<大項目> 放射線影響と放射線防護
<中項目> 原子力施設に係わる放射線防護
<小項目> 放射線防護用の測定
<タイトル>
全身カウンタ (09-04-03-11)

<概要>
 人の体内に沈着した放射性物質から放出されるγ線を、人体の外部に置いた検出器により検出して体内量を測定する計測装置である。測定の対象となる放射性核種はγ線を放出する数多くの放射性核種である。体内に存在する微量の放射能の測定に利用されており、原子力発電所などで体内汚染の検査に使用されている。
<更新年月>
2002年02月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.全身カウンタとは
 全身カウンタは、人の体内に沈着した放射性物質から放出されるγ線を、人体の前あるいは後に置いた検出器により検出する計測装置である。測定の対象となる放射性核種はγ線を放出する数多くの放射性核種であり、代表的なものにカリウム40、マンガン54、コバルト60 、ヨウ素131、セシウム137などがある。体内に存在する微量の放射能の定性分析、定量分析あるいは放射能分布の測定に利用されている。
 全身カウンタは全身の体内放射能(全身負荷量)の測定を目的としていることから全身計測あるいはホールボディカウンタとも呼ばれている。また、ヒューマンカウンタとも呼ばれることがある。このほか、身体の特定の器官に着目してその器官に沈着している放射能(器官負荷量)の測定を目的とした甲状腺モニタや肺モニタなどの装置がある。
 全身カウンタは放射能の測定という点では試料放射能測定装置と共通であり、バックグラウンド放射線による計数を少なくするための遮へいと検出器および放射線計測部からなっている。しかし、全身カウンタが通常の試料放射能測定装置と大きく異なる点は測定対象が生身の人間であるということである。人体という大容量の測定対象を短時間で測定して微量の放射能を評価するため、検出器や遮へいなどの装置は必然的に大掛かりなものになる。 図1 には代表的な全身カウンタの検出部の例が示してある。一般に微量の放射能測定のためには測定時間を長くする必要があるが、図のように一定の姿勢で人間がじっとしていることが可能な時間は1時間が限度といわれており、測定で被検者を拘束することになる時間は短いほど良い。実際の全身カウンタの測定時間は、簡易型の装置では2分間から5分間であり、精密な装置では10分間から30分間である。被検者のなかには閉所恐怖症の人もいるので、測定に際しては被検者が苦痛や不安をうけることがないようにできるだけの配慮が必要とされる。
2.全身カウンタの種類と性能
 全身カウンタには極微量の放射能を精度よく測ることを目的とした大型の精密型全身カウンタと、体内汚染の簡便な検出を主な目的とした簡易型の全身カウンタとがある(図1参照)。精密型全身カウンタは遮へい室(厚さ10〜36cmの鉄あるいは鉛の遮へい)と大容量の検出器(主にNaIシンチレーション検出器が使用され、直径20cm厚さ10cmのNaI検出器が標準的な検出器となっている)を使用した装置であり、30分の測定時間で30Bq以下のセシウム137の体内量を検出することができる。
 簡易型の全身カウンタは原子力発電所などの事業所で体内汚染の検査に広く使われている。簡易な遮へいを施した椅子あるいは寝台と、コリメータに収容した検出器(直径20cm厚さ10cmのNaI検出器あるいは40cm×20cm×10cmのプラスチックシンチレーション検出器など)を使用したシャドウシールド型(検出器視野部分を遮へいしたもの)とよばれる装置であり、小型で機能的な設計となっている。重量は精密型の全身カウンタの遮へい室が30〜60tであるのに比べ3〜7tと軽量であり、通常の実験室の床にも設置することが可能である。簡易型のカウンタでは2分間の測定時間で200〜1000Bqのセシウム137の体内量を検出することができる(検出可能な量は検出器の種類と大きさ、遮へいの程度によって異なる)。
 高い検出効率半導体検出器の開発が進むにつれて、全身カウンタの検出器として半導体検出器[高純度ゲルマニウム検出器(HPGE)]の利用が近年試みられている。半導体検出器はその優れたエネルギー分解能により定性・定量分析が非常に容易であるという利点を有している。検出効率に対するバックグラウンド計数値の比(一般的な表現では信号に対するノイズの比に相当する)に関して、全身カウンタで用いられている大型のシンチレーション検出器と比肩できるような大容積の半導体検出器が容易に入手できるようになれば、半導体検出器の全身カウンタへの応用がさらに促進されよう。
3.全身カウンタ計測部
 全身カウンタの計測部は機器分析の装置と本質的に同種のものであるが、一般的に複数の検出器に対応した計測部となっている。 図2 に計測部のシステム構成の例を示す。計算機処理におけるソフトウェアには自動測定、体内汚染の有無の判定、γ線スペクトルの解析や装置のメインテナンス等のものがあり、全身カウンタ独特のソフトウェアが用いられている。
4.全身カウンタの校正と評価
 全身カウンタの校正(検出効率の決定)は、もっぱら人体の形をした人体模型(ファントムとも呼ばれている)に測定対象の放射線源を入れ、人体に対する測定と同じ条件で測定することにより行われる。校正に用いられるいろいろな人体模型の例を 表1 に示す。水のγ線に対する吸収係数軟組織の吸収係数に近似しているため、水を使用した人体模型が全身カウンタの校正に広く用いられている。
 全身カウンタの測定精度は測定方法や装置の校正方法にも関連しているが、概ね20〜50%の測定誤差で体内量の測定が可能である。
 内部被ばく線量評価のために、全身カウンタによる追跡測定(時間をおいた繰り返し測定)を実施して沈着した放射性核種の体内における残留の時間変化を調査することがある。観測された体内残留の時間変化は吸入したエアロゾル(浮遊塵)の粒子径と共に内部被ばく線量評価に大きな影響を与えるパラメータの一つである(詳細な線量評価には体内の線源器官内における沈着放射性核種の50年間の核変換総数の計算が必要であり、体内残留の時間変化はこの計算の基礎となるデータである)。
 最後に全身カウンタ車全景および全身カウンタ写真を 図3 に示す。
<図/表>
表1 全身カウンタの校正に用いられるファントムの例
図1 代表的な全身カウンタの検出部の例
図2 全身カウンタ計測部のシステム構成例
図3 全身カウンタ車全景および全身カウンタ

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<関連タイトル>
甲状腺・肺モニタ (09-04-03-12)
内部被ばくの評価 (09-04-04-04)
内部被ばくモニタリング (09-04-07-05)

<参考文献>
(1) 内部被ばくにおける線量当量の測定・評価マニュアル、(財)原子力安全技術センター
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