<大項目> 放射線影響と放射線防護
<中項目> 原子力施設に係わる放射線防護
<小項目> 個人モニタリング
<タイトル>
管理区域入退者の検査 (09-04-07-10)

<概要>
 放射性物質を取扱う管理区域への立ち入り(入域)および退出(退域)に関連して、汚染の有無の確認、拡大防止および内部被ばくの評価のため、立ち入り者の身体表面汚染の検査や内部被ばくの検査が必要に応じて行われる。身体表面汚染の検査はハンドフットクロスモニタなどにより、内部被ばくの検査は簡易な全身カウンタにより行われる。有意な汚染が発見された場合には、身体の除染やより精密な内部被ばくの検査が実施される。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 放射性物質を取扱う区域あるいは放射線照射する区域は一般の作業区域とは区別され、管理区域として作業者の被ばく防護と放射能による汚染の拡大防止のための特別な管理(放射線管理)がなされている。このような区域に立ち入る(入域する)者は、外部被ばく線量の測定のための個人線量計を着用すると共に、必要に応じて内部被ばくの防護のための防護具(放射線作業着、防護マスクなど)を着用する。また、管理区域から退出する(退域する)際には、被ばくの防護および汚染拡大防止のため身体表面汚染の検査をすると共に、必要に応じて内部被ばくの検査が行われる。検査の結果、身体表面に汚染が発見された場合には除染等の措置がなされる。また、内部被曝が発見された場合には、必要に応じ精密検査を行う。これらの結果は作業環境や作業方法の改善にも役立てられる。

1 身体表面の汚染検査
 管理区域より退出する者について、放射線被ばくを防護すると共に管理区域外への放射性物質による汚染の拡大を防止する観点から、身体表面の汚染検査が行われる。身体表面の汚染検査は、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律及び原子炉等規制法等で定められており、表面汚染が管理基準値以下であることを確認することが義務ずけられている。
 身体表面の汚染検査は管理区域出入口付近に設置したハンドフットクロスモニタ( 図1 参照)により通常実施される。また、これより大掛かりな装置で全身の表面汚染を一度に測定することが可能な全身表面汚染検査計により迅速に検査を行っている施設もある。
 管理区域の退出時に行う身体表面の汚染検査では、被検者は検査前に手を洗うことで手に付着した汚染を除去すると共に、管理区域内作業衣を脱いでから汚染検査を受ける。また、管理区域内用の作業靴を履いた状態で検査することにより、靴の汚染状況から作業環境汚染についての情報を間接的に得られることもある。
 ハンドフットクロスモニタでは、被検者が測定台に乗り、手を手の測定孔に挿入することにより手と靴について表面汚染の測定が開始される。測定は通常20秒以内で行われ、表面汚染が一定のレベルを超えた場合に警報が発せられる。被検者の衣服の表面汚染検査には、ハンドフットクロスモニタに付設してある衣服用の検出器が用いられる。一般には測定対象とする放射線の種類により使用する装置の感度が異なるので、放射線の種類に合った装置を使用する必要がある。ハンドフットクロスモニタの最小検出限界は、α線放出核種に対して0.38 Bq/cm2β線放出核種に対して3.8 Bq/cm2以下である。
 身体表面の汚染が検出された場合には、体表面に付着した放射性物質の体内摂取の防止と汚染拡大の防止をすると共に、除染と並行して、体内汚染の有無、汚染核種、汚染量および汚染範囲を把握することが必要とされる。除染にあたっては、体内摂取を防止するため皮膚を傷つけなよう注意することが必要である。なお、表面汚染検査用サーベイメータによる鼻孔の汚染検査(直接測定、あるいはスミヤ法による検査)は吸入による汚染核種の体内摂取の有無を判定する方法として有用である。

2 内部被ばくの検査
 管理区域で放射線業務に従事する作業者について、その作業に起因する内部被ばくを測定評価する必要がある場合に、管理区域への入域時および退域時に簡易な全身カウンタを使用して作業者個人について内部被ばくの検査が行われる。この内部被ばくの検査は、該当する放射線作業について事前に検討され決定されたモニタリング計画に基づいて行われるものであり、ICRP(国際放射線防護委員会)が勧告しているモニタリング区分(日常モニタリング、特殊モニタリング、作業モニタリング、確認モニタリング :ICRP Publication 35,1982 および Pulication 54,1988)では作業モニタリングに該当するものである。検査は次に示す手順により行われ当該作業に起因する内部被ばくの評価が行われる。
 1)作業者が管理区域に入域する時に内部被ばくの検査を行って入域時の体内の放射能のレベルを事前に把握する。
 2)管理区域を退域する時に内部被ばくの検査を再度行って 1)の結果を差し引くことにより作業に原因して体内に摂取された放射能を評価する。
 3)体内に摂取された放射能より内部被ばく線量を評価する。
この内部被ばくの検査に用いられる簡易な全身カウンタの例を 図2 に示す。これらの全身カウンタは体内の放射能を簡易に測定する装置であり、小形で軽量ではあるが短い測定時間で十分に体内汚染の検査ができる性能を有している。 放射線検出器にはNaIのシンチレーション検出器が主に用いられている(直径が12cmから20cmで厚さが10cmのものが一般的である)。宇宙線あるいは大地からの放射線の影響を低減するため、検出器とその視野にあたる部分には遮蔽(10〜50mmの厚さの鉛の遮蔽あるいは 100mm程度の厚さの鉄の遮蔽)が施されており、装置の重量は3〜6トンである。内部被ばくの検査の時間は2分間から5分間であり、60Co、137Csなどの多くの代表的な核種について0.1mSvの被ばく線量に相当する体内放射能の検出が可能である。検査は有意な体内汚染の有無の判定を第一に行われ、体内汚染が検出された場合に体内に摂取された放射能を評価すると共に内部被ばく線量が算定される。有意な体内汚染の有無を判定する判断レベルは事業所の放射線管理の基準、考え方などによって異なる。一般的には被ばく線量(例えば0.1mSv)に基づいて判断レベルが設定されるが、現場の放射線管理へ積極的に汚染情報を反映することを考慮して、これよりも低い適当なレベルに設定される場合もある。
 内部被ばくの検査の結果は、他の内部被ばくモニタリング(日常モニタリングなど管理区域で作業する放射線業務従事者について内部被ばくモニタリングが必要と判断された場合に実施されているもの)の結果と共に個人モニタリングの結果として記録登録される。
<図/表>
図1 ハンドフットクロスモニタ(例)
図2 代表的な簡易全身カウンタの概略図

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<関連タイトル>
放射線管理基準 (09-04-05-01)
管理区域 (09-04-05-03)
搬出入物品の検査 (09-04-06-08)
空気汚染モニタリング (09-04-06-03)
表面汚染モニタリング (09-04-06-04)
個人モニタリング (09-04-07-01)
全身カウンタ (09-04-03-11)
ハンドフットクロスモニタ (09-04-03-07)
国際放射線防護委員会(ICRP) (13-01-03-12)

<参考文献>
(1)「原子力規制関係法令集」放射線障害防止法、大成出版社、(1991)
(2)「原子力規制関係法令集」原子炉等規制法、大成出版社、(1991)
(3) アイソトープ便覧、日本アイソトープ協会、丸善、(1984)
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