<大項目> 国際協力・原子力関連機関
<中項目> 核をめぐる動向と保障措置・核物質防護
<小項目> 保障措置
<タイトル>
ウラン濃縮施設を対象とする保障措置 (13-05-02-13)

<概要>
 ウラン濃縮施設は、商業機密上および核不拡散上機微な情報の多い施設であるため、保障措置については、処理能力が約1,000tSWU/年規模までのウラン濃縮施設に対する保障措置の在り方を検討する目的で1979年に国際的規模のヘキサパータイト保障措置プロジェクトというワーキンググループが設けられ、2年間にわたり検討が行われた。この結果に基づいて濃縮施設に保障措置が適用されている。また、日本ではウランバランス法による計量手段を提案し、現在この手段に基づいて施設の計量管理を実施しており、その結果をIAEAが検認している。なお、保障措置強化・効率化策として環境サンプリング法等が導入されたため、現在検討が進められている統合保障措置では、年間査察業務量の一層の効率化が期待される。
<更新年月>
2006年09月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.ヘキサパータイト保障措置プロジェクト
 ウラン濃縮施設は商業上および核不拡散上の観点から機微な情報を有し、特に濃縮機器のあるカスケード区域内には機微な情報が集中している。このため濃縮施設に対する国際保障措置の手段については、当初、IAEAは査察の実施内容を記載した施設付属書(FA:Facility Attachment)を関係国との間で発効できず、そのためFAに基づく通常査察を実施することが出来ない状況にあった。したがって、特定査察を実施していた。この状況を解決するため、4か国「日本、トロイカ(英国、西独(当時)、オランダ3国の総称)、オーストラリア、米国」および2国際機関「IAEA、ユーラトム」の6者が処理能力約1,000tSWU/年規模までのウラン濃縮施設に対する保障措置の在り方を検討する目的で1979年にヘキサパータイト保障措置プロジェクト(HSP:Hexapartite Safeguards Project)というワーキンググループを設置し、2年間に亘り検討が行われた。
 論議の中心は、カスケード区域内への立ち入り無しに保障措置の目的を達成できるか否かであった。HSPでの検討の結果、ウラン濃縮施設の査察は、カスケード区域外と区域内の2区域に分類し、査察内容を整理した。カスケード区域外での査察活動には、記録の確認、計量システムの評価、核物質の流れの検認および実在庫検認があり、カスケード区域内の査察には、配管等の目視検認、配管内ウランの濃縮度を検認する非破壊測定技術等の技術的手段および封印の適用を挙げている。保障措置上のウラン濃縮度とは、
  ウラン濃縮度=((233U+235U)重量/全ウラン重量)×100%
である。査察活動は大きく、以下の2つに分類される。
1)核物質が申告通りに工程内を流れ、在庫が申告通りであることの検認に必要な活動
2)核物質の生産が申告された濃縮度の範囲(4〜5%)以内であることの検認に必要な活動
 2)は、主としてカスケード区域内への頻度限定無通告査察(LFUA:Limited Frequency Un-announced Access)によってできるとされた。ここで、頻度限定とはカスケード区域内への立ち入り回数を限定することであり、無通告とは立ち入り直前の1〜2時間前に通告することを意味している。これにより区域内には監視カメラは設置しない。
 HSPでは、約1,000tSWU/年までのウラン濃縮施設については、カスケード区域外の通常査察は平均12〜15回/年、またカスケード区域内への立ち入りは4〜12回/年が適切であるとしている。
2.ウランバランス法
 サイクル機構(現 原子力機構)は計量管理の手段として、235Uの物質収支に基づく方法(235Uバランス法)から費用対効果が優れているウランの物質収支に基づく方法(ウランバランス法)への変更をIAEAとのFA交渉において提案した。
 ウランバランス法は、すべてのウランが申告された濃縮度の範囲であるという条件の下では、濃縮、天然および劣化ウランを問わず、各バッチ(シリンダ)毎のウラン濃縮度の精密測定は不要であり、査察側はウラン濃縮度の検認法として、カスケード区域からやや離れた最終配管にGe型計数器を取りつけ、235Uからのガンマ線を常時測定して、これがウラン濃縮度20%を超えないことを確かめる。また全ウラン量については、同じ配管に57Coの線源を取りつけ、このガンマ線を受けてウランから発する蛍光を測定することによって求める。さらに235Uについても、それからのガンマ線をGe型計数器によって測定し、配管壁等に付着した235U量の補正等に用いる。こうして非破壊測定(NDA)で十分に保障措置の目的を達成できる。
 これに対して、235Uバランス法は、各バッチ毎の濃縮度の精密測定が不可欠で、かつ十分に代表性のあるサンプルを分析装置で測定する必要がある。この235Uバランス法は1987年まで行われたが、その後、同年11月のFA改訂交渉の結果、ウランバランス法が採用されることになった。ウランバランス法は六ケ所村のウラン濃縮工場にも適用されている。
 以下ウランバランス法について説明する。
 ウランバランス法は転用される濃縮ウランの濃縮度が施設に存在する最大濃縮度(Emax)を超えることはないことを基礎としている。ウランバランス法による物質収支の評価はウラン量に基づいて物質収支を閉じた後行われる。すなわち探知目標量をMU、ウラン量の収支を確定するために実施した全測定の誤差の標準偏差をσUMUFと置くと、
 MU ≧ 3.29 * σUMUF ・・・・・・(1)
が成り立つ場合、計量管理は正しく行われたと判断される。
 このとき、生産される濃縮ウランの濃縮度がIAEAへの申告最高濃縮度(Emax)以下であることが保証されていることが必要である。探知目標値MUとMU235の間には、安全側に見て次の関係がある。
MU * Emax = MU235・・・・・・・(2)
 (2)式からウラン濃縮度5%以下の濃縮ウランを生産していると仮定した場合は、探知目標量MU235(=75kg235U)をウラン量に換算すると、(75kg235U/0.05=)1,500kgUが探知目標量MUとなる。ウランバランス法の特徴は、各バッチ毎のU235の精密測定が必要なく、非破壊測定で十分であることである。
3.計量管理
 原子力機構の人形峠ウラン濃縮工場および日本原燃の六ケ所ウラン濃縮工場とも、計量管理はウランバランス法で実施されてきた。また、2工場とも核物質の収支決算を行う区域(保障措置ではMBA[Material Balance Area]と言う)は2区域、すなわちカスケードを有する工程MBAと原料と製品を貯蔵する貯蔵MBAの2MBAで構成されている。原子力機構の人形峠ウラン濃縮工場は、1999年に濃縮プラントの運転を終了し、2002年に施設、設備の解体が終了した。従って、濃縮施設としての計量管理は実施していない。
 MBAおよび核物質を受け入れた量および払い出した量、施設に在庫する核物質の量を確定する個所(保障措置ではKMP[Key Measurement Point]と言う)の例を簡単に図1に示す。
4.統合保障措置
 環境サンプリング法を含む保障措置強化・効率化策が導入されたことにより、従来の保障措置手段と新たに導入された保障措置手段を統合した統合保障措置が検討されている。これにより、年間査察業務量の一層の効率化が期待される。
(前回更新:2001年3月)
<図/表>
図1 ウラン濃縮施設におけるMBAおよびKMPの例

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
査察とその現状 (13-05-02-02)
保障措置のための目標と技術的手段 (13-05-02-04)
保障措置に用いられる手法の設計 (13-05-02-05)
保障措置技術開発と国際協力 (13-05-02-17)

<参考文献>
(1)(財)核物質管理センター(訳):IAEA保障措置用語集、昭和63年
(2)(財)核物質管理センター(訳):IAEA/SG/INF3 IAEA 保障措置−核物質の国内計量管理制度の指針−
(3)(財)核物質管理センター(訳):IAEA/SG/INF6 IAEA 保障措置−核燃料サイクル施設における実施−
(4)IAEA保障措置技術開発支援計画(JASPAS)
(5)核物質管理学会日本支部論文集
(6)(財)核物質管理センター:保障措置セミナーテキスト
(7)(財)核物質管理センター:核物質管理センターニュース:核物質管理センター発行の月刊ニュース
(8)核兵器の不拡散に関する条約第3条1及び4の規定の実施に関する日本国政府と国際原子力機関との間の協定並びに当該協定への追加議定書(INFCIRC/255)
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ