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<概要>
 原子力開発利用基本計画は、原子力開発利用を計画的かつ効率的に推進させることを目的として毎年度策定される計画であり、原子力委員会が平成12年(2000年)11月に決定した「原子力の研究、開発および利用に関する長期計画」(原子力開発利用長期計画)において示された基本方針を具体化するための現実に即した実施計画といえる。本計画は、原子力委員会及び原子力安全委員会がそれぞれの所掌に応じて策定する計画であり、内閣総理大臣が決定する。本データには、平成14年度における取組の要点及びこのもとになる長期計画の概要を示した。
<更新年月>
2002年09月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 はじめに
 国内外の原子力情勢に目を向けると、国内では、ウラン加工工場臨界事故等の一連の事故、不祥事によって国民の原子力に対する信頼が大きく損なわれたが、現在まで原子炉等規制法の一部改正、原子力災害対策特別措置法等によって、安全確保や原子力防災に取り組んできた。高速増殖炉サイクル技術の研究開発の場である「もんじゅ」については、平成13年6月に地元の了解を得て、ナトリウム漏えい対策等に係る改造工事を行うための原子炉設置変更許可申請書が経済産業大臣に提出され、現在、安全審査が進められている。他方、プルサーマルについては、福島県及び新潟県での実施が見送られたが、内閣府、総務省、文部科学省、経済産業省からなるプルサーマル連絡協議会において、プルサーマルを含む核燃料サイクルについて議論が行われている。
 国外では、平成13年5月に発表された米国の国家エネルギー政策で、多様なエネルギー源の供給拡大を重視し、原子力発電をエネルギー安全保障、温室効果ガス削減の観点から積極的に位置付けたことなど、原子力を巡る国際的な状況は徐々に活発化した動きもある。
 平成14年度計画を取りまとめるに当たっては、このような国内外の動向にも配慮しつつ行った。本計画は、長期計画を踏まえ、1)平成14年度における取組、2)具体的施策(個別予算表のみ)及び 3)予算総表の三部で構成されている( 表1 参照)。紙面の都合で、以下に平成14年度における取組の要点について述べ、全体の構成を示す目次を表1に、各施策のもとになる長期計画の概要を 表2−1表2−2表2−3表2−4表2−5 及び 表2−6 に参考として添付した。具体的施策及び予算総表は割愛した。

 平成14年度における取組
1.国民・社会と原子力の調和
1-1 安全確保と防災
○保安規定遵守状況の検査や原子力安全委員会による設置許可後の、行政庁による後続規制の状況の把握及び確認を本年度以降も引き続き実施する。
○安全確保のための技術的知見の充実、及び、原子力防災のための施設・設備の整備、訓練・研修等を本年度以降も引き続き実施する。
○安全研究の着実な推進のため、原子力安全委員会を中心とする体制の充実・強化を図る。
○科学的合理性のある安全規制に必要な知見に関しては、原子力発電関係に加え、核燃料サイクル関係の知見について一層の充実を図る。
○安全規制や事故情報等の蓄積データ・資料等を統合的に運用するための支援システムを構築する。
○本年度完成を目処に、原子力施設等の消防活動が困難な空間における消防活動を支援するための情報システム開発に着手する。
○原子力安全委員会が平成13年6月に取りまとめた報告書に沿った被ばく医療体制の整備に着手する。
1-2 情報公開と情報提供
○情報公開に対応した原子力情報の整備を図る。
○情報公開センターの積極的な活用等により、情報公開を一層促進する。
○核燃料サイクルのエネルギー政策上の必要性について理解を得るなど、原子力政策に関する国民的合意形成のための広聴・広報活動の抜本的強化を図る。
○より効果的な情報提供を実現するため、インターネット、マスメディア等を有効に活用した原子力広報を実施する。
1-3 原子力に関する教育
○全国の各都道府県が学習指導要領の趣旨に沿って主体的に実施するエネルギーや原子力に関する教育の取組を国として支援するため、副教材の作成・購入、指導方法の研究、教員の研修、見学会、講師派遣等に必要となる経費を交付する「原子力・エネルギーに関する教育支援事業交付金」を創設する。また、パンフレットやインターネットを活用してエネルギーや原子力に関する教育の支援に資する情報をわかりやすく提供するなどの環境整備を図る。
1-4 立地地域との共生
○これまで各種交付金制度の使途の柔軟化を図ってきたが、引き続き実施する予定。具体例として、電源立地促進対策交付金等において収益の生ずる可能性のある事業を交付対象に追加した(平成13年度)。
MOX燃料 加工施設、使用済燃料中間貯蔵施設、高レベル放射性廃棄物最終処分施設等の立地が見込まれる関連地域に対して交付金制度を拡充する。
2.原子力発電と核燃料サイクル
2-1 原子力発電の着実な展開
○定期自主検査等におけるフレキシブルメンテナンスシステムの開発などを本年度以降も引き続き実施する。
○既存の軽水炉関係技術の改良等について民間中心に取り組むべき事項を精査・整理し、重点化を図る。
2-2 核燃料サイクル事業
○核燃料サイクル開発機構((現日本原子力研究開発機構)以下、サイクル機構と略す)のウラン濃縮技術開発事業は、平成13年9月をもって事業を終了し、以降、設備の解体・撤去などを予定している。
○ふげんは本年度末に運転終了し、これまでの研究成果の整理及び廃止措置に必要な研究を行う。
○MOX燃料加工技術の民間実用化のための技術確証試験は、平成21年頃の操業開始に向けて確実な技術移転・確証が行われるよう本年度以降も引き続き補助する。
○平成9年以来、運転停止していた東海再処理施設を運転再開(平成12年11月)し、本年度も引き続き、電気事業者との契約に基づく軽水炉使用済ウラン燃料の再処理及びふげん燃料の再処理などを行う。平成17年頃まで使用済ウラン燃料などの再処理を行った後、高燃焼度燃料や使用済MOX燃料等の再処理技術開発を行うことを予定している。
○本年度から、これまでのサイクル機構の開発成果や知見、人的資源を有効活用し日本原燃(株)が行う経済性に優れた世界最高水準の遠心分離機の開発を補助する。なお、原子レーザー法の研究開発については、繰り上げ終了(平成13年度)する。
2-3 放射性廃棄物の処理及び処分
○使用済燃料の再処理に伴い発生する高レベル放射性廃棄物の処分に関して、特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律に基づき、昨年10月に設立された原子力発電環境整備機構において、処分地の選定等の処分事業の具体化に向けて取組む。
○地層処分に必要な研究開発を引き続き実施するが、本年度は地層処分技術の信頼性向上技術開発に重点化し実施する。
○深地層に関する研究開発は、その成果を最終処分事業に着実に反映させるよう最終処分事業に先行して実施する。
○長寿命核種の分離・変換技術開発を本年度も引き続き実施する。
○ウラン廃棄物、TRU 核種を含む放射性廃棄物、高β・γ廃棄物は、処分方法の具体的検討に応じた技術開発を継続し、その他の低レベル廃棄物関係は順次縮小する。
○RI・研究所等廃棄物処分システムの検討を継続する。
○廃止措置に向けた遠隔解体システム技術、建屋残存放射能等評価技術などの確証試験等及び解体廃棄物再利用に関する調査について、東海発電所の廃止措置開始を念頭に、平成15年度までに技術開発成果を取りまとめる。
2-4 高速増殖炉サイクル技術の研究開発
○もんじゅについては、ナトリウム漏えい対策に係る改造工事を行うための原子炉設置変更許可申請書が提出された。本年度は、もんじゅ改造工事を行うための準備を進める。
○サイクル機構が行う「実用化戦略調査研究」は平成13年度から第2期に入っており、本年度は本格的な要素試験を開始し、引き続き電気事業者と連携して5年程度をかけて実用化候補のさらなる絞り込みを行う。
○産学官のポテンシャルを結集し、高速増殖炉サイクルを含めた先進的な核燃料サイクルの技術開発を効率的かつ戦略的に一層強力に推進するため、核燃料サイクル技術に係る提案公募方式の研究開発に本年度着手する。
3.原子力科学技術の多様な展開
○大強度陽子加速器建設は平成18年度完成を目処に進める。
○RIビーム加速器建設は平成19年度実験開始を目処に進める。
○国際熱核融合実験炉(ITER)計画を推進する。ITER共同実施の準備を行うため、建設サイトに応じた適合設計等を行う調整技術活動に参加する。
○臨界プラズマ試験装置(JT-60)等により、実験炉に対して先進的かつ補完的な研究開発を進める。
○将来の原子力発電及び核燃料サイクル技術の選択肢を確保するため、革新的・独創的な実用原子力技術に係る提案公募方式の研究開発を本年度も引き続き実施する。
○産学官のポテンシャルを活用し、革新的原子炉技術に係る提案公募方式の研究開発を実施する。
○重イオン科学、放射光科学など基礎・基盤研究を引き続き実施する。
4.国民生活に貢献する放射線利用
○がんの新しい治療法の確立を目指し、放射線医学総合研究所で行われている重粒子線を用いたがん治療研究を本年度はさらに臨床試験を増やして引き続き実施する。
○沖縄などにおいて放射線を利用した不妊虫放飼法による病害虫根絶事業は、引き続き実施する。
○低線量放射線の生体影響に関する研究は、引き続き実施する。
○高線量被ばく時における緊急被ばく医療に関する研究は、引き続き実施する。
5.国際社会と原子力の調和
○IAEA、OECD/NEA 等の国際機関の活動について、引き続き協力する。
○包括的核実験禁止条約(CTBT)の実施に係る研究開発等を引き続き実施する。
○追加議定書に基づく「補完的アクセス」への対応と増大する保障措置業務に適切に対応するための、民間機関による査察代行等の積極的な活用を引き続き実施する。
○「統合保障措置」の我が国への早期適用に向けて、IAEAとの議論に積極的に取り組む。
○六ヶ所再処理工場に対する保障措置の実施に向けた体制整備を平成17年度の操業に向けて引き続き実施する。
○高速増殖炉サイクル技術等を活用して、ロシアの核兵器解体により発生する余剰兵器プルトニウム管理・処分への協力を平成19年度までを目処に行う。
○旧ソ連・東欧諸国等の原子力発電所の安全確保に従事する者を対象に研修を行ってきた(千人研修)。本年度は、これまでの研修の成果を踏まえた実践的研修等を実施する。
○アジア原子力協力フォーラム、原子力科学技術に関する研究、開発及び訓練のための地域協力協定(RCA)等の枠組みを活用し、アジア地域の原子力利用や原子力の安全性の向上等に資する協力を、引き続き実施する。
○国際的な安全確保のため、専門的識見に基づき技術的基盤を提供するための会合等に積極的に関与する。
○第4世代炉国際フォーラム等の国際的な協力の枠組みに参画し、議論への積極的な参加などを通じて貢献する。
○国際熱核融合実験炉(ITER)計画を推進する。ITER共同実施の準備を行うため、建設サイトに応じた適合設計等を行う調整技術活動に参加する。
6.原子力の研究、開発及び利用の推進基盤
○ポストドクター(博士課程修了者)等若手研究者の研究交流を、引き続き実施する。
○平成12年度から実施した公募方式による産官学による革新的実用原子力技術開発を本年度も引き続き実施し、人材育成へも寄与する。
<図/表>
表1 平成14年度原子力研究開発利用基本計画書目次
表1  平成14年度原子力研究開発利用基本計画書目次
表2−1 原子力開発長期計画(平成12年策定)の概要について(1/6)
表2−1  原子力開発長期計画(平成12年策定)の概要について(1/6)
表2−2 原子力開発長期計画(平成12年策定)の概要について(2/6)
表2−2  原子力開発長期計画(平成12年策定)の概要について(2/6)
表2−3 原子力開発長期計画(平成12年策定)の概要について(3/6)
表2−3  原子力開発長期計画(平成12年策定)の概要について(3/6)
表2−4 原子力開発長期計画(平成12年策定)の概要について(4/6))
表2−4  原子力開発長期計画(平成12年策定)の概要について(4/6))
表2−5 原子力開発長期計画(平成12年策定)の概要について(5/6)
表2−5  原子力開発長期計画(平成12年策定)の概要について(5/6)
表2−6 原子力開発長期計画(平成12年策定)の概要について(6/6)
表2−6  原子力開発長期計画(平成12年策定)の概要について(6/6)

<関連タイトル>
原子力開発利用長期計画(平成12年策定)総論 (10-01-05-03)
原子力開発利用長期計画(平成12年策定)各論 (10-01-05-04)
平成12年度原子力開発利用基本計画 (10-02-01-10)
平成13年度原子力開発利用基本計画 (10-02-01-11)

<参考文献>
(1)原子力委員会HP:平成14年度 原子力研究、開発及び利用に関する計画(2002年8月)
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