<大項目> 放射線影響と放射線防護
<中項目> 原子力施設による健康影響
<小項目> 医療用放射線による健康影響
<タイトル>
治療用医療放射線と人体影響 (09-03-04-02)

<概要>
 放射線治療(Radiotherapy あるいは Radiation Therapy)とは、大量のX線ガンマ線などの放射線をがん(癌)の病巣に照射し、病巣の破壊または縮小をはかるものである。がんの種類や照射の方法などによって異なるが、およそ20Gyから300Gyにおよび、X線検査などとは比べものにならない大量の放射線が局所に照射される。このため、一時的に皮膚が赤くなったり、白血球の減少、下痢、食欲不振などの副作用が生じる場合がある。放射線治療技術の改善により、がん病巣にできるだけ放射線を集中させることにより、これらの副作用を軽減する努力が進んでいる。
<更新年月>
2007年12月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.放射線治療とは
 放射線治療とは、大量のX線やガンマ線などの放射線をがんの病巣に照射し、大量の放射線による物理的、生物的作用によって病巣の破壊または縮小をはかるものである。
 X線検査が人体に直接の影響を与えないわずかな量のX線で身体各部の画像を得るのに対して、放射線治療では、人体組織に直接の影響を及ぼす大量の放射線を用いて、がん細胞を殺し、さらには、がん病巣を破壊することを目的としている。
 放射線治療は、局所治療なので腫瘍に一定量の放射線量を与えれば腫瘍が消滅する。放射線に対する反応は、正常組織とがん組織とでは違いがあり、がん組織の方が放射線に対する反応が敏感なので、腫瘍だけに多量の放射線を与えることができれば治療効果は抜群に良くなる。
2.放射線治療のしくみ
 放射線治療の方法としては、(1)ライナック(直線加速器)や重粒子線加速器、陽子線加速器などを用いて、体の外から大量の放射線を病巣部に照射する方法(体外照射法)、(2)膣のような体腔に放射線源を挿入して、子宮頸部にできたがん病巣にイリジウム192やセシウム137などの線源を用いて大量の放射線を照射する方法(体腔内照射法)、(3)舌などのような体の表層部にできたがんの病巣内に針やビーズ状のイリジウム192や金198放射線源を埋め込んで、大量の放射線を照射する方法(密封小線源治療)、(4)バセドウ病甲状腺がんの治療にそれぞれある特定の放射性物質(ヨウ素131など)が集まる性質を利用して、病巣部に集積した放射性物質から放出される放射線でその病巣部自身を照射する方法(核医学治療)、(5)脳腫瘍に集まる性質のあるホウ素の化合物を患者に投与したのち、原子炉からの熱中性子を頭部に当てると、放射性のリチウム7が生成し、この時アルファ線が放出される。このアルファ線は近くのがん細胞だけを効率よく破壊するので、手術をしないで脳腫瘍の治療ができる中性子捕捉療法(BNCT)がある。なお、(1)の体外照射法では、皮膚などの正常組織の損傷をできるだけ少なくするために、20から30回に分割して照射を行う。一連の放射線治療で病巣に照射される放射線は、がんの種類、放射線治療の方法によって異なるが、およそ20Gyから300Gyにおよび、X線検査とは比べものにならない大量の放射線が照射される。
3.放射線治療の適用
 放射線治療は主としてがんの治療に適用される(図1参照)。しかし、がん以外にも脳にできる血管の奇形の除去や傷の痕にできるケロイドの治療などのために用いられることがあるので、放射線治療が行われるからといって必ずしもがんであるとは限らない。また、放射線治療は手おくれのがんに適用されるという誤解も一部にはあるが、これも間違いである。喉頭がんのように放射線治療だけでも効果のある場合もあり、さらに、集学療法といって放射線治療と外科的治療および化学治療(制がん剤の投与)を組合わせた、効果的ながん治療も行われている。なお使用できる放射性核種については薬事法で規定されている(表1-1表1-2表1-3表1-4表1-5表1-6表1-7および表1-8参照)。また、がんの疼痛軽減のための放射性薬剤の開発が行われ、実用化されている。
4.放射線治療の副作用
 がん病巣という局所に大量の放射線を照射するとき、どうしても周囲の正常な組織もある程度の量の放射線を受ける。このため、放射線治療を行うとさまざまな副作用が生じる場合がある。副作用の程度は、放射線の照射を受けた身体の部位や面積などによって異なる。
 副作用には、(1)急性放射線障害と(2)晩発性放射線障害の2つがある。急性放射線障害とは、治療中あるいは治療終了後数週間以内に起きる副作用のことで、皮膚が赤くなったり、白血球の減少、下痢、食欲不振などが生じる場合がある。症状が激しく、辛いこともあるが、一時的なものである。表2は、全身にX線あるいはガンマ線を一時に受けた時の症状を示す。治療の場合は、あくまでも局所的な照射である。晩発性放射線障害とは、治療が終わってから半年以降に起きる副作用のことで、胸に放射線を照射したときに肺炎が生じたり、子宮がんの治療のあとで直腸炎が生じたりすることがある。
 現在は、微小なイリジウム192線源による遠隔操作式後充填法(RALS)、RIミサイル療法(図2参照)などの放射線治療技術が進み、がん病巣にできるだけ放射線を集中させて周囲の正常な組織の線量をできるだけ減らすことにより、これらの副作用を軽減できるようになってきた。
(前回更新:2001年2月)
<図/表>
表1-1 薬事法により使用許可のされている核種(1/8)
表1-2 薬事法により使用許可のされている核種(2/8)
表1-3 薬事法により使用許可のされている核種(3/8)
表1-4 薬事法により使用許可のされている核種(4/8)
表1-5 薬事法により使用許可のされている核種(5/8)
表1-6 薬事法により使用許可のされている核種(6/8)
表1-7 薬事法により使用許可のされている核種(7/8)
表1-8 薬事法により使用許可のされている核種(8/8)
表2 エックス線あるいはガンマ線を一時に全身に受けたときの症状
図1 各種放射線による治療
図2 RIミサイル療法

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<関連タイトル>
放射線によるがんの治療(特徴と利点) (08-02-02-03)
RI小線源によるがん治療 (08-02-02-04)
高エネルギー加速器の医学での利用(陽子線によるがん治療) (08-02-02-06)
パイ中間子によるがん治療 (08-02-02-07)
ラジオサージャリー(ガンマナイフ、リニアックナイフなど) (08-02-02-10)
RIミサイル療法 (08-02-02-11)
診断用医療放射線と人体影響 (09-03-04-01)
医療被ばく(患者の診断・治療時)の評価 (09-04-04-09)

<参考文献>
(1)青木幸昌、中川恵一(著)、佐々木康人(監修):放射線をかけると言われたら−患者の疑問に答える、三省堂(1994)
(2)草間朋子、太田勝正、小西恵美子(著):医療のための放射線防護、真興交易医書出版部(1991)
(3)中川恵一、青木幸昌:放射線治療ガイドブック、医療科学社(1999)
(4)小西淳二(編著)、鳥塚莞爾(監修):核医学ハンドブック、金芳社(1999)
(5)放射線医学総合研究所:パンフレット
(6)遠藤啓吾:RIミサイル療法、放射線と産業、No.71、p.34-38、放射線利用振興協会(1996年)
(7)日本アイソトープ協会(編):おもな放射性同位元素の表、アイソトープ手帳、10版(2001
(8)総務省:法令データ提供システム、放射性医薬品の製造及び取扱規則(昭和36年2月1日厚生省令第4号)
(9)渡利一夫、稲葉次郎(編):放射能と人体、研成社(1999)
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