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<概要>
 プルトニウムは、通常原子炉内でウラン中性子反応でネプツニウムを経由して生成される。質量数の大きいプルトニウム核種は引き続き中性子を吸収して生成され、17種の同位体が確認されている。普通使用済み燃料から抽出される利用上重要なプルトニウム核種は236Puから242Puまでの6種類の核種である。
 プルトニウムは代表的なα放射体として知られるが、これは存在量の多い239Puがα線を出すためであって、高次の同位体が混じっているプルトニウムはβ線、γ線及び中性子線も放出する。
<更新年月>
2001年06月   

<本文>
1. プルトニウム同位体の生成
 プルトニウム(原子番号94)は原子番号93のネプツニウムが発見されて間もない1940年12月にサイクロトロンでウランに重陽子を当てた生成物の中から発見された。これは質量数238の238Puであったが、次いで翌1941年には原子炉で生成するプルトニウムの主成分である239Puが発見された。
 239Puは天然ウランの99.3%を占める238Uに中性子が当たると239Uを生成するが、間もなく下記のようにβ線を出して239Npに、引き続き239Puに変わる。
  238U +n→ 239U+e→239Np+e→239Pu+e
この239Puにさらに中性子が当たると、多くは核分裂するが一部は240Puに代わる。これらの高次のプルトニウム同位体の生成反応を 図1 に示す。
 図からわかるように炉内のプルトニウム同位体は時間の経過と共に中性子を吸収して、質量数の大きな高次の同位体が増大する。原子爆弾に利用されるプルトニウムは、239Puと少量の241Puを含む核分裂性プルトニウムが90%以上を占める「標準級プルトニウム」で、「原子炉級プルトニウム」と呼ばれる通常の発電炉の使用済燃料から取り出されたプルトニウム(高次化プルトニウムと呼ばれることがある)は原子爆弾への利用が困難である。
 240Puは238Uと同様に、熱中性子が当たっても核分裂しないが、中性子を吸収すると241Puに代わり、この核種は再び核分裂性になる。この意味で240Puのような核物質を核燃料親物質(Fertile Material)と呼んでいる。大雑把に言えば、奇数質量数のプルトニウムが核分裂性物質(Fissile Material)で、偶数質量数のものは親物質である。
 プルトニウムは一般に人工元素とされるが、天然でも、上記の原子炉内の核反応と同様な過程で239Puを生成することが分かっている。すなわち、プルトニウムの核分裂性の発見の1年後の1942年には、早くも、人工のプルトニウムの発見者であるG.T.Seaborgらにより、カナダ産ピッチブレンドからその存在が確認されている。その後の研究により、天然のウラン鉱物の中のウランの自然核分裂等によって生成した中性子を238Uが吸収して生成するプルトニウムの量はウラン1に対して5×10-12前後存在し、239Puを主体としているが、240Puも存在することが明らかになっている。
2. プルトニウムの放射線
 このようにして現在までに生成を確認されたプルトニウムは、質量数231から247まで17種の同位体が知られている。この中で質量数231から235までの同位体、243および245は1日に満たない半減期を持ち核的安定性に乏しい。質量数の小さいものは電子捕獲、質量数の大きいものはβ崩壊、中間的な同位体はα崩壊が多くなっている。これらの中で重要なプルトニウム同位体の性質を 表1−1 および 表1−2 に示す。普通のプルトニウム中に存在するは236Puから242Puまでの6種類の核種である。現在、軽水炉で普通に燃料寿命を終えた使用済燃料から取り出されるプルトニウムは 表2 に示すような同位体組成を持っている。
 プルトニウムは代表的なα(アルファ)放射体である。これは、主要核種のプルトニウム239のためである。プルトニウム241はβ放射体として比較的短い半減期で、アメリシウム241に崩壊する。他にプルトニウム243、245等もβ放射体である。この他には各核種ともγ(ガンマ)線を放出するが、241Puの娘核種である241Amがエネルギーは60keVと弱いがγ線を出すので取扱上注意する必要がある。また、量は少ないが、同じ241Puからα崩壊した237Uも強い208keVのγ線を出す。前者の241Amからのγ線はエネルギーが低いため比較的容易に遮蔽が可能である。このほか、プルトニウム同位体の主体をなす239Puから380〜420keVにわたるエネルギーのγ線が出る。これは遮蔽が困難である。
 このほか、プルトニウムは相当量の中性子線も放出する。表1−1に示すように238Pu、242Pu、240Pu等特に偶数番号の核種で自発核分裂の半減期が短い核種が多い。これらの核種は、プルトニウムと共存する軽元素(例えばプルトニウムと化学結合している酸素や弗素等)との(α,n)反応により、自発核分裂に匹敵する量の中性子を発生する。中性子線は原子炉級プルトニウムではγ線と同程度乃至それ以上の被ばく量を与える可能性がある。
 γ線は鉛や鉛ガラスによってかなり遮蔽できるが、中性子の場合は厚い減速材を必要とし遮蔽には相当な厚さを必要とする。通常のグローブボックスではこのような厚い遮蔽材を付けるとグローブ操作が困難になり、逆に操作を考えると有効な遮蔽は不可能になる。従って、大量のプルトニウムを取り扱うMOX燃料製造工場では、工程を自動化して中性子による外部被ばくを避ける方法をとっている。
<図/表>
表1−1 プルトニウム同位体の性質(崩壊型及び半減期)
表1−1  プルトニウム同位体の性質(崩壊型及び半減期)
表1−2 プルトニウム同位体の性質(中性子断面積等)
表1−2  プルトニウム同位体の性質(中性子断面積等)
表2 核兵器級と原子炉級プルトニウム同位体重量比の例
表2  核兵器級と原子炉級プルトニウム同位体重量比の例
図1 天然ウランの中性子照射により生成されるプルトニウム同位体
図1  天然ウランの中性子照射により生成されるプルトニウム同位体

<関連タイトル>
プルトニウム混合転換技術 (04-09-01-03)

<参考文献>
(1) M. Taube:Plutonium;A General Survey”,Nuclear Chemistry Series V.4 (1974)
(2) M. Benedict,T.H. Pigford, H.W. Levi:Nuclear chemical Engineering” 2nd ed McGraw-Hill (1981)
(3) 武藤正:プルトニウム施設とその管理、原子力工業21巻2号(1975)
(4) O. J. Wick : Plutonium Handbook,a Guide to the Technology”,Vol.1,Gorden & Breach,Science Publishers(1987)
(5) 火力原子力発電技術協会(編):原子燃料サイクルと廃棄物処理、火力原子力発電技術協会(昭和61年)
(6) National Nuclear Data Center:Nuclear Reaction Data, http://www.nndc.bnl.gov/nndc/nndcnrd.html
(7) Nuclear Energy Agency:Plutonium Fuel. an assessment,OECD.1989
(8) 松岡 理:プルトニウムの安全性評価、日刊工業新聞社(1993.6)
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