<大項目> 放射線影響と放射線防護
<中項目> 原子力施設に係わる放射線防護
<小項目> 放射線防護の諸量
<タイトル>
放射線防護諸量の単位の移り変わり (09-04-02-04)

<概要>
 放射線防護に関係する放射線量は、照射線量から吸収線量に基づく線量当量(後に等価線量)へ拡張されてきた。これら歴史的な流れにおける線量単位のエポックメーキングな事項として、(1)1920年代に国際単位として最初に照射線量の単位レントゲン(記号r、後にはR)が定義されたこと、(2)1950年代に線量当量の単位レム(記号rem)が導入されたこと、(3)1970年代にSI単位系の導入が行われたことがあげられる。放射能の単位はキュリー(記号c、後にはCi)からベクレル(Bq)に変わったこと、そして、(4)ICRP 1990年勧告で組織・臓器の等価線量を定めたこと、があげられる。
<更新年月>
2004年03月   

<本文>
1.放射線防護関係諸量とその変遷
 放射線防護に関係する放射線量は、X線が発見された後の初期の段階においては光子のみに適用される「照射線量(exposure dose)」を測定することによって評価されてきた。その後、中性子など他の放射線の線量をも測定する必要から、「吸収線量(absorbed dose)」を、生物学的効果を考慮するための係数で荷重して算出される「線量当量(dose equivalent)」 、ICRP 1990年勧告では「等価線量(equivalent dose)」及び「実効線量」によって線量の評価が行われてきた。これに伴ってそれら諸量の単位は、レントゲン(単位記号r、後にはR)からレム(単位記号rem、後にはSI単位系の導入によって単位記号をSvとするシーベルトに変更) へと変わってきた。関連する歴史的推移を表1に示す。
2.照射線量とその単位
 放射線と気体との相互作用によって発生する電離イオンの測定に基づく方法が、X線の発見の初期から、放射線の“量”を測るものとして用いられてきた。W.K.レントゲンによるX線の発見(1895年)やH.ベクレルによる放射性物質からの放射線の検出(1896年)は蛍光の観察や写真乾板への感光を利用したものであったが、1896年にはすでにJ.J.トムソンとE.ラザフォードが、また1898年にはM.キュリーらがこの電離法で研究を行っている。
 その後、この放射線を電離に基づく方法で測定するための放射線の単位がM.フランクリン(1905年)やP.ヴィラード(1908年)により提案された。そして、X線の量に関する国際単位として、レントゲン(単位記号r)がICRU(国際放射線単位・測定委員会の略称で発足当初は国際X線単位委員会と呼称された)によって1928年に暫定的に決められ、1931年に修正の後正式に定義された。更に、X線の他ラジウムから発せられるγ線の防護に対応するために、このX線量の単位は拡張されて、ICRUの1938年勧告では、“X線の量または線量(dose)の国際単位” として同じくレントゲン(単位記号r)が採用された。そして、これらの量は1956年のICRUの会議で「照射線量 (exposure dose)」として定義され、さらに、1962年のICRU勧告では、レントゲンの単位記号が従来のrから大文字のR(人名に由来するため)に改められ、1R = 2.58×10−4C/kg(C:クーロン)が定義された。今日では、この照射線量の単位として、SI単位のC/kgを使用することになっている。これら単位間の換算表を表2に示す。
3.吸収線量と線量当量の単位
 1932年に中性子が発見され、原子力や放射線利用が発展するにつれ、X線やγ線に対する防護に加えて、中性子、陽子や荷電粒子にも注意を払うことが必要になった。このため放射線防護の分野では、従来のX線やγ線のみに定義される「照射線量」に代えて、被照射物が吸収するエネルギーに基づく「吸収線量」を基本にして、放射線の種類やエネルギーの違いによる効果を考慮に入れた「線量当量」などの放射線防護関係量が導入された。
 吸収線量に関しては、古くにはT.クリステン(1913年)によって線量を吸収エネルギーで定義することが提案されているが、最初の国際単位として、ラド(単位記号rad)が1954年にICRUによって導入され、1rad = 100erg/gと定義された。その後、SI単位系を導入した1977年のICRU勧告において、このラドはグレイ(単位記号Gy)に変更されて今日に至っている。また、1954年のICRP勧告は、このラドと共に、レム(roentgen equivalent manを意味し、単位記号はrem)を導入し、radで計測した量に生物学的効果比(RBE)を乗ずることによってremを単位とする線量が評価されることを示した。その後、このRBE線量は、1963年のICRP-ICRU合同のRBE委員会において防護の目的のためにはRBEに替えてLETに依存した係数(線質係数)を乗ずる勧告が出されたのを受けて、1965年のICRP勧告では「線量当量」が定義されたが、単位は同じくレムとされた。その後、1977年勧告において具体的に線量当量限度の勧告が行われた。この線量当量はICRP1990年勧告では確率的影響についての生物学的効果(特に中エネルギー中性子および高いLET粒子線のRBE)の知見を取り入れて「等価線量」及び「実効線量」となった。等価線量は組織・臓器平均吸収線量に放射線場の種類とエネルギーに応じて定められた「放射線荷重係数」を乗じて得られる。また、線質係数もこれらによって改訂された。他方、1977年のICRP勧告でSI単位が導入されて以来、線量当量および等価線量の単位にはシーベルト(記号Sv)が用いられ、1Sv = 1J/kg( =100レム) と定義されて今日に至っている(表2)。
4.放射能の量を表す単位
 最初に、ラジウムの放射能を表すものとしてキュリーが導入され、「1キュリーは1gのラジウムと平衡にあるラドンの量」と定義された。その後、キュリーは放射能の国際単位として全ての放射性物質に適用されるよう拡大され、1954年のICRU勧告では「1キュリーは毎秒あたりの壊変数が3.7×1010である全ての放射性核種の量」と定義され単位記号にc(小文字)があてられた。この単位記号はICRU1962年勧告でCiに変更された。またSI単位の導入で、キュリーはベクレル(単位記号Bq)に変更され、1Bq=1s−1と定義された(表2)。
<図/表>
表1 放射線防護に関連する単位の変遷
表2 単位換算表

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<関連タイトル>
国際放射線単位測定委員会(ICRU) (13-01-03-11)
国際放射線防護委員会(ICRP) (13-01-03-12)
放射能と放射線の単位 (18-04-02-01)
線量に関する単位 (18-04-02-02)
照射線量に関する単位 (18-04-02-03)
吸収線量に関する単位 (18-04-02-04)

<参考文献>
(1)森内和之ほか(訳):「放射線量計測の基礎」地人書館(1990)
(2)R.L.Kathren et al. :Health Physics:A Backward Glance,Pergamon Press,1980.
(3)L.S.Taylor:Radiation Protection Standards, CRC, 1971.
(4)加藤和明:Radioisotopes, 32, 127?134, 1983.
(5)物理学史研究刊行会(編):「放射能」東海大学出版会(1980)
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