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核燃料リサイクルでは、一般に原子炉で使用するまでを核燃料リサイクルの上流部(アップストリーム)、原子炉から取り出された後を核燃料リサイクルの下流部(ダウンストリーム)と言う。核燃料製造会社は、この上流部の最終段階においてウランや
プルトニウムを各種原子炉で使用できる構造・材質の燃料要素(主に研究炉でいう)または燃料集合体を製造する、いわゆる燃料成型加工を行う。
天然に存在するウラン鉱石は、採鉱、製錬、転換、濃縮等の過程を経た後、核燃料製造会社に輸送されて成型加工され、原子炉で使用可能な燃料集合体となる。また、
再処理で回収された二酸化プルトニウム(PuO2)または
ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)は、直接核燃料製造会社に輸送されて成型加工される。
図1に核燃料リサイクル概念図を示す。
1.ウラン燃料加工工場
主要なウラン燃料加工工場では、
原子力発電に多数用いられている
軽水炉、
カナダ型重水炉および
ガス冷却炉用核燃料を生産している。軽水炉(BWR、PWR)用燃料の加工工場では、濃縮された
六フッ化ウラン(UF6)を原料として、これから二酸化ウラン(UO2)粉末を製造し、この粉末を直径・高さともに約1cmの円柱形に押し固め、高温で焼き固めて
ペレットとする。このペレットをジルコニウム合金の管中に一列に並べて装填し、両端に金属栓を溶接して密封した
燃料棒に加工し、これを燃料集合体に組み立てる。カナダ型重水炉(CANDU)用燃料の加工工場では、転換で得られた天然UO2粉末から、ペレット、燃料棒を経由して燃料集合体を組み立てる。ガス冷却炉(
マグノックス炉)用燃料の加工工場では、転換で得られる四フッ化ウラン(UF4)を原料として、これをマグネシウムまたはカルシウムで還元して天然金属ウランとし、これを棒状に加工後、外面をマグネシウム合金で被覆し燃料集合体とする。
表1に世界の主要な商業ウラン燃料加工工場とその設備能力を示す。
日本の燃料加工工場には三菱原子燃料(株)、(株)グローバル・ニュクリア・フュエル・ジャパンおよび原子燃料工業(株)の3社がある。
表2に日本のウラン燃料加工施設を示す。
なお、UF6からUO2を製造する過程を「
再転換」という。三菱原子燃料(株)は、再転換も兼ねており450tU/年の処理能力を有する。この再転換工場は、燃料加工工場の一部として設置されていることが多く、再転換単独の施設は例が少ないが、日本では1999年9月30日に
臨界事故を起した(株)ジェーシーオー(旧:日本核燃料コンバージョン(株))東海工場(生産規模:715tU/年;PWR、BWR、3tU/年;FBR(常陽))がそれである。2000年2月3日に事業許可が取り消しとなった。
表3に日本の核燃料再転換施設を示す。
2.MOX燃料加工工場
MOX燃料加工工場では、再処理で回収されるPuO2またはMOX(U,Pu混合酸化物)を原料として、FBR、ATR、軽水炉(BWR、PWR)等に用いるMOX燃料を成型加工する。世界の主要なMOX燃料加工工場とその生産能力を
表4−1、
表4−2に示す。現在の日本における設備能力は、新型転換炉原型炉「
ふげん」用燃料製造施設の10トンMOX/年(核燃料サイクル開発機構(現日本原子力研究開発機構)・プルトニウム燃料第2開発室)および高速増殖炉燃料製造施設の5トンMOX/年(核燃料サイクル開発機構(現日本原子力研究開発機構)・プルトニウム燃料第3開発室)である。
<図/表>
<関連タイトル>
世界のウラン製錬施設 (04-04-01-05)
原子炉型別ウラン燃料 (04-06-01-03)
PWR用ウラン燃料 (04-06-03-02)
BWR用ウラン燃料 (04-06-03-01)
日本のプルトニウム燃料製造施設と生産量 (04-09-01-05)
海外のプルトニウム燃料製造施設 (04-09-01-06)
<参考文献>
(1)Nuclear Engineering International: World Nuclear Industry Handbook,p.131−132(1994)
(2)(社)日本原子力産業会議:原子力ポケットブック 2005年版(2004年7月)、p.176−183
(3)(社)日本原子力産業会議:原子力年鑑 2001/2002年版(2001年11月)、p.194
(4)原子力委員会(編):原子力白書 平成16年版(2005年3月)、p.243