<大項目> 原子力基礎データ(略語、元素周期表、諸単位など)
<中項目> 諸単位
<小項目> 放射能、放射線
<タイトル>
吸収線量に関する単位 (18-04-02-04)

<概要>
 吸収線量とは、物質に吸収された放射線のエネルギーを計るための物理量であり、電離放射線照射による物質1kg当り1ジュールの吸収エネルギーを単位に取り、これを1グレイ(Gyと表す)と呼ぶ。従来単位のラド(rad)とは1Gy=100radの関係にある。ただし、吸収線量を定義する物質の微小体積はその単位を定義する1kg相当の体積ではなく、2次電子平衡が成立する程度に大きくかつ放射線の減衰が無視できる程度に小さく取る。
<更新年月>
1998年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1)吸収線量
 電離放射線と物質との相互作用の結果、物質に入射した1次放射線により2次電子が作られ、放射線のエネルギーが物質に吸収される。放射線と物質の相互作用の結果、その物質の単位質量に与えられたエネルギーを吸収線量という。吸収線量Dは、物質の質量dm当り平均して吸収エネルギーdEがあるとき、D=dE/dmで定義される。
 国際単位系(SI)による吸収線量の単位はJkg−1である。これには特別な名称グレイ(記号Gy)が与えられている。国際放射線単位測定委員会(ICRU)は、電離放射線の量として用いられるSI単位のJkg−1に特別な名称を使うと放射線の利用者にとって便利なため、国際度量衡総会に上記の提案をし、1975年に承諾された。
 従来用いられた吸収線量の単位ラド(記号rad)とは、1Gy=100radの関係にある。
 物質の質量mを変数として、その中での吸収エネルギーEとの比、すなわちE/mの様子を見ると 図1 のようになる。図に示すように、質量mを余り大きくすると、物質との相互作用による放射線の減衰のため、E/mは減少する。また、質量mを余り小さくすると、E/mには統計的な揺らぎが現れ、図のようなばらつきが見られる。これは質量mを極めて小さくしていくと、その質量中で相互作用が起こったり、起こらなかったりするためである。そこで、吸収線量は図においてE/mが一定値となるような量に相当するものとして定義される。小さなある一定の質量mにおいて測定されるE/mはばらつき、ポアソン分布をするが、これらを平均すると、図のE/mの一定値に一致する。すなわち、吸収線量Dの定義は質量dm当りの平均吸収エネルギーdEのその質量 dmとの比として与えられる。

 吸収線量率は、時間dt内の吸収線量の変化dDをdtで除したもので、吸収線量の単位時間当たりの変化を表す。

2)吸収線量と同じ単位を用いる諸量
 質量dmの物質の微小体積要素中で中性子線のような間接電離粒子によって生成された全荷電粒子の最初の運動エネルギーの和dEkに対し、K=dEk/dmを定義し、この物理量Kをカーマ(kerma, kinetic energy released in material)という。この量は微小体積中での荷電粒子平衡を考えなくてもよい。もしも、荷電粒子平衡が成立し、かつ制動放射線損失が無視されるときは、カーマは吸収線量と等しくなる。カーマの単位は吸収線量と同じグレイである。

 物質の質量mとして小さな体積の生体の細胞、さらに小さい細胞核を考えると、質量m当りの吸収エネルギーに統計的な揺らぎが現れ、吸収線量は一定値として定義できなくなる。これは図1に示す通りである。このような現象は、原子数を充分に含まない位に体積を小さくすると、単位体積当りの質量に統計的な揺らぎが現れ、密度が定義できなくなるのに似ている。放射線のエネルギー吸収におけるこのような統計的な揺らぎを物理量として定義することはマイクロドジメトリ(微視的線量計測学)といわれる。DNAなどへの放射線損傷を微視的に調べる場合このような量が必要となる。統計的に揺らぐ吸収エネルギーEをその体積内の物質の質量mで割り、z=E/mと定義し、これを“比エネルギー”(specific energy)と呼ぶ。この量の単位もグレイである。

 吸収線量は前述の通り物質の適切な大きさの質量で定義される。大きな物体の照射あるいは人の被曝を考えるとき、放射線はビルドアップ(散乱により吸収線量増加)や減衰の影響により場所によって異なる吸収線量をもたらす。人の被曝では何処で吸収線量が最大となるかが重要である。このため、人体模型として良く用いられる人体軟組織と等価な材質から成る30cm径の球において吸収線量が最大となる点での吸収線量を吸収線量指標(absorbed dose index)と呼ぶ。これは放射線防護における線量計測量であり、一般の線量計測量である吸収線量とは区別される。吸収線量指標の単位もグレイである。
<図/表>
図1 吸収エネルギーEを求めた体積の質量mの関数として、E/mの変化を示す。

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<関連タイトル>
国際放射線単位測定委員会(ICRU) (13-01-03-11)
放射線の吸収エネルギー (08-01-02-01)
放射能と放射線の単位 (18-04-02-01)
線量に関する単位 (18-04-02-02)
照射線量に関する単位 (18-04-02-03)
カーマ(Kerma) (18-04-02-05)

<参考文献>
(1) 新ラジオアイソトープ 講義と実習(日本アイソトープ協会編)
(2) 放射線のやさしい知識(飯田ほかオーム社)
(3) ICRU Report 33 (1980)
(4) Attix,F.H. and Roesch,W.C.(editors):“Radiation Dosimetry,Volume 1 Fundamentals,”Second Edition,Academic Press(New York & London,1968).
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