<解説記事ダウンロード>PDFダウンロード

<概要>
 サーベイメータ(survey meter)は、放射線の種類や強さに対応して選択できる簡易な携帯用測定器である。サーベイメータの名称は必ずしもその性能実体を表していないこともあり、専門家によるアドバイスを受けて選択し、使用すべきである。数多く使われているのは、GM式サーベイメータと電離箱式サーベイメータおよび表面汚染検査計である。
<更新年月>
2001年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 作業環境中の外部放射線モニタリングを行うために、放射線測定器が用いられる。このとき使われる持ち運び可能な簡易な測定器の総称がサーベイメータである。
 サーベイメータは検知しようとする放射線の種類に合わせたものを使用する必要がある。したがって、放射線測定を行う者は少なくとも、自分が測定しようとしている放射線の種類は何か、その強度はどの程度かを予測してサーベイメータを選ばねばならない。
1.γ線サーベイメータ
 γ線サーベイメータは放射線管理に使用される。従来は、照射線量を測定し、その値から線量当量を評価した。1989年4月からは実効線量当量値で評価することとなった。実効線量当量の測定は困難(事実上不可能)なので、ICRU 球(*1)の1cm線量当量を測定すれば、実効線量当量を安全側に評価できるものと位置付けられた。現在は、測定器のエネルギー特性をICRU球の1cm線量容量に合わせた1cm線量当量測定用のサーベイメータが作られている。1cm線量当量に対する代表的なサーベイメータのエネルギー特性を 図1 に示す。
 また、サーベイメータの検出器に注目して分類すると,シンチレーション式サーベイメータ、GM式サーベイメータ、電離箱式サーベイメータ等に区分される。機能から分類して、超小型サーベイメータ、パーソナルサーベイメータ、低エネルギー用サーベイメータ等と呼ばれるタイプもある。更に、超小型サーベイメータにも、半導体検出器を用いたものとGM管を使用したものがある。
  図2 に代表的なサーベイメータの外観を示す。GM式サーベイメータは、測定器として感度が高く、γ(β)線を放出する放射性核種を取り扱う施設の外部放射線モニタリングには大変有効な測定器であり、作業モニタリング、周辺環境モニタリングなどに広く使われている。
 シンチレーション式サーベイメータは、自然放射線レベルの変動のようなわずかな放射線強度の変化を検出できる。シンチレーション式サーベイメータの検出器にはヨウ化ナトリウム(NaI)やヨウ化セシウム(CsI)等の単結晶が使われている。ヨウ化ナトリウムを使ったものが一般的で、NaI(シンチレーション)サーベイメータと呼ばれている。
 電離箱式サーベイメータのγ線検出感度は一般に上記2機種のサーベイメータより低いが、精度の高い1cm線量当量(率)の測定ができるので、作業環境場の線量測定器として広く使われている。特に、実効線量当量で被ばく管理される新しい法体系に対応するには、この1cm線量当量対応型電離箱式サーベイメータが不可欠である。
 超小型サーベイメータ(パーソナルサーベイメータ)は、半導体検出器あるいは超小型GM計数管を用いた手のひらに納まる程度の大きさのサーベイメータである。測定値の表示は最近のものはデジタル表示となっており、初めてサーベイメータを扱う者でも取扱は容易である。管理区域内作業を安全に進めるための補助的な測定器として使われている。TMI事故やチェルノブイリ事故以後は、一般人の放射線に対する関心が高くなり、放射線計測の専門外の人にも扱えるサーベイメータの要望がある。この機種はその様な目的にもかなうものである。小さくても測定精度や機能が優れている。
2.表面汚染サーベイメータ(表面汚染検査計)
 表面汚染サーベイメータは表面汚染の測定管理に使用される。α線やβ線を放出する放射性核種による汚染状況を調べるサーベイメータの別称である。β線を検出するGM式サーベイメータ(汚染検査計)(図2参照)とα線を測定するガスフロー式やシンチレーション式サーベイメータがある。これらは、原子炉施設や非密封RI取扱施設等における汚染検査に欠かせない。また、放射性物質が施設から異常放出されたような場合の身体や環境の汚染の有無を調べる測定器としても重要である。
 β線の検出には大口径(50mmφ)のGM計数管が広く使われている。数は少ないが、さらに大面積のプラスチックシンチレータを使ったものやガスフローカウンタを使ったものもあり、広い範囲の汚染を効率よく調べる目的で使われている。ガスフローカウンタ検出器を用いたタイプの中には、α線とβ線の測定切り替えができるものもある。
 α線放出核種の汚染検査には、α線とβ線の性質の違いを利用してα線測定専用のサーベイメータが製作されている。α線用は表面障壁型半導体検出器を用いたタイプおよび硫化亜鉛シンチレータを用いたシンチレーション式のタイプが多い。どちらのタイプも極めて薄いα線入射窓を有する検出器であるため、検出器の表面に傷を付けないように取扱に注意が必要である。
3.中性子線サーベイメータ
 中性子線サーベイメータは加速器施設、原子炉施設等の管理に使用する。BF3検出器あるいはヘリウム3中性子計数管を用いたサーベイメータは熱中性子線にのみ有効な感度を持っている。したがって、速中性子線領域の測定を行うためには、パラフイン等で作ったモデレータ(中性子減速材)の中に検出器を挿入して、速中性子線を測定する。このタイプのサーベイメータでは中性子の線質係数がエネルギーにより変わるので、1cm線量当量率(mSv/h)の評価はモデレータの組合せを工夫して行っている。
4.レムカウンタ
 レムカウンタは、中性子線の被ばく管理に使用する。このサーベイメータは高価で種類も少なかったが、法律の改正に合わせて機種も増加し急速に普及し始めた。レムカウンタを用いれば、中性子線による線量当量率の測定が直接的に可能であり、しかも、取扱いは容易である。ただし、1cm線量当量に対するエネルギー特性を中性子の広いエネルギー範囲にわたり一致させることが困難であり、非常に価格は高い。測定精度は望めないが、外部放射線モニタリングの観点からは十分に実用的である。
5.γ線サーベイメータが示すバックグラウンドレベル
 バックグランドレベル(自然放射線レベル)は通常0.05〜0.1μSv/h程度の強さをもっている。これは宇宙線や大地に含まれるわずかなウランやカリウム等からの自然放射線であり、地方によっては2倍以上もの強度差がある。現在では1945年以降各地で行われた核実験によるフォールアウト成分からの寄与はわずかで、自然放射線と分離評価できるほどの量ではない。したがって、フォールアウト成分を含めた値を自然放射線量と見なすことが多い。また、サーベイメータはフォールアウト成分を分離評価できるほどの機能はもっていない。
6.サーベイメータの分類
  表1-1 および 表1-2 に代表的なサーベイメータの種類と使用目的を示す。サーベイメータは、測定対象放射線や作業内容により、α線サーベイメータ、γ線サーベイメータ、β線サーベイメータ(β線汚染検査計)、中性子サーベイメータ、トリチウムサーベイメータ、その他に分類できる。測定対象放射線の種類と知りたい情報(線量率、汚染、異常の有無等)によって、更にサーベイメータの検出器名で分類されている。すなわち、GM式サーベイメータ、電離箱式サーベイメータ等である。

用語解説
(*1)ICRU球:ICRU(International Commission on Radiation Units and Measurements、国際放射線単位・測定委員会)は、1971年ICRU Report 19で人体の代わりに放射線場において線量の基準を決めるためのレセプタ(受容体)の考え方を提示した。この仮想的な受容体が、直径30cmの球(これを構成する元素組成は酸素76.2%、炭素11.1%、水素10.1%、窒素2.6%、密度は1)で、ICRU球と呼ばれる数学ファントム(phantom)である。通称ICRU球ファントムという。ICRUは、このファントムを放射線場に置いたとき、ICRU球の表面から1cm、3mm、70μmの各深さで発生する線量をそれぞれ1cm線量当量、3mm線量当量、70μm線量当量と呼び、これを用いて人体の臓器、組織別に決められた防護線量を、安全側に評価した実用量とすることを決めた。具体的には、ICRU球に係わる実用量を用いて、X線ガンマ線、中性子線測定器の特性(エネルギー特性、方向特性)を決めるとともに、測定器はこの1cm線量当量などを基準量として校正する。
<図/表>
表1-1 サーベイメータの種類と使用目的
表1-1  サーベイメータの種類と使用目的
表1-2 サーベイメータの種類と使用目的
表1-2  サーベイメータの種類と使用目的
図1 1cm線量当量に対する代表的なサーベイメータのエネルギ−特性
図1  1cm線量当量に対する代表的なサーベイメータのエネルギ−特性
図2 代表的サーベイメータの外観
図2  代表的サーベイメータの外観

<関連タイトル>
実効線量 (09-04-02-03)
1センチメートル線量当量 (09-04-02-06)
作業環境モニタリング (09-04-06-01)

<参考文献>
(1) 飯田博美ほか:詳細−放射線取扱技術−新版、日本原子力産業会議 (1995年4月)
(2) W.マ−シャル(編)・加藤和明(監訳):放射線とその応用[上][下]、筑摩書房(1987年7月)
(3) 日本アイソトープ協会編:主任者のための放射線管理の実際、丸善(1994年12月)
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ