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<概要>
 1995年(平成7年)から1999年(平成11年)までの5年間について、原子力委員会決定の一覧を示すとともに、主な原子力委員会決定の概要を述べる。
<更新年月>
2003年01月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.1995年(平成7年)
 原子力委員会決定(原子炉等規制法に係る諮問・答申を除く)の一覧を表1に示し、主な概要を以下に示す。
(1) 新型転換炉実証炉建設計画の見直しについて(1995年8月25日)
 電源開発(株)が青森県大間町に建設計画を進めていた新型転換炉実証炉の建設費を見直した結果、建設費が当初(3,960億円)の約1.5倍、発電原価が軽水炉の約3倍と、大幅コストアップとなった。また軽水炉によるMOX燃料 利用計画の進捗等によってMOX燃料利用の炉としての役割等は他によって代替され得る環境が生じてきている。さらに立地サイトの信頼関係に配慮する必要性からも意義ある計画を早急に立ち上げることが求められている。これらのことから、核燃リサイクル計画上将来の発展性を有すること、早急な立ち上げに対する技術的見通しがあり、かつ経済性を有すること、プルトニウムの需給バランスが確保されることなどの観点から、電気事業連合会から提案のあった全炉心MOX燃料装荷可能な改良型沸騰水型軽水炉(フルMOX-ABWR)の代替計画は適切であると判断された。
 これにともない、動力炉・核燃料開発事業団(動燃)が福井県敦賀市で運転している原型炉「ふげん」については今後の活用方策を含め関連の研究開発の具体的進め方については、関係者間で検討をすることになった。また今回の見直し経験を踏まえ、今後大型技術開発の実用化を進めるに当たっては、経済性向上を含め研究開発主体と建設・運転主体とが一体となって実施体制を整備すること、また進捗状況に応じて計画を評価し所要の措置を適時的確に講じていくための体制を構築する等が重要であり、関係機関の努力を求めるともに原子力委員会も適切に対応していくこととする。
(2) 高レベル放射性廃棄物処分への取組みについて(1995年9月12日)
 当委員会に「高レベル放射性廃棄物処分懇談会」を設けて、高レベル放射性廃棄物処分の円滑な実施への具体的取組に向けた国民の理解と納得が得られるよう幅広い検討を進める。高レベル放射性廃棄物処分の地層処分に関する研究開発計画の策定等、処理処分にかかわる技術的事項等については、「高レベル放射性廃棄物処分懇談会」との提携の下、当委
2.1996年(平成8年)
 原子力委員会決定(原子炉等規制法に係る諮問・答申を除く)の一覧を表2に示し、主な概要を以下に示す。
(1) 原子力政策円卓会議の設置について(1996年3月15日)
 我が国の原子力の研究、開発および利用に関して、国民各界各層の多様な意見を原子力政策に反映させ、国民的合意形成に資するため、原子力政策円卓会議を設置する。

(2) 原子力政策円卓会議のモデレーターについて(1996年4月16日)
 モデレーターとして各界(大学教授、評論家、新聞社論説委員等)から6名を定めた。
<参考>原子力政策円卓会議における議論の原子力政策への反映について(1996年6月24日、原子力政策円卓会議)
 国民との確かな信頼関係を築くためには、情報公開の一層の促進が重要であり、原子力政策決定過程に国民の声を一層反映させる必要がある。
(3) 原子力に関する情報公開および政策決定過程への国民参加の促進について(1996年9月25日)
 政策決定過程への国民参加として、専門部会等の報告書の策定に際し報告書案を一定期間公開し意見を募集し、反映すべき意見は採用し、不採用意見については理由を付して報告書と併せて公開する。また原子力の情報公開の充実については、原子力委員会専門部会等の会議を原則公開とし、原子力情報公開請求への対応体制を整備する。議事録、会議資料等はインターネットを活用し速やかに提供する。
(4) 今後の原子力政策の展開にあたって(原子力政策円卓会議の議論およびモデレーターからの提言を受けて)(1996年10月11日)
 当委員会は円卓会議の議論およびモデレーターからの提言を真摯に受け止め、当委員会が決定した「原子力に関する情報公開および政策決定過程への国民参加の促進について」に沿った措置を講じていく。「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」(1994年)の見直しをも視野に入れ適切に反映していく。

3.1997年(平成9年)
 原子力委員会決定(原子炉等規制法に係る諮問・答申を除く)の一覧を表3に示し、主な概要を以下に示す。
(1) 高速増殖炉懇談会の設置について(1997年1月31日)
 原子力政策円卓会議における議論等を踏まえ、将来の高速増殖炉開発の在り方について幅広い審議を行い、国民各界各層の意見を政策に的確に反映するため、高速増殖炉懇談会を設置する。
(2) 当面の核燃料サイクルの具体的な施策について(1997年1月31日)
 軽水炉でのプルトニウム利用(プルサーマル)については2010年頃までに十数基程度までに拡大することが適当である。今後の使用済燃料の貯蔵量を見通して2010年頃を目途に発電所敷地外も可能となるような所要の環境整備について検討の場を設ける必要がある。高レベル放射性廃棄物処分の円滑な実施に向けた処分対策全体像をできるだけ速やかに明らかにすべく努力を傾注する。原子力施設廃止措置の制度整備を進めていくことが重要である。別途設置する高速増殖炉懇談会により将来の高速増殖炉開発の在り方を検討する。
(3) 今後の高速増殖炉開発の在り方について(1997年12月5日)
 高速増殖炉懇談会報告書では、構想増殖炉を将来の非化石エネルギー源の一つの有力な選択肢として実用化を図り、安全確保、地元の理解などを前提に研究開発を進めることが妥当としている。また、原型炉「もんじゅ」は研究開発の場として位置づけ、実証炉については「もんじゅ」の成果および民間の研究開発成果をなどを評価したうえ具体的計画を決め、実用化に当たっては実用化時期を含めた開発計画について柔軟に対応することとしている。このような報告書の結論は妥当であり、趣旨を尊重して高速増殖炉開発を進めていく。

4.1998年(平成10年)
 原子力委員会決定(原子炉等規制法に係る諮問・答申を除く)の一覧を表4に示し、主な概要を以下に示す。
(1) 動力炉・核燃料開発事業団の改革の方針について(1998年2月6日)
 動燃を改組して核燃料サイクル開発機構(サイクル機構)を設立する。将来の核燃料サイクル技術体系の柱となる高速増殖炉および高レベル放射性廃棄物の処理処分の開発、ならびにこれらに必要な研究実施法人として再出発するにあたって、核燃料リサイクル技術確立に重要な役割を果たすことを期待する。六ヶ所再処理工場が本格的操業するまでは、原子力発電所および「ふげん」の使用済燃料を再処理し、その後は高速増殖炉燃料の再処理等の開発の実施が望まれる。海外ウラン探鉱、ウラン濃縮開発および新型転換炉開発については一定の期間内に廃止する必要がある。
(2) インドによる核実験の実施について(原子力委員会委員長談話) (1998年5月12日)
 昨日のインドの核実験実施の発表は「核兵器不拡散条約」および「包括的核実験禁止条約」の趣旨に反するもので、当委員会として、インドに対し核実験を二度と行わず、早急に核開発を停止することを強く求める。
(3) パキスタンによる核実験の実施について(声明)(1998年5月29日)
 28日、パキスタンの核実験実施の発表は「核兵器不拡散条約」および「包括的核実験禁止条約」の趣旨に反するもので、当委員会として、パキスタンに対し核実験および核兵器開発の即時停止を強く求める。

5.1999年(平成11年)
 原子力委員会決定(原子炉等規制法に係る諮問・答申を除く)の一覧を表5に示し、主な概要を以下に示す。
(1) 原子力の研究、開発および利用に関する長期計画の策定について(1999年5月18日)
 現行の「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」(以下「長期計画」という。)の策定以来約5年が経過し、この間に、原子力をめぐる国内外の情勢は大きく変化してきている。このため、これまで8回にわたって策定されてきた長期計画が我が国の原子力研究開発利用において果たしてきた役割を踏まえ、21世紀社会に向けた新たな長期計画について検討を行うことが求められている。
 このような状況を踏まえ、21世紀を見通して我が国がとるべき原子力研究開発利用の基本方針及び推進方策を明らかにするため、新たな長期計画の策定を行うこととする。
(2) 「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の一部改正及び「原子力災害対策特別措置法」の制定について(1999年11月9日)
 今般、(株)ジェー・シー・オーのウラン燃料加工施設において、我が国で初めての臨界事故が発生した。この事故は、多くの方々の放射線による被ばくや住民の避難、屋内退避を招くなど、40年余りにわたる我が国の原子力研究開発利用の歴史の中で、極めて重大な事故であり、当委員会は、国民の原子力に対する信頼を大きく揺るがすものとして、厳粛に受け止めている。当委員会は、事故後、数次にわたり事故の経緯、影響等について報告を受け、審議を行ってきた。事故の原因究明及び再発防止については、原子力安全委員会のウラン加工工場臨界事故調査委員会において鋭意調査検討が行われているところであるが、同事故調査委員会の中間報告、原子力安全規制の抜本的強化と原子力災害に係る法的措置、それらに関連する政府の財源措置について、当委員会は、行政庁の報告を受け審議を行い、その結果、以下の結論を得た。
 当委員会としては、類似の事故を未然に防ぎ、また、事故が生じた場合の備えを万全にするための措置を早急に講じることが必要であると考える。このため、安全規制に関しては、国による継続的なチェックによる厳しい緊張感の保持等を内容とする「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の一部改正、また、原子力防災対策に関しては、初期動作などにおける国、自治体の連携強化、原子力災害の特殊性に応じた国の緊急時対応体制の強化、原子力事業者の防災対策上の責務の明確化等を内容とする「原子力災害対策特別措置法」を制定することが適当である。
(3) 大強度陽子加速器施設計画(仮称)評価専門部会の設置について(1999年11月19日)
 日本原子力研究所と高エネルギー加速器研究機構が大強度陽子加速器を用いた科学技術・学術の総合的展開を図るため、各々の「中性子科学研究計画」と「大型ハドロン計画」の施設の最適化を行い、これらを統合することによって計画の効率化を図り、その早期実現を目指す「大強度陽子加速器施設計画(仮称)」について、研究開発の効率的な実施を図る観点から、「国の研究開発全般に共通する評価の実施方法の在り方についての大綱的指針」(平成9年8月7日内閣総理大臣決定)に基づく評価を実施し、本格的な建設に向けた指針を提示する。このため、原子力委員会と学術審議会加速器科学部会の下に合同の評価機関として「大強度陽子加速器施設計画評価専門部会」(以下、「評価部会」という。)を設ける。
<図/表>
表1 1995年の原子力委員会決定一覧
表1  1995年の原子力委員会決定一覧
表2 1996年の原子力委員会決定一覧
表2  1996年の原子力委員会決定一覧
表3 1997年の原子力委員会決定一覧
表3  1997年の原子力委員会決定一覧
表4 1998年の原子力委員会決定一覧
表4  1998年の原子力委員会決定一覧
表5 1999年の原子力委員会決定一覧
表5  1999年の原子力委員会決定一覧

<関連タイトル>
動燃/サイクル機構における高速増殖炉研究開発 (03-01-06-06)
新型転換炉実証炉計画の見直し (03-02-06-03)
東海再処理工場における火災爆発事故 (04-10-02-01)
平成9年度原子力開発利用基本計画 (10-02-01-07)
平成10年度原子力開発利用基本計画 (10-02-01-08)
原子力災害対策特別措置法(原災法:2012年改定以前) (10-07-01-09)
核兵器不拡散条約(NPT) (13-04-01-01)

<参考文献>
(1)原子力委員会(編):原子力白書(平成7年版)、大蔵省印刷局(1996年1月30日)p.233-258

(2)原子力委員会(編):原子力白書(平成8年版)、大蔵省印刷局(1997年3月10日)p.315-333

(3)原子力委員会(編):原子力白書(平成10年版)、大蔵省印刷局(1998年8月31日)p.354-373

(原子力白書一覧→「原子力白書(平成10年版)」をクリックする。)
(4)原子力委員会:委員会の決定、その他(1998年)

(原子力委員会の決定→「委員会決定、その他(1998年)」をクリックする。)
(5)原子力委員会:委員会の決定、その他(1999年)

(原子力委員会の決定→「委員会決定、その他(1999年)」をクリックする。)
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