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<概要>
 天然ウラン精鉱(イエローケーキ)を六フッ化ウランに精錬するウラン転換施設は現在日本には存在しない。低濃縮ウラン燃料加工施設では、通常年1回の実在庫検認(棚卸し査察)と、年平均5回(最大7回)の短期通告無作為査察(SNRI)が実施されている。高濃縮ウラン燃料の加工は現在日本では行われていない。MOX燃料の転換と加工は、原子力機構(旧 サイクル機構(現日本原子力研究開発機構))のプルトニウム転換施設、プルトニウム燃料施設、プルトニウム燃料製造施設が実施している。ここでは多量のプルトニウムを取り扱うので、厳しい計量管理が行われており、月1回の中間査察と年1回の実在庫検認がある。なお、現在検討が進められている統合保障措置では、適時性目標値等の見直しが行われているが、プルトニウム利用施設の場合には、年間査察業務量の大幅な効率化は期待できないであろう。
<更新年月>
2006年09月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.製錬後の転換施設に対する保障措置
 製錬後の転換施設は、天然ウラン精鉱(イエローケーキ)を原料とし、濃縮工場または天然ウラン燃料加工工場の原料となる六フッ化ウラン(UF6)を製造する化学工場であるが、現在日本には存在しない。日本が加盟している核兵器不拡散条約(NPT)に基づく保障措置によれば、イエローケーキには国際原子力機関(IAEA)の保障措置は適用されず、製品のUF6(気体状)から保障措置の対象となる。したがってUF6が当該施設を出る時点で保障措置の対象となる。この場合、IAEAの検認は、施設から出てくる製品が施設者の申告どおりかどうかを確認することに限定され、UF6の入った製品シリンダーの員数勘定と同定およびシリンダーから無作為抽出によって採取したサンプルの計量(重量測定)と分析によって行う。
 なお、追加議定書の発効に伴い、従来保障措置の対象外とされてきたウラン鉱山、製錬工場および製錬後の転換施設もその操業状況等を報告することが必要となった。また、IAEAは、これらの施設に補完的アクセスを行って、未申告核物質および未申告活動のないことを確認することとなった。
2.低濃縮ウラン燃料加工施設に対する保障措置
 低濃縮ウラン燃料加工施設では、ウラン濃縮工場からの気体状のUF6を大型輸送シリンダーで受入れ、これをUO2の粉末に転換する。このUO2の粉末を調合、粉砕、粒状化し、圧縮して成形ペレットにする。次にこれを高温で燒結させた後、寸法公差まで研磨し、燃料被覆管内に装荷する。装荷された被覆管の端末プラグは密封溶接されて燃料棒に成型され、これを燃料集合体に組み立てる。日本には現在、該当する施設の事業者として三菱原子燃料株式会社、GNF株式会社(米GE、日立、東芝3社の国際燃料合弁会社)、原子燃料工業株式会社の3社がある。
(1)燃料加工施設の保障措置の特徴
 UF6からUO2への転換過程とペレット加工過程において多量の回収可能なスクラップが発生する。また存在する核物質在庫のかなりの部分は、UF6シリンダーと完成した燃料集合体のような単位体であるが、保障措置上これらの施設は単位体施設ではなくバルク(バラ)取扱施設とみなされ、施設内のバラな核物質の在庫は数百トンにも達する。また色々な形状の核物質が広範な工程区域に分布し、多数の相互に関連する流れが存在する。また工程の各段階と各時点で核物質に対する接近が多少なりとも可能である。そして加工工程の最初の段階である原料シリンダーの貯蔵庫と最終段階である燃料棒から燃料集合体への組立においては単位体としての特性を持っている。
 工場は一般に昼夜連続運転をしており、実在庫検認等の理由で年に1〜4回運転を停止する。工場内の加工工程と物質の流れが複雑であるので、封じ込め・監視手段の適用は限定され、したがって正確な計量の役割が極めて重要である。
(2)物質収支区域(MBA)と主要測定点(KMP)の設定
 気体状、液体状および固体状のウランを取り扱う再転換加工工程やペレット加工工程のような核物質の加工損失を生じ易い工程と、UO2粉末缶、燃料棒、燃料集合体のような単位体として取扱うため損失が発生する可能性のない工程に大別される。施設の計量管理はこのような工程の特徴を考慮して、物質収支区域(MBA)を受け払い間差異区域、在庫差(MUF)区域、単位体計数区域の3つに設定し、流れKMPを各MBA間の境界に、また在庫KMPを特にMUF−MBAに多く設定するのが一般的であった。しかし、最近は1MBAとするのが一般的である。
(3)転用分析
 一般に接近が容易であるので、あらゆる時点とあらゆる加工段階で貯蔵庫または加工ラインから直接の移動による転用の可能性がある。低濃縮ウランと天然ウランの探知時間は1年とされているので、一括転用と少量分割転用との間の差はないことになる。
(4)査察目標
 量的目標は75kg- 235Uであり、適時性は12か月以内である。
(5)記録および報告
・施設は出所の裏付けのある計量記録と運転記録を準備する。
・在庫変動記録を変動が発生した月の末日から15日以内に提出する。
・物質収支報告と実在庫明細表は各MBAについて、実在庫確認(棚卸し)後15日以内に提出する。
(6)封じ込め・監視(C/S)
 C/S手段の適用は次のとおりで封印が多く、通常監視はない。
・受け取るUF6シリンダーの封印確認
・発電所に払い出す燃料集合体または払出しコンテナ(輸送用キャスク)の封印取付け
・実在庫検認(棚卸し査察)中に測定済みのアイテムの封印取付け
・実在庫検認と実在庫検認の中間も封印したままの核物質の確認
封印が適用されている核物質は再計量(測定)する必要はなく、定められた探知確率で封印の検認をするのみでよいが、一年以上封印が適用されている場合には、探知確率10%で再計量(測定)する必要がある。再計量は通常実在庫検認の時に実施される。
(7)通常査察
IAEAは加工施設の在庫または移転量に応じて、一定回数の査察を物質収支期間毎に実施する。査察は年1回の実在庫検認(棚卸し査察)と年平均5回(最大7回)の短期通告無作為査察(SNRI:Short Notice Random Inspection)が実施される
 i)短期通告無作為査察(SNRI:Short Notice Random Inspection)
 SNRIの目的は、在庫変動の検認対象範囲を確率的に100%達成するとともに、査察実施時期に非予見性を与え、借用による転用の為の検認活動を不要化することである。その為、現行のSNRIが問題なく実施できているとIAEAが認め、2003年からは軽水炉における借用の為の査察は必要なくなった。SNRIは、9時30分から10時までが短期通告の為の通告時間帯となっており、この時間帯にIAEAからの通告がなければ当該日のSNRIは実施されない事となる。また、SNRIに必要な情報を施設者が毎日提供できるようにメールボックスシステムが開発され、施設者は毎日の在庫変動報告等の情報をフロッピーディスクでメールボックスに提供する事になっている。
3.高濃縮ウランおよびMOX(混合酸化物)燃料加工施設に対する保障措置
 日本には、高濃縮ウラン燃料加工施設の所有者として原子燃料工業(株)、プルトニウムを含むMOX燃料加工施設の事業者として原子力機構(旧 サイクル機構(現日本原子力研究開発機構))がある。しかしながら高濃縮ウラン燃料は、現在国内で製造されていないので、ここでは後者について述べる。MOX燃料加工施設では大量のプルトニウムを取り扱うので、1か月という短い探知時間が要求され、また計量の正確さと精度についても厳しい要求がある。低濃縮ウラン燃料加工施設との大きな相違点としては、プルトニウムの持つ少ない臨界量、化学的毒性および放射能から、設備や容器の設計と取り扱いに大きな制限がある。また多くの処理工程は密閉されたセルやグローブボックスの中で遠隔操作によって行われるので、作業性と接近性に厳しい制約がある。さらにスクラップの回収や施設、設備の汚染および作業人の放射線被ばく等が問題となる。以下に原子力機構(旧 サイクル機構(現日本原子力研究開発機構))の施設別に保障措置について述べる。
(1)プルトニウム転換施設(PCDF:Plutonium Conversion Development Facility)
 再処理工場からの製品(硝酸プルトニウム溶液)を用いてウランとプルトニウムが1:1の混合比を持つMOX燃料粉末を造る工場である。
 i)物質収支区域(MBA)と主要測定点(KMP)の設定
 MBAは転換工程区域(分析室を含む)と粉末貯蔵区域の2つで構成され、KMPは8つの流れKMPと3つの在庫KMPから成っている。
 ii)査察
 イ)流れの確認:転換工程区域では硝酸プルトニウムおよびウラン溶液の受入時に計量槽の液位、液密度および温度の確認、試料の収去などを行う。転換工程については月1回の中間査察において帳簿検認、貯槽の液位と液密度の確認、在庫確認、転換工程のモニタリング、試料の収去等を行う。粉末貯蔵区域では充填済み貯蔵容器の非破壊測定、貯蔵容器へのシール取り付けおよび監視装置の検認などを行う。
 ロ)実在庫検認(棚卸し査察):年1回、在庫変動記録の確認、主要溶液貯槽の液位等の確認と試料の収去、貯蔵容器の番号とシールの健全性の確認などを行う。
 ハ)その他の査察:主要溶液貯槽の校正等を行う。
(2)プルトニウム燃料施設(PPFF:Plutonium Pellet Fabrication Facility)
 上述の転換施設からのMOX粉末を用いてMOX燃料やR&D用の小試料等を作る施設である。
 i)物質収支区域(MBA)と主要測定点(KMP)の設定
 MBAは原料貯蔵区域、燃料製造ライン等の核物質取扱工程区域および製品貯蔵区域の3つである。この施設の特徴は臨界管理のために全施設を多くの計量管理単位に分けており、各単位毎に厳重な質量管理を行っている。1計量単位はおおよそ1つのグローブボックス、1つの貯蔵棚および1つの貯蔵箇所等である。またKMPは6個の流れKMPと14個の在庫KMPから構成されている。詳細は図1に示してある。
 ii)査察
 流れの検認と在庫の検認のため月1回の中間査察と、年1回の実在庫検認(棚卸し査察)が実施される。
 イ)中間査察:帳簿の検認、非破壊測定(ガンマスペクトロメトリー法と中性子同時計測法)、C/S装置の検認、燃料集合体の員数と番号確認等を行う。
 ロ)実在庫検認(棚卸し査察):実在庫明細表に記載の全アイテムの員数勘定を行うとともに粉末、グリーンペレット等にグループ(ストラータ)分けし、サンプリング計画による試料の採取、秤量および非破壊測定などを行う。実在庫検認は通常4日間約50〜60人・日の査察官(日本と各25〜30人・日)によって実施される。
(3)プルトニウム燃料製造施設(PFPF:Plutonium Fuel Production Facility)
 高速増殖炉原型炉「もんじゅ」と新型転換炉原型炉「ふげん」の燃料を製造するための大型施設として、1989年から製造を開始した。この施設は可能な限り先端技術を取り入れた完全自動遠隔操作で集中管理される最新工場であるので、従来の保障措置の基礎概念、例えば接近して目視で確認することが困難である。したがって保障措置においても最新の技術が採用され、例えば核物質の流れの要所に査察用の独立した非破壊測定器を設け、測定結果は工程用監視テレビからの画像信号と共に、査察専用計算機に記録される。貯蔵庫には多重で検知能力の高いC/Sシステムを採用しており、これらの情報は中央管理計算機からの計量管理情報と組み合わせて、実在庫量をリアルタイムで把握できるようになっている(図2参照)。
 i)物質収支区域(MBA)と主要測定点(KMP)の設定
 MBAは1つで、原料貯蔵区域、工程区域、集合体貯蔵区域の3区域に分けられ、6個の流れKMPと8個の在庫KMPから構成される。
 ii)査察
 流れの検認と在庫の検認のため月1回の中間査察と、年1回の実在庫検認(棚卸し査察)が実施される。
 イ)中間査察:帳簿の検認、原料貯蔵庫での非破壊測定、中間保管庫での非破壊測定と試料の収去、製品貯蔵庫での非破壊測定、貯蔵庫のC/S確認、ニア・リアルタイム計量管理(NRTA :Near Real Time Material Accountancy)の評価などが行われる。
 ロ)実在庫検認(棚卸し査察):PPFFと同様の査察が実施されるが、直接接近が困難なことから非立会非破壊測定とC/Sによる検認が中心となっている。
4.統合保障措置
 追加議定書に規定された新たな保障措置手段を含む保障措置強化・効率化策が導入されたことにより、在来の保障措置手段と新たに導入された保障措置手段を統合した統合保障措置が検討されている。しかし、プルトニウムおよび高濃縮ウラン利用施設の場合には、年間査察業務量の大幅な効率化は期待できないと言われている。
[用語解説]
 有意量(SQ:Significant Quantity)とは、1個の核爆発装置の製造の可能性を排除できない核物質のおおよその量で、プルトニウム:8kg、ウラン233:8kg、ウラン235(濃縮度20%以上):25kgと定められている。
(前回更新:2002年9月)
<図/表>
図1 プルトニウム燃料施設(PPFF)の物質収支区域および主要測定点
図1  プルトニウム燃料施設(PPFF)の物質収支区域および主要測定点
図2 プルトニウム燃料製造施設(PFPF)の保障措置全体システム
図2  プルトニウム燃料製造施設(PFPF)の保障措置全体システム

<関連タイトル>
保障措置のあらまし (13-05-02-01)
査察とその現状 (13-05-02-02)
軽水炉を対象とする保障措置 (13-05-02-08)
高速増殖炉を対象とする保障措置 (13-05-02-10)
ウラン濃縮施設を対象とする保障措置 (13-05-02-13)
輸送中の核物質を対象とする保障措置 (13-05-02-15)

<参考文献>
(1)(財)核物質管理センター(訳):IAEA保障措置用語集(1988年)
(2)(財)核物質管理センター:保障措置セミナー資料集(1987年)
(3)(財)核物質管理センター(訳):IAEA/SG/INF5 IAEA 保障措置−保障措置技術及び測定装置−(1987)
(4)(財)核物質管理センター(訳):IAEA/SG/INF6 IAEA 保障措置−核燃料サイクル施設における実施−(1987)
(5)(財)核物質管理センター:核物質管理センターニュース、核物質管理センター発行の月刊ニュース
(6)(財)核物質管理センター:核兵器の不拡散に関する条約第3条1及び4の規定の実施に関する日本国政府と国際原子力機関との間の協定並びに当該協定への追加議定書、核物質管理ハンドブック 2001年版(2001年6月)
(7)(財)核物質管理センター:核物質管理センター30年史(2002年6月)
(8)核物質管理学会日本支部:第14回核物質管理学会年次大会論文集(1993年)
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