<大項目> 開発中の原子炉および研究炉等
<中項目> 新型転換炉
<小項目> 我が国の新型転換炉の開発
<タイトル>
新型転換炉開発の経緯 (03-02-06-01)

<概要>
 新型転換炉(ATR)は、プルトニウム、回収ウラン等を柔軟かつ効率的に利用できるという特徴を持つ原子炉として我が国で自主開発を進めてきた。原型炉ふげん」は、1979年3月に本格運転を開始し、2003年3月29日の運転終了までに累積で772体のMOX燃料を用いるなど、順調に運転された。これまでの運転を通じ、プラントシステム、機器およびMOX燃料等の性能と信頼性の実証及び運転経験の蓄積など大きな成果を得ている。
 実証炉については、電気事業連合会から見直しの要望がなされ、1995年8月の原子力委員会決定において、経済性及びMOX燃料利用による代替等の理由により実証炉の中止が妥当と判断された。運転終了後の「ふげん」は、適切な準備期間(〜10年間)の後、廃止措置着手することとし、その間廃止措置に必要な技術開発・研究を行うこととしている。
<更新年月>
2003年09月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 新型転換炉(ATR)は我が国の動力炉自主開発の炉型として高速増殖炉とともに決定され たもので、昭和42年設立された動力炉・核燃料開発事業団(以下「動燃事業団」という。現在、日本原子力研究開発機構)により、新型転換炉原型炉「ふげん」の設計、研究開発、建設が進められた。「ふげん」は昭和54年(1979年)本格運転を開始、以降順調に定格運転を続けた。2003年3月末にはその役割が終了したことから運転を終了した。一方昭和49年より新型転換炉の実用化を目標とし、実証炉の設計研究が行なわれたが、昭和57年に実証炉計画は電源開発(株)が建設主体となり具体化することとなり、昭和60年(1985年)にATR実証炉建設推進委員会において建設計画が決定され、2000年初頭の運転開始を目途に諸準備が進められてきたが、平成7年(1955年)8月の原子力委員会の決定により、この計画は中止が妥当と判断された。図1に「ふげん」と実証炉の開発工程を示す。

1.炉型の選定から「ふげん」の建設決定まで
 我が国では昭和35−36年頃から国産動力炉の検討が開始され、原子力委員会の動力炉開発懇談会では、(a)核燃料の効率的利用、多様化に役立つこと、(b)経済的に有利となる可能性があること、さらに自主的にこれを開発するとの方針から、(c)プル−ブン(実用段階に達している)であること、(d)早期実用化が可能であること、
などを条件に審議を進めた結果、昭和41年原子力委員会により、高速増殖炉とともに、重水減速沸騰軽水冷却圧力管型の炉型を新型転換炉として自主開発することが決定された。なお当時は既にカナダや英国では新型転換炉と同型炉の開発が進められており、それらの情報も入手可能なため、我が国では初期の実験炉段階を省略し、直接原型炉から開発を開始することとなった。
 昭和42年、動燃事業団(現日本原子力研究開発機構)は直ちに新型転換炉の原型炉「ふげん」の概念設計に着手した。昭和44年に概念設計を取りまとめた電気出力165,000kWの「ふげん」の開発計画は、原子力委員会が組織した新型転換炉評価検討専門委員会における新型転換炉開発の意義、炉型選定の妥当性、経済性、自主開発の効果などの観点から評価検討(Check and Review)を経て、原子力委員会により「ふげん」の建設とその開発計画が承認された。

2.「ふげん」の設計、研究開発、建設
 「ふげん」の建設地点(福井県敦賀市)は、昭和43年、敷地調査、配置計画がなされ、昭和45年(1970年)に「ふげん」の設置許可申請が行なわれ、認可され同年12月現地工事が開始された。
 一方これらの設計の妥当性を実証、確認するため、大洗工学センタ−に、炉心核特性を明らかにする「重水臨界実験装置(DCA)」、炉心熱水力特性を解明する「14MW熱ル−プ(HTL)」、燃料集合体圧力管集合体など原子炉の重要部品機器の健全性、耐久性を実証する「コンポ−ネント・テストル−プ(CTL)」、および「ふげん」の安全性を実証する実規模安全性試験施設が建設され、昭和45年より研究開発が開始された。
 昭和52年建設工事が完了し、総合機能試験の後、翌53年(1978年)3月に燃料装荷を開始し、初臨界を達成し、昭和54年3月本格運転を開始した。

3.「ふげん」の運転から実証炉計画へ
 「ふげん」は運転開始以来順調に運転を続け、昭和53年7月の初送電から平成15年3月末の運転終了までの総発電量は219億kWhに達し、運転開始以降の設備利用率は約62%に達している(図2参照)。「ふげん」は世界に先駆けてMOX燃料を本格的に使用する熱中性子炉で、平成3年3月末までに772体のMOX燃料を装荷しており、1炉心としては世界最大の使用実績を示している。これらのMOX燃料は、動燃事業団(現日本原子力研究開発機構)の東海事業所で設計・製造され、これまで燃料破損は生じてない。「ふげん」のMOX燃料使用実績を図3に示す。
 「ふげん」の運転、定期検査を通じて、プラント特性、性能、設備機器の運転・保守信頼性の実証ならびに運転保守技術の開発、運転管理技術の確立が図られてきた。
 一方、実証炉については、昭和49年より新型転換炉の大容量化に伴う技術の実証、経済性の見通しの確立を目的として、新型転換炉実証炉の評価研究、次いで概念設計を進め、昭和54年からは本格運転を開始した「ふげん」の運転を取り入れ、調整設計を実施し、電気出力60万kW実証炉プラントの全体設計がまとめられた。
 昭和54年以降、電気事業者、動燃事業団(現日本原子力研究開発機構)、科学技術庁(現文部科学省)および通商産業省(現経済産業省)の間にATR合同委員会が設置され、実証炉の実用性、経済性の向上の点から審議が行われ、昭和56年には原子力委員会が実証炉の開発体制の検討に着手、実証炉の建設、運転は電源開発(株)が担当し、電気事業者、動燃事業団(現日本原子力研究開発機構)は所要の技術協力を行なうことが翌57年に決定された。
 原子力委員会は、平成6年6月、核燃料リサイクルを基本とする「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」(以下「長期計画」という)を策定した。これを受けて、同実証炉は、2000年代初頭の運転開始を目途に、着工に向けて準備が行なわれていたが、平成7年8月25日、原子力委員会は電気事業連合会の実証炉建設計画見直しの申し入れを受け、主に経済性を理由として実証炉の中止を決定した。新型転換炉実証炉建設計画の中止を決定した。

4.新型転換炉実証炉建設計画の中止について(平成7年8月原子力委員会決定)
 電源開発(株)が青森県大間町に実証炉の建設計画を進めていたが、今般、電気事業連合会からこの実証炉建設計画について経済性の理由から見直しの要望がなされ、これを受け、原子力委員会は、電気事業連合会、電源開発(株)、動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)、関係地方自治体等の意見を聴取しつつ慎重に審議を進めたところ、以下の結論を得た。
(1)経済性について
 1995年3月に建設費の積算見積もり等の見直しの結果、建設費が当初見積もりの3,960億円から5,800億円に、また、発電原価は、軽水炉の約3倍に大幅に増加することが判明した。
(2)核燃料リサイクルを巡る情勢について
 軽水炉によるMOX燃料利用計画の進捗等によって、MOX燃料を利用する炉としての役割等は他によって代替され得る環境が生じてきつつあり、その状況が当分の間継続する見通しである。
(3)地元(青森県、大間町等)との関係について
 また、これまで協力を得てきた地元大間町等との信頼関係に配慮することが必要であり、国の政策上意義のある計画を当該地点においてできるだけ早急に原子力発電所を立ち上げることが求められている。
 上記(1)から(3)の現状に鑑みるに、大間地点における新型転換炉実証炉の建設計画については、これを中止することが妥当であると判断されるが、同時に、実証炉建設計画に代わる計画について検討する必要がある。
なお、新型転換炉実証炉建設計画の代替計画として以下の点が示された。
(1)代替計画を検討する際の観点
 代替計画を検討するにあたっては、以下の3つの点に留意した。
 1)核燃料リサイクル計画上、新型転換炉実証炉の役割を代替でき、将来の発展性を有すること
 2)早急に立ち上がる技術的見通しがあり、かつ経済性を有すること
 3)プルトニウムの需給バランスが確保されること
(2)全炉心MOX燃料装荷可能な改良型沸騰水型軽水炉(フルMOX-ABWR)の検討
 電気事業連合会から提案のあった全炉心MOX燃料装荷を目指すABWRについて、上記観点から検討すると、
 1)中期的な核燃料リサイクルの中枢的担い手である軽水炉によるMOX燃料利用であること
 2)現在建設中のABWRの基本仕様の変更を伴うことなく実施可能との技術的見通しがあり、経済性についても実用炉として十分な見通しを有すること
 3)また、フルMOX-ABWRの建設・運転等に当たっては、新型転換炉の研究開発で得られた成果を活用できること
 4)全炉心にMOX燃料を装荷することにより、新型転換炉実証炉の2倍強の量のプルトニウムの利用が可能であり、プルトニウム需給バランスも確保されることと評価されることから、代替計画として適切であると判断される。
(3)フルMOX-ABWRの進め方
 このフルMOX-ABWRの建設については、電源開発(株)が地元の理解を得つつ実施主体として責任を持って取り組んでいくべきものであるが、国及び電気事業者の適切な支援の下、当該計画が円滑かつ確実に実施されることを期待する。
<図/表>
図1 新型転換炉の開発計画
図2 「ふげん」の運転実績
図3 「ふげん」のMOX燃料使用実績

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
新型転換炉の特徴 (03-02-02-02)
新型転換炉実証炉計画 (03-02-06-02)
新型転換炉実証炉計画の見直し (03-02-06-03)
新型転換炉の研究開発 (03-02-06-04)
原型炉「ふげん」 (03-04-02-09)

<参考文献>
(1)日刊工業新聞社:原子力工業(1970年2月)
(2)動力炉・核燃料開発事業団:動燃十年史(1978年12月25日)
(3)動力炉・核燃料開発事業団:動燃二十年史(1988年10月2日)
(4)動力炉・核燃料開発事業団:「ふげん」の開発実績と「実証炉」の設計(1979年12月)
(5)動力炉・核燃料開発事業団:動燃技報 No.63,1987年9月
(6)動力炉・核燃料開発事業団:動燃技報 No.69,1989年3月
(7)動力炉・核燃料開発事業団:動燃技報 No.73,1990年3月
(8)動力炉・核燃料開発事業団:新型転換炉原型炉「ふげん」技術成果の概要,1991年8月
(9)通商産業省資源エネルギ−庁原子力発電課(編):原子力発電便覧1997年版、電力新報社(1997年8月),p512-519
(10)日本原子力産業会議(編):原子力年鑑 2000?2001年版(2000年10月)
(11)原子力委員会(編): 原子力白書、大蔵省印刷局(平成9年3月)
(12)科学技術庁動燃改革検討委員会:「動燃改革の基本的方向(平成9年8月1日付け)」、原産マンスリー、No.22,30-93(1997.8)
(13) 核燃料サイクル開発機構:核燃料サイクル開発機構ホームページ「ふげん」
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