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<概要>
 照射線量とは、空気との相互作用の結果電離を生ずる能力に基づいて、X線または γ線放射線の量を計るための物理量である。X線やγ線の照射により空気1kgにつき1クーロンの電気量に相当する正または負のイオン群を生じさせる照射線量を1C/kgとする。この単位と従来からのレントゲン(R)単位とは1R=2.58×10−4C/kgの関係にある。
<更新年月>
2005年11月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 照射線量Xは、質量dmの空気中でX線やγ線(光子)が、空気分子から追出した電子(負と正)がその中で完全に止められるとき、イオン(片側符号のみ)の全電荷量をdQ (絶対値)として、X=dQ/dmと定義される。国際単位系で照射線量の単位はC/kgである。従来からの照射線量の単位レントゲン(R)は1R=2.58×10−4C/kgの関係にある。
 光子のエネルギーが高くなると、電子が制動放射線を出し、このため追加の電離が生ずることがあるが、dQはこの寄与を含めない形で定義されている。光子のエネルギーが高くない場合(10MeVV以下)、上で定義した照射線量は空気カーマ(質量dmの空気との相互作用で放出された全荷電粒子の初期運動エネルギーの和dEkを質量dmで除したもの)で考慮する電離量に相当する。すなわち、照射線量Xは、エネルギーフルエンスΨ、空気の質量エネルギー吸収係数μen/ρ、電子の電荷e、空気中で1イオン対を生成するのに必要な平均エネルギーW(W値と呼ぶ)を用いると、X=Ψ(μen/ρ)e/Wのように表される。空気カーマKはエネルギーが10MeV以下の光子では、制動放射等を無視できるので、近似的にK=Ψ(μen/ρ)となり、照射線量X=Ke/Wの関係になる。従って、グレイ単位の吸収線量はC/kg単位の照射線量よりも空気カーマの方が対応がよいことになる。荷電粒子平衡が成り立つ場合、空気カーマと吸収線量は近似的に一致する。
 照射線量はカーマと同様空気と異なるどのような媒質中でも定義できる。例えば、人体内あるいは遮蔽体内のある点で照射線量を表すにはそこに微小体積を取り、その中に空気があると考える。空気カーマと同様である。従って、人体内や遮蔽体内の線量を空気カーマと同様に、照射線量で表すことができる。
 照射線量を測定する場合、測定器の壁材質が空気と質量元素が異なるときは、光子の放射線場が乱されるので、何らかの補正が必要である。また、現在の技術レベルでは数KeV以下および数MeV以上の光子に対しては照射線量の測定は難しいので、照射線量はこのエネルギー範囲で用いられる。(注)カーマ、kerma:Kinetic Energy released in materials。非電荷放射線によりサンプル物質中に生じたすべての荷電粒子の最初の運動エネルギーの総和をサンプルの質量で除した値。
<関連タイトル>
国際放射線単位測定委員会(ICRU) (13-01-03-11)
放射能と放射線の単位 (18-04-02-01)
線量に関する単位 (18-04-02-02)
吸収線量に関する単位 (18-04-02-04)
カーマ(Kerma) (18-04-02-05)

<参考文献>
(1) 新ラジオアイソトープ 講義と実習(日本アイソトープ協会編)
(2) 放射線のやさしい知識(飯田ほかオーム社)
(3) ICRU Report 33 (1980)
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