<大項目> 核燃料リサイクル施設
<中項目> 再処理
<小項目> 再処理の工程
<タイトル>
中・低レベル廃液の処理 (04-07-02-08)

<概要>
 再処理の工程において発生する放射性廃液は、主に抽出の第1プロセスから発生する廃液を高レベル廃液、抽出の各プロセスから発生する酸性廃液とアルカリ廃液を中レベル廃液、さらに中レベル廃液の処理済み液、除染廃液、分析廃液、洗濯廃液などの廃液を低レベル廃液として分別している。中・低レベル廃液の処理には蒸発処理法、凝集沈澱法、イオン交換法及びこれらの処理法を組合せた方法が採用されている。これらの処理により十分に放射性物質が除去された処理済み液は環境に放出され、一方、廃液から回収された放射性物質を含む二次廃棄物は、セメント固化等が行われている。
 1970年代に入り放射能の環境放出について、ALARA(As Low As Reasonably Achievable;合理的に達成できる範囲でできるだけ少なく)の原則が唱導された。このため再処理施設によっては、初期の廃液処理の設計を大幅に変更している。
<更新年月>
2012年01月   

<本文>
1.放射性廃液の分別
 各再処理施設で発生する放射性廃液の分別法及び処理法は同じではない。これは、各再処理施設の設計思想と放出放射能の法規制等が異なる理由による。イギリスBNFL(現NDA)のセラフィールド再処理施設(B-205)は放射能レベル区分に加えて酸性廃液とアルカリ廃液を分別して処理している。フランスCOGEMA(現AREVA NC社)のラ・アーグ再処理施設(UP-2)及び(独)日本原子力研究開発機構の東海再処理施設は放射能レベルで分別し、処理している。
 再処理の工程において発生する放射性廃液は、一般的に相対的な放射能レベルの差によって、主に抽出の第1プロセスから発生する廃液を高レベル廃液(高放射性廃液)、抽出の各プロセスから発生する酸性廃液とアルカリ廃液を中レベル廃液(中放射性廃液)、さらに中レベル廃液の処理済み液、除染廃液、分析廃液、洗濯廃液などの廃液を低レベル廃液(低放射性廃液)として分別している。
 なお、再処理施設から発生する放射性廃棄物に関して、発生系統と処理概要を図1に示す。
2.中・低レベル廃液の処理法
 廃液の処理には蒸発処理法、凝集沈澱法、イオン交換法及びこれら処理法を組合せた方法が採用されている。いずれも廃液中の放射性物質を二次廃棄物として回収(濃縮)する。
(a)蒸発処理
 廃液を蒸発缶に送り加熱して蒸発した蒸気を凝縮すると、廃液中の放射性物質は一般に不揮発性で蒸気側にはいかないので、凝縮液中の放射能は著しく減少し、廃液中の放射性物質の大分部は蒸発缶の残液中に濃縮される。放射能を捕捉するのに他の方法に比べてコスト高ではあるが、最も性能のよい処理法として広く用いられている。蒸発処理には、サーモサイフォン型蒸発缶及び回分式蒸発缶が用いられている。蒸発缶の材質も耐蝕性に富む316Lステンレス鋼やインコネル-625、さらには非鉄系のチタン、ジルコニウムも用いられるようになった。蒸発処理では、揮発性の放射性物質を含まない廃液の場合、除染係数DF値;濃縮液の放射性物質濃度/凝縮液の放射性物質濃度)として一般的に1,000〜10,000が得られている。凝縮液側に放射性物質が移るのは蒸気に沸騰液の飛沫が同伴することによる。飛沫同伴を減らす設計(運転法を含む)又は同伴飛沫を回収するプロセスを付けることでDF値を向上できる。
(b)凝集沈澱処理
 凝集沈澱処理は、廃液に適当な化学薬品を加え目的の放射性核種の沈澱を作るが、一般には放射性核種の絶対量は少ないので同じ沈殿特性の非放射性核種の相当量を加えて共沈させる。また、この沈澱中に他の放射性核種を吸着、吸蔵によって取り込む。この沈澱を分離することによって廃液を処理する方法である。従来、上、下水の処理に用いられている処理法や装置と同類のものである。放射性核種によって、加える沈澱剤や運転時の水素イオン濃度(pH)によりDF値が左右される。この方法の利点は処理液量が多い(希薄な放射性廃液など)場合には、比較的安価に処理できる点にあるがDF値が低いことと、薬剤使用量が多い場合は発生するスラッジ量(二次廃棄物)も多くなる難点がある。しかし、適切な条件を選定すれば目標とする放射性核種を選択的に除去し、副生する二次廃棄物の量を最小限度に抑えることができるので、再処理以外の原子力施設にも広く用いられてきた。主要な核種と有効な沈澱剤として用いられているものは、アルファ核種には水酸化鉄及び水酸化アルミニウム沈澱物、放射性ストロンチウム(Sr)にはリン酸塩沈澱物・硫酸バリウム沈澱物、放射性セシウム(Cs)にはフェロシアン化塩沈澱物である。
(c)イオン交換処理
 イオン交換体には有機化合物と無機化合物(天然鉱物も含む)があるが、特定の放射性核種(廃液中でイオン形のもの)を良く吸着するものがある。一度吸着した核種を少量の脱着液で洗い出すと目的核種の廃液を効率よく濃縮することができる。また、脱着工程(再生処理工程)を省いてイオン交換体に吸蔵させたまま固体廃棄物として扱う方法もある。処理対象廃液の放射能レベルが低い場合は、微量成分の除去に適し、二次廃棄物の発生量が比較的少ない合成有機化合物である陽イオン交換樹脂が用いられている。
 イオン交換樹脂法のDF値は条件により著しく異なるが、最適な条件下では陽イオンのFPに対して100程度が期待できる。
3.二次廃棄物の固化処理
 再処理の工程から発生する廃液は硝酸ナトリウム及び炭酸ナトリウムが主成分で、核分裂生成物である放射性核種(<ストロンチウム90、セシウム137など)を含み、さらに微量のTRU(Trans-Uranium nuclide)核種が含まれることもある。したがって、原子力発電所の廃液とは異質な廃液と見なされる。二次廃棄物を固化する際は、長期貯蔵及び処分の安全性と経済性を考慮して固化方式を選ぶ必要がある。
(a)アスファルト固化処理
 セメント固化の減容率及び浸出率の難点をカバーする固化法としてアスファルト固化法が開発された。150℃に加熱されたアスファルトに含水廃棄物(例えば沈殿処理のスラッジ)を蒸発装置内で混合、加熱すると、水分が蒸発し、固形分のみがアスファルトと均一に混合し、これを冷却すると均一な固化体が得られる。固形分のアスファルトに混合できる量は40〜50%の範囲にあり、減容比の程度はコンクリートの1/4〜1/8に達する。アスファルト固化体は、減容比及び水に対する浸出性もセメント固化体に比べて優れているが、固化体としての安定性にやや劣る欠点があり、貯蔵に当たって配慮が必要であろう。この方法が開発された時点では、低レベル固体廃棄物を海洋底に投棄する処分法が考慮されており実施も試行されたが、1970年代には中止された。なお、東海再処理施設でもアスファルト固化法が採用されていたが、1997年アスファルト固化施設で火災・爆発事故が発生した。火災の原因は、アスファルトの混合物に混入された有機物が発熱分解し、誘導期間を経て、アスファルトと硝酸ソーダの急激な酸化反応が起こって可燃性ガスを放出し、発火に至ったものと推定されている。現在建設中の日本原燃(株)再処理事業所の再処理施設(六ヶ所再処理施設)においては、固化処理法としてアスファルト固化以外の方法(廃液を乾燥粉体とした後、例えばセメント固化する)が採用された。
(b)セメント固化処理
 コンクリートは、放射性廃棄物の固化剤としては優れた特性をもち、入手が容易で、廉価であり、十分な強度と長期にわたる安定性が期待できる。しかし、固化処理により体積が増大すること、浸出性が比較的大きいことに難点がある。セメント固化法については、廃棄用の容器のドラム缶の中で練り混ぜるインドラムミキシング法と、練り混ぜたものを廃棄用ドラム缶に移すアウトドラムミキシング法がある。
4.サイト外への処理済み廃水の放出実施例
 中・低レベル放射性廃液の処理済み液はサイト外へ放出される。放出液の放射能レベルは法規制、サイト条件により異なる。フランスのUP2、イギリスのB-205及び東海再処理施設における廃水放出の実施例の比較を表1-1表1-2及び表1-3に示す。この統計は、1985、6年まで東海再処理施設と他の工場のα、β放射能海洋放出量の著しい(5桁から8桁に及ぶ)相違を示すためにあえて古いデータを掲げた。この相違は、当時、蒸発法を多段化した東海再処理施設の処理方式が先進的であったことによるといえよう。図2及び図3にそれぞれUP2及び東海再処理施設の中・低レベル廃液処理系統の概略図を示す。
 セラフィールドサイトでは、放射能放出量を減らすため1885年に処理法が改善されている。使用済燃料の「冷却ポンド水」をイオン交換法で放射性物質を除去し、また、放射能減衰のため一定期間貯蔵後放出していたアルカリ廃液を、蒸発装置で処理する改善法を採用した。これにより放出放射能レベルは約1/100に減少している。1987年には放出規制値も改められた。またイギリス政府は1998年7月開催された海洋汚染防止を目的としたオスロ・パリ(OSPAR)条約締約国際会議で海洋への放射性物質の放出量を2020年までにゼロ近くまで低減することを約束した。この国際的合意をもとに環境庁(現環境省)(EA)は新基準を提案した。一方BNFLは1996年11月からテクネチウム99とトリチウムの海洋放出を低減するかわりに、溶媒処理プラント(STP)の運転から生じるルテニウム106とヨウ素129の大気中への放出基準の緩和を要請している。図4にセラフィールドサイトにおける放射能海洋放出の推移を示す。
 ラ・アーグサイトでも、UP3、UP2-800等の新増設があったにもかかわらず、廃液処理工程の改良もあり、海洋放出放射能量は著しく減少している。図5にラ・アーグサイトにおける放射能海洋放出と再処理の変遷を示す。
5.東海再処理施設及び六ヶ所再処理施設の廃液処理の例
 東海再処理施設における廃液処理の特徴として、核分裂生成物(FP)除去率の優れた蒸発処理を多用し、いろいろな工程を組合せて放出放射能を著しく低減している。
(a)中レベル廃液の処理
 中レベル廃液は、抽出の各プロセスから発生する酸性廃液とアルカリ廃液(ウラン精製工程及びプルトニウム精製工程の抽出器からの廃液、高レベル廃液蒸発缶の凝縮液、脱硝塔や吸収塔類の回収廃液等)であり、これらの廃液は酸回収工程の蒸発缶にかけ、蒸発分は精留して硝酸として回収し再使用する。また、濃縮減容された缶残液は高レベル放射性廃液処理工程に送られる。
(b)低レベル廃液の処理
 低レベル廃液には、中レベル廃液の処理済み液、オフガス洗浄廃液、除染廃液、分析廃液、洗濯廃液などがある。
 これらの廃液は廃棄物処理場に送られ、放射能の程度に応じて一次貯蔵される。これらは低放射性廃液・蒸発処理施設の蒸発缶にかけて減容し、蒸発分のみを中和処理工程に送る。中和処理された廃液は、放出廃液油分除去施設で、サンドフィルタ及び活性炭吸着塔で微量の放射能及び油分を除去し放出廃液貯槽に集められる。放射性物資を取り除いた放出廃液は、厳重にモニタリングして安全を確認した後、バッチ式で海洋に放出される。
 また、蒸発缶残液はセル内に貯蔵後、低放射性廃棄物処理技術開発施設において、アスファルト又はプラスチックと混合し、脱水して安定な固化体としてドラム缶詰めし、施設内に保管されている。
6.東海再処理施設及び六ヶ所再処理施設からの放出量
 東海再処理施設からの年間のベータ放射能放出量は、表1-1表1-2及び表1-3に示されるようにミリキュリー(Ci)オーダー(3.7×107ベクレル(Bq)オーダー)であり、他の2施設の年間放出量数万Ci(約1015 Bq)と比較すればその違いは極めて顕著である。
 また、放射性液体廃棄物の放出実績(1989年度〜1996年度)を表2に示す。東海再処理施設は、地方自治体条例に対応して、処理済廃液に含まれている微量の油分を活性炭で取り除く油分除去処理施設も備えている。
 放射性液体廃棄物の放出量は、事業指定(設置承認)時の審査の際の周辺環境への評価に用いられた放出量を基に年間の放出管理目標値を保安規定に定め、これを超えないように管理されている。2010年度の放出量は、東海再処理施設及び六ヶ所再処理施設の両施設について、いずれも放出管理目標値を下回っている。なお、一般公衆の実効線量については、事業指定(設置承認)時の審査の際に用いられた評価方法に基づき、当該原子力施設から環境へ放出される気体及び液体放射性廃棄物の影響について評価を行った結果、年間1マイクロシーベルト(Sb)未満であった。
 2010年度における東海再処理施設及び六ヶ所再処理施設の放射性廃液廃棄物の放出基準値と放出量の実績を核種別に表3-1表3-2及び表3-3に示す。なお、六ヶ所再処理施設については、現在、建設最終試験段階であり操業していないので、実質的な放出はない。
(前回更新:2000年3月)
<図/表>
表1-1 UP-2(仏)、B-205(英)及び東海再処理施設における廃液放射能量の比較(全α放射能)(1/3)
表1-2 UP-2(仏)、B-205(英)及び東海再処理施設における廃液放射能量の比較(全β放射能)(2/3)
表1-3 UP-2(仏)、B-205(英)及び東海再処理施設における廃液放射能量の比較(トリチウム)(3/3)
表2 放射性液体廃棄物の放出実績(1989年度〜1996年度)
表3-1 2010年度の再処理施設の放射性廃液廃棄物の放出量(1/3)
表3-2 2010年度の再処理施設の放射性廃液廃棄物の放出量(2/3)
表3-3 2010年度の再処理施設の放射性廃液廃棄物の放出量(3/3)
図1 再処理施設の放射性廃棄物発生系統と処理概要
図2 ラ・アーグ再処理施設(UP2)の放射性廃液処理系統図
図3 東海再処理施設における放射性廃液処理系統図
図4 セラフィールドサイトにおける放射能海洋放出の推移
図5 ラ・アーグサイトにおける放射能海洋放出と再処理の変遷

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<関連タイトル>
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六ヶ所再処理工場 (04-07-03-07)
イギリスの再処理施設における放出放射能低減化 (04-07-03-10)
東海再処理工場における火災爆発事故 (04-10-02-01)
再処理施設からの放射性廃棄物の処理 (05-01-02-03)
低レベル放射性廃棄物の固化技術 (05-01-02-08)
東海再処理施設における放射性液体廃棄物管理状況(1977年度〜2002年度) (12-04-01-02)

<参考文献>
(1)竹内 仁:「再処理施設における放射性廃棄物処理」、化学工学 49、7(1985)
(2)清瀬 量平:原子力化学工学(第4分冊)燃料再処理と放射性廃棄物管理の化学工学(1983)
(3)Annual Report on Radioactive Discharge and Monitoring of the Environment British Nuclear Fuels plc, 1987
(4)日本原子力産業会議:放射性廃棄物管理ガイドブック−1994年版
(5)“Discharges and Impacts from La Hague Plant : History and Recent Achievements”, p45, Proceedings of The 5th International Nuclear Conference on Recycling, Conditioning and Disposal (RECOD 98), in Nice, France, 1998
(6)COGEMAパンフレット(1999年9月)
(7)原子力安全委員会(編):原子力安全白書 平成9年版 大蔵省印刷局(1998年10月)、p.297-302
(8)経済産業省 原子力安全・保安院:平成22年度「原子力施設における放射性廃棄物の管理状況及び放射線業務従事者の線量管理状況について」(平成23年9月)、

(9)JAEA 2007年版パンフレット:よみがえるエネルギー、使用済核燃料の再処理
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