<大項目> 開発中の原子炉および研究炉等
<中項目> 新型転換炉
<小項目> 我が国の新型転換炉の開発
<タイトル>
新型転換炉実証炉計画 (03-02-06-02)

<概要>
 新型転換炉(ATR実証炉の開発は、動燃事業団(現日本原子力研究開発機構)により、昭和49年から開始され、原型炉ふげん」開発の経験、実績および軽水炉の経験を反映させた電気出力60万kWの実証炉設計が纏められた。昭和57(1982)年、原子力委員会は実証炉建設および運転の実施主体は電源開発(株)とし、動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)は技術協力を行うこととした。電源開発(株)は同58年から立地環境調査を、同59年から基本設計を実施した。昭和60年のATR実証炉建設推進委員会において建設計画が決定され、着工に向けて準備が進められていた。平成7年、電気事業連合会から、新型転換炉実証炉建設計画を見直しの要望がなされ、原子力委員会は、電気事業連合会、電源開発(株)、動力炉・核燃料開発事業団、関係地方自治体等の意見を聴取して、慎重に審議をした結果、同年8月の原子力委員会決定において、主に経済性を理由として新型転換炉実証炉建設計画は中止が妥当と判断した。
<更新年月>
2003年09月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 新型転換炉実証炉は新型転換炉(ATR)の実用化を進める開発過程にあって原型炉「ふげん」を引き継ぐものであり、大容量化に伴う技術の実証および経済性の見通しを得ることを目的として開発されるものであった。
 実証炉の開発は、昭和48(1973)年から動燃事業団(現日本原子力研究開発機構)により進められた。電気出力60万kWプラントの全体設計が纏められた段階で、昭和58(1983)年8月、実証炉の建設・運転を行なう実施主体は電源開発(株)に決定され、同社は立地環境調査および基本設計を実施し、これらの進展等をふまえ、昭和60年のATR実証炉建設推進委員会において建設計画が決定され、2000年代初頭の運転開始を目途に、着工に向けて準備が進められていた。
 しかし、平成7(1995)年7月に、電気事業連合会から、経済性に見通しが得られないとの理由から新型転換炉実証炉建設計画を見直しの要望がなされた。原子力委員会は、電気事業連合会、電源開発(株)、動燃事業団(現日本原子力研究開発機構)、関係地方自治体等の意見を聴取して、慎重に審議をした結果、同年8月の原子力委員会決定において、新型転換炉実証炉建設計画は中止が妥当と判断された。以下に、それまでに進められてきた実証炉開発の経緯、実証炉の概要および炉心設計について概略を述べる。
1.実証炉開発の経緯
 実証炉設計は、動燃事業団(現日本原子力研究開発機構)により開始され、基本構想の検討、概念設計、調整設計と段階的に進められた。
 概念設計(昭和50-54年)では、技術的及び経済的に実現の可能性のある実証炉構想が検討・評価され、「ふげん」が比較的順調に成果をあげつつあることもあり、原則として「ふげん」方式を踏襲することとし、電気出力60万kWの実証炉構想がまとめられた。
 調整設計(昭和54-56年)では、原子力委員会の「新型転換炉評価検討専門部会」及び電気事業者と動燃事業団(現日本原子力研究開発機構)の間に設置された「ATR合同委員会」の審議と並行して、プラントの全体設計が実施された。
 合理化設計(昭和57-58年)では、経済性の向上を計り、かつプラントとして整合性ある実証炉の設計がまとめられた。
 この間、原子力委員会は昭和57年6月、実証炉建設の早急の具体化方針を打ち出し、同年8月、実証炉の建設・運転の実施主体として、電源開発(株)を決定した。
 同社は昭和58年8月から青森県大間町における立地環境調査を、同59年1月から実証炉基本設計を進め、設計合理化作業も行い、建設に入る準備を進めていた。
 一方、動燃事業団(現日本原子力研究開発機構)は電源開発株と「実証炉に関する相互協定」を結び、「ふげん」の運転経験及び実証炉を対象とした研究開発成果の基本設計への反映、実証炉燃料の開発などを行なってきた。
 平成5年12月の第12回ATR実証炉建設推進委員会(通商産業省(現経済産業省)、科学技術庁(現文部科学省)、電気事業連合会、動燃事業団(現日本原子力研究開発機構)、電源開発(株)の5者で構成)において、平成6年12月電調審(現総合資源エネルギー調査会電源開発分科会)付議、9年4月着工、15年3月運開の工程が合意され、これに基づき計画を推進してきた。
 当面の最大の課題である立地調整のうち、漁業補償については、平成6年4月、二つの関係漁協である大間漁業及び奥戸漁協が、原子力発電所建設計画への同意及びこれに伴う漁業補償金の受け入れを決定していた。
 一方、用地買収については、平成2年7月に電源開発(株)は個別地権者との間で用地取得を開始し、平成6年4月に、面積にして9割強の用地買収を終えていた。
2.実証炉の概要
 実証炉は電気出力60.6万kW、原子炉熱出力193万kWで、「ふげん」の約3.7倍である。実証炉と「ふげん」の主要諸元比較を表1、また原子炉本体構造図を図1、原子炉格納容器内配地図を図2に示す。
 原子炉本体は「ふげん」と同様、重水減速材を保有するカランドリアタンク、その上下および周囲を取り囲む放射線遮蔽体および熱遮蔽体、上下に貫通する圧力管集合体群より構成される。カランドリアタンクは高さ約5m、胴直径約8mのステンレス鋼製の円筒容器で616本のジルカロイ−2製カランドリア管が上下管板にロ−ルドジョイント法により接合される。カランドリア管の内側には長さ約11mの圧力管集合体が挿入され、下部遮蔽体によって支持される。カランドリアタンク、カランドリア管、鉄水遮蔽体、重水、燃料、圧力管集合体などの総重量約2,500tは、下部鉄水遮蔽体を介して原子炉支持コンクリ−トに伝えられ支持される。
 反応度制御設備は制御棒系および硼酸制御系より構成される。制御棒系は原子炉の起動、停止、緊急停止を行なう炭化硼素を中性子吸収材とする停止棒と原子炉の出力調整を行なうステンレス鋼製の調整棒から構成される。硼酸制御系は、減速材への硼酸の注入、除去により起動、停止、燃焼反応度補償などを行なう硼酸濃度制御系と減速材へ硼酸を急速注入し原子炉を停止させる硼酸急速注入系より構成される。
 原子炉冷却系は互いに独立した2ル−プ構成とし、総数616本の圧力管群の半数がそれぞれのル−プに接続される。原子炉冷却材は圧力管内を上昇しながら燃料からの熱を吸収して沸騰し、水と水蒸気の二相流となり上昇管を経て蒸気ドラムに入り、蒸気と飽和水に分離される。蒸気は湿分除去後主蒸気管を通り、格納容器外の蒸気タ−ビンへ送られ、飽和水は蒸気タ−ビンから戻ってくる給水と混合され、再循環ポンプにより再び圧力管に戻される。
 工学的安全施設は非常用炉心冷却設備と原子炉格納容器施設から構成される。前者は高圧注水系、低圧注水系および急速注水系から構成され、後者は原子炉格納容器、格納容器スプレイ系、格納容器再循環系、アニュラス排気系で構成される。
 燃料交換装置は、原子炉停止時に原子炉下方より新燃料の炉心への装荷、使用済燃料の炉心からの取り出し、および燃料移送装置との燃料の受け渡しを行なうためのもので、最大6体の使用済燃料を収納できる。
 実証炉の燃料集合体構造を図3に示す。集合体は36本の燃料要素と1本の中心支持管から構成され、燃料要素は3重の同心円の内層、中間層にそれぞれ6本、12本および18本が配置される。これらの燃料要素は、上下部タイプレ−トおよび12個のスペサーとジルカロイ−2の被覆管から構成され、炉心の平均核分裂性物質量は、初装荷燃料で約2.6w/o、取り替燃料で約3.3w/oである。
3.実証炉の炉心設計
 実証炉はMOX燃料を全炉心に装荷するプルトニウム燃焼炉として炉心設計が行なわれ、燃料集合体当たり燃料要素本数の増加および出力分布の平坦化により、チャンネル当たり平均出力を約25%高め、原子炉本体の小型化と平均燃焼度の向上が図られている。
(1) 核特性
 実証炉の炉心配置図を図4に示す。実証炉の過剰反応度制御は、制御棒によらず減速材中のほう酸濃度調節によって行なわれる。
 炉心内の出力分布の平坦化は、炉心のプルトニウム富化度分布を変えることによって行なわれる。炉心径方向は炉心を内外2領域に分割し、外側領域の富化度は内側領域より高くし、軸方向は3領域に分割し、上部および下部の富化度は中央よりも高くなっている。また燃料集合体内部においても、外層の燃料要素の富化度を内層、中間層より低くし、出力分布を平坦化している。
 冷却材ボイド(反応度)係数は「ふげん」同様0近傍の値を示し、燃料体温度(反応度)係数は負であるため、出力係数は常に負となっている。
 停止棒は、最大反応度効果をもつ1本が完全引き抜き位置のまま挿入できない場合でも燃料の許容設計限界超えることなく、速やかに炉心を高温未臨界の状態にできる。
燃料の燃焼、キセノン濃度変化、高温から低温までの温度変化などの比較的ゆっくりした反応度変化の調整は、硼酸濃度制御系により行なわれる。さらに停止棒のバックアップとして、「ふげん」の重水ダンプ方式を改め、硼酸急速注入系を採用、これだけでも原子炉を低温停止できる設計になっている。
(2) 熱水力設計
 燃料集合体構造は、36本、54本、60本クラスタのドライアウト試験により、それぞれの伝熱限界を調べた後決定され、また燃料集合体構造においてスペ−サ間隔の影響を調べる試験の結果、「ふげん」に比べスペーサ間隔が小さくされた。
 燃料は通常運転中はもちろん、何らかの故障や誤動作により原子炉出力が増加したり冷却が変化するような異常な過渡変化時にも守るべき制限値が設定されている。燃料破損を避けるため、燃料の線出力密度については、軽水炉の動向や「ふげん」の実績から、49.2kW/mを通常運転時の設計限界値とするとともに、異常な過渡変化が起きた場合でも、燃料被覆管の周方向平均塑性歪が1%以下となるよう最大線出力密度を制限している。また冷却不十分に起因する過熱によって生ずる被覆管の損傷を避けるため、熱的余裕の指標として用いられる最大出力限界比(MCPR)が過渡時の限界値を下回らないよう通常運転時のMCPERを設定している。
(3) 動特性
 実証炉は負の出力係数をもち、制御棒操作に起因する反応度の外乱に対して自己制御性をもっている。また冷却材ボイド反応度係数は0近傍となっているので、電力系統からなどの外乱に対して原子炉出力の変化は少なく、プラントの安定な運転が可能である。
炉心の大型化に伴って発生する出力のキセノン空間振動については、炉心に設置する局所出力検出器の数を「ふげん」より増加して、多領域で出力を監視し、各領域出力が一定となるよう、13本の調整棒を自動調整して、出力のゆらぎを小さくする設計となっている。
4.新型転換炉実証炉建設計画の中止について(平成7年8月原子力委員会決定)
 電源開発(株)が青森県大間町に実証炉の建設計画を進めていたが、原子力委員会は電気事業連合会からこの実証炉建設計画について経済性の理由から見直しの要望がなされ、これを受け、原子力委員会は、電気事業連合会、電源開発(株)、動燃事業団(現日本原子力研究開発機構)、関係地方自治体等の意見を聴取しつつ慎重に審議を進めたところ、以下の結論を出した。
(1) 経済性について
 平成7(1995)年3月に建設費の積算見積もり等の見直しの結果、建設費が当初見積もりの3,960億円から5,800億円に、また、発電原価は、軽水炉の約3倍に大幅に増加することが判明した。
(2) 核燃料リサイクルを巡る情勢について
 軽水炉によるMOX燃料利用計画の進捗等のよって、MOX燃料を利用する炉としての役割等は他によって代替され得る環境が生じてきつつあり、その状況が当分の間継続する見通しである。
(3) 地元(青森県、大間町等)との関係について
 また、これまで協力を得てきた地元大間町等との信頼関係に配慮することが必要であり、国の政策上意義のある計画を当該地点においてできるだけ早急に原子力発電所を立ち上げることが求められている。
 上記(1)から(3)の現状を鑑みるに、大間地点における新型転換炉実証炉の建設計画については、これを中止することが妥当であると判断されるが、同時に、実証炉建設計画に代わる計画について検討する必要がある。
<図/表>
表1 実証炉と「ふげん」の主要諸元比較表
図1 原子炉本体構造図
図2 格納容器内配置図
図3 燃料集合体構造図
図4 炉心配置図

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
新型転換炉のプラント構成 (03-02-02-04)
新型転換炉の制御特性 (03-02-03-01)
新型転換炉開発の経緯 (03-02-06-01)
新型転換炉実証炉計画の見直し (03-02-06-03)
新型転換炉の研究開発 (03-02-06-04)
原型炉「ふげん」 (03-04-02-09)

<参考文献>
(1)動力炉・核燃料開発事業団:動燃二十年史、1988.10.
(2)動力炉・核燃料開発事業団:動燃技報、No.73、1990. 3.
(3)電源開発(株):新型転換炉実証炉の概要、平成2年5月
(4)電源開発(株):新型転換炉設計概要、平成2年11月
(5)日本原子力産業会議(編):原子力年鑑2000−2001年版、2000年10月
(6)原子力委員会(編):平成7年版 原子力白書、大蔵省印刷局(平成8年1月)
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