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<概要>
 放射線管理基準の基本となるのは、作業者、公衆に対する線量限度である。しかし、線量限度のみでは管理を効率よく十分に実施することができないので、年線量限度を週や月の単位で分割して、週線量率や月あるいは3ヶ月線量率の基準を設けて被曝を管理する方法が通常とられている。このように誘導された線量率、空気中の濃度限度表面汚染密度限度などを基にして実際の管理が行われている。
<更新年月>
2004年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
(1)放射線管理の実務を効果的に行うため、放射線防護上の具体的な措置をとるための判断の基準を広義的に放射線防護基準、狭義的に管理基準という。
(2)放射線モニタリングの結果は、各事業所ごとに定められた基準と比較し、解釈して判断される。この判断基準を管理基準という。管理基準は、各事業所ごと、また施設ごとに細部にわたって決められる。
(3)モニタリングの基準は、誘導限度(Limit)と参考レベル(Reference Level)に分けられる。誘導限度とは、モニタリング計画の測定対象に対して、実際の測定と線量限度あるいは摂取限度との間の橋渡しをするものである。一方、参考レベルは原則としてモニタリングの任意の測定量に対して測定可能であり、これを超えたときには何らかの処置を決めるためのものである。これには、記録レベル、調査レベルおよび介入レベルがある。記録レベルは、この値未満の場合は測定結果を記録しなくてもよい基準を示すものでICRP Pub.26では、個人被ばく線量の記録レベルを年線量限度(または年摂取限度)の1/10と定めている。調査レベルは、この値を超えた場合詳細な調査が必要とされるレベルで、放射線モニタの警報レベルがこのレベルに該当する。介入レベルは、被ばくを制限し、事態を元にもどすための措置をとらなければならないレベルで、作業者に対して退避を促す基準がこのレベルに該当する。
(4)管理基準値は、法令で定められたそれぞれの規制値を超さないように、原子炉施設、核燃料物質取扱施設においては「保安規定」、放射性同位体取扱施設等においては「障害予防規定」に規定されている。
 表1は、職業人及び一般公衆の実効線量から誘導された管理区域、遮へい物及び事業所境界などの管理基準値である。
 表2は、管理区域に係る表面汚染密度の管理基準の例で、表面汚染密度限度を越えないように表面汚染密度限度の1/10あるいは1/100を管理基準値としている。1)
 表3は、測定指針で定められた発電用軽水型原子炉施設における放出放射性物質の測定に関する測定対象核種、測定下限濃度、測定頻度を示す。3)
 表4は、環境放射線モニタリング指針に記載されている環境モニタリング計画例で、調査対象、測定頻度、測定方法などを示す。
<図/表>
表1 外部放射線による作業環境の法規制又は管理基準値
表1  外部放射線による作業環境の法規制又は管理基準値
表2 管理区域に係る表面汚染密度の管理基準の例
表2  管理区域に係る表面汚染密度の管理基準の例
表3 放出放射性物質の測定対象核種、測定下限濃度および計測頻度
表3  放出放射性物質の測定対象核種、測定下限濃度および計測頻度
表4 環境放射線モニタリング内容
表4  環境放射線モニタリング内容

<関連タイトル>
作業環境モニタリング (09-04-06-01)
個人モニタリング (09-04-07-01)
緊急時環境放射線モニタリング (09-04-08-04)

<参考文献>
(1)放射線計測協会:改訂版 放射線管理入門講座テキスト p.63 (1989)
(2)「放射線防護の基礎」辻本 忠、草間 朋子 著 日刊工業新聞社
(3)「発電用軽水型原子炉施設に置ける放出放射性物質の測定に関する指針」(昭和53年9月29日)原子力安全委員会
(4)原子力委員会:環境放射線モニタリングに関する指針について原子力委員会月報、Vol.23 No.1(1978)
(5)日本アイソトープ協会(編):アイソトープ法令集I 2002年版、放射線障害防止関係法令 (2002)
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