。
(1) 放射線利用の推進について報告書(1987年3月13日、原子力委員会放射線利用専門部会)
 原子力平和利用の重要な柱として、放射線利用に実用化の推進を図っていくこと、多くの新しい利用の可能性を秘める放射線の高度利用のための研究開発を積極的に推進していくこと、我が国が放射線利用分野における開発途上国からの協力要請に応えるなど国際社会に貢献していくこと、により放射線利用がさらに進展することを期待する。
(2) 原子力開発利用長期計画について(1987年6月22日)
原子力委員会は、昭和57年6月に策定された原子力開発利用長期計画(以下、「57長計」という。)を改定し、ここに新しい長期計画を策定した。
 本長期計画は、21世紀に向けての原子力政策の展開という長期的な視点を踏まえて、今後2000年までの原子力の研究、開発及び利用(以下、「原子力開発利用」という。)に関する指針の大綱と基本的な施策の推進方策を明らかにするものである。
 今次の長期計画の改定は、57長計策定以来5年間における原子力開発利用の進展と原子力を巡る情勢の変化を踏まえて行われた。これに加えて、我が国の原子力開発利用が30年という節目を迎えていることから、これまでの開発路線を現時点で総点検し、その結果を踏まえて、新しい時代環境に適応した原子力開発利用の在り方と目指すべき方向を明らかにすることに大きな力点を置いた。
4.1988年(昭和63年)
 原子力委員会決定(原子炉等規制法に係る諮問・答申を除く)の一覧を 表4 に示し、主な決定の概要を以下に示す。
(1) 原子力基盤技術の推進について(1988年7月26日、原子力委員会基盤技術推進専門部会)
 原子力用材料、原子力用人工知能、原子力用レーザー、および放射線リスク評価・低減を当面の原子力基盤技術として位置づけ、創造型の技術開発へと重点を移し、原子力開発利用のリーディングカントリとしての国際的な責務を果たす。また原子力基盤技術の開発の効率的推進のため、研究交流のための環境整備、創造的人材の育成、新しく研究評価の導入などを図ることとする。
(2) 高速増殖炉研究開発の進め方(1988年8月26日、原子力委員会高速増殖炉開発計画専門部会)
 高速増殖炉の実用化に至るシナリオとしては、2020年から2030年頃の実用化を目標として原型炉「もんじゅ」に続く実証炉はじめとして複数の炉を建設する機会を設定する。実証炉については、設計、建設、運転には電気事業者(原電)が主体的役割を果たすこととし、1990年代後半に着工することとを目標として、1990年頃を目途に基本仕様の選定を行う。高速増殖炉の経済性については、安全性、信頼性、運転・保守性について軽水炉と同等以上の水準を保ちつつ、経済的に軽水炉と十分競合し得るものとすることを目標に研究開発を進める。
(3) 群分離・消滅処理技術研究開発長期計画(1988年10月25日、原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会)
 群分離技術の研究開発においては、高レベル放射性廃液からの有用金属回収技術および分離元素の有効利用技術の研究開発を西暦2000年を目途とし、消滅処理技術の研究開発においては核破砕消滅ならびに光核反応消滅の研究開発を、それぞれ長期計画に従って推進することとする。
(4) 原子力損害賠償制度専門部会報告書(1988年12月2日、原子力委員会原子力損害賠償制度専門部会)
 原子力損害賠償措置額を100億円から300億円に引き上げる。またこの法律の適用期限を従来同様10年延長とする。
5.1989年(平成元年)
 原子力委員会決定(原子炉等規制法に係る諮問・答申を除く)の一覧を 表5 に示し、主な決定の概要を以下に示す。
(1) ウラン濃縮懇談会報告書(1989年5月16日、原子力委員会ウラン濃縮懇談会)
新素材高性能遠心機の実用化を図っていくため、1000台からなる実用規模カスケード試験装置を動燃(人形峠事業所)において1989年度に建設着手し1991年度に運転開始することを目途とする。
(2) 核燃料リサイクル専門部会報告書(1989年12月12日、原子力委員会核燃料リサイクル専門部会)
 動力炉・核燃料開発事業団(動燃)は現在運転中の「常陽」と「ふげん」および建設中の「もんじゅ」にプルトニウムを必要としているので、英仏への再処理委託で回収されたプルトニウムの返還輸送を海上輸送により1992年秋頃までには実施する。
(3) 放射性廃棄物対策専門部会報告書(1989年12月19日、原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会)
 高レベル放射性廃棄物の地層処理研究を進めるに当たっては、多重バリアシステムの性能を明らかにするとともに、これに基づき長期間にわたり安全性が確保できるような技術的方法を具体的に示していく研究開発を重点的に進めることが適当である。当面の期間において特に重点的に取り組むべき研究開発課題として、性能評価研究、処分技術の研究開発および地質環境条件の調査研究の3項目が挙げられる。特に性能評価研究を中心として研究開発を進めていくものとする。
<図/表>
表1 1985年の原子力委員会決定一覧
表1  1985年の原子力委員会決定一覧
表2 1986年の原子力委員会決定一覧
表2  1986年の原子力委員会決定一覧
表3 1987年の原子力委員会決定一覧
表3  1987年の原子力委員会決定一覧
表4 1988年の原子力委員会決定一覧
表4  1988年の原子力委員会決定一覧
表5 1989年の原子力委員会決定一覧
表5  1989年の原子力委員会決定一覧

<関連タイトル>
日本における高速増殖炉開発の経緯 (03-01-06-01)
わが国の高速増殖炉実証炉計画 (03-01-06-05)
日本における高温ガス炉技術の開発と国際協力 (03-03-06-01)
人形峠のウラン濃縮施設 (04-05-02-01)
放射性廃棄物の処分の基本的考え方 (05-01-03-01)
原子力船「むつ」開発の概要 (07-04-01-01)
日本の原子力損害賠償制度の概要 (10-06-04-01)

<参考文献>
(1) 原子力委員会(編):原子力白書(昭和60年版)、大蔵省印刷局(1986年2月20日)p.279-304

(2) 原子力委員会(編):原子力白書(昭和61年版)、大蔵省印刷局(1987年1月17日)p.225-242

(3) 原子力委員会(編):原子力白書(昭和62年版)、大蔵省印刷局(1987年12月21日)p.263-398

(4) 原子力委員会(編):原子力白書(昭和63年版)、大蔵省印刷局(1988年3月10日)p.269-438

(5) 原子力委員会(編):原子力白書(平成元年版)、大蔵省印刷局(1988年12月25日)p.269-307

(6) 原子力委員会(編):原子力白書(平成2年版)、大蔵省印刷局(1990年12月15日)p.309-361

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