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<概要>
英国のセラフィールドサイトでは、1950年代から第一工場(B-204) および第二工場(B-205) の再処理工場を運転し、多量の天然ウラン金属燃料の処理実績を持っている。また酸化物燃料用の大型工場THORPを1994年1月に運転開始した。
 当初、海洋で拡散希釈させる方式で相当量の放射性廃液を放出していたが、その放出放射能低減化を図るため各種の廃液処理プラントを新設してきた。1980年から放出放射能は減り始め1985年には約百分の一にまで下がった。その後も放出放射能低減化の努力を続けている。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.セラフィールドの再処理施設
 ウインズケールのサイトは英国イングランド北西部のアイリッシュ海に面する海浜に位置しているが、現在はこのサイトはウインズケールからセラフィールドと改称している。第二次大戦直後、英国はセラフィールドのプルトニウム生産炉からの使用済燃料要素を処理するため、セラフィールド再処理第一工場(B-204:前処理施設)を建設した。この工場は1952年から1964年まで運転された。
また酸化物燃料の再処理が可能になるよう改造された、1973年に運転停止となった。
1955年英国の原子力発電計画がマグノックス型(黒鉛減速炭酸ガス冷却型)炉を使用することで発足し、これに対応する再処理工場の新設が必要とされた。このためセラフィールド第二工場(B-205) が建設され1964年から稼働中である。現在も幾多の改良、補強を加えて操業を続けており5トン/日、1,500トン/年の処理能力を有する。累計約3万トンの使用済み燃料を再処理している。
改良型ガス炉(AGR)の出現で酸化物燃料の再処理が必要になったので、B-204 建屋に前処理施設を増設した。この施設は、1969年8月に運転を開始し1トン/日の処理能力があった。約90トンの酸化物燃料を処理したが、1973年9月揮発性ルテニウム(RuO4)による汚染事故が発生し、以後運転は中止された。この施設での運転経験は次のプラントの設計に活用されている。
英国原子燃料会社(BNFL)は、次期発展策として新しい酸化物燃料再処理工場(THORP,Thermal Oxide Reprocessing Plant)の建設を1976年に申請した。THORPは公称能力千2百トン/年、最初の10年間で6千トンの処理を予定している(7千トンに修正)。1983年、受入れ・貯蔵施設から建設が開始され1992年に建設が終了した。その後英国政府が公開審議を実施するなどしたため、運転許可が遅れた。英国政府は1993年12月THORPを含むセラフィ−ルド・サイトからの放射性物質放出基準を申請を認め、THORPの全面運転開始を決定した。BNFLはこの決定を受けて1994年1月に操業を開始した。

2.セラフィールドの環境への放射能放出低減化
  図1 にセラフィールドにおける海洋への放射能放出実績と計画を示す。
 セラフィールドは海に面しており、放射性廃液はアイリッシュ海の沖合2kmの海中放出管から放出して、拡散希釈させる方式でスタートした。すなわち、核分裂生成物FP)の大部分を含む溶媒抽出第一サイクルの抽出残液は、濃縮減容後、ステンレス製タンクに貯蔵するが、中レベル廃液は濃縮後一時貯蔵し、短半減期の核種106Ru等) を放射能減衰させてから海中に放流していた。また燃料貯蔵プール水等の低レベル廃液はそのまま放流していた。当初の認可放出放射能限度は、全β:30万Ci/年、全α:6千Ci/年であっ た。このような緩い制限だったので、上記の方法でも対応できた。但し1980年代には中レベル廃液の放流は中止となった。
セラフィールドの海中への放射能放出量の低減については、かねてからBNFLも留意しており、1970年後半からはクリティカルグループ(食物連鎖等を考慮し最も高い被ばくを受ける可能性のある公衆グループ、放出限度を定める指標とする)の被ばくについて、ALARAの思想を尊重し、目標を0.5 mSv/年(当時のICRP勧告 ICRP勧告の10%)とする方針を定めた。
一方、継続して行っていた環境への放射能放出量のデータ調査の再評価の結果、クリティカルグループについては、当初の海草入りパン(Laverbread)を常食するグループ(106Ru摂取) から、魚、甲殻類を食するグループ(137Cs等摂取) に変えるべきこと、更に軟体動物を介するα放射体の影響を重視する必要があることがわかってきた。例えば、1981年の放出実績(α:40TBq 、β:4千TBq)に対して、クリティカルグループで〜3.5 mSv に達すると評価された。すなわちBNFLとしては自社の方針に対しても1/10以下に低減する必要に迫られていた。そこで具体策として含塩廃液蒸発施設とイオン交換法低レベル廃液処理プラント(SIXEP)を建設した。これらは1985年に運開し、海中への放出放射能の低減化に著しい効果を発揮した。1992年の海中への放出量は、α:1.6TBq, β:57.2TBq に減少した。
BNFLは1983年にαを7.4TBq/年まで下げると発表したが、1994年には運転を開始したアクチナイド除去強化プラント(EARP)の稼働により、α:0.74TBq/年、β:300TBq/年(3H、241Puを除く)まで低減すると公表している。これによりクリティカルグループの被ばくは0.1mSvとなるとしている。

3.放出放射能低減化廃液処理施設
a)含塩廃液蒸発施設は、主として溶媒再生工程から発生する含塩廃液を濃縮するプラントである。2基の減圧蒸発缶が設備され、1基当たり150m3/ 日の処理能力を持っている。凝縮液はモニター後放出され、濃縮液は次の処理まで貯蔵される。
b)SIXEPは、主としてガス炉燃料の貯蔵プールの水処理を行うプラントで、137Cs、134Csおよび90Srを天然無機イオン交換体(クリノプチロライト)を用いて吸着除去する。DF(除染係数は約15、処理量は4千立方メートル/日である。廃イオン交 換体はセメント固化する。このプラントは改良型ガス炉燃料前処理施設(Pond-5)の北側に隣接して建てられている。
c)1994年2月にB205の廃液処理を開始したEARPは、中レベル濃縮廃液(無塩と含塩の2系統)約千百立方メートル/年と低レベル廃液250立方メートル/日を、それぞれ回分式と連続式の化学共沈澱法(沈澱は水酸化鉄)により処理するプラントで、沈澱物はウルトラフィルターで捕集しセメント固化する。EARPは、全サイトの海洋放出前廃液最終処理施設なので、余裕のあるバッファー能力を持っている。ポンプ、弁、フィルタカートリッジ等の機器は、SIXEPと同様MERC(機器遠隔交換用遮蔽容器)方式で保守される。
d)セラフィールドの各種の中間貯蔵廃棄物を固化、梱包するためにMASWEP(EP-1)が建設されている。
<図/表>
図1 英国セラフィールド再処理工場からの放射能の海洋への放出量と許可限度量
図1  英国セラフィールド再処理工場からの放射能の海洋への放出量と許可限度量

<関連タイトル>
イギリスの再処理施設 (04-07-03-09)

<参考文献>
(1) M.HOUNDEN,T. L. J .MOULDING,”PROGRESS IN THE REDUCTION OF LIQUID RADIOACTIVE DISCHARGES FROM THE SELLAFIELD SITE Ko(223)”,Procceedings of International Conference on Nuclear Fuel Reprocessing & Waste Management,RECOD’87,Vol2,pp533-540(1987),Paris
(2) W.L.WILKINSON,”THORP takes BNFL into 21th Century ”,NUCLEAR ENGINEERING INTERNATIONAL,Aug,pp32-36(1987)
(3) 内藤奎爾(監訳),W.マ−シャル(編): 燃料サイクル上・下(Fuel Cycle)、筑摩書房(1987)、Oxford Press(1983)
(4) 日本原子力産業会議(編):原子力年鑑1995、1995年10月
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