<大項目> 国際協力・原子力関連機関
<中項目> 核をめぐる動向と保障措置・核物質防護
<小項目> 保障措置
<タイトル>
査察とその現状 (13-05-02-02)

<概要>
 査察とは、国際保障措置上はその対象となる核物質および原子力活動が保障措置協定の規定に従って使用され、実施されていることを検認するための一連の現場作業のことで、国内法上は保障措置協定で規定されている国際約束および国内施設の計量管理規定の遵守状況を確認する立ち入り検査のことをいう。そのため国内的には保障措置検査と称している。査察では、設計情報の完全性および正確性並びに、保障措置が有効に適用し得ることを確認するための設計情報の検討、核物質の記録の確認および報告された計量管理報告書との照合、在庫および移動の検認、封じ込め・監視手段の設置、整備および検認が実施される。また、追加議定書の冒頭報告の完全性および正確性を確認する為の補完的アクセスおよび管理アクセスも実施される。
<更新年月>
2006年08月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 国際原子力機関(IAEA:International Atomic Energy Agency)は、査察を「保障措置の対象になる核物質の使われている方法が、保障措置協定の規定に従っていることを検認するための一連の現場活動である」と定義している。すなわち査察とは、国とIAEAの担当官が保障措置の適用されている施設や場所に赴いて、施設等からの報告や記録の内容を確かめ、また保障措置用機器の作動状況を確かめるなどの一連の作業をすることにより、有意量の核物質が平和目的以外に転用されるのを適時に探知することである。
 査察には、国の査察官(国内法上は保障措置検査官と称す)が行う国内査察(保障措置検査)とIAEAの査察員が行う国際査察があるが、包括的保障措置協定(INFCIRC/153)によれば、IAEAの査察は国内査察の観察を通して実施されることになっている。
1.査察の形態
 査察の形態には、「冒頭査察」、「特定査察」、「通常査察」、「特別査察」および「訪問」がある。「冒頭査察」は、INFCIRC/66/Rev.2の協定でのみ実施されるもので、対象となる原子力施設がIAEAにより検討された設計通りである事を検認するために実施される。「特定査察」は、施設の操業前や国家間の核物質の移転時等に行われるもので、「通常査察」は、施設現場において核物質に関する各種の記録の検討および報告された計量管理報告書との照合、核物質の所在箇所、同一性、量および組成等の在庫および移動の検認を行う他、封じ込め・監視手段の設置、整備および検認が実施される。また、「特別査察」は、定められた限度を超える量の核物質の在庫差等保障措置の評価結果で異常や違反の疑いが認められた場合等に実施される。「訪問」とは、保障措置査察以外の目的で査察員が原子力施設に立ち入る事で、施設付属書或いは施設設計情報の完全性および正確性並びに、保障措置が有効に適用し得ることを確認するための設計情報の検討を行うために実施される。この為、訪問は査察業務量としては計算されない。また、追加議定書に従って報告された冒頭報告の完全性および正確性を確認する為の補完的アクセス(CA:Complementally Access)および管理アクセス(MA:Managed Access)も実施される。図1に保障措置の技術的目標、保障措置の仕組みと通常査察との関係、査察業務の内容など保障措置の査察体系を示す。
2.保障措置検査官・検査員と査察員
 国内査察は国内法上保障措置検査と称され、文部科学省原子力安全課・保障措置室の主管の下、保障措置室の保障措置検査官および指定保障措置検査等実施機関の保障措置検査員が実施している。また、国際査察は対日査察員として事前に日本国政府の承認を得たIAEA査察員が実施しているが、その内2006年8月現在20名の査察員が東京地域事務所に駐在しており、査察の効率化に寄与している。
 2005年のIAEAの全査察業務量は9133人・日で、その内の約1/5が日本の査察に費やされており、日本は保障措置上重要な国になっている。また、査察業務量には加算されていないが、未申告の核物質および原子力活動がない事を確認する為のCAが実施されている。
3.通常査察
 通常査察には、原則として年1回の棚卸し(PIT:Physical Inventory Taking)時に実施する実在庫検認(PIV:Physical Inventory Verification)と探知時間を考慮した年何回かの中間在庫検認(IIV:Interim Inventory Verification)および在庫変動検認(ICV:Inventory Change Verification)の為の中間査察があるが、その査察業務量や頻度は、施設の種類(研究炉、発電炉、核燃料加工施設、再処理施設、濃縮施設など)、取り扱う核物質の種類(プルトニウム、高濃縮ウラン、低濃縮ウラン、天然ウラン)と量(有意量以上か、以下か)などによって異なり、IAEAの保障措置クライテリア(Safeguards Criteria 1991-1995)に詳細に定義されている。また、最近では査察の効果・効率の向上のための施策の一環として、環境サンプリング(ES:Environmental Sampling)や遠隔監視(RM:Remote Monitoring)などの新しい保障措置手法が採り入れられるとともに、定期的な中間査察の代わりに、低濃縮ウラン転換・燃料加工施設において短期通告無作為査察(SNRI:Short Notice Random Inspection)が実施されている。
3.1 査察業務量
 査察業務量は査察に必要な人・日で表すが、その計画段階で算定する最大通常査察業務量(MRIE)は保障措置協定でその算定方式が定められている理論的な業務量ともいえるものである。これに対して実際の通常査察業務量(ARIE)は、施設の実状や査察用機器の技術的なレベルなどを考慮して、施設ごとに施設付属書で定められる実際の査察業務量で、一般に最大査察業務量よりも少ない量になっている。
 国内通常査察実績は2003年は2247人・日、2004年は2460人・日と増加しており、核不拡散上重要と考えられる再処理施設、プルトニウム燃料加工施設、プルトニウムを多量持っている臨界集合体施設などに重点を置いて査察がなされている。また、統合保障措置の適用を受けてより確実に査察業務量を減らす事が可能となるであろう。但し、わが国においては六ヶ所村の商業規模再処理施設の操業開始に伴って、かなりの査察業務量の増加になる事が推測される。
3.2 通常査察の頻度
 通常年1回のPIVは、施設が操業・運転を停止して定期検査をする時やPIT時に実施され、一方中間査察は、PIVとPIVの中間に施設ごとの施設付属書に定める頻度に従って実施される。しかしながら、両者の査察業務量を足してもARIEを超えないことになっている。統合保障措置下では、照射済み燃料の探知時間が、監視装置と無通告査察の共用により、3か月から12か月へと延長される事により、原子力発電所等においては中間査察回数を減らす事が出来、ひいては査察業務量も減少する事になるであろう。
3.3 通常査察の実施
 査察はその趣旨から考えると、本来抜き打ち的に実施するのが望ましいが、実施上の制約からPIVは、施設が操業・運転を停止して実施する定期検査やPIT時にあわせて実施される。中間査察についてはそのような制限はないが、施設の操業計画や探知時間を考慮して通常1か月前には通告して実施される。
 査察は施設付属書に従って実施されるが、まず施設からの報告と施設側の記録とが一致しているかどうかを、施設の計量記録や操業記録を見て確認する。次に核物質の所在箇所、同一性、数量、重量、組成などを、目視や非破壊測定によって確認する。この場合の測定試料数(抜き取り率など)や測定項目は、「査察目標」を満たすように統計的に定められる。
 封じ込め・監視については、核物質の施設内および工程中の移動の監視結果を調べるとともに、監視カメラのフィルム取り替えなどの保守作業や、封じ込めのために核物質を収納している容器類への封印の取り付けや、その健全性の確認などを行う。その他、少量の核物質の抜き取り・改ざんによる転用がないことを検認する為の核物質の破壊分析用試料の収去(採取)を行う。さらに、在庫差や受け払い間差異を生じた原因などを明らかにするため、記録の誤り、測定誤差の検討、工程ロスの調査などを行う。
4.査察結果の評価
 IAEAは査察の実施に当たって、保障措置クライテリアに基づいて施設の種類毎に査察も含めた保障措置実施計画や査察方法、結果の有効性や妥当性の評価に係る判断などを定める。これに従って各施設について査察が行われ、有意量以上の核物質の転用の有無などが評価され、その年次結果を保障措置達成報告書(SIR:Safeguards Implementation Report)で報告する。
<図/表>
図1 保障措置のための査察

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<関連タイトル>
保障措置のあらまし (13-05-02-01)
保障措置の対象となる物質と施設 (13-05-02-03)
保障措置のための目標と技術的手段 (13-05-02-04)
保障措置に用いられる手法の設計 (13-05-02-05)
軽水炉を対象とする保障措置 (13-05-02-08)
高速増殖炉を対象とする保障措置 (13-05-02-10)
研究炉と臨界実験装置を対象とする保障措置 (13-05-02-11)
転換施設および燃料加工施設を対象とする保障措置 (13-05-02-12)
再処理施設を対象とする保障措置 (13-05-02-14)

<参考文献>
(1)(財)核物質管理センター(訳)、科学技術庁(監修):IAEA保障措置用語集、IAEA/SG/INF/1(Rev.1)(1988年)
(2)(財)核物質管理センター(訳):IAEA/SG/INF3 IAEA保障措置(1987年)
(3)(財)核物質管理センター(訳):IAEA/SG/INF4 IAEA保障措置−目的、限界、功績(1985年)
(4)(財)核物質管理センター(訳):IAEA/SG/INF5 IAEA保障措置−保障措置措置技術および測定装置(1985年)
(5)(財)核物質管理センター(訳):IAEA/SG/INF6 IAEA保障措置−核燃料サイクル施設における実施(2000年)
(6)(財)核物質管理センター:核物質管理センターニュース、核物質管理センター発行の月刊ニュース
(7)(財)核物質管理センター:第14回保障措置セミナー資料集(1994年11月)
(8)原子力委員会(編):原子力白書 平成6年版(1995年2月)
(9)(財)核物質管理センター:第10回保障措置セミナー資料集(平成2年)
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