<本文>
1)モニタリングの目的
空気汚染のモニタリングは、作業環境における
放射性物質の空気中濃度が、管理基準値として決めた
誘導調査レベルや
空気中濃度限度などを超えていないことを確認するとともに、
個人モニタリングの一つである内部被ばくモニタリングの必要性及び内部被ばくの線量当量評価を的確に行うためにの情報収集という目的を持っている。また、空気汚染のモニタリングは、放射性物質の空気中濃度を測定するだけでなく、得られる放射性物質の空気中濃度を放射線防護の観点からどのように解釈すべきか、また被ばく防護対策の立案にどのように反映すべきかも含めて行うべきである。
2)モニタリングの種類
通常、作業環境のモニタリングは、(1)作業環境の放射性物質による空気汚染レベルの変動を監視するために行う日常モニタリング、(2)空気汚染のおそれがある放射線作業が行われている作業場の空気中濃度の変動を監視するために行う作業モニタリング、(3)適切な放射線防護の方針を決定するために必要なデータを収集する目的などで行う特殊モニタリング、に区分される。
3)モニタリングの方法
空気汚染のモニタリングは、施設規模やその目的によって、(1)作業室又は実験室の排気グリル近傍や同室の排気ダクト内の空気をサンプリングして、室内全体の空気汚染を監視する一般(ゼネラル)モニタリング、(2)作業室又は実験室が多数ある場合に、各室の空気を一括し又は必要に応じて作業室単位でサンプリングし、全室又は作業室単位の空気汚染を監視する集中(セントラル)モニタリング、(3)空気汚染のおそれがある作業室の作業位置近傍の空気をサンプリングして、空気汚染を監視する特定場所(スポット)のモニタリング、(4)作業室や実験室に設置されたサンプリング端にろ紙を装着して集塵し、局所的に発生する空気汚染の分布状況を連続して監視する局所(ローカル)モニタリング等の方法に区分される。また、空気汚染のある作業環境で作業をする作業者の呼吸する空気中の濃度をパーソナル
エアサンプラによりサンプリングし測定する個人(パーソナル)モニタリングもある。
これらの空気汚染モニタリングの一例を
図1に、モニタリング用機器の一例を
図2に、モニタリングに使用するモニタの概要を
表1に示す。
4)モニタリング上の注意
空気汚染のモニタリングは、作業環境中の空気汚染の発生を早期に検出し、作業者の内部被ばくを防護することが主目的である。内部被ばくを評価する場合には、作業者が
吸入する空気に含まれている放射性物質の濃度と、各種のモニタリングで得られた空気中濃度の関連付けも必要となる。このため、空気汚染のモニタリングは、必要に応じて複数の方法を併用して行われる場合が多い。
5)捕集方法
空気中の放射性物質の捕集方法は、放射性物質の物理的性状によって異なり、(1)粒子状の放射性物質は繊維系ろ紙を用いた
ろ過捕集法、(2)気体状の放射性物質は活性炭繊維ろ紙並びに活性炭カートリッジを用いた
固体捕集法、又は、(3)
電離箱を用いた
直接捕集法、(4)水蒸気状の放射性物質はシリカゲルやモレキュラシーブ等を用いいた固体捕集法、(5)
コールドトラップを用いた冷却凝縮法、及び、(6)水バブラを用いた
液体捕集法などが一般に用いられる。
6)警報設定値
空気汚染のモニタリングに使用されるダストモニタやガスモニタの多くは、放射線エリアモニタと同様、放射線管理室や制御室に設置された放射線モニタ監視盤に組み込まれ、メータと記録計によって連続監視されている。モニタには警報設定機構が付加されており、異常な空気汚染発生時に警報を発するよう警報設定値が設定されている。この警報設定値には、一般的に
調査レベルと
介入レベルがある。前者は、空気汚染があるレベルを超えると原因調査を開始するために設定したレベルであり、後者は、その濃度レベルが継続すると内部被ばくによる線量が
線量限度を超えるおそれがあるため、作業者を退避などさせて原因排除などの措置を行うために設定したレベルである。
<図/表>
<関連タイトル>
モニタリングの種類 (09-04-05-02)
作業環境モニタリング (09-04-06-01)
個人モニタリング (09-04-07-01)
内部被ばくモニタリング (09-04-07-05)
<参考文献>
(1)「放射線防護の考え方」、草間 朋子、甲斐 倫明 著、日刊工業新聞社、1990
(2)「作業者の放射線防護のためのモニタリングの一般原則」、ICRP pub.35、
(3)日本アイソトープ協会訳 丸善、1984
(4)「作業環境測定ガイドブック」、中央労働災害防止協会、1984