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<概要>
 プルトニウムは、核的性質から言うと高速炉に用いるのに適しているが、ウラン−235の代わりに軽水炉をはじめとする熱中性子炉の燃料にも利用できる。これはプルサーマルと呼ばれている。当面、高速炉が経済性の面で開発の余地を残していて、プルトニウムを高速炉燃料として多量に使用する体制にない現状(2009年)では、経済的・資源的にも管理上でもプルトニウムを軽水炉で用いる利点は大きい。
 軽水炉へのプルトニウムの利用は国内外の再処理工場、MOX燃料加工場の拡張や竣工に伴い、着実に増大しつつある。
<更新年月>
2009年01月   

<本文>
1.軽水炉使用済燃料とプルトニウム
 軽水炉使用済燃料中には、燃料の燃焼度により変わるがプルトニウムが1%程度含まれており、再処理によって取り出されたプルトニウムは核分裂性物質として再び核燃料として利用できる。すなわち、再処理による回収プルトニウムを同量のウランと混合してウラン・プルトニウム混合酸化物燃料(MOX燃料:Mixed Oxide Fuel)に加工し、軽水炉の燃料として用いる。プルトニウムはウランと比較すると、中性子エネルギーの高い高速中性子領域で核分裂に伴う中性子の発生数が多い。したがって、プルトニウム燃料を高速炉内で燃焼すると、ウラン−238が中性子を吸収して、さらに多くのプルトニウムを生成し、いわゆる核分裂性物質の「増殖」が可能になる。そのため、プルトニウムは高速増殖炉に使うのが最適であると言われている。
2.バックエンドサイクルの選択肢
 従来型の軽水炉でウラン燃料が燃焼するまでの段階「フロントエンド」に対して、その使用済燃料の再処理以降の廃棄物処理処分を含めた段階を「バックエンド」と呼ぶ。
 わが国では、使用済燃料を再処理して、核分裂していないウラン−235や原子炉内で生まれたプルトニウム取り出し、燃料として再利用する方針をとっている。わが国と同じ方針をとっている国は、フランス、ロシア、イギリス、中国がある。しかし、米国の場合は、むしろ核拡散防止が優先し核不拡散法という法律で、軍事用以外の再処理を禁止し、使用済燃料を高レベル廃棄物と同様な方法で直接廃棄物として処分することをバックエンドの方針としている。米国と同じ方針の国は、カナダ、ドイツ、スウェーデン、フィンランドがある。また、ベルギーや韓国のように、当面、両者の中間をとって暫くの間、使用済燃料を保管しておく中間貯蔵の方針をとる国もある。
 核燃料サイクルの政策を採用するにしても、高速炉実用化の遅れなどの理由により、当面好むと好まざるに関わらず使用済燃料の一部を再処理し、残りは使用済燃料として保管しておくという形になってきている。
3.軽水炉利用の必要理由
 上述のように各国の核燃料サイクル政策に基づく背景のもとで、次のような理由で軽水炉へのプルトニウム利用が進められている。
(a)経済性
 原子力委員会の小委員会によれば、現在のウラン価格などを前提として試算すると、再処理する場合の核燃料サイクルコスト(フロントエンドおよびバックエンドの6割程度が直接処分した場合の核燃料サイクルコストであり、直接処分が安価になる。また、リサイクルによるコストは約0.5〜0.7円/kWh(割引率2%)となるが、これを一世帯あたりの年間負担額に換算すると、年間約600〜840円の負担となり、年間電気代の1%程度と試算されている(“資源エネルギー庁のホームページ、施策情報、原子力政策の現状について”を参照)。このように、発電コストに与える影響は小さい。
(b)プルトニウム価値の時間経過による減少
 再処理後のことであるが、プルトニウムの貯蔵にはかなりの経費を要するほかに、プルトニウムの核分裂性核種の一つであるプルトニウム−241は、半減期が13.2年と比較的短かくアメリシウムへ変換し、プルトニウムとしての価値が減少する。この減価を考えると、保存しておくよりは軽水炉にプルトニウム燃料として利用する、いわゆる「プルサーマル(プルトニウム サーマル リアクターの略)」を実施する方が、経済的にも核拡散防止上も利点が大きい。
(c)資源論
 現時点で地球環境に影響を与えると言われている化石燃料の使用を抑制しようとすれば、大規模な供給が可能なエネルギーは核分裂による原子力エネルギーしか存在しない。しかも、ウラン資源量には限りがあるので、最大限ウランの使用を節約する必要がある。直接処分の場合は天然ウランの0.5%しか利用しないが、プルトニウムを軽水炉燃料にリサイクルして使用すると、ウランの利用効率がリサイクルを行わない直接処分に比べて、理想的な場合、5割程度(0.75%)向上する(同じ発電量に対して天然ウランの必要量が数割減少する)と試算されている。さらに、核燃料サイクルによるウラン資源のリサイクルは、エネルギーの安定供給性にも寄与することになる(“原子力委員会、核燃料サイクルについて、平成15年8月(2003年)”、16ページ参照)。
(d)核拡散防止
 プルトニウムは、高濃縮度を必要とするウランよりもより少量で原子爆弾の原料となり得るため、保管していると核拡散の危険性が大きくなる。原子炉に装荷しておけば、その懸念がないというメリットがあると言われている。
(e)再処理およびプルトニウム燃料加工の技術開発
 プルトニウムの高速増殖炉への利用は実用段階が先に延び、また、そのための再処理および燃料加工は、プルトニウム富化度が大きいだけに技術的により難しい開発要素を抱えている。プルサーマルによってこれらの技術の発展を図り繋いでゆく必要がある。
4.軽水炉利用の動向
 プルサーマルは、海外では1960年代(昭和30〜40年代)に開始され、その後、商業利用も行われている。これまでの約40年にわたり、57基の原子炉での導入、燃料集合体で6,018体の豊富な実績がある(2007年12月現在)。フランスでは約1/3の原子炉でプルサーマルを行っており、これも含め、ドイツ、ベルギー、スイスでは既に商業運転が行われている。これまでに事故は発生しておらず安全に利用されている。わが国においても、MOX燃料の少数体実証計画として、日本原子力発電の敦賀発電所1号機(BWR)で昭和61年6月(1986年)から平成2年2月(1990年)まで2体が、関西電力の美浜発電所1号機(PWR)で昭和63年3月(1988年)から平成3年12月(1991年)まで4体が使用され、ともに計画どおり安全に使用を終了している。炉の形式は異なるが、類似の「ふげん(新型転換炉:ATR)」においては、昭和54年(1979年)〜平成15年(2003年)3月の運転終了までの24年間でMOX燃料を772体利用、1基当たりの装荷体数では世界最高の実績がある。また、全炉心でMOX燃料を使用するフルMOX−ABWRとして、大間原子力発電所が平成11年(1999年)8月に国の電源開発基本計画に組み入れられ、フルMOX燃料による平成24年(2012年)の運転開始を目指し、電源開発(株)がその実施主体として取り組んでいる。図1に、プルサーマルの実績、図2にプルサーマルの動向を示す。
 再処理については、茨城県東海村の日本原子力研究開発機構に再処理工場があるが、年間の処理量が210トンと小規模なため、これまでは、イギリスとフランスに再処理を委託してきた。しかし、エネルギーセキュリティなどの観点から、日本原燃(株)は、2009年1月現在、青森県六ヶ所村に年間800トンの処理能力を持った再処理工場を建設し、運転試験を進めているところである。また、再処理工場で回収したプルトニウムを加工するためのMOX燃料工場については、同じ日本原燃(株)が平成24年(2012年)10月の操業開始を目指し、現在、事業許可が申請(年間最大加工能力130トン、平成17年(2005年)4月申請)されているところである。プルサーマル商業運転が先行しているヨーロッパも含め、世界のMOX燃料加工施設を図3に示す。ロシアでは、解体核兵器からのプルトニウムの処分として、商用炉で燃焼させると言われている。
<図/表>
図1 プルサーマルの実績
図1  プルサーマルの実績
図2 プルサーマルの動向
図2  プルサーマルの動向
図3 世界のMOX燃料加工施設
図3  世界のMOX燃料加工施設

<関連タイトル>
軽水炉用MOX(プルサーマル)燃料 (02-08-04-02)
日本におけるプルトニウムの軽水炉での利用状況 (02-08-04-03)
海外におけるプルトニウムの軽水炉での利用状況 (02-08-04-04)
世界の核燃料製造会社とその生産規模 (04-06-01-06)
プルトニウム核種の生成 (04-09-01-01)
プルトニウム混合転換技術 (04-09-01-03)

<参考文献>
(1)資源エネルギー庁ホームページ:プルサーマルのしくみと安全性、

(2)資源エネルギー庁ホームページ:施策情報、原子力政策の現状について、プルサーマルの実績、安全性
(3)電機事業連合会ホームページ:電機事業のいま、原子燃料サイクル、プルサーマル、プルサーマルの実施実績
(4)日本原燃(株)ホームページ:MOX燃料工場(計画中)、

(5)IAEA,Technical Report Series 425,”Country Nuclear Fuel Cycle Profiles (Second Edition), 2005
(6)原子力委員会、“核燃料サイクルについて”、平成15年(2003年)
(7)東北電力(株)ホームページ:
(8)電源開発(株)ホームページ:http://www.jpower.co.jp/bs/field/gensiryoku/project/aspect/mox/loadings_results/index.html
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