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<概要>
 皮膚が放射性核種により汚染された場合、その放射性核種により皮膚組織が被ばくし、また傷口などが汚染した場合には内部被ばくの原因になる。これらの汚染による被ばく線量が限度を超えていないことを確認するため、皮膚汚染モニタリングを行う。被ばくの評価は、等価線量である70マイクロメートル線量当量(法令用語)を評価することにより行なわれる。70マイクロメートル線量当量の評価は、汚染した皮膚の部位を表面汚染検査計等で特定した後、検査計の指示値に対して、実験的にあるいは計算により決定された換算を加えることにより行なわれる。
<更新年月>
2005年02月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.皮膚汚染モニタリングの考え方
 非密封の放射性核種を取り扱う作業において、放射性核種の飛散や放射性核種との接触により、手やその他の露出部分の皮膚が汚染される場合が生じる。汚染の有無は、表面汚染検査計を用いて検出できる。汚染が検出された場合、できる限り速やかに除染を行う必要があることは言うまでもない。それとともに、皮膚組織が受ける等価線量を評価することが重要である。
 皮膚の確率的影響は、平均の深さが70マイクロメートル(2〜10mg/cm2)の基底層において生じ、確定的影響も同じ深さで生じるほか、真皮層(30〜50mg/cm2)においても生ずる。放射線防護の観点からは、確率的影響を防護すれば安全側の評価になることから、皮膚の被ばく線量は70マイクロメートルにおける線量(70マイクロメートル線量当量)を評価すればよい。また、皮膚汚染の結果、間接的に被ばくに結び付く要因として、α線およびβ線放出核種経口摂取による内部被ばくについても留意する必要がある。
 皮膚汚染における等価線量の評価は、ICRP Publication35に示されているように、日常のモニタリングの目的では100cm2にわたる平均線量を基礎として行なわれる。ICRP(国際放射線防護委員会)は、1990年勧告(Publication60)において、被ばく面積にかかわらず任意の1cm2にわたり平均して500mSvの年線量限度を示した。しかし、皮膚汚染に関して1cm2より広い面積についてモニタリングが行なわれることを考慮して、ICRP Publication35に示される考え方を認めている。
2.皮膚汚染モニタリングの方法
 皮膚汚染の検出には、ハンドフットクロスモニタおよび表面汚染検査用サーベイメータが使用される。表面汚染検査用サーベイメータを用いた皮膚汚染の検出方法は、表面汚染モニタリングにおける方法と同様である。
 汚染部位の70マイクロメートル線量当量の評価は、汚染核種と表面密度が明らかな場合を除き測定に基づいて行なわれる。測定においては、比較的有効入射窓面積の小さい表面汚染検査(β線)用サーベイメータやβ線測定用サーベイメータが用いられるが、γ線等に感度のある場合には、その影響を差し引く必要がある。
 評価の方法としては、主に次の2通りの方法が用いられる。
(1)サーベイメータの指示値から直接、70マイクロメートル線量当量率に換算する方法
 この方法では、使用するサーベイメータの指示値が70マイクロメートル線量当量率に対して校正されていることが必要となる。サーベイメータの校正には、既知の線量を与える校正用β線源が用いられる。校正により得られた指示値と70マイクロメータ線量当量率の換算係数は線源面積に大きく依存して変化するため、汚染面積を適切に評価することが重要である。
 サーベイメータの換算係数の一例を図1に示す。
(2)表面密度の測定結果に基づいて70マイクロメートル線量当量率を算出する方法
 表面汚染検査用サーベイメータを用いて汚染部位の表面密度を測定し、計算で得られた吸収線量率と放射能表面密度との関係に基づき70マイクロメートル線量当量率を求める。単位放射能表面密度当たりの吸収線量率をβ線最大エネルギーの関数として線源半径無限大の場合と線源半径1cmの場合をそれぞれ図2図3に示す。
 いずれの評価方法においても、β線放出核種又はβ線最大エネルギーが必要となるため、放射性核種の使用状況、β線最大エネルギーの測定に基づき、これらの情報を得ることが必要である。
<図/表>
図1 GM計数管式及び電離箱式サ−ベイメ−タの換算係数例
図1  GM計数管式及び電離箱式サ−ベイメ−タの換算係数例
図2 β線最大エネルギーと皮膚吸収線量率との関係(線源半径無限大の場合)
図2  β線最大エネルギーと皮膚吸収線量率との関係(線源半径無限大の場合)
図3 β線最大エネルギーと皮膚吸収線量率との関係(線源半径1cmの場合)
図3  β線最大エネルギーと皮膚吸収線量率との関係(線源半径1cmの場合)

<関連タイトル>
被ばく管理のための種々の線量 (09-04-02-05)
線量限度 (09-04-02-13)
標準測定と校正 (09-04-03-01)
サーベイメータ(α線、β線、γ線、中性子等) (09-04-03-04)
ハンドフットクロスモニタ (09-04-03-07)
表面汚染検査計 (09-04-03-08)
表面汚染モニタリング (09-04-06-04)
管理区域入退者の検査 (09-04-07-10)

<参考文献>
(1)原子力安全技術センター:外部被曝における線量当量の測定・評価マニュアル、1988年
(2)原子力安全技術センター:放射性表面汚染の測定・評価マニュアル、1988年
(3)日本アイソトープ協会:ICRP Publication 35−作業者の放射線防護のための一般原則,1984年
(4)日本アイソトープ協会:ICRP Publication 60−国際放射線防護委員会の1990年勧告、丸善(1992年4月)
(5)日本アイソトープ協会(編):アイソトープ法令集、1990年
(6)日本アイソトープ協会(編):主任者のための放射線管理の実際 改訂2版、丸善(1994年4月)
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